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第三章 小花は大きな葉に包まれる
第9話
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「小春?どうしたの?」
窓越しに外を眺めている小春に恵美子が優しく声を掛けた。
最近の恵美子は機嫌が良いのか、小春に当たる事もない。なので、そんな恵美子と一緒にいたくて小春は外に行くこともしなかった。
「じゃあ、また……」
部屋に来ていたスーツ姿の男が腰を上げる。男はお辞儀をすると部屋から出ていった。
「ママ……」
男が出ていくと、小春は恵美子の傍に駆け寄り抱き付いた。
「あらあら、今日も甘えん坊さんね」
恵美子が小春の頭を撫でながら優しく抱き締める。
「ママは……小春とママはずっと一緒だよね?」
小春が涙目で恵美子に訴える。
「急にどうしたの?心配しなくてもママは小春とずっと一緒にいるわよ?」
恵美子の言葉に小春の目から涙が零れる。
「御飯にしましょうか。今日はカレーライスよ」
「うん!!」
小春は嬉しそうに返事をすると、再び窓の方へ顔を向けた。
小春は颯希と静也が近くにいることを知っていた。窓のカーテンを開けようとして何気に外を見たら颯希と静也を見つけて、「ママがパパを殺そうとしている」ということがバレて恵美子と引き離しに来たんじゃないかと思い、会うのを避けていた。しかし、毎日のようにアパートの近くまで来ているので気になり始め、カーテン越しに二人の様子を伺っている。そして、今日も来ていることが分かり、恵美子からお客さん来ている間は外で遊んでいるように言われたのを断って、こうして部屋にずっといるのであった。
颯希と静也が根気よく張り込んでいる時だった。恵美子の部屋のドアが開いたのでその方向に視線をじっと凝らす。すると、出てきたのは眼鏡をかけたスーツ姿の男性だった。歳は三十代くらいだろうか。髪もきちんとセットされており、清潔感が漂っている。
「見つからないように後を付けましょう」
颯希の言葉に静也は頷き、二人はそっと男の後を付けた。
その頃、小春は恵美子の作ったカレーライスを口いっぱいに頬張りながら嬉しそうに食べていた。
「いい食べっぷりね、小春。おかわりもあるからたくさん食べてね」
「はーい!!」
小春が美味しそうに食べるのを恵美子は微笑みながら眺めている。
「小春は可愛いわね……。私と茂明さんの子だものね……」
小さく呟くように恵美子が言う。
「あのね……、ママ……えっと……」
小春が食べる手を止めて言葉を発する。しかし、小春は言っていいのかどうかわからないのか、言葉に詰まる。
「ん?どうしたの?」
恵美子が小春のほっぺに付いたお米を手で取りながら優しく問いかける。
「ママは……パパとまた暮らしたい……?」
小春が恐る恐る聞く。
恵美子が小春の言葉に一瞬驚きの表情をするが、すぐに優しい表情になって優しく言葉を綴る。
「そうね、また一緒に暮らしたいわね……」
恵美子の言葉に小春は少し安心したのか、ある事を恵美子に伝える。
「あのね、ママ。この前パパに会ったの……」
「え?」
小春の言葉に恵美子が小さく驚きの声を上げる。
「でね、この前家に送ってくれたお姉ちゃんとお兄ちゃんが言ってたの。『また、パパと一緒に暮らしたいですか?』って……」
茂明と颯希たちが何かで繋がっていることが分かり、恵美子はその事に驚きを隠せない。でも、茂明と一緒になれるならそれは願ったり叶ったりの話だ。
「それでね、小春、ママがいいならいいよって言ったの……」
「そうなのね。そっか~、パパに会ったのね。じゃあ、後で電話してみるわ」
優しく小春を撫でながら恵美子が言葉を綴る。恵美子から茂明を恨んでいる様子は見受けられない。
(また、ママとパパと小春の三人で暮らせる……)
小春は、嬉しそうに心の中でそう呟くと、カレーライスの続きを食べ始めた。
男はこの近くに住んでいるのだろうか……。この辺は道が入り組んでいて、慣れてなければ迷う可能性があるが、男は迷いなくスタスタと歩いている。
颯希たちは男を見失わないようにその後をこっそりと付ける。
「この辺の地理は熟知している様子だな……」
「そうですね……。さっきの歩行者しか通れない階段がある道も知っている感じでしたね」
「ってことは、近所の住人か?」
「可能性は十分あると思いますよ」
男に見つからないように颯希と静也が小声で話す。
そこに、前方から自転車でパトロール中の哲司がこちらに向かってきた。すると、急に自転車を止めて片手を振り出した。
「哲さん、私たちに手を振っているのでしょうか?」
隠れるように身を潜めているから、哲司の方からでは分かりにくいはずだ。
すると、男がそれを返すかのように手を振る。そして、哲司の所まで行くと二人は何かを話している様子が伺えた。
「……どういうことですかね?」
「……知り合いか?」
「行ってみましょう!!」
颯希の言葉で静也と共に二人の元に駆け寄っていった。
窓越しに外を眺めている小春に恵美子が優しく声を掛けた。
最近の恵美子は機嫌が良いのか、小春に当たる事もない。なので、そんな恵美子と一緒にいたくて小春は外に行くこともしなかった。
「じゃあ、また……」
部屋に来ていたスーツ姿の男が腰を上げる。男はお辞儀をすると部屋から出ていった。
「ママ……」
男が出ていくと、小春は恵美子の傍に駆け寄り抱き付いた。
「あらあら、今日も甘えん坊さんね」
恵美子が小春の頭を撫でながら優しく抱き締める。
「ママは……小春とママはずっと一緒だよね?」
小春が涙目で恵美子に訴える。
「急にどうしたの?心配しなくてもママは小春とずっと一緒にいるわよ?」
恵美子の言葉に小春の目から涙が零れる。
「御飯にしましょうか。今日はカレーライスよ」
「うん!!」
小春は嬉しそうに返事をすると、再び窓の方へ顔を向けた。
小春は颯希と静也が近くにいることを知っていた。窓のカーテンを開けようとして何気に外を見たら颯希と静也を見つけて、「ママがパパを殺そうとしている」ということがバレて恵美子と引き離しに来たんじゃないかと思い、会うのを避けていた。しかし、毎日のようにアパートの近くまで来ているので気になり始め、カーテン越しに二人の様子を伺っている。そして、今日も来ていることが分かり、恵美子からお客さん来ている間は外で遊んでいるように言われたのを断って、こうして部屋にずっといるのであった。
颯希と静也が根気よく張り込んでいる時だった。恵美子の部屋のドアが開いたのでその方向に視線をじっと凝らす。すると、出てきたのは眼鏡をかけたスーツ姿の男性だった。歳は三十代くらいだろうか。髪もきちんとセットされており、清潔感が漂っている。
「見つからないように後を付けましょう」
颯希の言葉に静也は頷き、二人はそっと男の後を付けた。
その頃、小春は恵美子の作ったカレーライスを口いっぱいに頬張りながら嬉しそうに食べていた。
「いい食べっぷりね、小春。おかわりもあるからたくさん食べてね」
「はーい!!」
小春が美味しそうに食べるのを恵美子は微笑みながら眺めている。
「小春は可愛いわね……。私と茂明さんの子だものね……」
小さく呟くように恵美子が言う。
「あのね……、ママ……えっと……」
小春が食べる手を止めて言葉を発する。しかし、小春は言っていいのかどうかわからないのか、言葉に詰まる。
「ん?どうしたの?」
恵美子が小春のほっぺに付いたお米を手で取りながら優しく問いかける。
「ママは……パパとまた暮らしたい……?」
小春が恐る恐る聞く。
恵美子が小春の言葉に一瞬驚きの表情をするが、すぐに優しい表情になって優しく言葉を綴る。
「そうね、また一緒に暮らしたいわね……」
恵美子の言葉に小春は少し安心したのか、ある事を恵美子に伝える。
「あのね、ママ。この前パパに会ったの……」
「え?」
小春の言葉に恵美子が小さく驚きの声を上げる。
「でね、この前家に送ってくれたお姉ちゃんとお兄ちゃんが言ってたの。『また、パパと一緒に暮らしたいですか?』って……」
茂明と颯希たちが何かで繋がっていることが分かり、恵美子はその事に驚きを隠せない。でも、茂明と一緒になれるならそれは願ったり叶ったりの話だ。
「それでね、小春、ママがいいならいいよって言ったの……」
「そうなのね。そっか~、パパに会ったのね。じゃあ、後で電話してみるわ」
優しく小春を撫でながら恵美子が言葉を綴る。恵美子から茂明を恨んでいる様子は見受けられない。
(また、ママとパパと小春の三人で暮らせる……)
小春は、嬉しそうに心の中でそう呟くと、カレーライスの続きを食べ始めた。
男はこの近くに住んでいるのだろうか……。この辺は道が入り組んでいて、慣れてなければ迷う可能性があるが、男は迷いなくスタスタと歩いている。
颯希たちは男を見失わないようにその後をこっそりと付ける。
「この辺の地理は熟知している様子だな……」
「そうですね……。さっきの歩行者しか通れない階段がある道も知っている感じでしたね」
「ってことは、近所の住人か?」
「可能性は十分あると思いますよ」
男に見つからないように颯希と静也が小声で話す。
そこに、前方から自転車でパトロール中の哲司がこちらに向かってきた。すると、急に自転車を止めて片手を振り出した。
「哲さん、私たちに手を振っているのでしょうか?」
隠れるように身を潜めているから、哲司の方からでは分かりにくいはずだ。
すると、男がそれを返すかのように手を振る。そして、哲司の所まで行くと二人は何かを話している様子が伺えた。
「……どういうことですかね?」
「……知り合いか?」
「行ってみましょう!!」
颯希の言葉で静也と共に二人の元に駆け寄っていった。
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