公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり

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後日譚・子供達の現在編

1.イーデン王家の第1王子と一輪の花

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 王太子フェリクスとアンジェラ妃の子供達は現在のところ3人。いずれは4人となるが、まだお腹の中で育み中なのでノーカウント。

 次代王太子となるのは、誉高き第1王子フィンレー。

 怜悧な彼は性格も容姿も父フェリクスに似ている。おかげで第2のフェリクスと呼べるほどに腹黒い。

 さておき。

 狙った獲物……もとい、一目惚れした令嬢を逃したくはない第1王子フィンレー。生まれ持った身分を密かにフル活用し、嫁となる令嬢を保護する目的でシエンナ王国からお持ち帰り。

 愛する妃を見事にゲットした第1王子フィンレー。

「「さすがは僕達の兄上です!!」

 羨望の眼差しで見つめるのは双子の弟妹。

 第2エリアル王子と第1エレノア王女2人から拍手を浴びる。


 ◇


 見聞を広める意味でも、シエンナ王国へと留学中していたイーデン王家第1王子フィンレー。

 あざとい貴族令嬢には目もくれず、シエンナ王家の仮面舞踏会に紛れ込んだ一輪の花に視線は釘付け。

 煌びやかな場に不慣れな様子で、独りポツンと壁の花と化す純朴な令嬢。見るからに古びた衣装が令嬢の境遇を物語っている。

 だから、余計に気になる第1王子フィンレーは、一輪の壁の花をバルコニーへと連れ出す。

 柔らかな月明かりの下、令嬢の仮面を故意に取り去る第1王子フィンレーに躊躇いはない。

「……君の素顔が見たい……」

 そう静かに告げる第1王子フィンレーも自分の仮面も取り去っている。

「これでお相子だね?」

 隠された可憐な素顔に魅了される。儚げな様子にも庇護欲を掻き立てられる。

「君は……美しいね……」

 たった1度の出逢いで心を奪われる第1王子フィンレー。気が付けば、恥じらう令嬢の震える唇にそっと口付けを落とす。


 夢のような仮面舞踏会が見せた奇跡。

 そして奇跡は2人の未来へと繋がる。


 ◇


 聞くと、と或る子爵家の令嬢で、真名はフローラ。

 早くに母を亡くし、不遇な生活を強いられている子爵令嬢フローラ。懸命に笑顔を見せながらも淋しげ。

「母とは政略結婚の父に私への愛情はありません。後継ぎにもならない私はお荷物でしかありません。継母の産んだ義弟と義妹が父には全てです。私はただの役立たず。それでも夢ぐらい見たいと望んでしまったのです……」

 子爵令嬢フローラの瞳に滲むのは涙。

 懸命に堪える様子がいじらしい。

 だから、「1度だけでも……」とこっそりと舞踏会へと忍び込んだ子爵令嬢フローラ。

 煌びやかな場所には不似合いな子爵令嬢フローラ。着古した衣装を身に纏うことにも気後れし、「場違いだった」と帰ろうとしたところをイーデン王家第1王子フィンレーに見初められる。

「夢は夢で終わらせてはいけない。僕の心は君に惹かれている。心優しい僕の一輪のフローラ……辛い日々から君を救い出してあげよう。だから、僕と一緒においで……」

 思わず、こくんっと頷く子爵令嬢フローラ。彼女も一目見た時から目の前の美しい貴公子へと心を奪われていた。

 出逢うべくして出逢った2人。

 見つめ合う2人に言葉はいらない。


 思いがけず、シンデレラストリーを手にした子爵令嬢フローラ。ドン底からの逆転人生。


 その後は、第1王子フィンレーの愛情によって、美しく花開く。

 見窄らしい花も愛情を注げば、誰よりも美しく咲き誇る。


 ◇


 少しばかり痛いめを見た子爵家のその後。

 子爵令嬢フローラのクズな父親。これでも子爵家の当主。ボンボンなおかげで我が道をひた走る。横柄で自分勝手の性格が厄介。

 正妻の子爵夫人が早逝すれば、愛人を後妻に迎える始末。すぐに子供まで作り、嫡女フローラを蔑ろ。

 おまけに後妻で継母となった現子爵夫人も、義理の娘フローラを屋根裏部屋へと追いやり、使用人のように扱う。

 何処ぞの物語のように意地悪な継母。

 しまいには、勝手に仮面舞踏会へと出掛けたことを知った継母は「子爵家の恥さらし」とフローラを屋敷から追い出してしまう。

 どちらが恥さらしなのか?

 寄る辺のない子爵令嬢フローラは第1王子フィンレーに保護され、シエンナ王家という強力な後継人を得て、のちにイーデン王国へと渡る。

 晴れて、第1王子フィンレーの妃となる。


 ◇


 実は、その前に仕返しをする第1王子フィンレーがいる。

 シエンナ王家に協力を仰ぐ第1王子フィンレー。特に王太子スティーヴンとバーバラ妃夫妻が悪を懲らしめるのにノリノリ。

 シエンナ王家主催の舞踏会を開催し、子爵令嬢フローラの生家である子爵家も招待。

 第1王子フィンレーにエスコートされる美姫フローラとして、美しく着飾った今の彼女の好転した境遇を、ここぞとばかりに見せつける。

「なぜ! おまえのような役立たずが王子殿下にエスコートをされているのよ! どんな姑息の手を使ったのか白状しなさい!」

 子爵令嬢フローラを見つけるなり、なりふり構わず殴り掛かろうとした継母。お里が知れる。

「まぁ、待ちなさい」

 意外なことに、それを止めたのが子爵家当主。フローラの父。

「おまえのような役立たずでも役に立つこともあるようだ。王族を射止めるとは素晴らしい。しかも大国の王子殿下。私の娘を見初めていただけるとは……」

 うんたらかんたらと御託を並べ立てる子爵家当主。

「貴様は実の娘を捨てておきながら、今さら手のひら返しとは虫が良すぎるのでは? 貴様もだ、子爵夫人。嫡女のフローラを使用人のように扱い、屋根裏部屋へと住まわせ、日々の食事さえ満足に与えないとは……稀に見る悪女だ」

 よく通る声音で言い放つ第1王子フィンレー。

「「「おいおい、聞いたか?」」」

 第1王子フィンレーの言葉に騒つく社交界。


 こうなってしまえは後の祭り。

 子爵家は社交界からは事実上の追放。

 その後は踏んだり蹴ったり。

 社交界から除け者にされた子爵家当主は怒りっぽくなり、妻の子爵夫人と喧嘩が絶えない。

 毎晩腹いせに酒に溺れ、飲み屋の帰り道で酔っ払ったまま路上寝。雪が舞うほどに寒い冬の夜だったことが災いし、明け方にはそのまま冷たくなっていたとか。

 当主を亡くした子爵家は困窮し、没落の一途を辿る。生きる為に子爵夫人は娼館落ち。

 残されたのは2人の子供達。

「子供に罪はないわ」

 王太子妃バーバラが慈悲の心を見せる。

 彼女も子供を持つ母親。

 自分もそうだったように、親のせいで子供の人生までもが壊されるのは居た堪れない。

「私がアンジェラお姉様に救われたように、今度は私が救いの手を差し出す番だわ。誰にでも一度くらいは救いの手があっても良いと思うの。チャンスをあげないと……」

「そんな君だから余計に愛さずにはいられない」

 王太子スティーヴンも賛同する。

 決まって毎晩、愛妃バーバラを抱き潰す王太子スティーヴン。王太子フェリクスに負けず劣らず溺愛が過多。過剰過ぎる。

 王太子夫妻が子沢山なのも頷ける。


 それはさておき。

 こうして子爵家の哀れな2人の子供達は、シエンナ王家が手を差し伸べ、子供のいない夫妻の元へと一緒に里子に出される。

 ダメな親から謙虚さを身に付けたおかげで、里親には案外可愛がられている2人の子供達。生きる術を学び、今を懸命に生きている。















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