英雄様は愛されたい

結人

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俺は毎日夜になるとドラゴンの巣に向かった。

いつものように庭園の奥にある門扉を開けて枝を掻き分ける。でも…あれからドラゴンが戻ってくることはなかった。

ドラゴンの巣に座りしばらく月を眺めてから部屋に戻る。


布団で横になり目をつむると第五部隊の仲間たちが夢に現れる。無言で見つめてくる彼らから目を逸らしたくて後ろを見るとライスドリューの騎士達が立っていた。

彼らのもとへ走り寄ろうとすると目の前が崩れ落ちる。
落ちていく彼らを俺は見ている事しかできない。

ダメだ!
早く助けないと!
誰が?
俺が…
誰も助けられないのに…


目を覚ますと頬が濡れていた。


とにかく1人で体を動かした。筋トレをしていると何も考えずにいられた。素振りも許可されたので一日中していた日もあった。長い間握ってなかったから手にマメが出来つぶれる。痛みが無駄な考えを削いでいく。


そうだ。戦場に戻ればいいんだ。
俺はあそこでしか生きられない。
そしていつか皆のところへ行ければいい。





リュシオンとの戦場に向かったライスドリューの騎士達が戻ってきたのは一ヶ月が経った頃だった。

「俺たちが負けるわけないだろ?なんて顔で迎えてくれるんだ。こっちが心配になるだろうが!」

クロノスに頭を撫でられる。クロノスの温かい手が俺に触れて彼が生きてくれていることを感じた。そうだ。彼らの為に死ねたらいい。ヒュペリオンに戻れないならライスドリューの騎士団に所属すればいい。そして彼らの為に死にたい。

俺は鍛錬を続けた。ロキに隠れて許可されてない事も…とにかく体を動かし続けた。少しずつ筋肉がついてきた体は1年以上かかると思っていたが半年で元に戻すことができた。





「皇帝陛下への謁見はこんなに急にできないんですよ?」

「わかってる。でも早く許可が欲しかったんだ」


数か月ぶりの皇帝への謁見で俺は伝えたいことがあった。
やりたいことを問われてすぐに答えられなかったが今はこれしかないと思っている。

「で、要件は何だ?」

皇帝の低い声。顔を上げると赤い瞳が俺を射抜く。

「俺をライスドリューの騎士団に所属させてください!」

次は1人で生き残らない。
俺は…戦場で死にたい。
生き残って後悔したくない。


1人になりたくない。



「…。許可しない」

「…な!…なぜですか?!体ならほぼ元に戻っています!俺ならライスドリュー騎士団の力になれます!英雄騎士ジークフリードが仲間になるのです!」

よほどでない限り許可されると言われてたはず。なぜ…俺は騎士団に入れないんだ?

「…お前はもう英雄騎士ではない」

「怪我をして弱くなったと思われているのですが?!でしたら騎士団長と対決し必ず勝ってみせます!」

「勝ったとしても騎士団への入団は認めない」
「なぜですか?!俺が…元敵国の騎士だからですか?」

「違う」
「じゃあ何故です!?」

皇帝を睨みつけるように見つめると、眉を歪め彼もまた俺を睨みつけてくる。

「死に場所を求めて戦場に出るやつは役に立たない。生きるつもりの無い騎士が英雄騎士にはなれない」

何故だ。彼らの為になって死ねるならそれでいいじゃないか!

「じゃあ…俺はどうしたらいいんですか?戦うこと以外に何がしたいかも分からないんだ。残された俺は…後悔しか残らない俺は…誰かのためになれたらって…」


もう一度考えて出直してこいと言われ、謁見室を追い出された俺は部屋に戻るが何も手につかず窓際の椅子に座る。窓の外は月明かりが城の庭を照らしている。




ふと思い立ち俺はドラゴンの巣に向かった。
ずっと行ってなかったあの場所はもう、温かい記憶ではなく冷たい地面と冷たい風の記憶に変わっていた。
門扉を抜け、枝をかき分け…月明かりに照らされたその場所に…




ずっと待ち続けていた赤い宝石のような瞳があった。


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