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第三章 小花は大きな葉に包まれる
第8話
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次の日から颯希と静也は張り込み作戦を開始した。茂明は仕事の関係で出来ないので二人だけで張り込みを行う。
「来ますかね?」
「どうだろうな……。本当に恋人がいるかどうかも分からないし……」
小春と恵美子のアパートのすぐ近くで隠れるように張り込む。学校が終わってからすぐにこの場所に赴き、影から隠れるように恵美子の部屋を見る。そして、夕方の五時過ぎに公園に行き、茂明にどうだったかというのを報告するという流れとなった。
実はこのアパートに来る前にも颯希たちは公園に行っていた。もしかしたら、小春がいるのではないかと思ったのだが、公園に小春の姿は無かった。なので、すぐにアパートに向かい、今に至るというわけである。
アパートの前でじっと誰かが来るか、誰かが出てくるかを待つ。小春が出てきたらその時はいつものように声を掛ければいい。
時間が刻々と過ぎていく……。
「今日は来ないのですかね……?」
恵美子に新しい恋人がいることを前提に言っているのだろう。颯希の口からそんな言葉が出る。
「仕事している人だったら昼間からは来ない可能性もあるんじゃないのか?夜勤なら別かもしんねぇけど……」
「……考えてみればそうですよね。昼に仕事をしている方でしたらこの時間に来ることはまずないですよね?」
颯希が自分のポカミスに気付き、「あはは」と声を出す。
「……お前、そこまで考えてなかったのか?」
「えっと……その……」
「しっかりしてそうでそういうところは抜けてるよな」
「う、うるさいのです!仕事は昼間だけとは限りません!」
「でも、大半は昼間に働いている人の方が多くないか?」
「も、もしかしたら、夜の仕事の人かもしれないじゃないですか?!」
「夜の仕事?」
「コンビニの店員とか、コンビニの店員とか、コンビニの店員……とか……」
「コンビニの店員限定かよ!」
「うるさいです~!!だって、コンビニは二十四時間営業なのですよ!!」
「颯希の脳みそは貧相なんだな」
「元なんちゃってヤンキーくんには言われたくないのです!!」
「へいへい」
颯希と静也が小声で言い合っているコントのようなものは静也が大人になり終了。でも、確かにこの時間に男が来る可能性は低いのかもしれない。しかし、二人ともまだ中学生なので、夜遅くにフラフラと出歩くわけにもいかない。
夕方五時を過ぎても、部屋には誰も来ず、誰も出てこなかったので、今日の張り込みは終了することにした。そして、茂明と待ち合わせしている公園に向かう。
公園に着くと、茂明がベンチに座っていた。
「お待たせしてすみません!」
颯希と静也が駆け足で茂明のところに来る。
「俺も今来たところだから大丈夫だよ。それで、その、男はいた?」
茂明が恵美子に男がいるのかが気になるのか、早速そのことを聞いてくる。
「いえ、今日は現れなかったです。誰も来なかったし、誰も出てきませんでした……。時間がもしかしたら早いだけかもしれませんが……。すみません……」
颯希が申し訳ないという表情で茂明に頭を下げる。
「颯希ちゃんが謝る事じゃないよ。むしろ、家族の問題に君たちを巻き込んで申し訳ないと思っているんだ。だから、お礼を言うのはこちらの方だよ。ありがとう……」
茂明はそう言葉を綴ると、お礼ということでチョコレートを二人に渡した。チョコレートは箱に入っており、そこら辺のスーパーで売られているようなものではなく、どこかの洋菓子店のチョコレートの様だった。
「こんな高そうなお菓子を頂いていいのですか?!」
颯希が驚くように声を上げる。
「いいよ。これは小春にも親切にしてくれたお礼でもあるからね」
茂明にお礼を言って、颯希と静也は箱に入ったチョコレートを食べた。一口タイプのチョコが四つ入っており、一粒一粒がキレイにデコレーションされている。
「「いただきまーす!!」」
颯希と静也はチョコレートを頂くことにして、味を噛み締めながら食べる。そして、颯希の目からは美味しいものを食べた時と同様に一粒食べるたびに目から美味しい光線が飛び出る。
「すごく美味しいです!」
「確かにうまいな」
静也もそう言いながら美味しそうに食べる。食べながら静也がチョコレートを取り出した紙袋を見て、言葉を綴った。
「ところでさ、もう一つあるみたいだけど自分用に買ったのか?」
紙袋の中には同じ箱のチョコレートがもう一箱入っている。颯希がそれを見て茂明に言葉を掛ける。
「茂明さんもここのチョコレートがお好きなんですか?」
颯希の言葉に茂明は少し悲しそうな顔をして、ゆっくりと話しだした。
「……いや、ここのチョコレートが好きなのは恵美子なんだ。付き合っていた頃、初めて恵美子の誕生日祝いの時に何が欲しいかって聞いたら、返ってきた返事がここのチョコレートだったんだ。正直、拍子抜けしたよ。鞄とかアクセサリーかと思ったらチョコレートって言うからね。思わず、そんなのでいいの?って聞き返しちゃったくらいだよ。そしたら、恵美子が言ったんだ。『嬉しいことの時はここのチョコレートって決めているの!』ってね……」
茂明がそう話しながら、どこか懐かしいような顔をする。そして、更に言葉を続けた。
「その時、俺は恵美子となら一緒に暮らしていけると思ったんだ……。仕事も頑張ろうってね……。でも、あるプロジェクトで大きなミスをしてしまって周りから責められたんだ……。そのストレスで気分転換に夜の街に言ったらそこで若い女性に声を掛けられてね……。それで、フラフラと付いて行ってしまい、関係を持ってしまった……。そして、若い体に溺れてしまい、ストレスとやり場のない苛つきから恵美子にあんな事を言ってしまった……」
茂明の話に颯希たちは黙って聞いていた。余程大きなプロジェクトだったのだろう……。だからこそミスを責められた。その上、ミスを責められただけでは済まなかったのかもしれない。
「また家族で一緒に暮らせるかどうかは分かりませんが、とりあえず今は小春ちゃんの安全を最優先しましょう……」
颯希が言う。
まだ、幼い小春が苦しんでいることをそのまま見過ごすわけにはいかない。放っておいたら栄養失調で死に至る可能性もある。
「張り込みを続けて、小春ちゃんを救うためのヒントを見つけましょう!!」
颯希の力強い言葉に、静也と茂明が頷く。
今、一番大切なことは小春を救うことだ。それも、小春が一番幸せな形で救ってあげて、今の苦しみから解放してあげること。
明日もまた学校の帰りに張り込みをすることを決めて、何かあった時に報告するために颯希が茂明の住んでいる住所を教えてもらう。そして、茂明は「じゃあ、また……」と言って去っていったので、颯希と静也もその場を後にした。
次の日も颯希と静也はアパートの近くで張り込みをした。
しかし、部屋には誰も訪れなければ誰も出てこない。何も手掛かりがつかめないまま、時間だけが無情に過ぎていく。茂明はしばらく仕事が忙しくなるということだったので、日曜日の朝に公園で待ち合わせをすることになった。
この日も特に収穫も無いまま、張り込みは終了した。
張り込み三日目も、特に収穫は無かった。
そして、張り込み四日目の金曜日。
颯希と静也は今日も学校が終わると速やかに行動に移した。
「なかなか手掛かりがつかめませんね……」
「まだ諦めるのは早いだろ。あの子を救うんだろ?」
颯希の少し気弱になっている言葉に静也が喝を入れる。
「そうですね……。ここで弱気になっていてはダメですね!」
静也の言葉に颯希は気合を入れるように力強く頷く。
その二人を一つの視線が捉えていた……。
「来ますかね?」
「どうだろうな……。本当に恋人がいるかどうかも分からないし……」
小春と恵美子のアパートのすぐ近くで隠れるように張り込む。学校が終わってからすぐにこの場所に赴き、影から隠れるように恵美子の部屋を見る。そして、夕方の五時過ぎに公園に行き、茂明にどうだったかというのを報告するという流れとなった。
実はこのアパートに来る前にも颯希たちは公園に行っていた。もしかしたら、小春がいるのではないかと思ったのだが、公園に小春の姿は無かった。なので、すぐにアパートに向かい、今に至るというわけである。
アパートの前でじっと誰かが来るか、誰かが出てくるかを待つ。小春が出てきたらその時はいつものように声を掛ければいい。
時間が刻々と過ぎていく……。
「今日は来ないのですかね……?」
恵美子に新しい恋人がいることを前提に言っているのだろう。颯希の口からそんな言葉が出る。
「仕事している人だったら昼間からは来ない可能性もあるんじゃないのか?夜勤なら別かもしんねぇけど……」
「……考えてみればそうですよね。昼に仕事をしている方でしたらこの時間に来ることはまずないですよね?」
颯希が自分のポカミスに気付き、「あはは」と声を出す。
「……お前、そこまで考えてなかったのか?」
「えっと……その……」
「しっかりしてそうでそういうところは抜けてるよな」
「う、うるさいのです!仕事は昼間だけとは限りません!」
「でも、大半は昼間に働いている人の方が多くないか?」
「も、もしかしたら、夜の仕事の人かもしれないじゃないですか?!」
「夜の仕事?」
「コンビニの店員とか、コンビニの店員とか、コンビニの店員……とか……」
「コンビニの店員限定かよ!」
「うるさいです~!!だって、コンビニは二十四時間営業なのですよ!!」
「颯希の脳みそは貧相なんだな」
「元なんちゃってヤンキーくんには言われたくないのです!!」
「へいへい」
颯希と静也が小声で言い合っているコントのようなものは静也が大人になり終了。でも、確かにこの時間に男が来る可能性は低いのかもしれない。しかし、二人ともまだ中学生なので、夜遅くにフラフラと出歩くわけにもいかない。
夕方五時を過ぎても、部屋には誰も来ず、誰も出てこなかったので、今日の張り込みは終了することにした。そして、茂明と待ち合わせしている公園に向かう。
公園に着くと、茂明がベンチに座っていた。
「お待たせしてすみません!」
颯希と静也が駆け足で茂明のところに来る。
「俺も今来たところだから大丈夫だよ。それで、その、男はいた?」
茂明が恵美子に男がいるのかが気になるのか、早速そのことを聞いてくる。
「いえ、今日は現れなかったです。誰も来なかったし、誰も出てきませんでした……。時間がもしかしたら早いだけかもしれませんが……。すみません……」
颯希が申し訳ないという表情で茂明に頭を下げる。
「颯希ちゃんが謝る事じゃないよ。むしろ、家族の問題に君たちを巻き込んで申し訳ないと思っているんだ。だから、お礼を言うのはこちらの方だよ。ありがとう……」
茂明はそう言葉を綴ると、お礼ということでチョコレートを二人に渡した。チョコレートは箱に入っており、そこら辺のスーパーで売られているようなものではなく、どこかの洋菓子店のチョコレートの様だった。
「こんな高そうなお菓子を頂いていいのですか?!」
颯希が驚くように声を上げる。
「いいよ。これは小春にも親切にしてくれたお礼でもあるからね」
茂明にお礼を言って、颯希と静也は箱に入ったチョコレートを食べた。一口タイプのチョコが四つ入っており、一粒一粒がキレイにデコレーションされている。
「「いただきまーす!!」」
颯希と静也はチョコレートを頂くことにして、味を噛み締めながら食べる。そして、颯希の目からは美味しいものを食べた時と同様に一粒食べるたびに目から美味しい光線が飛び出る。
「すごく美味しいです!」
「確かにうまいな」
静也もそう言いながら美味しそうに食べる。食べながら静也がチョコレートを取り出した紙袋を見て、言葉を綴った。
「ところでさ、もう一つあるみたいだけど自分用に買ったのか?」
紙袋の中には同じ箱のチョコレートがもう一箱入っている。颯希がそれを見て茂明に言葉を掛ける。
「茂明さんもここのチョコレートがお好きなんですか?」
颯希の言葉に茂明は少し悲しそうな顔をして、ゆっくりと話しだした。
「……いや、ここのチョコレートが好きなのは恵美子なんだ。付き合っていた頃、初めて恵美子の誕生日祝いの時に何が欲しいかって聞いたら、返ってきた返事がここのチョコレートだったんだ。正直、拍子抜けしたよ。鞄とかアクセサリーかと思ったらチョコレートって言うからね。思わず、そんなのでいいの?って聞き返しちゃったくらいだよ。そしたら、恵美子が言ったんだ。『嬉しいことの時はここのチョコレートって決めているの!』ってね……」
茂明がそう話しながら、どこか懐かしいような顔をする。そして、更に言葉を続けた。
「その時、俺は恵美子となら一緒に暮らしていけると思ったんだ……。仕事も頑張ろうってね……。でも、あるプロジェクトで大きなミスをしてしまって周りから責められたんだ……。そのストレスで気分転換に夜の街に言ったらそこで若い女性に声を掛けられてね……。それで、フラフラと付いて行ってしまい、関係を持ってしまった……。そして、若い体に溺れてしまい、ストレスとやり場のない苛つきから恵美子にあんな事を言ってしまった……」
茂明の話に颯希たちは黙って聞いていた。余程大きなプロジェクトだったのだろう……。だからこそミスを責められた。その上、ミスを責められただけでは済まなかったのかもしれない。
「また家族で一緒に暮らせるかどうかは分かりませんが、とりあえず今は小春ちゃんの安全を最優先しましょう……」
颯希が言う。
まだ、幼い小春が苦しんでいることをそのまま見過ごすわけにはいかない。放っておいたら栄養失調で死に至る可能性もある。
「張り込みを続けて、小春ちゃんを救うためのヒントを見つけましょう!!」
颯希の力強い言葉に、静也と茂明が頷く。
今、一番大切なことは小春を救うことだ。それも、小春が一番幸せな形で救ってあげて、今の苦しみから解放してあげること。
明日もまた学校の帰りに張り込みをすることを決めて、何かあった時に報告するために颯希が茂明の住んでいる住所を教えてもらう。そして、茂明は「じゃあ、また……」と言って去っていったので、颯希と静也もその場を後にした。
次の日も颯希と静也はアパートの近くで張り込みをした。
しかし、部屋には誰も訪れなければ誰も出てこない。何も手掛かりがつかめないまま、時間だけが無情に過ぎていく。茂明はしばらく仕事が忙しくなるということだったので、日曜日の朝に公園で待ち合わせをすることになった。
この日も特に収穫も無いまま、張り込みは終了した。
張り込み三日目も、特に収穫は無かった。
そして、張り込み四日目の金曜日。
颯希と静也は今日も学校が終わると速やかに行動に移した。
「なかなか手掛かりがつかめませんね……」
「まだ諦めるのは早いだろ。あの子を救うんだろ?」
颯希の少し気弱になっている言葉に静也が喝を入れる。
「そうですね……。ここで弱気になっていてはダメですね!」
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その二人を一つの視線が捉えていた……。
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