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限定奴隷の愛撫チャレンジ。あるいは、奴隷で始まる愛物語 2/5
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最初、スリュージが気絶しているマフィンを見つけたとき、彼女は全身を覆う板金鎧に、顎まで覆う庇の付いた兜を被っていた。
目元以外の顔面まで完全防備の、見た目を捨てた性能重視な装備は、PC女性だと逆に珍しいくらいだ。
目を覚ました後は、見た目が鬱陶しいので兜は脱がせていたのだけど、首から下の全身鎧は着せたままだった。それを彼女は、自分の意思で装備解除したのだ。
現実だったら従者が数人がかりで手伝わないと脱ぐのも大変そうな大鎧も、ゲームでなら意識ひとつで着脱自在だ。他者に拘束されている場合は着脱不能とシステム判定されるのだけど、うっかり奴隷契約が成立してしまった後はその拘束も解いていたので、これこの通りというわけだ。
マフィンはなぜか、鎧を完全解除しなかった。なぜか、両手両足の装甲は残して、胸部や胴部、腰部の装甲だけを解除していた。
また、現実だったら鎧の下にも鎖帷子だとか色々着込んでいるところだが、マフィンが鎧の下に着ていたのは前面の布地が臍の下まで大きく開いたVフロントの桃色レオタード一枚だった。
「……俺、魔術士系だから、そんな重たい鎧を着ようと思ったこともなかったもので知らなかったんだが、全身鎧って一部だけを解除すること、できたんだな」
スリュージが場違いな感想を口にしたのは、少しだけ現実逃避していたからかもしれない。
「そうなのだ、できたのだ。けど、そこの感想はいい。そんなことより、この格好についての感想を聞こうではないか」
「……その格好をすることに、きっと意味はないんだよな?」
「あるぞ」
「どんな?」
「淫乱な魔術士の奴隷にされて手籠めにされて、防具として意味のない着方を強制されている悲運の女騎士――みたいな格好に見えるだろう!?」
「……そう見えることに、どんな意味が?」
スリュージが真面目な顔で聞き返したら、マフィンはげんなり顔で溜め息を吐いた。
「だから何度も言っているだろう。示しを付けるためだ、と」
「俺が主人で、あんたが奴隷。それを視覚的に示すことで、あんたに奴隷としての自覚を促す……ということか」
「惜しいな」
マフィンは人差し指を立てて、ちっちっと左右に振ると、その指をびしっとスリュージに突きつけた。
「自覚を促されるべきは、おまえのほうだ。おまえの主人としての自覚の話だ!」
「え……えぇー」
呻くことしかできないスリュージだった。
そんな彼に、マフィンは両手を腰に当てて、踏ん反り返って言うのだ。
「さあどうだ、見ろ。おまえが捕えた性奴隷の身体だぞ。ほらどうだ、エロエロだろう!」
既に述べている通り、このゲームの女ドワーフは世に言うロリ巨乳だ。そして、全身鎧を着用しても行動制限がかからないまで筋力を上げているマフィンは、腹筋も背筋も上腕三頭筋も大腿四頭筋もムキムキだ。むちむちではなくムキムキだ。
なのに、胸部だけはむちむちを通り越してばいんばいんなのは、胸筋を圧倒するほど分厚くて重たい脂肪の塊がてんこ盛りだからだ。
筋肉と乳脂肪の非現実的な競演。
ピンクのVフロントレオタードから覗く巨乳の谷間と腹筋の割れ目は、ロリマッチョ巨乳という理想のひとつを体現していた。
「……エロいんだと思う」
スリュージは微妙に他人事のような言い方ながらも、いちおうは肯定の返事をした。
マフィンの言動に気を取られていたせいで平気だったけれど、引き締まったロリ巨乳の体付きを改まって意識させられれば、スリュージだって股間がムラムラと疼いてきてしまう。論理として理解できなくとも、身体のほうは異性からの性的アピールへ反応するように作られているのだから。
「身体は素直、というやつだな。ふふっ」
「いや本当に比喩でなく、そういう機構だから」
「ああ言えばこう言う、だな。まったく」
スリュージに真顔で返されても、マフィンは動じない。困った子供をあやすように頬笑んで、肩を竦める。
「……なんで、俺が聞き分けのない、みたいな態度を取れるんだか」
「なんだ、聞き分けがないという自覚はあるのだな」
「……」
「自覚があるなら、さっさと命令してもらいたいのだがな」
「いや、それは……と、そんな話だったか?」
「ではどんな話だと?」
「えぇー……ああ、そうか。俺に主人としての自覚を持って、奴隷であるおまえに対して相応しい卑猥な解放条件を申しつけろ――と、そういう話をさせられていたんだったな」
「分かっているなら、早くするといい。あ、半裸になったから条件達成だ、などとい世迷い言は受け付けんからな」
「なんで奴隷のおまえに決定権があるんだよ。自覚を持つべきはどっちだよ……」
「それだ!」
「うおぅ!?」
マフィンにいきなり指を突きつけられて、スリュージは仰け反る。
「なんだ、危ないな!」
だが、スリュージの怒声は無視された。
「おまえはいま、私に奴隷の自覚を持て、と言ったな? 言ったな! では、有言実行だ。いまの言葉を私に聞き入れさせる条件を提示してみるがいい!」
「だからどうして、おまえが偉そうなんだよ……ああ、そうか。そうやって俺を挑発しているわけだな」
スリュージの呟きに、図星を言い当てられたマフィンは眉を顰める。その仕草にスリュージは少しばかり気が晴れたおかげで、冷静になれた。
――言葉遣いを改めるのが条件、というのは性的ではないから却下されるだろうな。いや、条件の指定について奴隷側に拒否権はないけれど、ここで納得してもらわないと後々面倒になるかもしれない。なら、ここは態度云々ではなく、もっと単純にこの女好みの条件で決めてしまって、穏便に条件達成してもらおう。そして、さっさとお帰り願おう――。
スリュージは素早く結論を出すと、顔に笑みを貼り付けてマフィンに告げた。
「では、奴隷解放の条件を伝える。いまから十分間、あんたを愛撫する。その間、一度も絶頂しないこと――それが条件だ」
「……ふむ、悪くない……いや、良い――すごく、らしいぞ」
マフィンは告げられた条件を反芻しながら、二度、三度と大きく頷いた。その瞳はきらきらと潤んでいて、頬には朱が差し、鼻息はふんすか荒くなっている。突きつけられた条件を甚く気に入ったのは一目瞭然だった。
「じゃあ、条件はそれで決まりということで……早速、いまから十分間な」
スリュージはさっさと終わらせたかったので、そう告げながらマフィンに近づいていく。もともと顔を突き合わせて離していたので、あっという間に両手で抱き寄せられる距離になる。
「やっとか、よし来い! ……ではなく――くっ、身体は自由にできても、心まで自由にできると思うなよ!」
マフィンはわざわざ咳払いを挟んでから、きっと眦を釣り上げてスリュージを睨む。
「あー……はいはい」
スリュージは心底から、この茶番をいますぐ終わらせようと思った。
「――んっぅううにゅううッ♥♥」
マフィンが乳絶頂の喘ぎ声を高らかに響かせたのは、それから三分後のことだった。
目元以外の顔面まで完全防備の、見た目を捨てた性能重視な装備は、PC女性だと逆に珍しいくらいだ。
目を覚ました後は、見た目が鬱陶しいので兜は脱がせていたのだけど、首から下の全身鎧は着せたままだった。それを彼女は、自分の意思で装備解除したのだ。
現実だったら従者が数人がかりで手伝わないと脱ぐのも大変そうな大鎧も、ゲームでなら意識ひとつで着脱自在だ。他者に拘束されている場合は着脱不能とシステム判定されるのだけど、うっかり奴隷契約が成立してしまった後はその拘束も解いていたので、これこの通りというわけだ。
マフィンはなぜか、鎧を完全解除しなかった。なぜか、両手両足の装甲は残して、胸部や胴部、腰部の装甲だけを解除していた。
また、現実だったら鎧の下にも鎖帷子だとか色々着込んでいるところだが、マフィンが鎧の下に着ていたのは前面の布地が臍の下まで大きく開いたVフロントの桃色レオタード一枚だった。
「……俺、魔術士系だから、そんな重たい鎧を着ようと思ったこともなかったもので知らなかったんだが、全身鎧って一部だけを解除すること、できたんだな」
スリュージが場違いな感想を口にしたのは、少しだけ現実逃避していたからかもしれない。
「そうなのだ、できたのだ。けど、そこの感想はいい。そんなことより、この格好についての感想を聞こうではないか」
「……その格好をすることに、きっと意味はないんだよな?」
「あるぞ」
「どんな?」
「淫乱な魔術士の奴隷にされて手籠めにされて、防具として意味のない着方を強制されている悲運の女騎士――みたいな格好に見えるだろう!?」
「……そう見えることに、どんな意味が?」
スリュージが真面目な顔で聞き返したら、マフィンはげんなり顔で溜め息を吐いた。
「だから何度も言っているだろう。示しを付けるためだ、と」
「俺が主人で、あんたが奴隷。それを視覚的に示すことで、あんたに奴隷としての自覚を促す……ということか」
「惜しいな」
マフィンは人差し指を立てて、ちっちっと左右に振ると、その指をびしっとスリュージに突きつけた。
「自覚を促されるべきは、おまえのほうだ。おまえの主人としての自覚の話だ!」
「え……えぇー」
呻くことしかできないスリュージだった。
そんな彼に、マフィンは両手を腰に当てて、踏ん反り返って言うのだ。
「さあどうだ、見ろ。おまえが捕えた性奴隷の身体だぞ。ほらどうだ、エロエロだろう!」
既に述べている通り、このゲームの女ドワーフは世に言うロリ巨乳だ。そして、全身鎧を着用しても行動制限がかからないまで筋力を上げているマフィンは、腹筋も背筋も上腕三頭筋も大腿四頭筋もムキムキだ。むちむちではなくムキムキだ。
なのに、胸部だけはむちむちを通り越してばいんばいんなのは、胸筋を圧倒するほど分厚くて重たい脂肪の塊がてんこ盛りだからだ。
筋肉と乳脂肪の非現実的な競演。
ピンクのVフロントレオタードから覗く巨乳の谷間と腹筋の割れ目は、ロリマッチョ巨乳という理想のひとつを体現していた。
「……エロいんだと思う」
スリュージは微妙に他人事のような言い方ながらも、いちおうは肯定の返事をした。
マフィンの言動に気を取られていたせいで平気だったけれど、引き締まったロリ巨乳の体付きを改まって意識させられれば、スリュージだって股間がムラムラと疼いてきてしまう。論理として理解できなくとも、身体のほうは異性からの性的アピールへ反応するように作られているのだから。
「身体は素直、というやつだな。ふふっ」
「いや本当に比喩でなく、そういう機構だから」
「ああ言えばこう言う、だな。まったく」
スリュージに真顔で返されても、マフィンは動じない。困った子供をあやすように頬笑んで、肩を竦める。
「……なんで、俺が聞き分けのない、みたいな態度を取れるんだか」
「なんだ、聞き分けがないという自覚はあるのだな」
「……」
「自覚があるなら、さっさと命令してもらいたいのだがな」
「いや、それは……と、そんな話だったか?」
「ではどんな話だと?」
「えぇー……ああ、そうか。俺に主人としての自覚を持って、奴隷であるおまえに対して相応しい卑猥な解放条件を申しつけろ――と、そういう話をさせられていたんだったな」
「分かっているなら、早くするといい。あ、半裸になったから条件達成だ、などとい世迷い言は受け付けんからな」
「なんで奴隷のおまえに決定権があるんだよ。自覚を持つべきはどっちだよ……」
「それだ!」
「うおぅ!?」
マフィンにいきなり指を突きつけられて、スリュージは仰け反る。
「なんだ、危ないな!」
だが、スリュージの怒声は無視された。
「おまえはいま、私に奴隷の自覚を持て、と言ったな? 言ったな! では、有言実行だ。いまの言葉を私に聞き入れさせる条件を提示してみるがいい!」
「だからどうして、おまえが偉そうなんだよ……ああ、そうか。そうやって俺を挑発しているわけだな」
スリュージの呟きに、図星を言い当てられたマフィンは眉を顰める。その仕草にスリュージは少しばかり気が晴れたおかげで、冷静になれた。
――言葉遣いを改めるのが条件、というのは性的ではないから却下されるだろうな。いや、条件の指定について奴隷側に拒否権はないけれど、ここで納得してもらわないと後々面倒になるかもしれない。なら、ここは態度云々ではなく、もっと単純にこの女好みの条件で決めてしまって、穏便に条件達成してもらおう。そして、さっさとお帰り願おう――。
スリュージは素早く結論を出すと、顔に笑みを貼り付けてマフィンに告げた。
「では、奴隷解放の条件を伝える。いまから十分間、あんたを愛撫する。その間、一度も絶頂しないこと――それが条件だ」
「……ふむ、悪くない……いや、良い――すごく、らしいぞ」
マフィンは告げられた条件を反芻しながら、二度、三度と大きく頷いた。その瞳はきらきらと潤んでいて、頬には朱が差し、鼻息はふんすか荒くなっている。突きつけられた条件を甚く気に入ったのは一目瞭然だった。
「じゃあ、条件はそれで決まりということで……早速、いまから十分間な」
スリュージはさっさと終わらせたかったので、そう告げながらマフィンに近づいていく。もともと顔を突き合わせて離していたので、あっという間に両手で抱き寄せられる距離になる。
「やっとか、よし来い! ……ではなく――くっ、身体は自由にできても、心まで自由にできると思うなよ!」
マフィンはわざわざ咳払いを挟んでから、きっと眦を釣り上げてスリュージを睨む。
「あー……はいはい」
スリュージは心底から、この茶番をいますぐ終わらせようと思った。
「――んっぅううにゅううッ♥♥」
マフィンが乳絶頂の喘ぎ声を高らかに響かせたのは、それから三分後のことだった。
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