田舎娘は後宮妃になりました。

ゆきむらさり

文字の大きさ
50 / 50
後宮妃・一の妃編

48.敬愛される宝玉と露店市

しおりを挟む
 後宮妃・“一の妃”は、後宮妃・宝玉がことを見越した上で口上する。

「宝玉様……図々しいのは百も承知でございます。それでも私の思いを聞いてくださいますか? いずれは“王朝の光”となれる宝玉様にこそ聞いていただきたいのです。聡い貴女様のことです。他方面から物事を冷静に見極める目を持っておられることでしょう」

 改まった口調の“一の妃”。

 優雅な仕草で椅子から立ち上がれば、再び跪拝きはいをしてみせ、宝玉へと心からの敬意を表す。

 これには「ええっ?!」と面食らう宝玉。

 ーー田舎娘の私ごときにっ?!

 自らも椅子から立ち上がり、「……どうか、そのようなことはなさらないでください」と慌てて“一の妃”の跪拝を解く。

「“一の妃”様、そこです! そこなのです! 瑞鳥はたまたま私の夢に現れただけなのです。もしかすると鳳凰は気まぐれなのかもしれません。あちらこちらに神出鬼没なのです。きっとそうに違いありません!」

「まぁっ、おほほっ……宝玉様は面白いことを仰る。瑞鳥である鳳凰も宝玉様にかかれば形無しですわね……ふふふっ」

 声を立てて笑う“一の妃”。

 ーー私はこの方が大好きだわ。

 嬉しそうに目を細め、宝玉を見つめる“一の妃”は、とても田舎娘とは思えない目の前の美しい後宮妃に自然と笑みを溢れさせた。

 宝玉の明朗で素直な性格に好感が持てる。

 ーー何より、澄んだ清流のように心が清らかでいらっしゃる。皇帝陛下だけでなく、皆様がこのお方を好きになるのも分かる気がします。

 “一の妃”はそう思う。

 この日が宝玉との初めての対面にもかかわらず、話せば話すほど宝玉の魅力に引き込まれる“一の妃”。

「愛すべきお方だわ」

 独り納得。


 ◇
 

 一方。

 そんなことは気にかける様子もない宝玉は持論を展開した。

「良いですか、“一の妃”様……気まぐれな鳳凰が現れた夢は、あくまでも縁起の良い夢ということだけです。私が皇后になることを意味しているわけではありません」

 自信満々に告げる宝玉。

「“一の妃”様……私は貴女様のお力になりたいと心から思っております。今の私がこうして生きていられるのは、ある方が手を差し伸べてくれたからに他なりません。恩には恩で報いてこそ……だから、今度は私が困っている人がいれば、手を差し伸べるのが当然だと日頃から思っております。おりますが……ただ!」

「……ただ?」

「私のような田舎者が皇后になること自体あり得ません。それこそ烏滸がましいです。民の皆様にも申し訳が立ちません」

「宝玉様……を成し遂げておきながらご謙遜過ぎますわ。すでに商人の皆さまからは信頼を得ているではありませんか? 普通から考えればあり得ないことでも、貴女様はやり遂げてしまわれる。露店市を閉ざされた〈後宮〉の中に開き、他の後宮妃の皆様方へと楽しみをお与えになられた」

 柔らかな笑みを浮かべる“一の妃”。

 彼女が言う「あれ程のこと」とは、宝玉が提案した月一の露店市のことを指している。


 ◇


 商人たちが交代で店自慢の菓子などを提供するのが、光王城で月一で開催されている露店市。

 ただ、余計な物……特に毒物などの混入を防ぐ為に、口にする食べ物作りは、新たに作られた光王城内の食坊での作業となり、材料も王城での用意となる。

「提供してもらえるならありがたい」

 意外と材料費もばかにならないせいで、商人たちからは逆に感謝される後宮妃・宝玉。

 もちろん、後宮妃・宝玉と宮女・美玉が丹精込めて作った野菜や果物も提供される。

 しかも、その日一番の売り行きを出した露店には、皇帝・王炫からの褒美までもが下賜されるのだ。

 即ち、「表彰盾」と「報奨金」が下賜される。

 美味しいこと尽くし。

 まさに栄誉も栄誉。

 皇帝・王炫からのお墨付きを賜わった商店の幸先は良い。おまけに、巷では『縁起が良い店』として大繁盛。

 あやかりたい……と、民がこぞって店を訪れる。味も絶品とくれば腹も膨れ、大満足の客人たち。

 報奨金は店の修繕などにも使える。

 おかげで商人たちはこぞって腕を磨き上げ、「次こそはっ!」とやる気満々。

 腕の見せどころでもある月一の露店市は大人気と言える。


 ◇


 発端は、もちろん宝玉。

 以前、田舎から初めて王都に足を踏み入れた宝玉。王都の露店に感激し、初めての食べ歩き。

 ただ、時間が限られた中でのこと。あちらこちらに散らばる露店全てを回ることは難しい。

 だから、提案した。

『食べ物を売る露店が一箇所に集まっていれば良いのでは? そうすれば色々な物が一度に食べられます』

 そこで寵愛する宝玉の二度目の「一生のお願い」を叶えた皇帝・王炫がいる。

『余の言った通り……おまえの一生のお願いは一生ありそうだ』

 大笑いの皇帝・王炫は『聡い余の寵妃……愛らしいやつ』と閨では、共寝をする宝玉を抱きしめたまま離さない。

 寵愛が深すぎる皇帝・王炫がいる。


 ◇


 それはさておき。

 露店市のおかげで、後宮妃たちにも楽しみが増える。

 商人たちも活気づき、今度こそ一番に売れる物を作ろうと意欲的。

 その活気は次第に市井にも浸透していく。

 市井の賑わいは、人々に活力とゆとりを与える。

 民が潤えば、国も豊かになる。

 国を支える民がいてこそ、王朝は存続できるのだ。

 宝玉は自然とそれをわかっているのかもしれない。貧しい育ちだからこそ、飢えなくて済む国づくりを望むのだ。

 ただし、後宮妃を相手にする為、売り子は女性に限られる。

 ーーうーん……それも問題だよね? 男の人でも入れれば、もっと色々な商店が参加できるだろうし……後宮妃だから駄目なら後宮妃でなければ良いのでは? 〈後宮〉がなければ良いのでは……?

 そして「うん、良いことを思いついた!」と自然と顔を綻ばせる宝玉がいる。

 宝玉の、こうした考えこそ後宮妃・“一の妃”の望む願いでもある。





 



しおりを挟む
感想 217

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(217件)

月桂樹
2026.02.05 月桂樹

さり様~😱
47話からだった‼️
スミマセン☺️

2026.02.05 ゆきむらさり

月桂樹様 それを言うなら私こそ「すみません🙇‍♀️」だよ💦

教えてくれてありがとう😆👍

毎回、見直した後にAI校正かけているけど誤字は減らないね😞

ごめんね🙏

解除
月桂樹
2026.02.05 月桂樹

さり様こんばんは✨
更新ありがとうございます☺️

一の妃を一の妃として真面目に会話している宝玉ちゃん凄いね。
 ゚ ゚ ( Д  )
一の妃も一の妃になりきってるしね。
(((*≧艸≦)ププッ
宝玉ちゃんの後宮がなくなればいいのに発言‼️( ゚д゚)ハッ!
さて続きどうなるかな、楽しみにしています。
( `・ω・´)ノ ヨロシクー

さり様~😆、27話から王炫が王絃になってますでー。炫が正しいよね。
(((*≧艸≦)ププッ

2026.02.05 ゆきむらさり

月桂樹様 こんばんは💗

感想ありがとう😆💗
今日も顔文字が冴えているね🤣👍

宝玉ちゃんは色々とやらかします🤣

一の妃は一の妃になりきれるのも実は彼が……みたいな🤭

ええっ😨! 王炫が王絃に!
ひゃー😵 見直さないと〜💦
教えてくれてありがとう👍
アルファ様のAI校正かけているから安心していたけど、炫と絃の見分けはつかなかったらしい🤔?
今、忙しいから後で見直すね🤗

いつもありがとうー💗

月桂樹様ってさ、もしかしたら私がアルファ様に投稿する前から読んでいる感じ?
だったら、めっちゃ!先輩だね😆
私は2、3年前からだと思う🤔

解除
アマサン
2026.02.05 アマサン

さり様💕
返信ありがとうございます😍

2人のイチャラブ♥️読みたいです🤚
リクエストします〜✨
是非〜是非お願いします😘

2026.02.05 ゆきむらさり

アマサン様💕 

わーい😆リクエストありがとう💕

小話で差し込むから待っててね🤗

書けたら投稿するよ〜💕

解除

あなたにおすすめの小説

愛する女性を側室に望むのなら、いっそ私との婚約は解消してほしいのですが?

四折 柊
恋愛
公爵令嬢ジョゼフィーヌには好きな人がいた。その人は隣国の王子様リック。ジョゼフィーヌはリックと結婚したくて努力をしてきた。そして十六歳になり立派な淑女になれたと自信を得たジョゼフィーヌは、リックにプロポーズをしようとした。ところが彼に婚約者がいたことが発覚し悲しみに暮れる。今まで確認しなかった自分も悪いが、なぜかリックも家族もそのことを教えてくれなかった。そんなときジョゼフィーヌに婚約の打診が来た。その相手は自国のアルバン王太子殿下。断りたいが王命が下り仕方なく受け入れた。それなのに、ある日夜会でアルバンが可憐な令嬢に一目惚れをした。その後、アルバンはその令嬢を側室にしたいと望んだので、お互いのために婚約を解消したいと申し出たが拒絶されて……。ジョゼフィーヌの未来はどうなるのか?!

子供のままの婚約者が子供を作ったようです

夏見颯一
恋愛
公爵令嬢であるヒルダの婚約者であるエリックは、ヒルダに嫌がらせばかりしている。 嫌がらせには悪意しか感じられないのだが、年下のヒルダの方がずっと我慢を強いられていた。 「エリックは子供だから」 成人済みのエリックに、ヒルダの両親もエリックの両親もとても甘かった。 昔からエリックのやんちゃな所が親達には微笑ましかったらしい。 でも、エリックは成人済みです。 いつまで子供扱いするつもりですか? 一方の私は嫌がらせで寒い中長時間待たされたり、ご飯を食べられなかったり……。 本当にどうしたものかと悩ませていると友人が、 「あいつはきっと何かやらかすだろうね」 その言葉を胸に、私が我慢し続けた結果。 エリックは子供を作りました。 流石に目が覚めた両親とヒルダは、エリックと婚約破棄するも、今まで甘やかされたエリックは本当にしつこい。 ねえエリック、知ってる? 「私にはもっと相応しい人がいるのよ?」 非常識な婚約者に悩まされていたヒルダが、穏やかな結婚をするまでの物語。

一年だけの夫婦でも私は幸せでした。

クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。 フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。 フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。 更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。

〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。 高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。 泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。 私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。 八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。 *文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*

私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~

marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」 「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」 私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。 暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。 彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。 それなのに……。 やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。 ※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。 ※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。

裏切ったのはあなたですよね?─湖に沈められ記憶を失った私は、大公女として返り咲き幸せを掴みます

nanahi
恋愛
婚約者ウィルとその幼馴染ベティに罠にはめられ、湖へ沈められた伯爵令嬢アミアン。一命を取り留め、公女として生まれ変わった彼女が見たのは、裏切り者の幸せな家庭だった。 アミアンは絶望を乗り越え、第二の人生を歩む決意をする。いまだ国に影響力を持つ先の王弟の大公女として、輝くほど磨き上げられていったアミアンに再会したウィルは激しく後悔するが、今更遅かった。 全ての記憶を取り戻したアミアンは、ついに二人の悪事を断罪する。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。