はい!こちら、中学生パトロール隊です!!

華ノ月

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第四章 青い炎は恵みの雨を受ける

第4話

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「はぁ~、楽しかったのです!」

 颯希と静也は役所を出ると、それぞれ帰路に着いた。家に帰ると颯希は楽しさと嬉しさから声を上げる。

「あっ!お父さんが帰ってきたら工藤さんのことを聞いてみましょう!」

 大河が誠のことを知っていると言っていたので、話を聞いてみようと思い、誠の帰りを待つ。

 今日の大河の話から、パトロールに役に立ちそうな話を聞くことができた。そして、颯希と静也に「良かったら家に遊びに来ないか?」とも誘われたので近々お邪魔することになっている。颯希の中でどんどんとパトロールをする楽しみが増えていき、ワクワク感が抑えきれない。

「颯希!夕飯よ~!」

 佳澄が階段下から声を掛けてきたので、返事を一つするとキッチンに行った。



「あんの、クソババァ!ほんっとにウザいんだから!!」

 玲奈は帰ってくるなり、鞄をソファーに叩きつけて唸るように言葉を吐く。

「ムカつく、ムカつく!!今日は厄日よ!!クソガキにはムカつくこと言われるし、クソババァには会うし……!」

 そう言いながら地団太を踏む。

「あぁ~、もうこんな時間……。夕飯作らなきゃいけないけど作る気になれないわ……。今日は体調が良くないとか言って食べに連れてってもらおうかしら……」

 ソファーに横になりながらそう呟き、スマートフォンを取り出して裏アカウントに今日の暴言を書き込んでいく。



 男が部屋でブツブツと呟いている。

「やっぱり、あの女だ……。俺の人生を無茶苦茶にしたあの女だ……」

 ブツブツと呟く男、青木あおき 友成ともなりは、そう言いながら卒業アルバムを開くと、憎しみの相手である玲奈の写真を恨むような目で見ていた。

 友成は玲奈を探すために街を彷徨って歩いていたら、道端で着物を着た女性と話している玲奈を見つけて、少し離れた場所で睨むように見つめていた。すぐにでも殺したい感情を押し殺して、じっと見つめていると話が終わったのか、玲奈がその場から足早に去っていった。その時、友成の横を通り過ぎたのだが、玲奈は友成に気付いていない。後を付けようかとも考えたが、通報されたら厄介だ。あえて、後を付けるのをやめて家に帰った。そして、玲奈を何とか地獄に叩き落とす方法はないかと考える。

「あいつの人生も俺が滅茶苦茶にしてやる……」

 闇を孕んだ目で不気味に笑いながら友成が呟く。

 その瞳には狂気が宿っていた……。



「じゃあ、お父さんもやはり工藤さんのことは知っているのですか?」

 夕飯が終わり、リビングで颯希はくつろぎながら誠とお喋りをしていた。

「あぁ、よく知っているよ。工藤君とは何度か面識があってね。それこそ、哲司君と三人で飲みに行くこともあるくらいなんだよ。とても優秀な人で最近婚約をしたみたいだね」

 誠が嬉しそうに大河の話をする。誠も大河の頭の切れの良さや人望が厚いこと、仕事にはとても熱心な人で周りからも一目置かれていることを話す。

「いやぁ~、あれ程の優秀な人材だから、警察官になって欲しかったくらいだよ。でも、工藤君は役所仕事の方がいいと言ってね、警察官になることを応じてくれなかったんだ。でも、いい人であることは確かだし、いろいろ勉強になると思うよ。工藤君からしっかり学びなさい」

 誠の言葉に颯希は力強く頷く。

「そういえば、哲さんが言っていましたが、婚約者の方はとてもおしとやかでいい方みたいですね」

「そうらしいね。私は会ったことはないが話では聞いたことあるよ。とてもおしとやかで穏やかで大和撫子のような女性みたいだね。今どき珍しい女性だが、工藤君にはいい相手だと思うよ。いや~、幸せになって欲しいものだね」

「そうですね!」

 玲奈のことを知らない颯希たちがその話で盛り上がる。そして、この前の事件で時には一緒にパトロール活動をしてくれている小春のことも話す。小春も将来は警察官になりたいという事を言っているという事を話すと、誠は嬉しそうな顔をした。

「……いやぁ、颯希のパトロールでどんどん警察官になりたい人が増えているから、将来の警察官も期待できそうで嬉しいよ。警察の仕事はそれこそ死と隣り合わせのこともあるから、なかなか警察官になろうという人は少ない……。これからも頼むよ、未来の警察官!」

「はい!頑張るのです!!」

 颯希が満面の笑みで敬礼のポーズをしながら言葉を綴る。

 その後も、誠と穏やかに談笑していた。



 その頃、静也は拓哉と夕飯を囲みながら今日のことを話していた。

「そっか~。今度その工藤さんの家に行くんだね。なら、何か手土産を準備しておくよ」
「別に必要ないんじゃねぇの?」
「いやいや、人様の家にお邪魔するわけだからね。礼儀として手土産は必要だよ?」
「ふーん。そういうもんなのか?」
「なんなら、ハート型のクッキーでも持っていくかい?」
「なんでハート型なんだよ?!」
「颯希ちゃんに対する静也の気持ちをハートのクッキーで表現しようと思ってね!」
「工藤さん家に行くのに何でそんなことする必要があるんだよ!」
「工藤さんにも静也の気持ちを知ってもらおうと思って♪」
「余計なことすんじゃねぇ!!」
「ははっ!照れなくてもいいのに」

 拓哉の言葉に静也が顔を真っ赤にしながら反論するが、拓哉は喋るのをやめない。傍から見たら人の恋路を楽しんでいるようにも見える。

「静也は純情だね~。こんな風に育ってくれて父さん嬉しいよ!」

 更に追い打ちをかけるように拓哉が言う。

「う……うるせぇぇぇぇぇぇ!!!」

 最後は静也が雄叫びを上げて今日の親子漫才は終了。こんなやり取りが定番となり、二人しかいない家に笑い声が絶えない、いつもの日常風景だった。



「……お友達が遊びに来るのですか?」

 大河の言葉に玲奈は「なぜ?」というような雰囲気で言葉を聞き返した。

 大河は仕事が終わり、家に帰ると、玲奈が「今日は調子が良くないので夕飯を作れなかった」という話を聞いたので、そんな玲奈を気遣って近くのフレンチレストランに二人で来ていた。食事を食べながら、大河が今度の日曜日に颯希たちが遊びに来ることを伝える。

「うん、いい子たちでね。いろいろとパトロールに役に立ちそうなことを教えてあげようと思っているんだ」

「そうなのですね。分かりました。おもてなしの準備をしておきますね」

 玲奈はそう言うと、カモ肉のステーキを口に運んだ。今日のことがあったので内心は穏やかではないが、それを表に出すわけにはいかない。いつも通りに、微笑みを浮かべて大河と優雅に食事を楽しんでいるように装う。

(……場合によってはその日は出掛けようかな?)

 そんなことを心で呟きながら食事をしていると、大河が口を開いた。

「玲奈さんも良かったら会ってみてね。きっと、気に入ると思うよ!」

 大河の言葉に玲奈が固まる。しかし、すぐにそれを取り、微笑みながら言う。

「えぇ、そうですね。分かりました」

 微笑みながらどことなくぎこちなさを感じるような口調で玲奈が言う。

(なんで、私までいなきゃいけないのよ?!ストレス発散がてら出掛けようと思ったのに!!この、真面目堅物男が!!)

 心の中で苛立ちながら暴言を吐く。


 大河はそんなことに気付かずに食事を楽しんでいた。





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