公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり

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王家の舞踏会・披露目編

54.舞踏会と国王夫妻への拝謁・後

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 今回の〈王家の舞踏会〉へと参加した貴族達が、グラント公爵令嬢アンジェラを特別な存在と認めた理由は一目瞭然。

 列を成す淑女達も集う貴族達もアンジェラへと視線を注ぐ。なにしろ彼女が拝礼を終えるやいなや、イーデン国王フレデリックが自ら声を掛けたのだ。誰だって見る。


「「「えええっーーー?!」」」


 前例のない出来事に大広間は騒然。

 びっくり仰天。驚き、桃の木……なんとやら。

「初めまして……だね、アンジェラ嬢。さすがは絶世の美女とも謳われるキャロラインの娘だ。実は君の母君とは旧知の仲でね。こうも可憐で愛らしいなら、我が子フェリクスが惚れるはずだ。余の息子をよろしく頼むよ、アンジェラ嬢」

 イーデン国王フレデリックの最後の言葉には、仄かに花のかんばせを赤らめるアンジェラがいる。

 王妃フレイヤとの対面後、どうにも王太子フェリクスを意識してしまう自分がいるような……いないような……。

 アンジェラを見つめる国王フレデリック。

 (これはこれは……ひょっとしたらフェリクスも脈ありか? それは喜ばしい。父はおまえの幸せを願っているぞ)

 愛してやまない愛息子フェリクス。

 父として嬉しそうに目を細めるイーデン国王フレデリックは、愛息子の恋の成就へと密かにエールを送る。

「あの堅物のダリウスに、まさかこのような愛らしい娘がいるとはね。ダリウスが見せたがらないはずだ。これ程に可憐な美しさなら心配になるのも頷ける。余でもそうなる」

 はーっはっはっはっー!

 高らかに笑い声を上げるイーデン国王フレデリック。静寂に包まれる大広間の喧騒をぶち破り、見守る貴族達は「何だ、何だ?」と驚嘆の眼差し。

 (何を言い出すんだ、あの国王っ!)

 グラント公爵ダリウスは「やりたい放題だな」と深い溜息。

 一方の陽気な公爵夫人キャロラインは、愛娘の色恋の先行きへと密かな期待を寄せている。美しい蒼い瞳は爛々に輝いている。

 やりたい放題のイーデン国王フレデリックの独断場と化している玉座。続いて王妃フレイヤまでもが参戦。アンジェラの両手を握り締めながら公然と言い放つ。

「アンジェラ……素晴らしい拝礼だ。堂々とした姿も見事だよ。アンジェラは既に我が子も同然。これなら我が王家へと輿入れしても問題ない。アンジェラには私が付いている。だから、安心して嫁に来い!」

 王妃フレイヤも乗り気な様子。

 (ええっ?! 今ここでそれを言いますか?)

 王妃フレイヤの無茶振りにも驚くアンジェラ。冷めた眼差しのグラント公爵ダリウスは「……やってくれたよ」との思い。


 ◇


 最終的には「私のアンジェラ……」と甘い声音で告げる王太子フェリクスが、アンジェラの手の甲へと口付けを落とし、意味ありげな視線を向ける。

 予想通り、皆がびっくり。

 黄色い悲鳴が飛び交う始末。

 驚嘆するアンジェラは固まったまま。そしてみるみると赤らむ花のかんばせが愛らしい。

 これまで独り身を貫いていた王太子フェリクスに自ら声をかけさせたグラント公爵令嬢アンジェラ。


 これを別格と言わずして何と呼ぶ?








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