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序章
第4話
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事件から数日後、奏が誘拐された事件は白昼堂々の事件だったこともあり、ワイドニュースにも取り上げられた。奏の名前は伏せられた状態で「女児の身代わりになった女性」として番組に出演していたコメンテーターも驚きを隠せないという事を話していた。更に、その事件の発端がある女性が起こした詐欺事件だという事も報道されて、ネットでもその事件が話題になっていた。
(真実が明らかにされて良かった……)
そのニュースを見て奏は安心したように胸を撫で下ろした。
「……え?警察署に?」
ある日の朝、奏が朝食を食べていると雫から電話がかかってきたことを聞いた。
「えぇ、警察署に来て欲しいって言われたのよ」
雫の言葉に奏の頭の上ではてなマークが飛び交う。
「……分かった。行ってくるよ」
奏はそう言うと、仕度をして警察署に向かった。
「やぁ!よく来たね!」
奏が警察署に着くと、署長室に連れてかれた。すると、そこいたのは穏やかな雰囲気を纏った署長の門野が笑顔で立っている。奏はお辞儀をすると、ソファーに座るように勧められて、腰を掛けた。門野も奏に対面するようにソファーに腰掛ける。
「初めまして、水無月 奏さん。署長の門野と言います」
門野が柔らかい物腰で自己紹介を行う。
「は……初めまして!水無月 奏と言います!」
署長と言う人物を目の前に奏が恐縮しながら答える。
「まぁ、そんなに固くならないでリラックスしてね」
門野が奏を「まぁまぁ」と言う感じのジェスチャーをしながら笑顔で言う。
「あの……、それで今日は……」
奏がおずおずと口を開く。もしかして、この前の件で一般人である自分が勝手なことをしたので叱られるのではないかと少しびくびくしながら尋ねる。
「実は、君にお願いしたいことがあるんだ」
「お願いしたいこと……?」
門野の言葉に奏がはてなマークを浮かべる。
何をお願いしたいのかがさっぱり見当がつかない奏に門野が口を開く。
「君を特殊捜査員に任命したい」
「……へ?」
あまりの突然の言葉に奏の思考が付いて行かず、変な声が出てしまう。
「例の事件の事は担当した警察官から聞いているよ。犯人を投降させたようだね。ちなみにその事件に関しては、発端となった女性のことを調べ、その女性は詐欺罪で捕まったよ。どうやら、他にも同じような手口で何人もの人を騙していたそうだ」
「じゃあ……」
門野の言葉に奏が感嘆の声を上げる。
「勿論、今回の誘拐事件であの男のやったことは罪に問われるが、そうなった経緯を考慮して罪はそんなに重くならないだろう……」
「良かったです……」
奏が安心したように言葉を綴る。
「あの……ですが……それと特殊捜査員と言うのは何処で関連しているのでしょうか?」
奏が先程の門野の言葉を思い出し、疑問を問う。
「私は事件が起きる背景には何かしら真実があると思っている。事件を解決するだけではなく、なぜその事件が起きたのか?そこには更に表に出なかった事件が見え隠れしているかもしれない……」
門野の言葉に奏はじっと聞き入っている。
「君が誘拐された事件も、表に出てこなかった事件が発端になっていた。君が犯人の心の声を聞かなかったら、表に出てこなかった事件は誰にも知られることなく闇に葬り去られただろう……。私は事件を捜査する上でその事件の元を調べ、隠された本当の事件を暴き、真犯人にきちんと罪を償ってほしいのだ……。そこで……」
門野がそう言って一旦言葉を切る。
「君には特殊捜査員として、事件を起こした犯人からなぜそうなったのかを聞き出し、それを元に捜査をし、その事件の真の犯人を暴き出して欲しい……」
「え……?え……?」
門野の言葉に奏の思考が追い付かなくて半分フリーズ状態に陥る。
「よろしく頼むよ!特殊捜査員、水無月奏君!!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「あっ!ちなみに特殊捜査員は二人組で事件を捜査するから君の相方を紹介するよ」
なんだか分からないままに、特殊捜査員に任命されてそれが確定したように話が進んでいく。門野がどこかに電話を掛けると、電話越しに「署長室まで来てくれ」と言う言葉が聞こえた。
「……失礼します。門野署長、お呼びですか?」
しばらく待っていると、長身のすらりとした男が部屋に入ってきた。顔立ちも整っており、間違いなく美形の部類に入るだろう。
「彼が奏君の相方になる特殊捜査員の結城 透君だ」
「え?」
「ほえ?」
門野の言葉に透が驚きの声を上げる。奏も未だに話が付いていかず、本日二度目の変な声が出る。
こうして、話がトントン拍子に進み、奏は特殊捜査員として活躍することが決まったのだった。
「……もう、こんな事したくないよ……」
一人の男が泣きそうになりながら必死に訴える。
「何言ってんだよ……。お前は俺と同類なんだよ……」
別の男が不気味に微笑みながら怪しく言葉を紡いでいた……。
(第一章に続く)
(真実が明らかにされて良かった……)
そのニュースを見て奏は安心したように胸を撫で下ろした。
「……え?警察署に?」
ある日の朝、奏が朝食を食べていると雫から電話がかかってきたことを聞いた。
「えぇ、警察署に来て欲しいって言われたのよ」
雫の言葉に奏の頭の上ではてなマークが飛び交う。
「……分かった。行ってくるよ」
奏はそう言うと、仕度をして警察署に向かった。
「やぁ!よく来たね!」
奏が警察署に着くと、署長室に連れてかれた。すると、そこいたのは穏やかな雰囲気を纏った署長の門野が笑顔で立っている。奏はお辞儀をすると、ソファーに座るように勧められて、腰を掛けた。門野も奏に対面するようにソファーに腰掛ける。
「初めまして、水無月 奏さん。署長の門野と言います」
門野が柔らかい物腰で自己紹介を行う。
「は……初めまして!水無月 奏と言います!」
署長と言う人物を目の前に奏が恐縮しながら答える。
「まぁ、そんなに固くならないでリラックスしてね」
門野が奏を「まぁまぁ」と言う感じのジェスチャーをしながら笑顔で言う。
「あの……、それで今日は……」
奏がおずおずと口を開く。もしかして、この前の件で一般人である自分が勝手なことをしたので叱られるのではないかと少しびくびくしながら尋ねる。
「実は、君にお願いしたいことがあるんだ」
「お願いしたいこと……?」
門野の言葉に奏がはてなマークを浮かべる。
何をお願いしたいのかがさっぱり見当がつかない奏に門野が口を開く。
「君を特殊捜査員に任命したい」
「……へ?」
あまりの突然の言葉に奏の思考が付いて行かず、変な声が出てしまう。
「例の事件の事は担当した警察官から聞いているよ。犯人を投降させたようだね。ちなみにその事件に関しては、発端となった女性のことを調べ、その女性は詐欺罪で捕まったよ。どうやら、他にも同じような手口で何人もの人を騙していたそうだ」
「じゃあ……」
門野の言葉に奏が感嘆の声を上げる。
「勿論、今回の誘拐事件であの男のやったことは罪に問われるが、そうなった経緯を考慮して罪はそんなに重くならないだろう……」
「良かったです……」
奏が安心したように言葉を綴る。
「あの……ですが……それと特殊捜査員と言うのは何処で関連しているのでしょうか?」
奏が先程の門野の言葉を思い出し、疑問を問う。
「私は事件が起きる背景には何かしら真実があると思っている。事件を解決するだけではなく、なぜその事件が起きたのか?そこには更に表に出なかった事件が見え隠れしているかもしれない……」
門野の言葉に奏はじっと聞き入っている。
「君が誘拐された事件も、表に出てこなかった事件が発端になっていた。君が犯人の心の声を聞かなかったら、表に出てこなかった事件は誰にも知られることなく闇に葬り去られただろう……。私は事件を捜査する上でその事件の元を調べ、隠された本当の事件を暴き、真犯人にきちんと罪を償ってほしいのだ……。そこで……」
門野がそう言って一旦言葉を切る。
「君には特殊捜査員として、事件を起こした犯人からなぜそうなったのかを聞き出し、それを元に捜査をし、その事件の真の犯人を暴き出して欲しい……」
「え……?え……?」
門野の言葉に奏の思考が追い付かなくて半分フリーズ状態に陥る。
「よろしく頼むよ!特殊捜査員、水無月奏君!!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「あっ!ちなみに特殊捜査員は二人組で事件を捜査するから君の相方を紹介するよ」
なんだか分からないままに、特殊捜査員に任命されてそれが確定したように話が進んでいく。門野がどこかに電話を掛けると、電話越しに「署長室まで来てくれ」と言う言葉が聞こえた。
「……失礼します。門野署長、お呼びですか?」
しばらく待っていると、長身のすらりとした男が部屋に入ってきた。顔立ちも整っており、間違いなく美形の部類に入るだろう。
「彼が奏君の相方になる特殊捜査員の結城 透君だ」
「え?」
「ほえ?」
門野の言葉に透が驚きの声を上げる。奏も未だに話が付いていかず、本日二度目の変な声が出る。
こうして、話がトントン拍子に進み、奏は特殊捜査員として活躍することが決まったのだった。
「……もう、こんな事したくないよ……」
一人の男が泣きそうになりながら必死に訴える。
「何言ってんだよ……。お前は俺と同類なんだよ……」
別の男が不気味に微笑みながら怪しく言葉を紡いでいた……。
(第一章に続く)
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