12 / 128
第一章 赤い炎は優しい雨に打たれる
第12話
しおりを挟む
颯希たちは息の上がっている拓哉と一緒にとりあえず家にお邪魔した。キッチンに行き、拓哉は水を飲むと次第に落ち着いてきたのか、話し始めた。
「昨日、静也が帰って来た時に、明日は家にいて欲しいとは言ったんだ。君たちも来るから一度ちゃんと話をしようと言ってね……。朝になって、静也の部屋に行ったら返事がないのはいつものことだけど、物音一つなかったからもしやと思い部屋を開けたら、すでにいなくてね……。どうやら朝早くに家を出たのだろう……。それで心当たりを探していたんだよ……」
「静也の奴……、話する気はねぇってか……」
拓哉の言葉に来斗が苦々しく答える。
「私たちも静也くんを探しましょう!!」
颯希は立ち上がると、声をあげた。
そして、みんなで静也の捜索を開始した。
バラバラで動き回るとよくないということでみんな一緒に固まって探す。近所の公園、ゲームセンター、噴水の広場……。でも、どこにも静也の姿は見つからない。
「何処にいるってんだよ……」
かれこれ一時間以上探したがなかなか見つけることができないでいた。途方に暮れるように町を歩く。
そこへ、一人の老人が声を掛けた。
「おや、颯希ちゃんじゃないか!」
「幸さん!!」
通りかかった老人が優しく声を掛ける。颯希は老人に駆け足で近寄り、声をあげた。
「こんにちは!幸さん!」
「今日もパトロールかな?いやぁ、精が出るな。それに今日は仲間も沢山いるな。一緒にパトロールかい?」
幸雄は来斗たちにも微笑みかける。
「その……、男の子を探しているのです……」
「男の子?」
颯希の言葉に幸雄がはてなマークを浮かべる。
「はい、黒髪に一部赤色のメッシュを入れた男の子なのです……」
颯希の言葉に幸雄は考えると声を発した。
「もしかして、『静也』という子かい?」
幸雄の口からその名前が出て颯希たちは驚く。
「幸さん!知っているのですか?!」
「今の時間にいるかどうかは分からんが、付いてきなさい」
老人である幸雄の言葉に颯希たちが付いて行った。
「……そうかそうか。颯希ちゃんたちは静也の友達だったんだな。で、あんさんが静也の父親というわけか」
颯希たちの話を聞いて幸雄はカラカラと笑った。
「まぁ、若くてもいろいろあるからな。なぁに、心配はないさ。静也は恵まれとるよ。こんなに沢山の友達が心配してくれるんだからな……」
幸雄はそう言葉を綴る。
しばらく歩くと潮の匂いが漂ってきた。海が近いのだろう。堤防を乗り越えて、浜辺に行くと、静也が海の方を眺めながらしゃがり込んでいる姿が見えた。
「静也!!」
拓哉が声をあげる。
静也はその声に驚き振り返った。そして、颯希たちを見るなりその場から慌てて離れようとしている。
「逃がすかよ!!」
来斗が駆けだした。スポーツをやっているだけに足が速い。徐々に静也との距離を詰めていく。しかし、負けじと静也も逃げる。
「待てよ!静也!!」
「お前らにはカンケ―ねぇだろ!!」
「俺たちの話を聞けよ!!」
「はっ!誰が聞くかよ!!」
「お前は……お前は誤解している!!」
――――ズシャァ‥‥!!
来斗が静也に飛び掛かりその勢いで二人とも砂浜に倒れた。
「捕まえたぞ!!」
「放せよ!!」
来斗の腕の中で静也が必死に藻掻く。そこへ、颯希たちが駆け寄ってきた。
「静也くん!拓哉さんの話を聞いてあげて欲しいのです!!」
「やだね!聞きたくねぇよ!!」
――――ピコン!!
颯希が持っていたピコピコハンマーで静也の頭を叩いた。
――――ピコピコピコ!!
何度も颯希がピコピコハンマーで叩く。
「みんな、本当に心配しているのですよ!」
颯希が必死の瞳でそう言葉を綴る。
「静也くん、苦しんでるのは静也くんだけじゃないよ?僕も来斗くんも……それに拓哉さんだってみんな心配してるんだ……。それに結城さんだって心配してこうやって来てくれてるんだよ?」
雄太も切実な表情をしながら言葉を語る。
「静也、わしも言っただろう?一度ちゃんと話をしてみるといいってな。みんなお前さんを何とか救ってあげたいって思ってくれてるんだ。静也のためにみんな必死なんだよ……」
「幸じぃ……」
幸雄の言葉に静也が涙を流す。
このままじゃ何も進まないことは分かっている……。
静也のためにみんなが何とかしようとしてくれている……。
「静也、話を聞いてくれ……」
拓哉が静也の前にしゃがみ込み、、懇願するように言葉を発する。
すると、静也はポケットから一枚の紙を取り出した。そして、その紙を広げて拓哉に突き付けるように見せる。
「じゃあ……じゃあ、これはどういうことなんだよ?!」
「昨日、静也が帰って来た時に、明日は家にいて欲しいとは言ったんだ。君たちも来るから一度ちゃんと話をしようと言ってね……。朝になって、静也の部屋に行ったら返事がないのはいつものことだけど、物音一つなかったからもしやと思い部屋を開けたら、すでにいなくてね……。どうやら朝早くに家を出たのだろう……。それで心当たりを探していたんだよ……」
「静也の奴……、話する気はねぇってか……」
拓哉の言葉に来斗が苦々しく答える。
「私たちも静也くんを探しましょう!!」
颯希は立ち上がると、声をあげた。
そして、みんなで静也の捜索を開始した。
バラバラで動き回るとよくないということでみんな一緒に固まって探す。近所の公園、ゲームセンター、噴水の広場……。でも、どこにも静也の姿は見つからない。
「何処にいるってんだよ……」
かれこれ一時間以上探したがなかなか見つけることができないでいた。途方に暮れるように町を歩く。
そこへ、一人の老人が声を掛けた。
「おや、颯希ちゃんじゃないか!」
「幸さん!!」
通りかかった老人が優しく声を掛ける。颯希は老人に駆け足で近寄り、声をあげた。
「こんにちは!幸さん!」
「今日もパトロールかな?いやぁ、精が出るな。それに今日は仲間も沢山いるな。一緒にパトロールかい?」
幸雄は来斗たちにも微笑みかける。
「その……、男の子を探しているのです……」
「男の子?」
颯希の言葉に幸雄がはてなマークを浮かべる。
「はい、黒髪に一部赤色のメッシュを入れた男の子なのです……」
颯希の言葉に幸雄は考えると声を発した。
「もしかして、『静也』という子かい?」
幸雄の口からその名前が出て颯希たちは驚く。
「幸さん!知っているのですか?!」
「今の時間にいるかどうかは分からんが、付いてきなさい」
老人である幸雄の言葉に颯希たちが付いて行った。
「……そうかそうか。颯希ちゃんたちは静也の友達だったんだな。で、あんさんが静也の父親というわけか」
颯希たちの話を聞いて幸雄はカラカラと笑った。
「まぁ、若くてもいろいろあるからな。なぁに、心配はないさ。静也は恵まれとるよ。こんなに沢山の友達が心配してくれるんだからな……」
幸雄はそう言葉を綴る。
しばらく歩くと潮の匂いが漂ってきた。海が近いのだろう。堤防を乗り越えて、浜辺に行くと、静也が海の方を眺めながらしゃがり込んでいる姿が見えた。
「静也!!」
拓哉が声をあげる。
静也はその声に驚き振り返った。そして、颯希たちを見るなりその場から慌てて離れようとしている。
「逃がすかよ!!」
来斗が駆けだした。スポーツをやっているだけに足が速い。徐々に静也との距離を詰めていく。しかし、負けじと静也も逃げる。
「待てよ!静也!!」
「お前らにはカンケ―ねぇだろ!!」
「俺たちの話を聞けよ!!」
「はっ!誰が聞くかよ!!」
「お前は……お前は誤解している!!」
――――ズシャァ‥‥!!
来斗が静也に飛び掛かりその勢いで二人とも砂浜に倒れた。
「捕まえたぞ!!」
「放せよ!!」
来斗の腕の中で静也が必死に藻掻く。そこへ、颯希たちが駆け寄ってきた。
「静也くん!拓哉さんの話を聞いてあげて欲しいのです!!」
「やだね!聞きたくねぇよ!!」
――――ピコン!!
颯希が持っていたピコピコハンマーで静也の頭を叩いた。
――――ピコピコピコ!!
何度も颯希がピコピコハンマーで叩く。
「みんな、本当に心配しているのですよ!」
颯希が必死の瞳でそう言葉を綴る。
「静也くん、苦しんでるのは静也くんだけじゃないよ?僕も来斗くんも……それに拓哉さんだってみんな心配してるんだ……。それに結城さんだって心配してこうやって来てくれてるんだよ?」
雄太も切実な表情をしながら言葉を語る。
「静也、わしも言っただろう?一度ちゃんと話をしてみるといいってな。みんなお前さんを何とか救ってあげたいって思ってくれてるんだ。静也のためにみんな必死なんだよ……」
「幸じぃ……」
幸雄の言葉に静也が涙を流す。
このままじゃ何も進まないことは分かっている……。
静也のためにみんなが何とかしようとしてくれている……。
「静也、話を聞いてくれ……」
拓哉が静也の前にしゃがみ込み、、懇願するように言葉を発する。
すると、静也はポケットから一枚の紙を取り出した。そして、その紙を広げて拓哉に突き付けるように見せる。
「じゃあ……じゃあ、これはどういうことなんだよ?!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました
ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公
某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生
さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明
これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語
(基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる