公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり

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王家の舞踏会・社交界編

50.無茶振りな父娘と天使の想い出

 人生は驚きの連続だ……と誰かが言ったかどうかはさておき。


 アンジェラもびっくりな展開。

 幼い頃から会っていた綺麗なお姉さんと優しいお爺さんが、まさかイーデン王妃フレイヤと辺境伯当主だとは全く知らなかったアンジェラ。

 (ひゃー! ママは凄過ぎるよー!)

 母であるキャロラインの交友関係を侮ってはいけない。

 彼女は辺境伯の庇護を受けていた稀代の歌姫。貴族の知り合いがいてもおかしくはない。それが王妃だからえげつない。

「お姉さんが王妃様で……お爺さんが辺境伯様で……お姉さんが王妃様で……」

 翡翠の瞳を驚嘆に見開き、ぶつぶつ呟くアンジェラ。イーデン王妃フレイヤが笑いながら止める。

「アンジェラ……その呼び方は正しくない。お姉さんが嫌なら義母ははと呼んでくれても構わない。いずれはそうなるのだ。さぁ、アンジェラ! お義母様と呼んでごらん!」

 嬉しそうに言い放つイーデン王妃フレイヤ。

 彼女に賛同するのは王妃フレイヤの父である辺境伯。年老いても尚、今だに現役バリバリなのは、跡を継ぐはずの嫡男を不慮の事故で亡くした為、今だに当主の座に就いている。

「儂のことはお祖父様と呼んでくれて構わない。アンジェラちゃは儂の孫娘も同じ。フレイヤが義母なら儂はお祖父様だ」

 かっかっかっ! とこちらも豪快に笑う辺境伯。父娘共に良く似ている。

「それは……さすがに図々しいのでは?」

 アンジェラの言葉を豪快に笑い飛ばすイーデン王妃フレイヤ。真っ直ぐに見つめがら別の話題を振る。

「アンジェラ……覚えているか?」

「……?」

「幼い頃に遊んだ男の子のことを……」

 意味ありげに微笑するイーデン王妃フレイヤ。少しの沈黙。

 今の今まで忘れていたが、アンジェラの脳裏に浮かび上がるのは綺麗な男の子。

「……はい、覚えています……」

 頷くアンジェラも笑みを零す。


 ◇


 過去に、まだイーデン王妃フレイヤのことを「お姉さん」と呼び、アンジェラが幼い頃のは話。

 ある日。お姉さんが連れて来たのは、黄金の髪が眩い綺麗な男の子。お姉さんが婚姻していた事実にも驚くアンジェラだが、それ以上に綺麗な男の子に言葉が出ない。釘付け。しまいには、花のかんばせを赤らめるアンジェラがいる。

 辺境の田舎街では、とんとお目にかかれない超絶美少年。アンジェラも1人の女の子。胸がドキドキするのも仕方がない。

 (こんなに綺麗な男の子がいるなんて……!)

 それを言うなら「こんなに綺麗な女の子がいるなんて!」のアンジェラ。自分の美貌は見えていない。そんなもの。

 アンジェラは心から感嘆したのを覚えている。続いて感情の薄い男の子だったことも思い出す。ムスッとした顔がいただけない。

 アンジェラが笑みを向けても美少年はニコリとも笑わない。態度も憮然としは尊大。見るからに子供らしくない。

 だからこそ、お姉さんは連れて来たのだと告げる。

「アンジェラ……紹介する、私の子だ。歳はアンジェラよりは幾つか上だ。大人達に囲まれて育ったせいか達観し過ぎている。面白味に欠ける我が子でな。アンジェラの陽気さを分けてあげて欲しい」

「うん、もちろんだよ!」

 満面の笑みで堪えるアンジェラ。

「よろしくね。私はね、アンジェラって言うの!」

 天使のような美少年を真っ直ぐに見つめるアンジェラは再び感嘆。

「わぁっ、本当に綺麗ー……まるで天使様みたい!」

 感激のアンジェラ。

 ほぉっ……と熱の籠る翡翠の瞳で見れば、フイッと顔を背ける美少年。

「おまえの方が、綺麗だ……」

 ぼそりと零す。明らかに照れている。

「あっ……ありがとう……」

 今度はアンジェラが照れる。ほんのり赤く染まる頬が愛らしい。

 実は、彼には初めてお目にかかるタイプの女の子。純真純朴な美少女のアンジェラ。それを歯牙にも欠けていない様子が好ましい。

 (王都の浅ましい貴族令嬢達とは大違いだ。それに可愛いし……)

 常に達観しては尊大な態度を貫く黄金の髪の美少年。だが、意外と心は繊細で純粋。時折、腹黒なのが玉に瑕。

 愛らしいアンジェラの天使の微笑みには誰も抗えない。それは目の前の達観し過ぎの美少年も例外ではない。

 これはこれは……と微笑するお姉さんは「良い兆候だ」と忍び笑い。

「アンジェラ……この子はフェリだ。よろしくな」

「……はい!」

 元気良く頷くアンジェラ。

 この時、天使のような2人は互いに一目惚れ。いわゆる「初恋」というやつだ。


 ◇


 その後も幾度か会っては一緒に遊ぶ。

 互いに「アンジェラ」「フェリ」と真名で呼ぶ程に打ち解ける。

 誰とでも仲良くなれるアンジェラの気安さのおかげ。陽気で無邪気な子供パワーを侮ってはいけない。

 感情の薄かったフェリも子供らしさを見せるまでに。それに加え、なかなかどうして気が合うのか、子供同士の無邪気な口約束ながらも「婚姻の約束」までする2人がいたとか。

 ”花輪の冠”に“花輪の指輪”で婚儀の真似事までして見せる2人。

 見守るイーデン王妃フレイヤと母キャロラインは感激。心が

 楽しみな将来には意気揚々。


 ◇


 アンジェラの脳裏を目まぐるしく駆け抜ける想い出。


 子供の頃のキラキラとした美しい想い出。

 ただ、大人になるに連れ忘れてしまうことも。アンジェラは今を生きる事に一生懸命。だから、過去の想い出は徐々に上書きされ、時を経るごとに忘れてしまっていた。


 (うん……そんな過去があったよね……)


 思い出すアンジェラ。

 同時にある事実にも気付き、みるみると赤らむ花のかんばせ。子供時代の婚姻の真似事までする自分大胆さに撃沈する。

 アンジェラが遊んでいた相手は、眩ゆい黄金の髪の“フェリ君”。ひとたび思い出せば誰かを彷彿とさせるのは当然。

 “お姉さん”と呼んでいた美女は、まさかのイーデン王妃フレイヤ様。その子供なれば、つもりフェリ君は王太子フェリクス。

「きゃあっ?!」

 叫ぶアンジェラ。この事実にぶったまげる。











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