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第一章 赤い炎は優しい雨に打たれる
第10話
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昼休みに入り、颯希は一組の教室に向かった。すると、前方に二人を見つける。
「雄太くん!来斗くん!」
颯希は二人を見つけると駆け足で向かった。
「結城さん、どうしたの?」
「何かあったのか?」
颯希に呼び止められた二人が振り向き、言葉を発する。
「その、昨日のアルバムのことが気になってもう一度拓哉さんの家に伺おうと思うのです。良かったら、一緒に来てもらいたいのですが駄目でしょうか?」
「僕はいいよ。来斗くんはどうする?試合が近いって言ってたからやめとく?」
雄太の言葉に来斗がしばらく思案する。
「……いや、俺も行くよ。俺も静也には前みたいに戻って欲しいからな」
「決まりだね。結城さん、放課後に下駄箱のところで待ち合わせしよう」
こうして、三人でまた静也の家に行くことが決まった。
一方、静也は今日も浜辺に来て幸雄と釣りをしていた。今の静也の中では、幸雄と釣りをしている時間が一番気持ち的に落ち着いている。タバコは颯希に投げつけて以来、吸わなくなった。吸いたくて吸ったわけじゃなかったし、お小遣いの大半を髪にメッシュを入れるために使ってしまったのでほとんど残っていない。その残りでタバコを買っただけだったので、静也の財布にはほとんどお金が残っていなかった。
「なぁ、幸じぃ……」
静也がゆっくりと口を開く。幸雄と仲良くなって静也は幸雄のことを「幸じぃ」と呼ぶようになった。幸雄もその呼び方を気に入っている。
静也は釣りをしながら顔を空に向けてゆっくりと言葉を綴った。
「もし、信じたくないことを知ってしまった時、幸じぃならどうする?俺、これからどうしたらいいか分かんないんだ……。知らないままなら良かったのにって思ってる……。知らないままなら父さんとも今までのように暮らせてた……。でも、知ってしまった以上、どうやって顔を合わせて過ごしていったらいいか分からないんだ……」
静也の話を幸雄は黙って聞いていた。
「その信じたくないことはそれが本当に真実なのか?」
「えっ……?」
「人は思い込みというものがある。その信じたくないことが何かは分からんが、まずはそれが本当に真実かどうか確かめるべきじゃないかのぉ。もしかしたら、意外と真実は違ったりするかもしれんよ?」
幸雄の言葉に静也は無言になった。
真実ではないかもしれない……。
もしかしたら、事実は違うのかもしれない……。
でも、もしやはり自分の思っていることが真実だとしたら、これからどうやって過ごしていけばいいか分からない……。
この考えが間違いであってほしい……。
ぐるぐると頭の中で考えが蠢く……。
拓哉に真相を聞くべきか……。
静也に中では答えが出ない。聞くことが怖くてできない。でも、このままでは何も進まないのも分かっている。
でも、もし……もし……。
静也の頭の中で悪いことだけしか思い浮かばない。その表情を見て幸雄は明るく言葉を発した。
「まぁ、今は釣りを楽しむぞ!」
そう言って、静也の肩を叩く。
幸雄のその心遣いがありがたいと感じる。静也はとりあえず考えるのをやめて釣りを楽しむことに専念した。
颯希たちは再度静也の家にお邪魔した。そして、アルバムを見せて欲しいというと拓哉は快く了承してくれた。そして、みんなでそのアルバムを確認していく。
「おっ!懐かしいな!これ、静也と俺が戦隊もののごっこ遊びをしている写真じゃん!」
来斗が写真を見て楽しそうに言う。
「懐かしいね。来斗くんが敵のボス役で静也くんが正義のヒーロー役だったよね」
「あぁ、静也は正義感強いところがあるからな。絶対ヒーロー役は譲らなかったよな」
昔話で盛り上がる。すると颯希が写真の中にある剣道姿の静也を見つけた。
「静也くんは剣道を習っているのですか?」
颯希の問いに拓哉が答える。
「あぁ。この頃、静也は将来警察官になりたいと言ってね。それで、剣道を習わして欲しいと言ってきたんだ。警察官になる人は柔道や剣道を習っているから自分も将来のために習いたいと言ってきてね。勿論、反対する理由がなかったから許可したよ」
「じゃあ、静也くんも警察官を目指しているということなのですか?」
「も?ってことは、颯希ちゃんも警察官を目指しているのかい?」
「はい!なので、私は将来のために休みの日はパトロールをしているのです!」
そう言って颯希が敬礼のポーズをする。
「へぇ、だから静也と話があったんだね。知らなかったよ、静也にこんな可愛らしいお友達がいたとはね」
拓哉が顔をほころばせる。
「いえ、その……えっと……」
静也とのことを完全に勘違いしている拓哉に颯希は真実を話すべきかどうか迷う。そこへ、雄太が口を開いた。
「拓哉さん、落ち着いて聞いてください。静也くんと颯希さんは友達同士ではありません。颯希さんがパトロール中に違反を見つけて声をかけたそうなんです」
「違反……?」
雄太の言葉に拓哉が疑問の声をあげる。そこに颯希が意を決して静也がタバコを吸っていたことを話した。
「静也が……タバコを……?」
拓哉が驚きの表情をする。「信じられない」とでも言いたそうな顔だった。
「それが、誰かへのあてつけかも知れなくて……。それで、静也くんが心配になって何とかしてあげられないかと思ったのです……」
拓哉は静也がタバコを吸っていたことが余程ショックなのか、言葉を発しない。
「……とりあえず、写真にヒントがあるかもしれません」
颯希の言葉でみんなが真剣に写真を眺めていく。しかし、ヒントになりそうな写真が見つからない。
その時、来斗がある写真に目が止まる。
「なぁ、この写真だけテープが剥がれてるけど……」
そう言って、みんなで写真を覗き込む。その写真は若い頃の拓哉さんと、隣には男女が仲良さそうに腕を組んで映っていた。
「この二人は静也の本当の両親だよ……」
拓哉がそこまで言ってあることに気付く。
「……まさか!!」
拓哉がその写真を剥がす。しかし、そこには何もなかった。
「静也、あの手紙を!!」
「雄太くん!来斗くん!」
颯希は二人を見つけると駆け足で向かった。
「結城さん、どうしたの?」
「何かあったのか?」
颯希に呼び止められた二人が振り向き、言葉を発する。
「その、昨日のアルバムのことが気になってもう一度拓哉さんの家に伺おうと思うのです。良かったら、一緒に来てもらいたいのですが駄目でしょうか?」
「僕はいいよ。来斗くんはどうする?試合が近いって言ってたからやめとく?」
雄太の言葉に来斗がしばらく思案する。
「……いや、俺も行くよ。俺も静也には前みたいに戻って欲しいからな」
「決まりだね。結城さん、放課後に下駄箱のところで待ち合わせしよう」
こうして、三人でまた静也の家に行くことが決まった。
一方、静也は今日も浜辺に来て幸雄と釣りをしていた。今の静也の中では、幸雄と釣りをしている時間が一番気持ち的に落ち着いている。タバコは颯希に投げつけて以来、吸わなくなった。吸いたくて吸ったわけじゃなかったし、お小遣いの大半を髪にメッシュを入れるために使ってしまったのでほとんど残っていない。その残りでタバコを買っただけだったので、静也の財布にはほとんどお金が残っていなかった。
「なぁ、幸じぃ……」
静也がゆっくりと口を開く。幸雄と仲良くなって静也は幸雄のことを「幸じぃ」と呼ぶようになった。幸雄もその呼び方を気に入っている。
静也は釣りをしながら顔を空に向けてゆっくりと言葉を綴った。
「もし、信じたくないことを知ってしまった時、幸じぃならどうする?俺、これからどうしたらいいか分かんないんだ……。知らないままなら良かったのにって思ってる……。知らないままなら父さんとも今までのように暮らせてた……。でも、知ってしまった以上、どうやって顔を合わせて過ごしていったらいいか分からないんだ……」
静也の話を幸雄は黙って聞いていた。
「その信じたくないことはそれが本当に真実なのか?」
「えっ……?」
「人は思い込みというものがある。その信じたくないことが何かは分からんが、まずはそれが本当に真実かどうか確かめるべきじゃないかのぉ。もしかしたら、意外と真実は違ったりするかもしれんよ?」
幸雄の言葉に静也は無言になった。
真実ではないかもしれない……。
もしかしたら、事実は違うのかもしれない……。
でも、もしやはり自分の思っていることが真実だとしたら、これからどうやって過ごしていけばいいか分からない……。
この考えが間違いであってほしい……。
ぐるぐると頭の中で考えが蠢く……。
拓哉に真相を聞くべきか……。
静也に中では答えが出ない。聞くことが怖くてできない。でも、このままでは何も進まないのも分かっている。
でも、もし……もし……。
静也の頭の中で悪いことだけしか思い浮かばない。その表情を見て幸雄は明るく言葉を発した。
「まぁ、今は釣りを楽しむぞ!」
そう言って、静也の肩を叩く。
幸雄のその心遣いがありがたいと感じる。静也はとりあえず考えるのをやめて釣りを楽しむことに専念した。
颯希たちは再度静也の家にお邪魔した。そして、アルバムを見せて欲しいというと拓哉は快く了承してくれた。そして、みんなでそのアルバムを確認していく。
「おっ!懐かしいな!これ、静也と俺が戦隊もののごっこ遊びをしている写真じゃん!」
来斗が写真を見て楽しそうに言う。
「懐かしいね。来斗くんが敵のボス役で静也くんが正義のヒーロー役だったよね」
「あぁ、静也は正義感強いところがあるからな。絶対ヒーロー役は譲らなかったよな」
昔話で盛り上がる。すると颯希が写真の中にある剣道姿の静也を見つけた。
「静也くんは剣道を習っているのですか?」
颯希の問いに拓哉が答える。
「あぁ。この頃、静也は将来警察官になりたいと言ってね。それで、剣道を習わして欲しいと言ってきたんだ。警察官になる人は柔道や剣道を習っているから自分も将来のために習いたいと言ってきてね。勿論、反対する理由がなかったから許可したよ」
「じゃあ、静也くんも警察官を目指しているということなのですか?」
「も?ってことは、颯希ちゃんも警察官を目指しているのかい?」
「はい!なので、私は将来のために休みの日はパトロールをしているのです!」
そう言って颯希が敬礼のポーズをする。
「へぇ、だから静也と話があったんだね。知らなかったよ、静也にこんな可愛らしいお友達がいたとはね」
拓哉が顔をほころばせる。
「いえ、その……えっと……」
静也とのことを完全に勘違いしている拓哉に颯希は真実を話すべきかどうか迷う。そこへ、雄太が口を開いた。
「拓哉さん、落ち着いて聞いてください。静也くんと颯希さんは友達同士ではありません。颯希さんがパトロール中に違反を見つけて声をかけたそうなんです」
「違反……?」
雄太の言葉に拓哉が疑問の声をあげる。そこに颯希が意を決して静也がタバコを吸っていたことを話した。
「静也が……タバコを……?」
拓哉が驚きの表情をする。「信じられない」とでも言いたそうな顔だった。
「それが、誰かへのあてつけかも知れなくて……。それで、静也くんが心配になって何とかしてあげられないかと思ったのです……」
拓哉は静也がタバコを吸っていたことが余程ショックなのか、言葉を発しない。
「……とりあえず、写真にヒントがあるかもしれません」
颯希の言葉でみんなが真剣に写真を眺めていく。しかし、ヒントになりそうな写真が見つからない。
その時、来斗がある写真に目が止まる。
「なぁ、この写真だけテープが剥がれてるけど……」
そう言って、みんなで写真を覗き込む。その写真は若い頃の拓哉さんと、隣には男女が仲良さそうに腕を組んで映っていた。
「この二人は静也の本当の両親だよ……」
拓哉がそこまで言ってあることに気付く。
「……まさか!!」
拓哉がその写真を剥がす。しかし、そこには何もなかった。
「静也、あの手紙を!!」
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