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学園要塞ー前編ー
4.黒豹と蛇
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「無理だね、私が辞職させられてしまう」
「なら、せめてどんな人なのか教えてください」
王子の頼みであろうが取り告げないよと苦笑いを浮かべる学長に対し、レウは執務机に両手を突いた。
「いやあ、それが……いつもドーリーが使いとして寄越されるから顔を見たことがないんだ」
はははと笑う学長に、レウはため息をつく。
(想定以上に警戒心が強い、厄介だな)
ただの臆病者であればいいが、ここまで徹底しているなら現領主は意図して身を隠している確信犯だ。見つけるのは至難の業かもしれないなとレウはため息を吐く。
学長もレウのことが不憫になってきたのか「どうして捜しているんだね」と訊ねてきた。
「王子の命令なんです。なんでも、領主に身の危険が迫っているから護れとのことでして……」
こう言えば教えてくれないかと期待したが、学長はそうかと頷いてぱっと笑顔になる。
「私からドーリーを通じて言っておこう!」
うちの卒業生には優秀な軍人も多いからな~、応援に来てもらおうかな! と領主へのごますりに使おうとしている学長に、レウの目が据わる。
(それ、アンタの手柄にしたいだけじゃないのか)
クソ狸オヤジめと内心で吐き捨てて、退出を願うとおざなりに体に気を付けるようにと返ってくる。
「あっ、待ってくれ!」
「……はあ、なんですか」
「王子は一緒じゃないのか?」
君が仕えている方の王子は軍事に強いという噂を聞いたんだが。そう顔に書いてある学長に、レウはにこりと微笑む。
「ここには来ませんよ」
母校であるガレッドバッドは軍事学校だ。
それはもうエディスとのパイプは喉から手が出る程に欲しいだろう。
なにせ、己の主は王子でありながら叩き上げの軍人で、しかも現役の少佐なのだから。
「魔法に興味があるとか」
「無理ですよ、あの人王立博物館の館長と論議するくらい詳しいんで」
中央魔法美術館でも気に入られていたと言うと、尚更興味が出てきたと学長や魔法学の教員の目がギラギラと欲張った光を灯し始める。
「とにかく! ……失礼します」
これ以上エディスに興味を持たれて堪るかと、レウは追いすがる教員を払いながら歩いていく。
この調子ではエディス本人はもっと凄いことになっているのではと、彼の元へ行きたい気持ちが溢れてきそうになり歯噛みする。
果たしてひ弱で世間知らずのロイで壁役が務まるのか――。
そこまで考えて、頭に手を当ててしゃがみ込む。
まただ、またエディスの傍にいる男に妬いてしまった。頭の中が占拠されているが、心配が尽きない人なのだ。
自分の姿を見た者を強制的に好きにさせる魔法が常に作動している上に、それがなくてもあの容姿だ。心配なんてしてもし足りない。
しかも抱いてしまったから、あれに色気まで出てきたとしたら余計に危険すぎる。
「……なにもないといいんだが」
体育で学園内を走っているのか、訓練着の学生とすれ違う。
エディスの専属騎士として支給された白い軍服ではなく、「黒杯の軍」の一般軍服を着て来たので注目を浴びることはない。
卒業生が警備や特別講師として招かれることがあるからだ。
「わっ、すみませーん!」
たまに角から飛び出してくる生徒の邪魔にならないようにと道の端に寄ったレウは、辺りを見る。
坂道の両側に並んでいる石造りの建物は学生寮だ。
エドワードが八歳で入学してすぐ寮長に就任した”夜帳の鷹寮”、ギジアが寮長をしていた”金獅子寮”の紋章が双璧のように、今も入口に輝かしく並んでいる。
(あの二寮はなにかといえば争ってたな)
アーチ状の黒い鉄扉が目立つ、三階建ての建物が並ぶ長い石畳を歩いていると学生時代が懐かしくなってきた。
堅苦しい貴族たちと過ごすのが嫌だと”黒の大烏寮”に入ったら――フェリオネルの兄貴が三年目から寮長になって、なにかとうるさかったことを思い出して額に手を押し当てる。
エディスがこの学園に通っていたらどんな人物になっただろうか。
エディスの父が卒業して以来ずっと閉鎖されていた”月のドラゴン寮”の寮長がいる世代になれていたかもしれないなと、レウはくすりと笑った。
だが、甲高い悲鳴が耳に入ってきた途端に引っ込めて駆け出す。
ボステルクは高い塀や塔で外と隔離され、空もドーム状に防御シールドが張られている。
だが、それでも魔物は忍びこんでくるのだ。その為に警備のドーリーが日夜要塞内をうろつき回っているし、四半期に一度は黒杯の軍も潜んでいる魔物の一斉討伐に派遣される。
貴族の子女が通う学校だ、なにかが起こってからでは不味い。
レウは全力で走り、悲鳴が聞こえた地点に駆けつけた。
(――なんだ!?)
だが、そこにいたのは普通の魔物ではなかった。
以上に発達した筋肉の狼型や、胴体と頭とで別個体だったりと、五体ともいずれもどこかを人間の手によって弄られている。
(これが魔獣か……!)
エディスとリスティーが嫌悪を露わに見ていた、軍兵器開発部のハガイという男の実験写真に姿が近い。
レウは十五歳の時に実戦投入されてから長年軍人を務めている。すぐに呆けていた意識を取り戻し、生徒と魔物との間にシールドを張った。
「逃げろ!」
叫ぶと、生徒は互いを助け合って起き上がり、レウに礼を叫んで走っていく。
(騒ぎを起こすなとは言われたが……騒ぎを鎮圧させるのは許されるだろ)
ボステルクに入る時に剣は没収されてしまったので、徒手かあまり得意ではない攻撃魔法を使うか。
とにかく、この程度の魔獣ならエディスから授かったガンドレッドは使わなくて済みそうだ。
そう思って近づこうとした時だった。
反対側の屋根から飛び降りて来た人物が、魔物の頭を踏み潰す。次いで手前にいた魔物の脚を引きずり倒し、首をへし折った。
長いコートの裾をはためかせて半回転した男のボディーブローが、魚の頭部と馬の胴体が繋ぎ合わされた魔物の胴に入る。
口から吐き出された溶解液を避け、今度はつなぎ目を狙って手刀を叩き込んだ。
もんどりうった魔物が倒れ、泡を吹く。
男は「なるほど」と呟いて己の手を見下ろし、次の魔物へと組み付いてレウが援護する隙もないまま次々と駆除していった。
すべて始末し終えると、ふうと息を吐く。
時間にして十分も掛かっていないだろう。驚異的な制圧力だ。
薄手の黒いテールコートを脱ぎながらこちらに歩いてくる男の青い目と視線が合い、盗み見していた形になったレウの心臓が跳ねた。
「……こんにちは。見学者かな?」
白いシャツと紺のベストだけという格好になった男は、こちらに流し目を送ってくる。
「本命が来るようだ。預かっていてくれるかい?」
薄い唇から艶めいた声に、レウは思わず腕を差し出してしまった。
渡されたコートから伝わってくる体温に、(よかった、人だ……)という間の抜けた感想が思い浮かんだ。精巧に作られたドーリーかと疑ったのだ。
「そこに隠れていなさい。君が出るまでもないからね」
そう言って通路に出ていった男は、腕を組んで顎を上げる。
仁王立ちになった彼を見て、まだ魔物が? と構えていると、坂の上から二人下ってきた。
「あーあァ、ひっでえなァ」
殺すなら駅のヤツみたいに綺麗な切り口にしてくれよなァ……と、黒い塵になりかけている魔物に触った黒髪の男に、レウは前のめりになる。
(アイツ、金獅子寮の問題児だった奴だよな……?)
喧嘩を売って再起不能にされた上級生が寮に何人もいたので、よく覚えている。
狼のようにざんばらに襟足を伸ばし、魔物による爪痕を二本左目に残したグレーの目。
丸太のように分厚い胴と腕にはどっしりと筋肉がついていて、太ももまでの黒のブーツは底が鉄素材で出来ている。この脚から繰り出される蹴りが強烈らしく、一度ゲロを吐かされたと二番目の兄貴が憤慨していた。
「君は……うちの元生徒だよね。名前は確か――そう、マディ・マーガンくんだ。生体魔法学や化学実験に力を入れているパスパディ校の卒業生で合っているかな」
その隣で影のように立つ男は見たことがなかった。
日に焼けて褪せた肌と、足首までの長さのシャツにターバンという服装から、西部の出身者であることが知れる。
無造作に伸びた濃い紫色の髪の隙間から覗く灰色の目には、蛇のような陰湿さがあった。
「そっちの君は西部警戒地区”カデラリア”の辺境伯爵だよね。名前はクレマ・ラウヴェル。昨年の功労受賞者に会えるだなんて光栄だよ」
握手してもらえるかい、とにこやかな様子で言う男はその割に歩み寄りもしないし腕も組んだままだ。
剣呑な様子にマディがにやけた笑みを顔に浮かべた。
「へえ、なんてことない成績だった奴まで覚えてるなんてなァ。アンタ、何者だ」
目を僅かに大きく見開いて見下ろしてくるマディの鋭い眼光にも怯まず、薄い笑いで見つめ返す。
「面白い冗談を言うな。俺はパスパディ校を閉校の危機に陥れた君とは比べ物にならないくらいには凡人だよ」
両手を広げてははっと笑う自称凡人に、離れた所に立つ男二人は目配せをした。
「凡人……?」
そんなはずがないだろうとあからさまな視線を受けた男は、心外だなと肩を竦める。
「こんなに誠実に向き合っているのに疑われるだなんて、悲しいな。俺がなんの仕事をしているか、見れば分からないかい?」
二人は顔を見合わせ、首を傾げて怪訝そうな顔をした。分かるわけないよな? と言いたげな風だ。
答えが出なさそうな雰囲気を感じとった男はため息をついて、やれやれと手を首を振る。
「用務員さんさ」と腰に手を当てた。
「なら、せめてどんな人なのか教えてください」
王子の頼みであろうが取り告げないよと苦笑いを浮かべる学長に対し、レウは執務机に両手を突いた。
「いやあ、それが……いつもドーリーが使いとして寄越されるから顔を見たことがないんだ」
はははと笑う学長に、レウはため息をつく。
(想定以上に警戒心が強い、厄介だな)
ただの臆病者であればいいが、ここまで徹底しているなら現領主は意図して身を隠している確信犯だ。見つけるのは至難の業かもしれないなとレウはため息を吐く。
学長もレウのことが不憫になってきたのか「どうして捜しているんだね」と訊ねてきた。
「王子の命令なんです。なんでも、領主に身の危険が迫っているから護れとのことでして……」
こう言えば教えてくれないかと期待したが、学長はそうかと頷いてぱっと笑顔になる。
「私からドーリーを通じて言っておこう!」
うちの卒業生には優秀な軍人も多いからな~、応援に来てもらおうかな! と領主へのごますりに使おうとしている学長に、レウの目が据わる。
(それ、アンタの手柄にしたいだけじゃないのか)
クソ狸オヤジめと内心で吐き捨てて、退出を願うとおざなりに体に気を付けるようにと返ってくる。
「あっ、待ってくれ!」
「……はあ、なんですか」
「王子は一緒じゃないのか?」
君が仕えている方の王子は軍事に強いという噂を聞いたんだが。そう顔に書いてある学長に、レウはにこりと微笑む。
「ここには来ませんよ」
母校であるガレッドバッドは軍事学校だ。
それはもうエディスとのパイプは喉から手が出る程に欲しいだろう。
なにせ、己の主は王子でありながら叩き上げの軍人で、しかも現役の少佐なのだから。
「魔法に興味があるとか」
「無理ですよ、あの人王立博物館の館長と論議するくらい詳しいんで」
中央魔法美術館でも気に入られていたと言うと、尚更興味が出てきたと学長や魔法学の教員の目がギラギラと欲張った光を灯し始める。
「とにかく! ……失礼します」
これ以上エディスに興味を持たれて堪るかと、レウは追いすがる教員を払いながら歩いていく。
この調子ではエディス本人はもっと凄いことになっているのではと、彼の元へ行きたい気持ちが溢れてきそうになり歯噛みする。
果たしてひ弱で世間知らずのロイで壁役が務まるのか――。
そこまで考えて、頭に手を当ててしゃがみ込む。
まただ、またエディスの傍にいる男に妬いてしまった。頭の中が占拠されているが、心配が尽きない人なのだ。
自分の姿を見た者を強制的に好きにさせる魔法が常に作動している上に、それがなくてもあの容姿だ。心配なんてしてもし足りない。
しかも抱いてしまったから、あれに色気まで出てきたとしたら余計に危険すぎる。
「……なにもないといいんだが」
体育で学園内を走っているのか、訓練着の学生とすれ違う。
エディスの専属騎士として支給された白い軍服ではなく、「黒杯の軍」の一般軍服を着て来たので注目を浴びることはない。
卒業生が警備や特別講師として招かれることがあるからだ。
「わっ、すみませーん!」
たまに角から飛び出してくる生徒の邪魔にならないようにと道の端に寄ったレウは、辺りを見る。
坂道の両側に並んでいる石造りの建物は学生寮だ。
エドワードが八歳で入学してすぐ寮長に就任した”夜帳の鷹寮”、ギジアが寮長をしていた”金獅子寮”の紋章が双璧のように、今も入口に輝かしく並んでいる。
(あの二寮はなにかといえば争ってたな)
アーチ状の黒い鉄扉が目立つ、三階建ての建物が並ぶ長い石畳を歩いていると学生時代が懐かしくなってきた。
堅苦しい貴族たちと過ごすのが嫌だと”黒の大烏寮”に入ったら――フェリオネルの兄貴が三年目から寮長になって、なにかとうるさかったことを思い出して額に手を押し当てる。
エディスがこの学園に通っていたらどんな人物になっただろうか。
エディスの父が卒業して以来ずっと閉鎖されていた”月のドラゴン寮”の寮長がいる世代になれていたかもしれないなと、レウはくすりと笑った。
だが、甲高い悲鳴が耳に入ってきた途端に引っ込めて駆け出す。
ボステルクは高い塀や塔で外と隔離され、空もドーム状に防御シールドが張られている。
だが、それでも魔物は忍びこんでくるのだ。その為に警備のドーリーが日夜要塞内をうろつき回っているし、四半期に一度は黒杯の軍も潜んでいる魔物の一斉討伐に派遣される。
貴族の子女が通う学校だ、なにかが起こってからでは不味い。
レウは全力で走り、悲鳴が聞こえた地点に駆けつけた。
(――なんだ!?)
だが、そこにいたのは普通の魔物ではなかった。
以上に発達した筋肉の狼型や、胴体と頭とで別個体だったりと、五体ともいずれもどこかを人間の手によって弄られている。
(これが魔獣か……!)
エディスとリスティーが嫌悪を露わに見ていた、軍兵器開発部のハガイという男の実験写真に姿が近い。
レウは十五歳の時に実戦投入されてから長年軍人を務めている。すぐに呆けていた意識を取り戻し、生徒と魔物との間にシールドを張った。
「逃げろ!」
叫ぶと、生徒は互いを助け合って起き上がり、レウに礼を叫んで走っていく。
(騒ぎを起こすなとは言われたが……騒ぎを鎮圧させるのは許されるだろ)
ボステルクに入る時に剣は没収されてしまったので、徒手かあまり得意ではない攻撃魔法を使うか。
とにかく、この程度の魔獣ならエディスから授かったガンドレッドは使わなくて済みそうだ。
そう思って近づこうとした時だった。
反対側の屋根から飛び降りて来た人物が、魔物の頭を踏み潰す。次いで手前にいた魔物の脚を引きずり倒し、首をへし折った。
長いコートの裾をはためかせて半回転した男のボディーブローが、魚の頭部と馬の胴体が繋ぎ合わされた魔物の胴に入る。
口から吐き出された溶解液を避け、今度はつなぎ目を狙って手刀を叩き込んだ。
もんどりうった魔物が倒れ、泡を吹く。
男は「なるほど」と呟いて己の手を見下ろし、次の魔物へと組み付いてレウが援護する隙もないまま次々と駆除していった。
すべて始末し終えると、ふうと息を吐く。
時間にして十分も掛かっていないだろう。驚異的な制圧力だ。
薄手の黒いテールコートを脱ぎながらこちらに歩いてくる男の青い目と視線が合い、盗み見していた形になったレウの心臓が跳ねた。
「……こんにちは。見学者かな?」
白いシャツと紺のベストだけという格好になった男は、こちらに流し目を送ってくる。
「本命が来るようだ。預かっていてくれるかい?」
薄い唇から艶めいた声に、レウは思わず腕を差し出してしまった。
渡されたコートから伝わってくる体温に、(よかった、人だ……)という間の抜けた感想が思い浮かんだ。精巧に作られたドーリーかと疑ったのだ。
「そこに隠れていなさい。君が出るまでもないからね」
そう言って通路に出ていった男は、腕を組んで顎を上げる。
仁王立ちになった彼を見て、まだ魔物が? と構えていると、坂の上から二人下ってきた。
「あーあァ、ひっでえなァ」
殺すなら駅のヤツみたいに綺麗な切り口にしてくれよなァ……と、黒い塵になりかけている魔物に触った黒髪の男に、レウは前のめりになる。
(アイツ、金獅子寮の問題児だった奴だよな……?)
喧嘩を売って再起不能にされた上級生が寮に何人もいたので、よく覚えている。
狼のようにざんばらに襟足を伸ばし、魔物による爪痕を二本左目に残したグレーの目。
丸太のように分厚い胴と腕にはどっしりと筋肉がついていて、太ももまでの黒のブーツは底が鉄素材で出来ている。この脚から繰り出される蹴りが強烈らしく、一度ゲロを吐かされたと二番目の兄貴が憤慨していた。
「君は……うちの元生徒だよね。名前は確か――そう、マディ・マーガンくんだ。生体魔法学や化学実験に力を入れているパスパディ校の卒業生で合っているかな」
その隣で影のように立つ男は見たことがなかった。
日に焼けて褪せた肌と、足首までの長さのシャツにターバンという服装から、西部の出身者であることが知れる。
無造作に伸びた濃い紫色の髪の隙間から覗く灰色の目には、蛇のような陰湿さがあった。
「そっちの君は西部警戒地区”カデラリア”の辺境伯爵だよね。名前はクレマ・ラウヴェル。昨年の功労受賞者に会えるだなんて光栄だよ」
握手してもらえるかい、とにこやかな様子で言う男はその割に歩み寄りもしないし腕も組んだままだ。
剣呑な様子にマディがにやけた笑みを顔に浮かべた。
「へえ、なんてことない成績だった奴まで覚えてるなんてなァ。アンタ、何者だ」
目を僅かに大きく見開いて見下ろしてくるマディの鋭い眼光にも怯まず、薄い笑いで見つめ返す。
「面白い冗談を言うな。俺はパスパディ校を閉校の危機に陥れた君とは比べ物にならないくらいには凡人だよ」
両手を広げてははっと笑う自称凡人に、離れた所に立つ男二人は目配せをした。
「凡人……?」
そんなはずがないだろうとあからさまな視線を受けた男は、心外だなと肩を竦める。
「こんなに誠実に向き合っているのに疑われるだなんて、悲しいな。俺がなんの仕事をしているか、見れば分からないかい?」
二人は顔を見合わせ、首を傾げて怪訝そうな顔をした。分かるわけないよな? と言いたげな風だ。
答えが出なさそうな雰囲気を感じとった男はため息をついて、やれやれと手を首を振る。
「用務員さんさ」と腰に手を当てた。
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