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南部編-前半-
6.ナニカにな
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太陽光を照り返す水の中で浮いたり沈んだり掻き分けていく人たちを見て、エディスは立ち尽くしていた。
「なにやってんだ? あれ」
中央で生まれ育った為、人が水の中ではしゃいでいる理由が分からなかった。南は今でさえ暑いので、冷たくて気持ち良さそうだという気がしたけれど。
その背中に、そ――っと近づき「わっ!!」と大声の後、とんっと軽く背中を押される。まさかそんなことをされるとは思ってもいなかったエディスはバランスを崩し、見事に海の中へ落ちてしまった。
「わ――――ッ、エディス!! なにするんスかあっ!」
生まれてこのかた泳いだこともないエディスはがぼがぼと水の中でもがく。手で水面を叩き、足を蹴るが波もあって流されることで余計に頭が真っ白になっていった。
「えっ、ちょ、ちょっと! あれ溺れてるんじゃないかな!?」
ジェネアスの後ろから飛び出したリキッドが堤防から海に飛び込み、エディスの元まで泳いでいく。大丈夫かと声を掛けながら、エディスを後ろから羽交い絞めにして背泳ぎのまま岸まで連れていく。
「エディス! 大丈夫ッスか、エディス~!」
普段の戦闘でも必死になったことなど見たことがないエディスがもがき苦しんでいる様と、陸に上げられた彼の顔が青白いことにジェネアスは涙目になりながら駆けてきた。
「犯人は捕まえたッス、安心するッスよお」
「なにしやがんだよっ、この馬鹿!」
げほげほと咳き込む己の背を擦るリキッドが見ている方向を、エディスも薄ぼやけている視界の中で追う。すると、リスティーが男を二人連れてきているのが見えて小さく笑ってしまう。一人は肩に担がれ、もう一人は首根っこを押さえて引きづられていたからだ。
「さーて、どういう理由か。説明してもらうわよ!」
雄々しく放り出された男たちは仁王立ちになるリスティーと、唇を薄っすら紫に変えたエディスとを見返した。
「ご、ごめんっ。まさか泳げないと思わなかったんだ!」
わざとぶつかったわけじゃないと手を合わせるが、「あのねえ! 低いとはいえ、崖の上に座ってたのよ? どうやってぶつかるのよ」とリスティーが睨み付けると目線を逸らす。
「アンタも落ちたかったの?」
リスティーが青筋を立てて手の指を鳴らすと、げっと顔が緊張で強張った。ひとしきり咳き込んで呼吸が落ち着いたエディスは石の上に手を突き、腰を落ち着かせる。
「いいよリスティー、そんな怖がらせてやるな」
よくあることだとエディスが制止を促すと、リスティーは「だって。行けば?」と捕まえてきた男たちを見下ろした。
「こんないっぱいの水なんて見たの初めてだ」
そう言うとリスティーは目をまん丸にして「中央にはないの?」と首を傾げた。
「川はあるけど、ここまでの規模じゃねえからな」
「海がないなんて信じられない!」
荷物を崖上に置いてきた為、全員でぞろぞろと歩いていると、リスティーがエディスの隣に並んでくる。珍しそうにまじまじと顔を見つめられ、なんだと問う。
「暑くないの?」
「あっちぃよ、死にそう」
額を拭ってシャツの襟元を引っ張って扇ぐエディスを横目に、リスティーは爪先を赤く染めた指を口元に持っていった。
「溶けちゃいそう」
エディスは「は?」と口に出して、眉間に皺を寄せて「溶けるかよ」としかめっ面になる。
「だって氷みたいだから。こんな所にいたら溶けちゃいそうに見えるわよ」
言い切ったリスティーがおもむろに白いパーカーのジッパーを下す。すると、中に着ている下着のような服が丸見えになって、エディスは慌てて上半身ごと顔を逸らした。軍で共同生活を送る時に気にしたことなどないのに、まるで見てはいけないものに触れてしまったような気分になったのだ。
「だから、早く中央に帰れるようになるといいわね!」
誰も殺さないでと付け加えた彼女の顔を見る。真っ直ぐに見つめ返してくるリスティーに、エディスは口をパクパクと開く。
「……なによ、その変な顔は」
私が馬鹿だとでも思ってたの? と口を尖らせるリスティーに首を振る。
「だって、中央の人間が来る理由なんてそれしかないでしょ。成功した人はいないけどね」
からりと笑うリスティーの慣れた調子にエディスは呆気に取られ、リキッドは頭を抱えてしゃがみこんだ。
「アンタはなにがお望みで? 権力、富、名声……うちの父さん殺しても、なにも手に入んないわよ」
指を開いて言ったが、「汚名だけね」と拳を強く握り締める彼女にため息を吐く。
「俺は平和主義な方の軍人なんだけどな」
「平和主義の軍人がここに派遣されると思う?」
「それに関しちゃあ……理由は、反軍に家族を殺害されたってことだろうな」
リスティーはなにかを察したのか目を僅かに見開いたが、その後ろから顔を突き出してきたリキッドが「反軍は人を殺さない、守るためにある組織だ!」と手で制した。
「お前には昨日も言ったが、魔物退治の資金はどっから出てきてんだよ」
無償なんて普通に考えて無理だと口の端で嗤うと、リキッドは顔を真っ赤にして否定する。
「武器や遠征費用はどこから出されてんだよ。個人の出費? そんなことさせるような組織なんかあるかよ。反軍の活動って、結局は”仕事”として請け負ってんだろ」
「そんな、こと……最初は、そうだったかもしれないけど」
「我武者羅に突っ込んで行く後先考えないような奴は自己満足をしたいだけの馬鹿か、目立ちたがり屋だけだ」
淡々と言い切ったエディスの言葉にリキッドは俯き、こちらの調子を伺うような目線を送ってくる。
「反軍は資金集めのために君の家族を殺したって言いたいのかい?」
フィンティア家だったよねと言うリキッドにそうだと首を頷かせた。
「後で確かめたら屋敷の金が根こそぎ盗られていたからな」
「……お金だけじゃないんじゃないの?」
やけに明るいリスティーの声が青く爽快な空に広がっていく。
「そこにはなにかがあった、って。おじさんが言ってたのを聞いたことがあるの」
「なにかって、なんだい?」
そこまでは知らないわよと腰に手を当てたリスティーは、標的をリキッドからエディスへと変える。
「で、アンタは二週間もなにもしなかった。……本当に殺したいわけ? 遅すぎない?」
訊ねられて髪に手をやったエディスを見て、リスティーはふっと息を短く吐き出して笑った。
「煮え切らない奴は、こうよ!」
そう言って、リスティーは上着を脱ぎ捨てる。エディスに飛びついて背中から海に飛び降りた。
抵抗することも出来ず落ちたエディスは深く沈んだ後、浮き上がり、リスティーに対して叫ぼうとした。だが、上着を脱いで小さな布きれだけになった姿を見て顔を真っ赤にした。
戦慄く口で「馬鹿ッ、おまえ……そんな、」としどろもどろに言葉を紡ぎながら指を差す。綺麗なフォームで飛び込み、自分のところまで泳いできたリスティーに手を握られそうになると伸ばして逃げようとする。
「ねえ、エディス。ちょっと、こっち見なさいよ」
遂に摑まえられて脅すように低く声を出したリスティーに、思いっきり首を振るう。
「ねえ、なにかってアンタのこと?」
銀の髪に青い目――隠しようのない王家の特徴。南に来ても同じなのかとうんざりしたエディスが苦虫を噛み潰したような顔になると、リスティーは「深追いはしないわ」とあっさり諦める。
「あたしの知ってる情報をアンタにあげる」
握られた手に触れる指の力が強まり、思わず見た彼女は目を閉じていた。迷う心を振り払い、決心をつけたリスティーの口が「だから、」と開く。
「だから、ちゃんと見て、ここを。南を見て、南の人と接して」
あたしの好きな町をアンタにも好きになってほしいのと、誰よりも真っ直ぐに己の目を見てくるオレンジの瞳。かつて失った彼の色にも似たそれに、エディスは戸惑いに揺れる。首の後ろに手を当て、細く息を吐き出す。
「その情報による」
リスティーは大口を開けた後で眉を吊り上げ、「ケチ!!」と大声を出した。
「なにやってんだ? あれ」
中央で生まれ育った為、人が水の中ではしゃいでいる理由が分からなかった。南は今でさえ暑いので、冷たくて気持ち良さそうだという気がしたけれど。
その背中に、そ――っと近づき「わっ!!」と大声の後、とんっと軽く背中を押される。まさかそんなことをされるとは思ってもいなかったエディスはバランスを崩し、見事に海の中へ落ちてしまった。
「わ――――ッ、エディス!! なにするんスかあっ!」
生まれてこのかた泳いだこともないエディスはがぼがぼと水の中でもがく。手で水面を叩き、足を蹴るが波もあって流されることで余計に頭が真っ白になっていった。
「えっ、ちょ、ちょっと! あれ溺れてるんじゃないかな!?」
ジェネアスの後ろから飛び出したリキッドが堤防から海に飛び込み、エディスの元まで泳いでいく。大丈夫かと声を掛けながら、エディスを後ろから羽交い絞めにして背泳ぎのまま岸まで連れていく。
「エディス! 大丈夫ッスか、エディス~!」
普段の戦闘でも必死になったことなど見たことがないエディスがもがき苦しんでいる様と、陸に上げられた彼の顔が青白いことにジェネアスは涙目になりながら駆けてきた。
「犯人は捕まえたッス、安心するッスよお」
「なにしやがんだよっ、この馬鹿!」
げほげほと咳き込む己の背を擦るリキッドが見ている方向を、エディスも薄ぼやけている視界の中で追う。すると、リスティーが男を二人連れてきているのが見えて小さく笑ってしまう。一人は肩に担がれ、もう一人は首根っこを押さえて引きづられていたからだ。
「さーて、どういう理由か。説明してもらうわよ!」
雄々しく放り出された男たちは仁王立ちになるリスティーと、唇を薄っすら紫に変えたエディスとを見返した。
「ご、ごめんっ。まさか泳げないと思わなかったんだ!」
わざとぶつかったわけじゃないと手を合わせるが、「あのねえ! 低いとはいえ、崖の上に座ってたのよ? どうやってぶつかるのよ」とリスティーが睨み付けると目線を逸らす。
「アンタも落ちたかったの?」
リスティーが青筋を立てて手の指を鳴らすと、げっと顔が緊張で強張った。ひとしきり咳き込んで呼吸が落ち着いたエディスは石の上に手を突き、腰を落ち着かせる。
「いいよリスティー、そんな怖がらせてやるな」
よくあることだとエディスが制止を促すと、リスティーは「だって。行けば?」と捕まえてきた男たちを見下ろした。
「こんないっぱいの水なんて見たの初めてだ」
そう言うとリスティーは目をまん丸にして「中央にはないの?」と首を傾げた。
「川はあるけど、ここまでの規模じゃねえからな」
「海がないなんて信じられない!」
荷物を崖上に置いてきた為、全員でぞろぞろと歩いていると、リスティーがエディスの隣に並んでくる。珍しそうにまじまじと顔を見つめられ、なんだと問う。
「暑くないの?」
「あっちぃよ、死にそう」
額を拭ってシャツの襟元を引っ張って扇ぐエディスを横目に、リスティーは爪先を赤く染めた指を口元に持っていった。
「溶けちゃいそう」
エディスは「は?」と口に出して、眉間に皺を寄せて「溶けるかよ」としかめっ面になる。
「だって氷みたいだから。こんな所にいたら溶けちゃいそうに見えるわよ」
言い切ったリスティーがおもむろに白いパーカーのジッパーを下す。すると、中に着ている下着のような服が丸見えになって、エディスは慌てて上半身ごと顔を逸らした。軍で共同生活を送る時に気にしたことなどないのに、まるで見てはいけないものに触れてしまったような気分になったのだ。
「だから、早く中央に帰れるようになるといいわね!」
誰も殺さないでと付け加えた彼女の顔を見る。真っ直ぐに見つめ返してくるリスティーに、エディスは口をパクパクと開く。
「……なによ、その変な顔は」
私が馬鹿だとでも思ってたの? と口を尖らせるリスティーに首を振る。
「だって、中央の人間が来る理由なんてそれしかないでしょ。成功した人はいないけどね」
からりと笑うリスティーの慣れた調子にエディスは呆気に取られ、リキッドは頭を抱えてしゃがみこんだ。
「アンタはなにがお望みで? 権力、富、名声……うちの父さん殺しても、なにも手に入んないわよ」
指を開いて言ったが、「汚名だけね」と拳を強く握り締める彼女にため息を吐く。
「俺は平和主義な方の軍人なんだけどな」
「平和主義の軍人がここに派遣されると思う?」
「それに関しちゃあ……理由は、反軍に家族を殺害されたってことだろうな」
リスティーはなにかを察したのか目を僅かに見開いたが、その後ろから顔を突き出してきたリキッドが「反軍は人を殺さない、守るためにある組織だ!」と手で制した。
「お前には昨日も言ったが、魔物退治の資金はどっから出てきてんだよ」
無償なんて普通に考えて無理だと口の端で嗤うと、リキッドは顔を真っ赤にして否定する。
「武器や遠征費用はどこから出されてんだよ。個人の出費? そんなことさせるような組織なんかあるかよ。反軍の活動って、結局は”仕事”として請け負ってんだろ」
「そんな、こと……最初は、そうだったかもしれないけど」
「我武者羅に突っ込んで行く後先考えないような奴は自己満足をしたいだけの馬鹿か、目立ちたがり屋だけだ」
淡々と言い切ったエディスの言葉にリキッドは俯き、こちらの調子を伺うような目線を送ってくる。
「反軍は資金集めのために君の家族を殺したって言いたいのかい?」
フィンティア家だったよねと言うリキッドにそうだと首を頷かせた。
「後で確かめたら屋敷の金が根こそぎ盗られていたからな」
「……お金だけじゃないんじゃないの?」
やけに明るいリスティーの声が青く爽快な空に広がっていく。
「そこにはなにかがあった、って。おじさんが言ってたのを聞いたことがあるの」
「なにかって、なんだい?」
そこまでは知らないわよと腰に手を当てたリスティーは、標的をリキッドからエディスへと変える。
「で、アンタは二週間もなにもしなかった。……本当に殺したいわけ? 遅すぎない?」
訊ねられて髪に手をやったエディスを見て、リスティーはふっと息を短く吐き出して笑った。
「煮え切らない奴は、こうよ!」
そう言って、リスティーは上着を脱ぎ捨てる。エディスに飛びついて背中から海に飛び降りた。
抵抗することも出来ず落ちたエディスは深く沈んだ後、浮き上がり、リスティーに対して叫ぼうとした。だが、上着を脱いで小さな布きれだけになった姿を見て顔を真っ赤にした。
戦慄く口で「馬鹿ッ、おまえ……そんな、」としどろもどろに言葉を紡ぎながら指を差す。綺麗なフォームで飛び込み、自分のところまで泳いできたリスティーに手を握られそうになると伸ばして逃げようとする。
「ねえ、エディス。ちょっと、こっち見なさいよ」
遂に摑まえられて脅すように低く声を出したリスティーに、思いっきり首を振るう。
「ねえ、なにかってアンタのこと?」
銀の髪に青い目――隠しようのない王家の特徴。南に来ても同じなのかとうんざりしたエディスが苦虫を噛み潰したような顔になると、リスティーは「深追いはしないわ」とあっさり諦める。
「あたしの知ってる情報をアンタにあげる」
握られた手に触れる指の力が強まり、思わず見た彼女は目を閉じていた。迷う心を振り払い、決心をつけたリスティーの口が「だから、」と開く。
「だから、ちゃんと見て、ここを。南を見て、南の人と接して」
あたしの好きな町をアンタにも好きになってほしいのと、誰よりも真っ直ぐに己の目を見てくるオレンジの瞳。かつて失った彼の色にも似たそれに、エディスは戸惑いに揺れる。首の後ろに手を当て、細く息を吐き出す。
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