すべての世界で、キミのことが好き♥~告白相手を間違えた理由

立坂雪花

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✩.*˚第3章 仲良しなふたり

☆結愛

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 悠真が今、私のこと好きって――。

 彼は今、震えている。
 今にも泣きそうな、そんな表情をしている。

 全力で気持ちを伝えてくれているのが分かる。
 私も全力で、今の思いを伝えなきゃだよね?

「悠真、私ね、悠真と心が離れるの嫌で、ここ数日上手く話せないのがすごく悲しくて、そしてね……」

 言いたいことが山ほどあるのに、上手く言葉に出来ない。

 泣きたくもないのに。
 あぁ、もうダメ!

 次々と私の頬を伝っていき、手で拭っても拭ってもあふれてくる涙。感情と共にあふれてきて、もう止まらない。

「泣くなよ!」

 泣くのを我慢していたっぽい悠真も私につられたのか、私に負けないぐらいに涙を流す。彼は泣きながらカバンから真っ白なフェイスタオルを出して、彼自身の涙を拭くのよりも先に私の涙を拭ってくれた。

「ありがとう!」

 ずっとずっと、二人で泣いた。
 しばらく泣いた。

 溜まっていた涙をすべて出したと思う。
 落ち着いてきた時、彼は言った。

「結愛は、陸のことが……」

「えっ?」

「陸のことが、好きなんだよね?」

 私の瞳をじっと見つめてくる悠真。
 その目に吸い込まれちゃいそうなぐらいに強い目力で。

「好きだった……かな? うん、陸くんのことが、好きだった。いつも彼のことを考えていたし。でも好き “だった”。過去形なの」

「過去形? でも、あの時、抱き合っていたし……好き同士だから抱き合っていたのかなって」

「あ、あれね、なぐさめてもらってたの。原因はね、悠真だよ!」

「はっ? なんで俺?」

「桃音ちゃんと悠真がいっぱい仲良くなったら嫌だなって思ったの」

「えっ? なんで?」

「だって、悠真のこと……。ってか悠真こそ桃音ちゃんと付き合うとか言ってたのに、私に告白して、いいの?」

「いいの! あっ、良くないか。二股みたいだな。っていうか、なんで俺が原因?」

 悠真の目を見つめながら、私は言った。今回は目を合わせて、きちんと彼と向き合って。

「……あのね、悠真、私も悠真のことが、好き」 

 悠真の目が見開いている。
 口もぽかんと開いていて、彼の動きが完全に止まった。


「なんか、夢かな? とりあえず、結愛のこと、俺もなぐさめていい?」

「えっ? なぐさめる? もう涙は枯れて、出てこないよ」

「そんなの関係ない!」

 いきなり悠真が抱きしめてきた。
 抱きしめてきたと言うより、包んでくれた、かな?

 抱きしめられた感触。
 他の人たちとは、あきらかに違う。

 お母さんに抱きしめられた時は、嫌な気持ちが蒸発していって、安心した。

 陸くんには、二度抱きしめられていて、海で抱きしめられた時は、頭の中がすでに悠真でいっぱいだった。

 一度目は、私が陸くんを避けた時に学校で。
 その時は、私の心臓のドキドキがすごかった。すごかったけれど……。

 今はもっとドキドキがすごいし、安心する気持ちもあるし、なんだか胸がギュッとなって、また涙が出てきそうな切なさもあるし。

 色んな感情が入り乱れていて、詰まっている感じがする。

 その中で一番感じるのは、温かい気持ち。

 そして、他の人とあきらかに違うのは、悠真と私は今、ひとつになっている気がする。

 ――これが、本当の恋、なのかな?

 小さい頃の自分、まさか将来、悠真が恋の相手になるなんて、一ミリも思わなかったよね。

 悠真が一方的に私を力いっぱい両手で抱きしめてくれていたけれど、私も彼の後ろに手をまわして、両手でぎゅっとしてみた。すると悠真は私の後ろにまわしていた右手を私の頭に乗せて、優しくなでてくれた。

 ドキドキして、とても幸せ!

 身長差があるから私は見上げて悠真の顔を見た。

「ねぇ、夢じゃないね?」
「うん、結愛の感触、ちゃんとある。夢じゃない」

 私は自然に満開な笑顔になる。
 悠真も同じような笑顔を返してくれた。




 ふたりで海を眺める。

 眺めていた海は、いつの間にか空と一緒にオレンジ色に染まっていた。

「もう一泊したいって、陸に連絡したら、陸のばあちゃんに電話で連絡入れてくれたわ。ばあちゃん、大歓迎だって!」

「良かった! おばあちゃん、本当に優しいよね。もう、本当にすみませんって感じ」

 手を繋いで、水平線と並行にゆっくり歩く。

「海、オレンジ色に染まって、綺麗だね!」

 ここに来てから、ひとつひとつのことに私は感動していた。

「なっ! 透明だから、何色にも染まれるんだなきっと」

「えっ? ここの海の水って、今はオレンジ色に見えるけれど、基本青じゃないの?」

「透明だよ!」
「青色だよ!」

 こういう会話、珍しいな!
 言い合いをしているうちに、陸のおばあちゃんの家に着いた。

 陸くんのおばあちゃんは「おかえり!」って笑顔で言ってくれて、再び私たちを迎え入れてくれた。なんだか家族みたいで、嬉しい!

 ちなみに、ここの海の水の色をおばあちゃんに聞いてみたら「透明だよ!」って言っていた。

 悠真は青く見える理由をスマートフォンで調べだした。

 太陽の光は白く見えるけれど、実は七色の光が合わさっていて、青色が海の水の中を一番進み、他の色は海の水に吸収され……あとは底の深さとか沈んでいるものの色?などによって違う色に見え……。

 うーん……なんだか難しい!
 でもこういう話、好き。

 帰る時に海の水をすくえる場所に寄って、入れてみようって話になって、ふた付きの透明な空きビンをおばあちゃんからもらった。


 夜ご飯の時間。陸くんたちがいなくて、私と悠真とおばあちゃんの三人で食卓を囲んでご飯を食べている。ちょっと不思議な光景。まさかこんな感じになるなんてね。しかもバランスの良い和食のご飯まで準備してくれた。

「陸が拾った犬、結愛ちゃんが育ててくれてるんだってね」

 おばあちゃんが魚のホッケを口に入れながら言った。

「はい、そうです!」

 私は答えた。

「ありがとね」

「こちらこそ、陸くんには感謝しています! マロンって名前なんですけど毎日本当に可愛すぎて!」

「私の家で飼いたかったんだけどね、猫でいっぱいいっぱいで」

「そういえば、猫ちゃんの名前、なんていうんですか?」

「ミャーちゃんだよ」

 おばあちゃんが名前を教えてくれた瞬間、呼んだ?って顔して、ミャーちゃんはすたすたとこっちへやってきた。

 悠真がさりげなく後ずさりしている。

「そういえば、野良猫事件の時から猫が苦手だったんだっけ?」

「そう、猫怖い……」

 野良猫事件。それは小さい時、一緒に外を歩いているときに悠真が野良猫を触ろうとしたら引っ掻いてきて。その時、悠真はずっと泣いていたから、私は悠真が泣き止むまで、頭をずっとなでていた。

「悠真、猫苦手だもんね、猫みたいなのにね」
「えっ? 俺が猫?」
「うん、外見、似てるよ!」
「そっか?」
「ねぇ、おばあちゃん、猫って性格とか、特徴あったりします?」
「うーん。うちの猫の場合で、よその子は分からないけどね、天気によって気分が変わるかなぁ」
「天気によって?」
「うん。晴れの日は元気で、雨の日は眠そうかな? あと、曇りの日はちょっと怒りっぽい、かな」
「わぁ、悠真みたい!」

 私はニヤッとしながら悠真を見た。

「はっ? そうか?」

 そう、本人は気がついていないけれど、ミャーちゃんと全く同じかも。

 多分この変化は私しか気がついていないと思う。最近知ることが出来たんだけどね。

 でも、私が間違えて悠真に告白した日は、曇り空だったのに、彼は晴れの日みたいだったな! 快晴の日みたいに。

「あー、これは本人に言わないでおこう」
「何が?」
「なんでもない!」



「陸は、学校で元気にやっとるかい?」

 普段の陸くんを想像する。
 笑顔が多くて、優しくて……。

「元気ですよ!」

「それなら良かった。あの子、人の顔色や周りの幸せを優先して、自分の欲しいものややりたいことをよく諦めちゃってたからねぇ」

 そうだったんだ……。
 知らなかったな。

「唯一、サッカーは陸がどうしてもやりたかったことでね、誰よりも練習して、一番になるんだ、おばあちゃん試合頑張るから見に来てね!って、よく言っててね」

「陸くん、サッカーめちゃくちゃ上手いけれど、才能だけかと思ってたけれど、いっぱい練習しているんだね。すごい!」

「陸、今も部活で俺らより練習してるかも」

「なんか、やりたい事を必死に出来るって、うらやましいな。私、何やっても不器用だし、必死にやってもきっと上手くならなさそう」

 ちょっとしょんぼりした気持ちになった。

「必死までとは行かなくても、どんな小さなことでも良いんだよ。昨日よりも多めにあれをやってみようとか。例えば自分を昨日よりも大切にするとかね。これは私が陸に言いたいことだけど」

「どんな小さなことでも、か」



 夜、眠る時間。

 昨日までは桃音ちゃんと寝ていたけれど、ひとりだとさみしくなって、隣の部屋にいる悠真をこっそりふすまの隙間から覗いて見た。

 こっそり覗いたのに、布団の上でスマホをいじっていた悠真はすぐに気がつき、こっちを向く。

「こっそり覗いたのに、バレた?」

「うん。結愛が近くにくると反応するセンサーついてるから。結愛が俺の後ろを歩いていた時も、いつも気がついていたし」

「えっ? いつも?」

 というか、彼はこういうことを平然と言うタイプではないのに、変わったなぁ。

 私は、のそのそと悠真の近くに寄っていくと、くっつきたくなって、悠真の肩に私の頭を乗せた。

「ねぇ、一緒に寝てもいい?」

「えっ?」

 悠真の肩がビクンとなった。

「いや、一緒にって言っても、私のお布団隣の部屋から持ってきてってことだよ! 同じお布団には入らないよ!」

 絶対に今、大胆な人だなぁとか思われてそう。顔が火照る。

「ははは! じゃあ、俺が布団を運んできてあげる」

 悠真は笑いながら部屋を出ていった。
 部屋に残された私の顔は、まだ熱い。


 布団を並べて横になる。
 それだけでなんだかドキドキしてる。

 一緒に寝たのは、すごく小さい頃、悠真が家でご飯を食べ終えた時に、急にウトウトしだして、リビングで布団を並べてそのまま朝まで一緒に寝た時以来、かな?

 その時は、悠真が男の子だってこと、全く意識していなかったから、今とは似ている風景でも、全く違う世界。

 なんだか話をするのも緊張してきて、上手く話しかけられない。

「大丈夫? 寝れそう?」

 悠真が私のことを気にかけてくれた。

「うん。大丈夫! 悠真は?」

 本当は眠れなさそうだけれど大丈夫って答えた。

「余裕!」

「……ねぇ、悠真はこれやりたい!ってこと、あるの?」

「あるよ!」

 悠真は言い切った。

「あるんだ! 何?」

「ふふっ」

 彼はただ笑うだけで、教えてはくれなかった。これ以上聞くのも微妙かな?

「結愛は、何かないの?」

「うーん……なんかね、SNSで悪口とかいっぱい書いてるのを見て、私は逆にキラキラしたことをいっぱい載せたいなぁって考えたりはする、かな? 実はね、私の悪口を書かれたことがあってね、その時、見知らぬ人がキラキラした言葉でかばってくれて、私の心を救ってくれたの」
「へー、そうなんだ。てか、やればいいじゃん」
「でも私、アカウントは作ったんだけどね、文章書いたことないの」
「結愛の好きな絵とか写真とかだけでも載せれるし、画像だけでも載せてみれば?」
「そっか! それいいね!」

 悠真が背中を押してくれた。
 言葉で背中を押されるってこんな感じなんだな!

 不安でスタート地点にすら行けなかった自分が、スタート地点に立てた感じ。いや、それよりも数歩前に立てた感じかな?

「早速載せようかな! 海とかいっぱい撮ったし。でも今は眠たいから、帰ってからにしよっと! おやすみ!」

 心の中に明るい風がフワッと吹いてきた。私の大好きなバニラみたいな甘い香りと一緒に。


 朝、起きると布団は別々だったけど手を繋いで眠っていた。いつ繋いだのか、全く記憶にない。

 隣の悠真はまだぐっすりと眠っていた。

 普段はカッコイイけれど、眠った顔、なんか可愛いな。本当に猫みたい。

 手を離したら起きちゃうかもしれないから、ずっと手を繋いだままにして、私はもう一度目を閉じた。

 横でガサッと布団がこすれて、彼が動く音がする。目を開き隣を見ると、悠真とばっちり目があった。

「おはよう」

 私が微笑みながら言うと

「おはよう」

 と、朝が弱いはずなのに、悠真は満面の笑みで言葉を返してくれた。



 おばあちゃんの家を出る時間がやって来た。

「本当にお世話になりました!」
「また来てね! 陸にこれ、渡しといてもらえる? 後、ふたりでこれ、帰りにでも食べて!」

 陸くん用にと買っておいたけど、食べなくて、渡しそびれた、チーズと、私たちにもクッキーをくれた。ちなみに陸くんは、小さい頃からチーズが大好きらしい。

「ありがとうございました! 陸くんに渡しておきます!」

 おばあちゃんに挨拶をした。

 最終の一つ前の電車で帰ることにした。寄り道するし、最終電車だと、また乗り遅れちゃうかもしれないから。



「ビンに海の水入れられる場所、あるかなぁ?」
「遠回りになるけど、時間あるし、陸に連れていってもらった場所でいいんじゃない?」
「そだね!」

 陸くんに連れていってもらった場所に着いた。カバンの中をあさり、おばあちゃんがくれたビンを取り出す。

「よいしょ」

 ふわっとしたスカートが濡れてしまわないよう、気をつけながらしゃがむ。

「どうか、青い水でありますように!」

 願いながら入れてみたけれど、透明だった。

「あー!! 透明だったぁ」

「ほら、透明だろ?」

「青だと思ったのに! まぁ、いっか! 海の水、このまま持って帰って、このビン可愛くして、部屋に飾ろっと!」

 このビンを手のひらに持って、もう片方の手でスマートフォンを持ち、写真を撮った。

 大きく写ったビンの背景は海の全体図。

 それから、ビンをカバンに入れて、インカメラにして、悠真に画面に入ってもらう。私と悠真の、ツーショット写真も撮った。

 


 駅に着いた。

 今回は電車に乗るまで十五分ぐらい時間がある。
 ベンチに並んで座った。

 この駅で、電車に乗る直前、悠真に手を引っ張られたことを鮮明に思い出した。

 思い出すだけでニヤニヤしちゃう。

「どうした?」

 悠真が不思議そうに聞いてきた。

「いやぁ、すごかったよね」
「何が?」
「悠真がここで、私を引っ張って……」
「いやぁ、それ以上言わなくていいわ。なんか恥ずかしい。忘れて!」

 忘れるはずがないよ!
 あんなに必死な悠真を、忘れられるわけがない。


 電車に乗った。
 空いていたから、真ん中あたりの席を選んで並んで座る。

「桃音ちゃんと陸くんに、きちんと話をしないとなぁ」
「あぁ、そうだな」

 素直に気持ちを伝えよう。
 悠真とのことも。

 嫌われたくはないけれど、嫌われてもしょうがないことだよなぁ。

 
 外を眺める。

 電車に乗れる機会はなかなかないから、見える景色を堪能したくて、窓側に座らせて貰った。

 揺れる景色も、電車内の香りも、居心地が良すぎて、気がつけばふたり寄り添いながら眠っていた。

 到着のアナウンスが流れて、驚いて目を覚ます私たち。

「楽しかったね!」
「だな!」

 初めての旅を、終えた。


✩.*˚

 次の日。

 桃音ちゃんともきちんと話がしたいと思っていたのだけど、まずは陸くん。

 なんか、付き合うって話になっちゃったから、きちんと話そう!

 私は陸くんにLINEを送った。
 何度も文字を消して打ち直して、送る言葉を迷いながらやっと送信が押せた。

『陸くん、おばあちゃんの家、とても楽しかったです。誘ってくれて、ありがとう。明日の朝とか、直接会ってお話出来ませんか? おばあちゃんから渡して欲しいって頼まれたものもあるので』

 すぐに返事が来た。

『大丈夫だよ! マロンの散歩、一緒にする?』

『ありがとう! 朝八時くらいに公園にいきます!』

 付き合うって陸くんは言っていたけど、きっと悲しんでいた私のことを考えて言ってくれただけだよね、きっと。

 次の日、渡してと頼まれたチーズを持ち、マロンと一緒に、約束の時間に公園へ行った。

 すでに陸くんは来ていて、公園のブランコに乗っていた。

「結愛ちゃん! マロン! おはよう!」
「おはよう!」

 流れで隣のブランコに乗った。

「おばあちゃんが、陸くんに渡して欲しいってこれ!」
「おっ! これ大好きなチーズだ! 嬉しいな!」

 チーズの種類はよく分からないけれど、なんだかこの付近では売ってなくて、地域限定のチーズらしい。

「味見してみる?」

 箱を開けると、円形になっていて、六等分に分けられ、ひとつずつ包まれていた。

 口に入れると、とろける感じでほんのり甘い。味も好みの味。

「美味しい!」

 それからおばあちゃんの話で盛り上がった。



 のんびりしていたけど、悠真に「あんまり長い時間ふたりでいないでね」って言われてたんだった。

「あのね、陸くん。私ね、陸くんが冗談で付き合おうって言ってくれたのかもしれないんだけど……」
「冗談じゃないよ!」

 私の言葉をさえぎるように彼は言う。
 普段のおっとりした話し方じゃなく、強めで。

「……」
「僕、結愛ちゃんが好きだったんだ」

 陸くんが私を好き? 今、私は予想外の言葉を、直接彼から聞いた。でも私の心は揺れなかった。

 今の私は、悠真だけが好きだから。

「私ね、悠真ときちんと付き合うことにしたの」

 じっと陸くんの目を見つめて、私は言った。

「そっか……」

 陸くんは空を見上げた。

「うん」

 私は下を向いた。

「結愛ちゃんが幸せなら、それでいいよ。でもね、悠真が結愛ちゃんのことをまた泣かせたりしたら、悠真を許さないから。そして、結愛ちゃんを……」

 陸くんは本当に優しい。捨てられていた犬たちにも、おばあちゃんにも、そして私にも。

 もしもあの時、教室で、本当に陸くんに告白をしていたら、付き合って幸せだったのかな?って想像をしたけれど、その想像はすぐに消えていった。もう、悠真のことしか考えられなかったから。

 人の気持ちは、こんなにも変わってしまうんだね。
 まさか陸くんとこんな会話をするなんて思わなかったよ。

 陸くんは私のことを好きでいてくれて、しかもこんなに優しい言葉をくれて――。

 なんだか泣きそうになったけれど、私は泣くべき立場じゃない。

「陸くん、優しいね! 陸くんは周りを大切にする所が素敵だけど、もっと自分を大切にして、陸くん自信を幸せにしてね!」

「ありがとう結愛ちゃん。じゃあ、ワガママをふたつだけ聞いて?」

「何? 出来ることなら」

「ひとつは、これからも友達でいて欲しいのと――」

 いきなり抱きしめられた。

「悠真と結愛ちゃんのこと、きちんと応援出来るようになりたいから、最後にこうさせて!」

「うん」

 もう、ドキドキはしなかった。
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