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本編
4.王女と国王の婚儀と苛立つ側妃
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クラウン王国の〈黄金宮殿〉内の大聖堂。
厳かな雰囲気の中、共に居並ぶ国王カルロスと王女アリーヤは大司教の祈りのもとに沈黙を誓いを交わし、滞りなく婚儀を終える。
祝福を告げる鐘がクラウン王国中へと鳴り響く。
少し前。
婚儀を挙げる国王カルロスの表情は柔らかく、喜びに満ち溢れている。自分よりも小柄で愛らしい王女アリーヤを見つめ、豊かな濡羽色の髪にさえ魅せられる国王カルロスがいる。
「おまえの全てが美しい……」
国王カルロスはうっとりと告げる。
「そなたは誠に愛らしい、余のアリーヤ」
そして王女アリーヤの濡羽色の髪へと指を滑らせる国王カルロス。そのまま彼女のベールを捲り上げ、間髪入れずに口付けを落とす。
唖然とする王女アリーヤの潤い豊かな唇を幾度も味わう不埒な国王カルロス。
「そなたは唇さえも甘い。可愛いアリーヤ」
誓いの宣誓はしても誓いの口付けはない。
純真無垢な王女アリーヤは国王カルロスに翻弄される。
「……っ?!」
驚く王女アリーヤは国王カルロスの意図がわからず、身動ぐ。だが、国王カルロスは王女アリーヤの腰を引き寄せ、しっかりと傍らに寄り添わせる。
美しい微笑は湛えたまま、うっとりと王女アリーヤを見つめる国王カルロスの眼差しは優しい。
(どうしてそのような眼差しで私を見つめるの……)
王女アリーヤに、国王カルロスの心がわかるはずもない。
◇
愛など求めない政略結婚。
寵愛する側妃ベリンダさえいる国王カルロス。
王女アリーヤを気遣う必要はない。
「王妃」とはいえ、ただのお飾りでしかないことは重々承知している王女アリーヤ。
一方、これがまさかの初恋の国王カルロス。
王女アリーヤに一瞬にして心を奪われた国王カルロス。想いが少々強過ぎるせいで拗らせ、やがて歪んだ愛情を抱くようになる。そして王妃アリーヤを孤立させることにも繋がり、周囲を誤解させることにも発展。
深過ぎる情愛は心を病ませるほどの強い執着へ。
そうとは知らない王女アリーヤは、婚儀を終えたにもかかわらず、ずっと手を握り締めたまま離さない国王カルロスに不安を抱く。
(寵妃様がいる国王陛下なら、〈初夜の儀〉で私を求めたりはしないわよね……)
危惧する王女アリーヤ。
輿入れする前には、一応の房事の知識を教示される王女アリーヤ。
「全てを国王陛下にお任せしなさい」
そう言われているだけ。
実際のところは男女の目合いの何たるかを詳しくは知らないのが現状。
だからこそ不安な王妃アリーヤ。
◇
国王カルロスと王女アリーヤとの婚儀を冷めた眼差しで見つめていたのは側妃ベリンダ。
「なんて腹立たしいの……!」
苛立たしげに顔を歪める場面も。
まだうら若き乙女の頃に、クラウン王家の“しきたり”を学ぶ意味でも早々に〈後宮〉へと入宮したベリンダ嬢。
「もう少し自由を謳歌したいわ」
その思いから『立后』には断りを入れている。全ては国王カルロスからの絶対的な寵愛を信じて疑わないベリンダ嬢には、焦る必要もなかったからだ。
その余裕こそが仇となるとは、この時のベリンダ嬢は思わない。
苦虫を噛み潰したような顔の側妃ベリンダ。
対し、王妃となる王女アリーヤが得意げかといえばそうでもない。ベールで覆われた顔の表情は浮かない。
今宵の〈初夜の儀〉への不安は拭えないでいる王女アリーヤ。その時が近付くことに恐怖すら覚える。
ーーー怖い!
心が訴える。
愛してもいない相手を受け入れることは、どうあってもできない王女アリーヤの心は晴れない。
厳かな雰囲気の中、共に居並ぶ国王カルロスと王女アリーヤは大司教の祈りのもとに沈黙を誓いを交わし、滞りなく婚儀を終える。
祝福を告げる鐘がクラウン王国中へと鳴り響く。
少し前。
婚儀を挙げる国王カルロスの表情は柔らかく、喜びに満ち溢れている。自分よりも小柄で愛らしい王女アリーヤを見つめ、豊かな濡羽色の髪にさえ魅せられる国王カルロスがいる。
「おまえの全てが美しい……」
国王カルロスはうっとりと告げる。
「そなたは誠に愛らしい、余のアリーヤ」
そして王女アリーヤの濡羽色の髪へと指を滑らせる国王カルロス。そのまま彼女のベールを捲り上げ、間髪入れずに口付けを落とす。
唖然とする王女アリーヤの潤い豊かな唇を幾度も味わう不埒な国王カルロス。
「そなたは唇さえも甘い。可愛いアリーヤ」
誓いの宣誓はしても誓いの口付けはない。
純真無垢な王女アリーヤは国王カルロスに翻弄される。
「……っ?!」
驚く王女アリーヤは国王カルロスの意図がわからず、身動ぐ。だが、国王カルロスは王女アリーヤの腰を引き寄せ、しっかりと傍らに寄り添わせる。
美しい微笑は湛えたまま、うっとりと王女アリーヤを見つめる国王カルロスの眼差しは優しい。
(どうしてそのような眼差しで私を見つめるの……)
王女アリーヤに、国王カルロスの心がわかるはずもない。
◇
愛など求めない政略結婚。
寵愛する側妃ベリンダさえいる国王カルロス。
王女アリーヤを気遣う必要はない。
「王妃」とはいえ、ただのお飾りでしかないことは重々承知している王女アリーヤ。
一方、これがまさかの初恋の国王カルロス。
王女アリーヤに一瞬にして心を奪われた国王カルロス。想いが少々強過ぎるせいで拗らせ、やがて歪んだ愛情を抱くようになる。そして王妃アリーヤを孤立させることにも繋がり、周囲を誤解させることにも発展。
深過ぎる情愛は心を病ませるほどの強い執着へ。
そうとは知らない王女アリーヤは、婚儀を終えたにもかかわらず、ずっと手を握り締めたまま離さない国王カルロスに不安を抱く。
(寵妃様がいる国王陛下なら、〈初夜の儀〉で私を求めたりはしないわよね……)
危惧する王女アリーヤ。
輿入れする前には、一応の房事の知識を教示される王女アリーヤ。
「全てを国王陛下にお任せしなさい」
そう言われているだけ。
実際のところは男女の目合いの何たるかを詳しくは知らないのが現状。
だからこそ不安な王妃アリーヤ。
◇
国王カルロスと王女アリーヤとの婚儀を冷めた眼差しで見つめていたのは側妃ベリンダ。
「なんて腹立たしいの……!」
苛立たしげに顔を歪める場面も。
まだうら若き乙女の頃に、クラウン王家の“しきたり”を学ぶ意味でも早々に〈後宮〉へと入宮したベリンダ嬢。
「もう少し自由を謳歌したいわ」
その思いから『立后』には断りを入れている。全ては国王カルロスからの絶対的な寵愛を信じて疑わないベリンダ嬢には、焦る必要もなかったからだ。
その余裕こそが仇となるとは、この時のベリンダ嬢は思わない。
苦虫を噛み潰したような顔の側妃ベリンダ。
対し、王妃となる王女アリーヤが得意げかといえばそうでもない。ベールで覆われた顔の表情は浮かない。
今宵の〈初夜の儀〉への不安は拭えないでいる王女アリーヤ。その時が近付くことに恐怖すら覚える。
ーーー怖い!
心が訴える。
愛してもいない相手を受け入れることは、どうあってもできない王女アリーヤの心は晴れない。
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