公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり

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天使の出逢い編

7.天使と貴公子2人の珍道中

 偶然に出逢ったアンジェラと2人の貴公子。

 此の出逢いを紐解くなら、「運命」なのかもしれない。

 どうしてか……と聞かれれば、アンジェラのママとパパの出逢いも似たようなものだったから。

 やはり母娘、血は争えない。


 ◇


 アンジェラのママとパパのちょっとした昔話。


 辺境の地。

 美しい歌姫キャロラインの甘く切ない歌声に魅了され、一瞬にして恋に落ちたのはパパ。

 先に声を掛けたのも若かりし頃のパパだが、同時に歌姫キャロラインも恋に落ちている。

 互いに「運命」を感じた若い2人。

 情熱は一気に燃え上がり、2人の恋が運命だからこそすぐに結ばれ、のちに天使のように愛らしい娘アンジェラを授かる。

 素敵な恋物語。


 ◇


 小さな天使アンジェラも今や美しい娘に成長し、自分からパパの会いに行こうと1人旅まで敢行するまでに。

 幸先の良いスタートにも恵まれている?

 煌々しい王太子フェリクスと頼りになる専属護衛エヴァンを旅のお供に、パパの待つ王都へと入るアンジェラ。

 今回の旅が意外と快適な道中となったのは、途中から馬車に乗り換えたおかげ。

 アンジェラには慣れない走馬。おかげで腰やら尻やらとあちこちが痛い。それを察した王太子フェリクスが、専属護衛エヴァンに言いつけ、最寄りの宿で馬車を用意させる。

 馬車の中。

 アンジェラの隣に座るのは王太子フェリクス。しかも、「揺れるからな」とアンジェラの腰へと手を回し、「私がしっかり抱いていよう」とまで言う。

 恥ずかしさから居たたまれないアンジェラとは違い、かなり嬉しそうな王太子フェリクス。

 はぁ……と人知れずに吐息をつく専属護衛エヴァンが、「殿下、密着し過ぎですよ」そう諫めても意にも介さない。

 馬車に揺られながら、実はアンジェラには気になることが。2人の貴公子が自分に対して放つ「天使」という呼び名。

「あの、王太子殿下……」

「アンジェラ……王太子殿下は他人行儀だとは思わないか? 私のことは“フェリクス”で構わない。君は特別だ。私を真名で呼ぶ栄誉を与えよう。さぁ、呼ぶがいい……アンジェラ!」

「……呼べません!」

 即答のアンジェラ。

 相手は王族。雲の上の天上人。身分が天と地程も差があることぐらいはアンジェラにも分かる。

 対し、傍らの尊大な王太子は、不敬になりかねないことをさらりと強要する。どこまでも王族然とした態度とアルカイックスマイルも相変わらずの王太子フェリクス。

 アンジェラからすれば、王太子殿下のことを真名で呼ぶ必要性を感じない。若い貴公子との触れ合いを求めて旅をしているわけではないのだ。

「本懐はパパに会うこと」

 今はこれ一択のアンジェラ。


 今のところ、王太子フェリクスに気のないアンジェラ。だが、今後は大きく作用することになる。王族の身分は引導のようなもの。

 誰もが平伏す……はず。


 ◇


 初対面の見ず知らずの田舎娘に大盤振る舞いの王太子フェリクス。言わせてもらえば、それほど気に入る「宝物」を見つけたと言うこと。

 王太子フェリクスには、〈王宮〉では味わえない「面白そうな出来事」に興味が尽きない。偶然にも現れた愛らしい天使を逃す手はない。

 アンジェラの「パパ探し」も王太子フェリクスならば容易に解決出来る。

 (これまで独り身を貫く、実直なグラント公爵に娘がいたとは驚きだ!)

「これは面白くなりそうだ……」

 不遜な王太子フェリクスは笑いが込み上げる。

 常に平静を保ち、面白味のない“の公爵”の驚く様を想像すればするほど、内心では笑いが止まらない王太子フェリクス。

「……王太子殿下??」

「どうした、可愛いアンジェラ?」

 変わり身が早い。

「あっ、あの……」

 アンジェラが見つめれば、満面の笑みで見返す王太子フェリクス。

「実は、お願いがあるのですが……」

「アンジェラの頼みなら全て叶えよう」

 大盤振る舞いの王太子フェリクス健在。

「私のことを“天使”とか“愛らしい”とか言うのをやめて頂きたいのです。どうにも恥ずかしくて……だから……」

 アンジェラの願いに即答する2人の貴公子。

「それは無理だ」

「無理です」

 天使さながらの無垢な容姿を持つアンジェラ。おまけの超絶美少女とくれば……。

「君は天使にしか見えない」

「見えません。それに愛らしさも破格です」

 一歩も引かない2人の貴公子。

 結局、アンジェラのお願いは即時却下。


 その後は、やんややんやと賑やかな道中を続けるアンジェラと2人の貴公子。目指すのはアンジェラが「パパ」と呼ぶ名門グラント公爵家の現当主ダリウス。


 その頃のグラント公爵家といえば……。
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