ファクト ~真実~

華ノ月

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第二章 沼に足を取られた鳥は愛を知る

第11話

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「気になる事?」

 冴子が聞き返す。

「はい……。見間違いかもしれないので昨日は電話で言えなかったのですが、部屋にいるのは女性だと思います」

「なんでだ?」

 奏の言葉に透が聞く。

「クレンジングシートです」

「クレンジングシート?」

 奏の言葉に杉原が聞き返す。

「ちらっと見えたのですが、買ったものの中にクレンジングシートが入っていたのです。メイクを拭いて落とすシートなのですが、男性でしたらまずそういったものを使う人はあまり見かけません。クレンジングシートは突然泊まることになったりした時に購入するのですが、もし、友だちが泊まりに来るのであれば、前もって準備しておくはずです。それに、そういったものを男性に買いに行かせるでしょうか?もしかしたら、その部屋にいるのが女性だとしたら、何かしらの理由で部屋から出られなくなっているのかもしれません。もし、その部屋にいるのが絵梨佳さんだとしたら、匿っている可能性はあるかもしれないです……」

「……つまり、その男は絵梨佳かどうかは分からないにせよ、誰かに見つからないためにその部屋に上げているというわけか……」

 奏の言葉に本山がそう言葉を綴る。

「……念のため、その男を張りましょうかね?」

 杉原がそう言葉を発する。

 こうして、奏と透がその男を張ることになり、紅蓮と槙は引き続き聞き込みをすることになった。本山と杉原は例の写真の男の捜索を続行することになり、それぞれ捜査に出動した。



「……ん~……」

 外の日差しに目をぼんやりとしながら絵梨佳が起き上がる。

「起きたか?」

 徳二がそう言いながらカーテンを開ける。すると眩しい日差しが部屋に降り注がれる。

「……眩しー……」

 目を細めながら絵梨佳が寝ぼけ眼で言う。

 昨日、徳二が買ってきた弁当を二人で食べながらまたビールを飲んでいた。そして、軽くお互いの自己紹介を交わし、弁当が食べ終わると、つまみを食べながらビールを飲んで夜通し絵梨佳が喋っていた。そして、いつの間にか眠気に襲われてそのまま眠ってしまい、今に至る。

「朝飯、どうする?パンくらいしかないがな」

「んー……、食べるー……」

 そう言って、徳二が差し出したパンをむしゃむしゃと咀嚼しながらパンを齧る。

「それにしても……」

 徳二が絵梨佳の顔をまじまじと見ながら声を出す。

「……ん?」

 絵梨佳が徳治の言葉に反応する。

「メイクした顔とすっぴんではえらい顔が変わるんだな」

「わ……悪かったな!!」

 徳二の言葉で一気に目が覚めたのか、絵梨佳が怒鳴るように言う。

「……そういえば、昨日、お前の事を探している女に会ったよ」

「女……?警察官じゃなくて??」

 徳二の言葉に絵梨佳がそう言葉を発する。

「警察官ではないと思うぞ。仕事帰りだとは言っていたが、格好が警察官という感じでは無かったし、雰囲気もそんな感じではなかったからな」

 徳二の言葉に絵梨佳が「誰だろう?」と考えるが特に思い当たらない。

「……まぁ、放っておけばいいんじゃない?」

 絵梨佳が特に気にする様子もなくそう答える。徳二もその言葉に「分かった」と言い、それ以上はその話題に触れないことにした。



「ここがそのコンビニで、こっちの方に歩いて行ったという事か……」

 奏がそのコンビニに透とやって来ると、透は地図を確認した。

「一人暮らしという事はアパートに住んでいるかマンションに住んでいるかという事ですよね?」

 奏がそう言葉を綴る。

「その可能性は高いが、一軒家に一人暮らしの可能性もある。とりあえず、近辺を探してみよう」

 透の言葉に、奏と透は近辺に昨日の男がいないかを捜索することにした。


「……この辺はアパートが多いですね」

 近辺を捜索しながら奏がポツリと呟く。

「そうだな。ここら辺はわりかし繁華街も近いし、買い物にも便利だからな。車を持っていない人にとっては人気みたいだよ」

 透の説明に奏が感心する。

「まぁ、昨日の人にばったり会えればいいがなかなか難しいだろうな。かといって、事件に関係あるかどうかも分からないから聞き込みをするわけにもいかないし……。とりあえず、付近を捜索するしかないだろう」

 その時だった。

「……?」

 奏が急に後ろを振り返る。

「どうした?」

「何となくですが、視線を感じたような気がしたのですが……。多分、気のせいだと思います」

 奏がそう言って「すみません」と頭を下げた。



「……?!」

 徳二が干してあった洗濯物を手に取るために窓際に行くと、窓越しに奏と透の姿を見て驚きの顔をする。

(もしかして……警察か何かだったのか?)

 徳二が奏と一緒にいるスーツ姿の透を見てそう心で呟く。

(絵梨佳を探しているという事だよな……)

「どうしたんだよ?」

 窓際から動かない徳治を見て絵梨佳が声を上げる。

「いや……、何でもない」

 徳二が咄嗟に誤魔化す。最初は警察に連れて行くことも考えたが、ある事を知ってしまい、連れて行くのを躊躇っているので、どうしたらいいのかを考えていた。



「女が帰ってこない?」

 政明の言葉に新形が怪訝な顔をする。

「あぁ……。絵梨佳の荷物は一応回収してきた。財布もあるから絶対に戻ってくると思ったんだが、リナの部屋を飛び出したっきり、何処へ行ったかが分からずじまいなんだ……」

 アパートからリナの遺体を運び出した政明はその足で山奥の山中にリナを埋めに行った。そして、麻薬は一旦新形に返すことになり、新形の元を訪れたのだった。新形に絵梨佳を殺すように言われて政明のアパートに絵梨佳が戻ってくるのを待っていたが、絵梨佳はそこには戻ってこなかった。絵梨佳のスマートフォンも政明が持っているので、誰かに連絡が取れるはずはない。

「心当たりを全て探せ。見つけ次第始末しろ。いいな?」

「あぁ……」

 そう言って、政明が部屋を出て行く。

「何処に行ったんだよ……絵梨佳……」

 悲痛の声でそう言葉を綴る。

 そして、絵梨佳を探すために行きそうな場所に足を運んだ。



 ――――トゥルル……トゥルル……。

 徳二の携帯が部屋に鳴り響く。徳二は部屋から出ると、通話ボタンを押した。

「はい……もしもし……。はい……はい……分かりました……」

 徳二がそう言って、電話が終わる。そして、部屋に戻ると絵梨佳に出かけてくるという事を伝えた。

「なになに?女からのお誘い?」

 絵梨佳がニヤニヤしながらそう話を振ってくる。

「アホか」

 徳二がそんな絵梨佳にそう言葉を放つ。

「じゃあ、誰なんだよ?」

「お前には関係ない」

 徳二の言葉に「ちぇー」っと言いながら絵梨佳が頬を膨らませる。

「……俺が帰ってくるまでここにいて構わない。部屋の中の飲み物や食べ物は好きに食べていい。じゃあ、行ってくる」

 徳二がそう言って部屋を出て行った。


(気が重いな……)

 徳二が道を歩きながらそう心で呟く。電話は神明からだった。一度顔を出しに来いと言われて、神明の率いる神明組に来るように言われたのだ。断るわけにもいかずに徳二は重い足取りで道を歩いて行く。

 やがて、神明組の屋敷の前に到着して中に入っていった。



「よぉ……。久しぶりだな、佐崎……」

 神明がタバコを吹かしながら笑みを浮かべる。

「お……お久しぶりです……」

 神明の態度に徳二が委縮し、言葉を詰まらせながら返事をする。

「どうだ?いいカモは見つかったか?」

 神明が笑みを浮かべながらそう言葉を綴る。

「いえ……その……自分にはやっぱり難しいかと……」

 しどろもどろになりながら徳二が言う。

「……逆らう気か?」

 神明が笑みの表情から一転険しい表情になり、鋭い眼光で徳二に威圧感を与える。

「逆らったら……分かっているよな……?」

 神明の言葉に徳二は何も言えなくなる。

 神明が懐から銃を取り出すと、銃口を徳二の頭に向けた。


 ――――パァァァァン!!!


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