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海の王国編
30.血よりも濃いものと妃の願い
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「良いよ。逢いに行こう」
そう告げる王ディランの表情は柔らかい。
「ディラン……貴方は何でもお見通しなのね?」
アリーヤ妃は外界へと行きたい……とは告げたが、「逢いたい人がいる」とは一言も告げてはいない。
「愛するアリーヤのことなら全てお見通しだよ。今日まで一度も外界へ行きたいとは言わなかった君だ。それが今になって言い出したことには何か理由があるからだろう」
そして王ディランはハッキリと告げる。
「君はずっと忘れていないんだね? 彼のことを……」
「ディラン……私の心の片隅には、ずっと忘れられないあの子がいるの。幸せでいるのか……」
切なげに零すアリーヤ妃。
「私が唯一家族と呼べるのは大切な義弟ジェームスだけなの。愛するあの子だけは……どうしても過去には出来ない……」
「血は水よりも濃いか……我ら眷属と同じで君らに限ってもそれが当てはまるんだろうね」
「……でも、それは義弟ジェームスに限ってのことだわ」
「皮肉だね。血の繋がりがあっても子を見放す親もいれば、半分しか血の繋がらなくても互いを想い合う。君ら義姉弟のように……」
「ディラン……血の繋がりも大切かもしれないけど、私には互いを想い合う気持ちこそが血よりも濃く、深い絆をもたらすとも思えるの」
「そうだね、アリーヤ。まさに君の言う通りだ。でも、アリーヤは実の我が子を深く情愛しているだろう? 我ら眷属にとっては血の繋がりは海よりも深い。まさに人によりけりだね」
愛するアリーヤ妃を引き寄せる王ディランは、アリーヤ妃の下腹部に優しく触れる。少し膨らみ始めた彼女の腹を慈しむように、優しく優しく撫で上げる。
王ディランを見上げるアリーヤ妃には笑顔が溢れる。
「ふふっ、次は貴方に似た子かもしれないわ」
数年前には、最初の御子である幼な姫を産み落としたアリーヤ妃。母アリーヤに似た濡羽色の髪を纏う美しい幼な姫は、健やかに恙なく育っている。
さらに次の御子を身籠り、王ディランへと新たな家族を与えようとしてくれているアリーヤ妃を愛さずにはいられない王ディラン。
「アリーヤ、君は何よりも尊い……」
「ディラン……貴方のおかげで不遇であった過去を思い出すこともない。今の私は貴方の愛情に包まれてとても幸せなの」
「当然だ。俺がこれ以上ないほどに愛しているからね」
アリーヤ妃の頬へと口付けを落とす王ディラン。
「ありがとう、ディラン……」
花が綻ぶように美しい笑みを見せるアリーヤ妃。
いっそうの愛おしさが込み上げる王ディランは、目の前のアリーヤという美しい花に深く溺れている。
王ディランが見つけた美しい花アリーヤ。
一層、大輪の薔薇のごとく咲き誇る。
◇
人間であれば、いつか生命の終わりが来る。
それは誰の元にも必ず訪れる。
ーーーだからこそ美しいのかもしれない。
ただ、悠久の時を生きる王ディランには、己れの傍らで枯れることなく咲き続ける花こそ美しい……と。
そう思わずにはいられない。
だからこそ、愛するアリーヤの切ない想いをを叶えようと思う王ディランがいる。
そう告げる王ディランの表情は柔らかい。
「ディラン……貴方は何でもお見通しなのね?」
アリーヤ妃は外界へと行きたい……とは告げたが、「逢いたい人がいる」とは一言も告げてはいない。
「愛するアリーヤのことなら全てお見通しだよ。今日まで一度も外界へ行きたいとは言わなかった君だ。それが今になって言い出したことには何か理由があるからだろう」
そして王ディランはハッキリと告げる。
「君はずっと忘れていないんだね? 彼のことを……」
「ディラン……私の心の片隅には、ずっと忘れられないあの子がいるの。幸せでいるのか……」
切なげに零すアリーヤ妃。
「私が唯一家族と呼べるのは大切な義弟ジェームスだけなの。愛するあの子だけは……どうしても過去には出来ない……」
「血は水よりも濃いか……我ら眷属と同じで君らに限ってもそれが当てはまるんだろうね」
「……でも、それは義弟ジェームスに限ってのことだわ」
「皮肉だね。血の繋がりがあっても子を見放す親もいれば、半分しか血の繋がらなくても互いを想い合う。君ら義姉弟のように……」
「ディラン……血の繋がりも大切かもしれないけど、私には互いを想い合う気持ちこそが血よりも濃く、深い絆をもたらすとも思えるの」
「そうだね、アリーヤ。まさに君の言う通りだ。でも、アリーヤは実の我が子を深く情愛しているだろう? 我ら眷属にとっては血の繋がりは海よりも深い。まさに人によりけりだね」
愛するアリーヤ妃を引き寄せる王ディランは、アリーヤ妃の下腹部に優しく触れる。少し膨らみ始めた彼女の腹を慈しむように、優しく優しく撫で上げる。
王ディランを見上げるアリーヤ妃には笑顔が溢れる。
「ふふっ、次は貴方に似た子かもしれないわ」
数年前には、最初の御子である幼な姫を産み落としたアリーヤ妃。母アリーヤに似た濡羽色の髪を纏う美しい幼な姫は、健やかに恙なく育っている。
さらに次の御子を身籠り、王ディランへと新たな家族を与えようとしてくれているアリーヤ妃を愛さずにはいられない王ディラン。
「アリーヤ、君は何よりも尊い……」
「ディラン……貴方のおかげで不遇であった過去を思い出すこともない。今の私は貴方の愛情に包まれてとても幸せなの」
「当然だ。俺がこれ以上ないほどに愛しているからね」
アリーヤ妃の頬へと口付けを落とす王ディラン。
「ありがとう、ディラン……」
花が綻ぶように美しい笑みを見せるアリーヤ妃。
いっそうの愛おしさが込み上げる王ディランは、目の前のアリーヤという美しい花に深く溺れている。
王ディランが見つけた美しい花アリーヤ。
一層、大輪の薔薇のごとく咲き誇る。
◇
人間であれば、いつか生命の終わりが来る。
それは誰の元にも必ず訪れる。
ーーーだからこそ美しいのかもしれない。
ただ、悠久の時を生きる王ディランには、己れの傍らで枯れることなく咲き続ける花こそ美しい……と。
そう思わずにはいられない。
だからこそ、愛するアリーヤの切ない想いをを叶えようと思う王ディランがいる。
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