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第二章 籠の中の鳥は優しい光を浴びる
第2話
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月曜日の朝、少女である桃田 理恵は高校の制服に身を包むと家を出た。
高校に着き、教室に入る。すると、クラスメートたちが影でこそこそとしゃべり始めた。
「桃田さんて、暗いわよね」
「生きてて楽しいのかな?」
「なんか、世の中の不幸を全部一人で抱えてますって感じよね」
ひそひそ話をしながら、理恵のことを馬鹿にしている。理恵は聞こえてくるひそひそ話に唇を噛んだ。
理恵は今で言う、「陰キャ」だった。楽しく笑っているところを誰も見たことがない。黒い闇のような雰囲気を纏い、誰もそんな理恵に話しかけない。たまに話しかけてくると言えば理恵のことを馬鹿にするような内容ばかりだった。
唇を嚙み締めて、呪う様に心の中で言葉を吐き捨てる。
(あんたたちみんな、死んじゃえばいいのよ!)
心の中で呪いの言葉を吐き捨てながら、理恵はずっと顔を下に向けた。
「おっはよー!!」
颯希は元気に言いながら教室のドアを開けた。
「おはよう、颯希ちゃん。昨日も静也くんとパトロールしていたのでしょう?お疲れ様」
美優がほわほわとした口調で話す。
「あれ?あっちゃんはまだ来ていないのですか?」
「うん、寝坊したみたい。多分、そろそろ来ると思うよ?」
「月曜日ですからね。あっちゃん、休みの日の次の日は朝が起きづらいって言っていますから!」
――――ガラっ!!!
そこへ、勢いよく教室の扉が開いた。
「はぁー、間に合ったわ……」
走ってきたのだろう。息を切らしながら亜里沙が教室に駆け込んできた。
「おはよう!あっちゃん!」
颯希が亜里沙に声を掛ける。
「おはよう。……はぁ、参ったわ。昨日の夜に目覚ましをセットするのを忘れて、時計を見たら七時を過ぎていたから慌てて起きたわよ……」
「ふふっ、また夜更かししていたの?」
「ミステリーを読んでたら犯人が気になって、なかなか途中で読むのをやめることができなかったのよ」
「あっちゃん、ミステリー小説好きですよね!今回はどんな話だったのですか?」
颯希が興味津々に話を聞いてくる。
「あぁ、今回の話はいじめに遭ってる子が復讐のために事件を起こしたっていう話よ。もう、教授と助手が犯人を追い詰めているシーンには読んでて手に汗を握り締めたわ」
亜里沙の読んでいる小説は「黒影シリーズ」の本で透も好んで読んでいる作品だ。颯希の家に遊びに行った時、透から「ミステリーならこれがお勧めだよ」と言われて、読むようになった。第一弾を読んだ時にすっかりそのシリーズに嵌ってしまい、新作が出ると真っ先に買いに走るようになるまでなってしまったのである。
本の話を亜里沙から聞いていると、始業のチャイムが鳴り響いた。
お昼休みになり、颯希たちは中庭に向かった。そこに、静也たちも来る。あの一見以来すっかり仲良くなって、お昼休みはこうしてみんな一緒に中庭で食べるようになったのだった。それぞれお弁当を広げて仲良くしゃべりながら過ごす。
「おぉー!静也くんのお弁当は今日も豪華なのです!」
静也の豪華なお弁当を見ながら颯希がキラキラとした目で言う。
「凄いよな、拓哉さん。静也が成長期だからって言って毎日のお弁当に一切手を抜かないんだぜ!」
ボリューム満点のお弁当をかき込みながら来斗がすかさず言葉を発する。
「ふふっ、静也くんはお父さんにすごく大切にされているんだね」
美優がおっとりしながら朗らかな声で話す。
「美優さんのお弁当もいつも可愛らしいよね。僕の母親は仕事が忙しいからって言って、レンジでチンしたのを適当に入れてるだけだよ」
雄太が美優のお弁当を見て、微笑みながら言葉を綴る。
「なぁ~に贅沢言ってるのよ!雄太はまだいいじゃない!私なんていつもおにぎりかパンよ?作ってる暇ないからって言って!」
雄太の言葉に亜里沙が恨めしそうに言葉を吐く。
「まぁ、亜里沙んちって共働きの上に仕事忙しくて夕飯も場合によってはスーパーの弁当だって言ってたもんな」
静也がエビフライを齧りながら淡々と言う。
あれ以来、すっかり仲良くなった颯希たちはお互いのことを名前で呼び合うようになっていた。
「はぁー、食った食った」
来斗がお腹を叩きながら満足そうな顔をする。
空が晴れ渡り、外はポカポカ陽気だ。
「平和ですねー……」
颯希がお腹いっぱいになったら少し眠くなったのか、美優の膝の上に頭を乗せながら言う。
「ふふっ、そうだね。でも、世の中がもっと平和になればいいのにな……」
美優がちょっと悲しそうに言葉を綴る。
「美優さんの思う平和ってどんな平和なの?」
雄太が興味深げに聞いてくる。美優はその問いに空を見上げながら言葉を綴った。
「いじめや差別のない世の中……かな?後、みんなが平等の世界……みたいな?」
「へぇ、哲学だね」
美優の言葉に雄太が興味津々で言う。
「みゅーちゃんはそういう話が好きなのです」
未だに美優の膝で寝転がっている颯希が嬉しそうに言う。
「みゅーちゃん、よく世界が本当の平和になって欲しいっていう言葉が口癖なのですよ!」
「本当の平和、ねぇ……」
颯希の言葉に静也が言葉を繰り返す。
穏やかな空に楽しい喋り声が響く。
理恵はお昼休みになると、教室を出て校内にある物置入れの近くに腰を下ろした。そこは影になっており、ちょっと薄暗い。いつもお昼休みになるとここへきて一人でパンを食べていた。大半のクラスメートはそのまま教室でお弁当を食べるのだが、入学してすぐ、理恵が教室でお昼ご飯を食べようとしたら、あるクラスメートが「お前がいると飯がまずくなるからどっか行けよ!」と言われてしまい、それ以来、理恵は教室で食べるのをやめてこの場所で食べるようになった。
(ここだったら誰も来ないし……)
理恵はそう心の中で呟きながら、光の差さない薄暗いこの場所で黙々とパンを齧った。
高校に着き、教室に入る。すると、クラスメートたちが影でこそこそとしゃべり始めた。
「桃田さんて、暗いわよね」
「生きてて楽しいのかな?」
「なんか、世の中の不幸を全部一人で抱えてますって感じよね」
ひそひそ話をしながら、理恵のことを馬鹿にしている。理恵は聞こえてくるひそひそ話に唇を噛んだ。
理恵は今で言う、「陰キャ」だった。楽しく笑っているところを誰も見たことがない。黒い闇のような雰囲気を纏い、誰もそんな理恵に話しかけない。たまに話しかけてくると言えば理恵のことを馬鹿にするような内容ばかりだった。
唇を嚙み締めて、呪う様に心の中で言葉を吐き捨てる。
(あんたたちみんな、死んじゃえばいいのよ!)
心の中で呪いの言葉を吐き捨てながら、理恵はずっと顔を下に向けた。
「おっはよー!!」
颯希は元気に言いながら教室のドアを開けた。
「おはよう、颯希ちゃん。昨日も静也くんとパトロールしていたのでしょう?お疲れ様」
美優がほわほわとした口調で話す。
「あれ?あっちゃんはまだ来ていないのですか?」
「うん、寝坊したみたい。多分、そろそろ来ると思うよ?」
「月曜日ですからね。あっちゃん、休みの日の次の日は朝が起きづらいって言っていますから!」
――――ガラっ!!!
そこへ、勢いよく教室の扉が開いた。
「はぁー、間に合ったわ……」
走ってきたのだろう。息を切らしながら亜里沙が教室に駆け込んできた。
「おはよう!あっちゃん!」
颯希が亜里沙に声を掛ける。
「おはよう。……はぁ、参ったわ。昨日の夜に目覚ましをセットするのを忘れて、時計を見たら七時を過ぎていたから慌てて起きたわよ……」
「ふふっ、また夜更かししていたの?」
「ミステリーを読んでたら犯人が気になって、なかなか途中で読むのをやめることができなかったのよ」
「あっちゃん、ミステリー小説好きですよね!今回はどんな話だったのですか?」
颯希が興味津々に話を聞いてくる。
「あぁ、今回の話はいじめに遭ってる子が復讐のために事件を起こしたっていう話よ。もう、教授と助手が犯人を追い詰めているシーンには読んでて手に汗を握り締めたわ」
亜里沙の読んでいる小説は「黒影シリーズ」の本で透も好んで読んでいる作品だ。颯希の家に遊びに行った時、透から「ミステリーならこれがお勧めだよ」と言われて、読むようになった。第一弾を読んだ時にすっかりそのシリーズに嵌ってしまい、新作が出ると真っ先に買いに走るようになるまでなってしまったのである。
本の話を亜里沙から聞いていると、始業のチャイムが鳴り響いた。
お昼休みになり、颯希たちは中庭に向かった。そこに、静也たちも来る。あの一見以来すっかり仲良くなって、お昼休みはこうしてみんな一緒に中庭で食べるようになったのだった。それぞれお弁当を広げて仲良くしゃべりながら過ごす。
「おぉー!静也くんのお弁当は今日も豪華なのです!」
静也の豪華なお弁当を見ながら颯希がキラキラとした目で言う。
「凄いよな、拓哉さん。静也が成長期だからって言って毎日のお弁当に一切手を抜かないんだぜ!」
ボリューム満点のお弁当をかき込みながら来斗がすかさず言葉を発する。
「ふふっ、静也くんはお父さんにすごく大切にされているんだね」
美優がおっとりしながら朗らかな声で話す。
「美優さんのお弁当もいつも可愛らしいよね。僕の母親は仕事が忙しいからって言って、レンジでチンしたのを適当に入れてるだけだよ」
雄太が美優のお弁当を見て、微笑みながら言葉を綴る。
「なぁ~に贅沢言ってるのよ!雄太はまだいいじゃない!私なんていつもおにぎりかパンよ?作ってる暇ないからって言って!」
雄太の言葉に亜里沙が恨めしそうに言葉を吐く。
「まぁ、亜里沙んちって共働きの上に仕事忙しくて夕飯も場合によってはスーパーの弁当だって言ってたもんな」
静也がエビフライを齧りながら淡々と言う。
あれ以来、すっかり仲良くなった颯希たちはお互いのことを名前で呼び合うようになっていた。
「はぁー、食った食った」
来斗がお腹を叩きながら満足そうな顔をする。
空が晴れ渡り、外はポカポカ陽気だ。
「平和ですねー……」
颯希がお腹いっぱいになったら少し眠くなったのか、美優の膝の上に頭を乗せながら言う。
「ふふっ、そうだね。でも、世の中がもっと平和になればいいのにな……」
美優がちょっと悲しそうに言葉を綴る。
「美優さんの思う平和ってどんな平和なの?」
雄太が興味深げに聞いてくる。美優はその問いに空を見上げながら言葉を綴った。
「いじめや差別のない世の中……かな?後、みんなが平等の世界……みたいな?」
「へぇ、哲学だね」
美優の言葉に雄太が興味津々で言う。
「みゅーちゃんはそういう話が好きなのです」
未だに美優の膝で寝転がっている颯希が嬉しそうに言う。
「みゅーちゃん、よく世界が本当の平和になって欲しいっていう言葉が口癖なのですよ!」
「本当の平和、ねぇ……」
颯希の言葉に静也が言葉を繰り返す。
穏やかな空に楽しい喋り声が響く。
理恵はお昼休みになると、教室を出て校内にある物置入れの近くに腰を下ろした。そこは影になっており、ちょっと薄暗い。いつもお昼休みになるとここへきて一人でパンを食べていた。大半のクラスメートはそのまま教室でお弁当を食べるのだが、入学してすぐ、理恵が教室でお昼ご飯を食べようとしたら、あるクラスメートが「お前がいると飯がまずくなるからどっか行けよ!」と言われてしまい、それ以来、理恵は教室で食べるのをやめてこの場所で食べるようになった。
(ここだったら誰も来ないし……)
理恵はそう心の中で呟きながら、光の差さない薄暗いこの場所で黙々とパンを齧った。
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