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第二章 沼に足を取られた鳥は愛を知る
第10話
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絵梨佳の言葉に徳二が声を上げる。
「それが……母親の名前か……?」
「そうだよ?なんで?」
「いや……。その事件は俺もニュースで見たことがあるなと思ってな……。確か、その事件で子供は亡くなって、母親はショックでノイローゼになったんだよな……?」
「うん……」
徳二の言葉に絵梨佳が沈痛な面持ちで答える。
「だからさ……、近所でもいじめやら嫌がらせを受けるようになってさ……。そんで、逃げるようにその町を飛び出したんだ……」
絵梨佳が苦笑いしながら言葉を綴る。
「……ビールがないな。ちょっと買い足しに行ってくるよ」
徳二がそう言って席を立つ。
「あたしも行く!」
絵梨佳がそう言って席を立とうとする。
「お前はここにいろ。もし、その男に見つかったら厄介なことになる。それに、警察もお前の事を探しているはずだ」
徳二の言葉に絵梨佳は「分かったよ」と頷き、部屋に残ることにした。
「あ……あのさ……」
絵梨佳がそう言って、徳二にある事をお願いした。
「やれやれ、参ったな……」
徳二がコンビニまでの道を歩きながらそう小さく呟く。
徳二は最初、話を聞いて場合によっては警察に連れて行こうと思っていた。しかし、ある事を聞いてそれが出来なくなってしまった。かといって、このままずっと部屋に絵梨佳がいるのもあまり良くない。衝動的に犯してしまうというのではなく、組のやつらに見つかったら必ず上に話がいく。そして、自分は頭である神明に一人の女を麻薬で連れてくるように言われている。場合によっては絵梨佳が連れてかれる可能性がある。
(あ……まだあいつの名前を聞いていなかったな……)
今になってお互いがまだ自己紹介をしていないことに気付く。
どうしようか考えながら歩いていると、いつものコンビニに到着したのでとりあえずビールとつまみをいくつか購入する。それと、夕食用に弁当も二つ買った。それを持って、コンビニを出て、一息つくのにコンビニの外に設置されているベンチに腰掛けながらタバコを吹かしていた。
「あれ?あの時の方ですか?」
声がして徳二が顔をあげると、そこには奏が立っていた。
「君は……あの時の……」
徳二がそう言って声を発する。
「こんにちは。体調は大丈夫ですか?」
奏がこの前の事を気遣ってそう声を掛ける。
「体調?あ……あぁ、大丈夫だよ。どうして君がここに?」
徳二が不思議そうに言葉を綴る。
「仕事が終わって帰り道です。なかなかある人に会えなくてどうしようと思って……」
「人に会えない?」
奏の言葉に徳二がはてなマークを浮かべる。
「あっ!すみません!!ちょっと事情があってある人を探しているのですが……。なんだか、愚痴みたいになってしまってごめんなさい!!」
奏がそう言って慌てて謝る。
「いや……、探している人というのは?」
徳二の言葉に奏が鞄からスマートフォンを取り出し、写真を見せる。
「この人なのですが、何処にも見当たらなくて……」
奏がそう言いながら絵梨佳の写真を見せる。
「?!!」
徳二がその写真を見て驚きの表情をする。
「……知っているんですか?」
奏が徳二の顔を見てそう言葉を発する。
「い……いや……、知らないな……。なぜこの女性を探しているんだ?」
「その……、心配でして……。何かに巻き込まれる前に見つけ出して、何とか救ってあげたいのですよ……」
徳二の言葉に奏がそう言葉を綴る。
「そ……そうか……」
徳二が奏の言葉にそう言葉を綴る。
「……このコンビニには夕食を買いに来たのですか?」
奏がコンビニの袋を見てそう言葉を綴る。
「あぁ……。そんなところだ。男の一人暮らしだからな。作って食べるより、買った方が早いからな」
「そうなのですね。栄養が偏らないようにしてくださいね」
徳二の言葉に奏がそう言葉を綴る。
「……じゃあ、俺はもう行くよ」
「はい、気を付けて帰ってくださいね!」
徳二はそう言うとベンチから腰を上げて歩きだしていく。奏はその後ろ姿を見送ると、ある人物に電話を掛けた。
「捜査を始める前に連絡があるわ」
次の日、特殊捜査室に全員が集まると、冴子がそう口を開いた。その場には本山と杉原もいる。
「奏ちゃん、昨日の事をみんなに話してくれる?」
冴子がそう言うと奏は頷いて、昨日の事を話した。
「昨日、仕事が終わって帰る途中、ある男性に会いました。この前、聞き込みをしたときに私が話しかけた男性です。元々はこの前の事が気になって声を掛けたのですが、話の流れでその男性に絵梨佳さんの写真を見せました。すると、驚いたような表情をしたのですよ。恐らく、絵梨佳さんの事を知っているのだと思います。しかし、本人は知らないと否定していました。男性は一人暮らしのようですが、引っ掛かる事があるのです」
「引っ掛かる事?」
奏の言葉に杉原が反応する。
「はい。お弁当です」
「弁当?」
奏の言葉に透が反応する。
「お弁当を二つ買っていたんです。それも違うものを二つではなく、同じものを二つです。一つは自分用だとして、もう一つは家にいる誰かに買ったのではないでしょうか?」
「……それがもしかしたら絵梨佳かもしれないという事か……」
奏の言葉に本山がそう言葉を綴る。
「はい。可能性はあるかもしれません」
奏の言葉に本山が「ふーむ……」と考える。もし、その部屋にいるのが絵梨佳だとすれば、何かしらの理由で部屋に入れた可能性が高い。
「じゃあ、その男を張っていれば絵梨佳に繋がるかもしれないってことだよな?」
紅蓮が言う。
「でも、問題はどうやって調べるかだ……。今の段階では絵梨佳がそこにいるとは明白じゃない。別の誰かかもしれないし、ただ単に友達が遊びに来ているだけかもしれない。絵梨佳がそこにいるという確証がつかめればいいが、今はそれも分からない」
槙がそう言葉を綴る。
「ただ、はっきりしているのは奏ちゃんが声を掛けた男が絵梨佳の事を知っている可能性が高いということ……。そして、何かしらの理由で知らないふりをしているということぐらいだわ……」
冴子がそう言って肩を落とす。
「ただ、もう一つ気になっていることがあるのです」
奏がそう言葉を発した。
「それが……母親の名前か……?」
「そうだよ?なんで?」
「いや……。その事件は俺もニュースで見たことがあるなと思ってな……。確か、その事件で子供は亡くなって、母親はショックでノイローゼになったんだよな……?」
「うん……」
徳二の言葉に絵梨佳が沈痛な面持ちで答える。
「だからさ……、近所でもいじめやら嫌がらせを受けるようになってさ……。そんで、逃げるようにその町を飛び出したんだ……」
絵梨佳が苦笑いしながら言葉を綴る。
「……ビールがないな。ちょっと買い足しに行ってくるよ」
徳二がそう言って席を立つ。
「あたしも行く!」
絵梨佳がそう言って席を立とうとする。
「お前はここにいろ。もし、その男に見つかったら厄介なことになる。それに、警察もお前の事を探しているはずだ」
徳二の言葉に絵梨佳は「分かったよ」と頷き、部屋に残ることにした。
「あ……あのさ……」
絵梨佳がそう言って、徳二にある事をお願いした。
「やれやれ、参ったな……」
徳二がコンビニまでの道を歩きながらそう小さく呟く。
徳二は最初、話を聞いて場合によっては警察に連れて行こうと思っていた。しかし、ある事を聞いてそれが出来なくなってしまった。かといって、このままずっと部屋に絵梨佳がいるのもあまり良くない。衝動的に犯してしまうというのではなく、組のやつらに見つかったら必ず上に話がいく。そして、自分は頭である神明に一人の女を麻薬で連れてくるように言われている。場合によっては絵梨佳が連れてかれる可能性がある。
(あ……まだあいつの名前を聞いていなかったな……)
今になってお互いがまだ自己紹介をしていないことに気付く。
どうしようか考えながら歩いていると、いつものコンビニに到着したのでとりあえずビールとつまみをいくつか購入する。それと、夕食用に弁当も二つ買った。それを持って、コンビニを出て、一息つくのにコンビニの外に設置されているベンチに腰掛けながらタバコを吹かしていた。
「あれ?あの時の方ですか?」
声がして徳二が顔をあげると、そこには奏が立っていた。
「君は……あの時の……」
徳二がそう言って声を発する。
「こんにちは。体調は大丈夫ですか?」
奏がこの前の事を気遣ってそう声を掛ける。
「体調?あ……あぁ、大丈夫だよ。どうして君がここに?」
徳二が不思議そうに言葉を綴る。
「仕事が終わって帰り道です。なかなかある人に会えなくてどうしようと思って……」
「人に会えない?」
奏の言葉に徳二がはてなマークを浮かべる。
「あっ!すみません!!ちょっと事情があってある人を探しているのですが……。なんだか、愚痴みたいになってしまってごめんなさい!!」
奏がそう言って慌てて謝る。
「いや……、探している人というのは?」
徳二の言葉に奏が鞄からスマートフォンを取り出し、写真を見せる。
「この人なのですが、何処にも見当たらなくて……」
奏がそう言いながら絵梨佳の写真を見せる。
「?!!」
徳二がその写真を見て驚きの表情をする。
「……知っているんですか?」
奏が徳二の顔を見てそう言葉を発する。
「い……いや……、知らないな……。なぜこの女性を探しているんだ?」
「その……、心配でして……。何かに巻き込まれる前に見つけ出して、何とか救ってあげたいのですよ……」
徳二の言葉に奏がそう言葉を綴る。
「そ……そうか……」
徳二が奏の言葉にそう言葉を綴る。
「……このコンビニには夕食を買いに来たのですか?」
奏がコンビニの袋を見てそう言葉を綴る。
「あぁ……。そんなところだ。男の一人暮らしだからな。作って食べるより、買った方が早いからな」
「そうなのですね。栄養が偏らないようにしてくださいね」
徳二の言葉に奏がそう言葉を綴る。
「……じゃあ、俺はもう行くよ」
「はい、気を付けて帰ってくださいね!」
徳二はそう言うとベンチから腰を上げて歩きだしていく。奏はその後ろ姿を見送ると、ある人物に電話を掛けた。
「捜査を始める前に連絡があるわ」
次の日、特殊捜査室に全員が集まると、冴子がそう口を開いた。その場には本山と杉原もいる。
「奏ちゃん、昨日の事をみんなに話してくれる?」
冴子がそう言うと奏は頷いて、昨日の事を話した。
「昨日、仕事が終わって帰る途中、ある男性に会いました。この前、聞き込みをしたときに私が話しかけた男性です。元々はこの前の事が気になって声を掛けたのですが、話の流れでその男性に絵梨佳さんの写真を見せました。すると、驚いたような表情をしたのですよ。恐らく、絵梨佳さんの事を知っているのだと思います。しかし、本人は知らないと否定していました。男性は一人暮らしのようですが、引っ掛かる事があるのです」
「引っ掛かる事?」
奏の言葉に杉原が反応する。
「はい。お弁当です」
「弁当?」
奏の言葉に透が反応する。
「お弁当を二つ買っていたんです。それも違うものを二つではなく、同じものを二つです。一つは自分用だとして、もう一つは家にいる誰かに買ったのではないでしょうか?」
「……それがもしかしたら絵梨佳かもしれないという事か……」
奏の言葉に本山がそう言葉を綴る。
「はい。可能性はあるかもしれません」
奏の言葉に本山が「ふーむ……」と考える。もし、その部屋にいるのが絵梨佳だとすれば、何かしらの理由で部屋に入れた可能性が高い。
「じゃあ、その男を張っていれば絵梨佳に繋がるかもしれないってことだよな?」
紅蓮が言う。
「でも、問題はどうやって調べるかだ……。今の段階では絵梨佳がそこにいるとは明白じゃない。別の誰かかもしれないし、ただ単に友達が遊びに来ているだけかもしれない。絵梨佳がそこにいるという確証がつかめればいいが、今はそれも分からない」
槙がそう言葉を綴る。
「ただ、はっきりしているのは奏ちゃんが声を掛けた男が絵梨佳の事を知っている可能性が高いということ……。そして、何かしらの理由で知らないふりをしているということぐらいだわ……」
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「ただ、もう一つ気になっていることがあるのです」
奏がそう言葉を発した。
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