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第一章 赤い炎は優しい雨に打たれる
第8話
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「何か変わったこと?」
次の日の放課後、颯希は部室で雄太に昨日静也の家に行った時に何か変わったことがないか聞いてみた。
「はい、お家に行って何か気付いた点はありませんか?」
颯希の問いに雄太はしばらく考える。
「そうだな~……。まぁ、強いて言えばいつも綺麗にしてあるのにちょっと埃が目立ったことくらいかな?」
雄太の返答はそれだけで、特に気付いたところは無いようだった。何もヒントになるようなことが掴めない。今日も静也は学校には来ていない。先生に聞いてみたら無断で休んでいるようだった。学校から家にも電話して保護者にも聞いたみたいだが、朝に家を出たということらしいが何処に行ったかが分からないということだった。
何があったか分からないまま、時間だけが過ぎていく……。
今頃、静也が何処で何をしているのかが気になって仕方ない。
またタバコを吸っているのではないか?
もしかして、本当のヤンキーに絡まれているのではないか?
嫌な考えが颯希の頭の中を駆け巡る。
颯希の表情が気になったのか雄太が言葉を発した。
「なんなら、今日も静也くんの家に行ってみる?拓哉さん、今は自宅仕事みたいだから家にいると思うよ?」
颯希はその話に乗り、部活の後で雄太と静也の家にもう一度行くことにした。
その頃、静也は浜辺に来ていた。
ここなら、街中ではないから補導される心配もないと感じて昼間はこの浜辺に来ている。浜辺には他にも人がまばらだがいた。年配のおじいさんが釣りを楽しんだりしている。
「おや、今日も学校をさぼったのか?」
釣りに来た一人の老人が静也に声を掛けた。
「こんにちは……」
静也が軽く会釈をする。老人である幸雄とはこの浜辺で出会った。静也は最初に幸雄が声を掛けてきたとき、「学校に行け!」と説教されるんじゃないかと思ったのだが、幸雄はそんなことを言わなかった。
なぜなら、初めて声を掛けられた時――――。
静也が髪を赤く染めた日の次の日、静也は家にいるのが嫌で家を出た。かといって学校に行く気にもなれず、ぶらぶら歩いていたら潮の香りがして、その香りに惹かれるようにその香りに向って歩きだした。
すると、海が見えた。
静也は浜辺まで歩いて行くとそこに腰を下ろした。しばらくぼんやりと海を眺めて自分がこれからどうすればいいのかを考える。でも、答えなんて出ない。あの手紙のことを誰に話せばよいかもわからない。
そうやって、色々考えながら海を眺めていた時だった。
「どうしたんだ?少年」
いきなり声を掛けられてビックリする静也に幸雄は優しく言葉を綴った。
「何かあったんかい?まだ中学生くらいだろ。学校はサボったのかい?」
そう声を掛けられて、静也は身構えた。場合によっては学校に知らされる。
しかし、幸雄から次に出た言葉は静也にとって驚く言葉だった。
「まぁ、若くてもいろいろあるわな。なぁに、学校に行くことが人生の全てじゃないさ。苦しい時は息抜きも必要だ」
幸雄はそう言うと静也の横に腰を下ろした。そして、静也の頭を軽く叩くと更に言葉を綴った。
「何があったか話せとは言わん……。でも、話したくなったらいつでも話を聞いてやるからな。よし!今日はわしと一緒に釣りでもするか!これも一つの人生経験だぞ!」
幸雄はそう言って、釣竿を静也に渡す。
そして、静也は辛いことを忘れるように釣りを楽しんだ。
幸雄の温かい優しさが静也には嬉しかった。それからは昼間になるとこの浜辺に来て幸雄と釣りを楽しんだり幸雄の昔話を聞いたりと穏やかな時間を過ごした。
幸雄は昔、それこそバリバリ働いていたらしい。そして、定年退職後はこうやって釣りをしたりして余暇を過ごしているということだった。ただ、仕事ばかりしていて結婚をしなかったので子供も孫もいないという。幸雄は最初、それでも良いと思っていた。だが、最近は孫がいればこうやって一緒に釣りを楽しんだりできたのかもしれないと感じるのだという。だから、血は繋がっていないとはいえ、一緒に釣りをしたりする静也は孫のように可愛がってくれた。
今日も、静也は幸雄と釣りを楽しんでいた。でも、何処か浮かない顔をしている静也に幸雄は優しく声を掛けた。
「何かあったんか?今日は表情がいつもと違うぞ?」
幸雄にそう言われて、静也はゆっくりと言葉を吐いた。
「……昨日、家にダチと説教女が来たみたいなんだ。来斗と雄太は分かるけど、なんで説教女まで来たんだ?って思ってさ」
「お前さんのことが心配だったんじゃないのか?」
「ポッと出てきたやつにあれこれ言われたくねぇよ」
「まぁ、そんな邪険にせんと、広い心で受け入れてやるんだな。……おっ!かかった!」
幸雄はそう言うと竿を思いっきり引っ張り上げた。ハリに魚が引っ掛かっている。
「よし!釣れたぞ!」
幸雄は釣れた魚を持ってきたクーラーボックスに収める。その後は静也の方にも魚がかかり、今日は大漁となった。
そして、あっという間に楽しい時間が過ぎて夕刻に差し掛かろうとしている。
「そろそろ帰るとするかのぉ」
幸雄は帰り仕度をして、「またな」と言って去っていった。静也はそのまま浜辺に残り、ぼんやりと海を眺めていた。
どこまでも続く広い海を見ていると、自分の悩んでいることがちっぽけなことに感じることがある。思い切って手紙のことを聞いてみようかとも考えてしまう。
でも、もし本当だったらと思うとやはり聞くとができずにいた。
その頃、颯希と雄太は静也の家に向っていた。
次の日の放課後、颯希は部室で雄太に昨日静也の家に行った時に何か変わったことがないか聞いてみた。
「はい、お家に行って何か気付いた点はありませんか?」
颯希の問いに雄太はしばらく考える。
「そうだな~……。まぁ、強いて言えばいつも綺麗にしてあるのにちょっと埃が目立ったことくらいかな?」
雄太の返答はそれだけで、特に気付いたところは無いようだった。何もヒントになるようなことが掴めない。今日も静也は学校には来ていない。先生に聞いてみたら無断で休んでいるようだった。学校から家にも電話して保護者にも聞いたみたいだが、朝に家を出たということらしいが何処に行ったかが分からないということだった。
何があったか分からないまま、時間だけが過ぎていく……。
今頃、静也が何処で何をしているのかが気になって仕方ない。
またタバコを吸っているのではないか?
もしかして、本当のヤンキーに絡まれているのではないか?
嫌な考えが颯希の頭の中を駆け巡る。
颯希の表情が気になったのか雄太が言葉を発した。
「なんなら、今日も静也くんの家に行ってみる?拓哉さん、今は自宅仕事みたいだから家にいると思うよ?」
颯希はその話に乗り、部活の後で雄太と静也の家にもう一度行くことにした。
その頃、静也は浜辺に来ていた。
ここなら、街中ではないから補導される心配もないと感じて昼間はこの浜辺に来ている。浜辺には他にも人がまばらだがいた。年配のおじいさんが釣りを楽しんだりしている。
「おや、今日も学校をさぼったのか?」
釣りに来た一人の老人が静也に声を掛けた。
「こんにちは……」
静也が軽く会釈をする。老人である幸雄とはこの浜辺で出会った。静也は最初に幸雄が声を掛けてきたとき、「学校に行け!」と説教されるんじゃないかと思ったのだが、幸雄はそんなことを言わなかった。
なぜなら、初めて声を掛けられた時――――。
静也が髪を赤く染めた日の次の日、静也は家にいるのが嫌で家を出た。かといって学校に行く気にもなれず、ぶらぶら歩いていたら潮の香りがして、その香りに惹かれるようにその香りに向って歩きだした。
すると、海が見えた。
静也は浜辺まで歩いて行くとそこに腰を下ろした。しばらくぼんやりと海を眺めて自分がこれからどうすればいいのかを考える。でも、答えなんて出ない。あの手紙のことを誰に話せばよいかもわからない。
そうやって、色々考えながら海を眺めていた時だった。
「どうしたんだ?少年」
いきなり声を掛けられてビックリする静也に幸雄は優しく言葉を綴った。
「何かあったんかい?まだ中学生くらいだろ。学校はサボったのかい?」
そう声を掛けられて、静也は身構えた。場合によっては学校に知らされる。
しかし、幸雄から次に出た言葉は静也にとって驚く言葉だった。
「まぁ、若くてもいろいろあるわな。なぁに、学校に行くことが人生の全てじゃないさ。苦しい時は息抜きも必要だ」
幸雄はそう言うと静也の横に腰を下ろした。そして、静也の頭を軽く叩くと更に言葉を綴った。
「何があったか話せとは言わん……。でも、話したくなったらいつでも話を聞いてやるからな。よし!今日はわしと一緒に釣りでもするか!これも一つの人生経験だぞ!」
幸雄はそう言って、釣竿を静也に渡す。
そして、静也は辛いことを忘れるように釣りを楽しんだ。
幸雄の温かい優しさが静也には嬉しかった。それからは昼間になるとこの浜辺に来て幸雄と釣りを楽しんだり幸雄の昔話を聞いたりと穏やかな時間を過ごした。
幸雄は昔、それこそバリバリ働いていたらしい。そして、定年退職後はこうやって釣りをしたりして余暇を過ごしているということだった。ただ、仕事ばかりしていて結婚をしなかったので子供も孫もいないという。幸雄は最初、それでも良いと思っていた。だが、最近は孫がいればこうやって一緒に釣りを楽しんだりできたのかもしれないと感じるのだという。だから、血は繋がっていないとはいえ、一緒に釣りをしたりする静也は孫のように可愛がってくれた。
今日も、静也は幸雄と釣りを楽しんでいた。でも、何処か浮かない顔をしている静也に幸雄は優しく声を掛けた。
「何かあったんか?今日は表情がいつもと違うぞ?」
幸雄にそう言われて、静也はゆっくりと言葉を吐いた。
「……昨日、家にダチと説教女が来たみたいなんだ。来斗と雄太は分かるけど、なんで説教女まで来たんだ?って思ってさ」
「お前さんのことが心配だったんじゃないのか?」
「ポッと出てきたやつにあれこれ言われたくねぇよ」
「まぁ、そんな邪険にせんと、広い心で受け入れてやるんだな。……おっ!かかった!」
幸雄はそう言うと竿を思いっきり引っ張り上げた。ハリに魚が引っ掛かっている。
「よし!釣れたぞ!」
幸雄は釣れた魚を持ってきたクーラーボックスに収める。その後は静也の方にも魚がかかり、今日は大漁となった。
そして、あっという間に楽しい時間が過ぎて夕刻に差し掛かろうとしている。
「そろそろ帰るとするかのぉ」
幸雄は帰り仕度をして、「またな」と言って去っていった。静也はそのまま浜辺に残り、ぼんやりと海を眺めていた。
どこまでも続く広い海を見ていると、自分の悩んでいることがちっぽけなことに感じることがある。思い切って手紙のことを聞いてみようかとも考えてしまう。
でも、もし本当だったらと思うとやはり聞くとができずにいた。
その頃、颯希と雄太は静也の家に向っていた。
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