26 / 28
Ex3 少女から見た友3
しおりを挟む
暗闇の中、私は目を開ける。
ユウとサクラがおやすみと言ってから、何時間が経っただろう。
時計を探す。
二時と表示されていた。
朝まであと四時間はかかる。
私はもう一度目を瞑ろうとした。
でもユウとサクラが気に掛かった。
目を閉じる前に、二人に視線を向ける。
カーテンの隙間から漏れる月明かりで、よく見えた。
「え……?」
目を丸くした。
記憶では、サクラがユウの腕に頭を載せて寝ていたはずだ。
しかし、どうだろうか。
ユウとサクラが抱き合っていた。
いや、寝ているサクラを、ユウが抱き締めているのだろう。
サクラは、寝息を立てていた。
逆にユウは起きている。
上に載るサクラの頭を抱き、サクラを見ていた。
愛おしさと言えば、聞こえが良い。
しかしユウの瞳の色に、思わず言葉を失う。
妹に兄が送る視線なのだろうか。
「……ディーネ?」
呆けて見ていたら、ユウが気付いた。
瞳を私に向ける。
「……寝れないの?」
「は、はい。あの……」
ユウの言葉に、私は言い淀む。
何を口にすれば良いのか、私にはわからなかった。
ただ視線をユウとサクラに向けて、私は戸惑っていた。
ユウは私の視線に気付いたのか、苦笑を浮かべた。
「ああ、うん。寝相が悪いんだかね。乗っかってきたから、変わらないなぁって」
ユウはサクラの頭を撫でながら、静かに口にする。
どうやらサクラが寝ぼけてユウに被さったらしい。
それを抱き締めていたようだが、それでも気になる。
「昔からさ、寝相が悪くてね。一緒に寝ると、だいたい抱き枕にされるんだよ」
ユウは優しい瞳をサクラに向けていた。
大事に扱っているのは、わかる。
しかし、それは家族に向ける視線とは到底思えない。
家族の距離として、どうなのだろう。
思えば風呂のときもそうだった。
唯一、妹のサクラに対してのみ、目を向けないようにしていたことを思い出す。
私やルフィーには、平然と目を向けていた。
特に思うところがないと言わんばかりに。
思われても困るが、私に何も抱かないなら、まだわかる。
でも、ルフィーに対してもそうだった。
私から見ても美人だ。
男の人ならば、何らかの反応を見せるのは不思議でもない。
あのときの会話からすると、ルフィーとユウは古くから共にいるらしい。
馴れ、なのだろうか。
ならば、サクラにも馴れてなければならないじゃないか。
やはり、おかしい。
どう見ても、この人はサクラに懸想しているようにしか見えない。
サクラは血縁で、妹なのではないか?
私はユウを見る。
この人も、異常な人なのだろうか。
俄に生まれた怯えを私は隠す。
だけど、隠しきれなかったらしい。
ユウは、私を見て笑った。
苦笑だった。
「……違うさ」
ユウは否定した。
私の考えが伝わったのだろうか。
言葉の続きを、私は待った。
「俺は、血の繋がった妹を好きになったりは、しないよ」
ユウは言い切った。
だが、私は驚いている。
思えばユウが、サクラを妹と口にしたのを聞いたのは初めてだった。
風呂で、兄妹かと訊ねても、答えなかったのに。
何を考えているのか、それが気になった。
そもそも距離の基準がわからない。
私は勿論、ルフィーとの距離、サクラとの距離だ。
あまりに違いすぎる。
あやふやなのではない。
明確に境界線が作られていると感じた。
どうやって線を引いているのか。
他の人とは、どうなんだろうか。
不意に気になった。
――もう少し、見てみよう。
何故こうも気になるのかは、わからなかい。
それでも、もう少しここに居ようと思う。
私は、ユウをもう一度見た。
ユウはサクラから目を離し、天井を見上げていた。
「妹を好きになったり、しない」
ユウはもう一度呟く。
サクラの頭を抱きながら、口にした言葉はひどく切ない響きだった。
見ていられなくなり、私は目を閉じる。
朝まで、四時間。
黙って過ごすには、長すぎる。
眠ることが一番の選択だと思った。
ユウとサクラがおやすみと言ってから、何時間が経っただろう。
時計を探す。
二時と表示されていた。
朝まであと四時間はかかる。
私はもう一度目を瞑ろうとした。
でもユウとサクラが気に掛かった。
目を閉じる前に、二人に視線を向ける。
カーテンの隙間から漏れる月明かりで、よく見えた。
「え……?」
目を丸くした。
記憶では、サクラがユウの腕に頭を載せて寝ていたはずだ。
しかし、どうだろうか。
ユウとサクラが抱き合っていた。
いや、寝ているサクラを、ユウが抱き締めているのだろう。
サクラは、寝息を立てていた。
逆にユウは起きている。
上に載るサクラの頭を抱き、サクラを見ていた。
愛おしさと言えば、聞こえが良い。
しかしユウの瞳の色に、思わず言葉を失う。
妹に兄が送る視線なのだろうか。
「……ディーネ?」
呆けて見ていたら、ユウが気付いた。
瞳を私に向ける。
「……寝れないの?」
「は、はい。あの……」
ユウの言葉に、私は言い淀む。
何を口にすれば良いのか、私にはわからなかった。
ただ視線をユウとサクラに向けて、私は戸惑っていた。
ユウは私の視線に気付いたのか、苦笑を浮かべた。
「ああ、うん。寝相が悪いんだかね。乗っかってきたから、変わらないなぁって」
ユウはサクラの頭を撫でながら、静かに口にする。
どうやらサクラが寝ぼけてユウに被さったらしい。
それを抱き締めていたようだが、それでも気になる。
「昔からさ、寝相が悪くてね。一緒に寝ると、だいたい抱き枕にされるんだよ」
ユウは優しい瞳をサクラに向けていた。
大事に扱っているのは、わかる。
しかし、それは家族に向ける視線とは到底思えない。
家族の距離として、どうなのだろう。
思えば風呂のときもそうだった。
唯一、妹のサクラに対してのみ、目を向けないようにしていたことを思い出す。
私やルフィーには、平然と目を向けていた。
特に思うところがないと言わんばかりに。
思われても困るが、私に何も抱かないなら、まだわかる。
でも、ルフィーに対してもそうだった。
私から見ても美人だ。
男の人ならば、何らかの反応を見せるのは不思議でもない。
あのときの会話からすると、ルフィーとユウは古くから共にいるらしい。
馴れ、なのだろうか。
ならば、サクラにも馴れてなければならないじゃないか。
やはり、おかしい。
どう見ても、この人はサクラに懸想しているようにしか見えない。
サクラは血縁で、妹なのではないか?
私はユウを見る。
この人も、異常な人なのだろうか。
俄に生まれた怯えを私は隠す。
だけど、隠しきれなかったらしい。
ユウは、私を見て笑った。
苦笑だった。
「……違うさ」
ユウは否定した。
私の考えが伝わったのだろうか。
言葉の続きを、私は待った。
「俺は、血の繋がった妹を好きになったりは、しないよ」
ユウは言い切った。
だが、私は驚いている。
思えばユウが、サクラを妹と口にしたのを聞いたのは初めてだった。
風呂で、兄妹かと訊ねても、答えなかったのに。
何を考えているのか、それが気になった。
そもそも距離の基準がわからない。
私は勿論、ルフィーとの距離、サクラとの距離だ。
あまりに違いすぎる。
あやふやなのではない。
明確に境界線が作られていると感じた。
どうやって線を引いているのか。
他の人とは、どうなんだろうか。
不意に気になった。
――もう少し、見てみよう。
何故こうも気になるのかは、わからなかい。
それでも、もう少しここに居ようと思う。
私は、ユウをもう一度見た。
ユウはサクラから目を離し、天井を見上げていた。
「妹を好きになったり、しない」
ユウはもう一度呟く。
サクラの頭を抱きながら、口にした言葉はひどく切ない響きだった。
見ていられなくなり、私は目を閉じる。
朝まで、四時間。
黙って過ごすには、長すぎる。
眠ることが一番の選択だと思った。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる