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第四章 青い炎は恵みの雨を受ける
第5話
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「……でっけぇ、マンションだな……」
日曜日、颯希と静也はおなじみのパトロールの格好で大河のマンションに訪れた。マンションを前に静也が驚きの声を上げる。
大河からマンションの場所を教えてもらっていたので、いつもの公園で待ち合わせをすると、そのマンションに向かった。
大きなマンションの入り口を入ると、大河の部屋の番号を入り口近くに備え付けてあるテンキーに入力する。すると、しばらくしてスピーカーから声がした。
「いらっしゃい。今開けるね」
大河がそう言うと、ガチャンと音がして自動ドアが開く。その自動ドアをくぐり、エレベーターに乗ると、最上階のボタンを押す。
「なんだかすごいセキュリティですね!」
「そうだな。庶民にはまず手が出ないだろうな」
「あーじゃぱー!って感じですね!」
「あじゃぱーって何だよ」
「あらまーって言う言葉を颯希語で言ってみました!」
「なんじゃそりゃ……」
颯希の言葉遊びに静也が半分呆れかえる。そんなやり取りをしていると、最上階に着き、エレベーターを降りる。そして、大河の部屋の前に着くと、インターフォンを鳴らした。
「よく来たね。颯希ちゃん、静也くん」
大河はそう言うと、颯希たちを部屋に招き入れた。今日は仕事が休みだからか、スラックスにロングティーシャツというラフな格好で颯希たちを迎え入れる。大河の隣には薄い水色のロングワンピースを着た玲奈が微笑みながら立っていた。
「今日はお招きありがとうございます!あっ、これ良かったら召し上がってくださいね!」
颯希がそう言いながら紙袋に入った小包を渡す。静也も拓哉が用意してくれたお菓子を渡し、部屋に上がった。
「わぁ~……、素敵なお部屋ですね!」
颯希が通されたリビングに入ると感嘆の声を上げる。
リビングは広々としていて、花が活けてあったり風景の写真も飾られていたりしていた。大きな窓には白のレースカーテンが引かれており、中央には大きなローテーブルと、革張りの黒いソファーが置いてある。
大河がソファーに座るように颯希たちを促し、自分もソファーに腰掛ける。そこへ、玲奈が紅茶とケーキを運んできた。ケーキはイチゴの乗った小さな丸いケーキで一つ一つテーブルに並べていく。
「ありがとうございます!」
颯希は玲奈にお礼を言い、頭を下げる。
「じゃあ、ごゆっくりしていってください」
玲奈はそう言うと、リビングを出ようとする。
その時だった。
「良かったら玲奈さんも一緒に勉強してはどうだい?きっとためになるよ!」
大河がそう言って玲奈を引き留める。
「えっと……私は別に……」
玲奈が断ろうとする。
「今日は防犯についてのことを話ししようと思うんだ。玲奈さんもまたあんな目に合わないためにもぜひ参加するといいよ!」
大河が笑顔でそう言葉を綴る。
「またって、どういうことなんですか?」
大河の言葉に静也が聞き返す。
「あぁ、玲奈さん、痴漢に遭ったことがあるんだ。それがきっかけで出会ったのだけど、あんな目に遭って辛かっただろうからね。だから、そんな目に遭わないように今日は防犯についての話をする予定でいたんだよ。玲奈さんも、自分の身を守るためにも話を聞くといいよ。きっと役に立つだろうからさ」
大河の言葉に玲奈はどこか腑に落ちなかったが、ここで断れば怪しまれる可能性もある。仕方なく参加することにして、大河の防犯の話を聞くことにした。
「……へぇ~、凄いですね!今はそんな防犯グッズもあるのですね!」
大河の話に興味津々の様子で颯希と静也は聞いている。その横で玲奈は微笑みながら話を聞いているが、聞いているふりをしているだけで、実際に耳には入っていない。ただ、早く話が終わらないかと心の中で苛立ちながら時間が過ぎるのを待っている。
大河の熱心に語る話に颯希たちは時折メモを取りながら聞いている。
「……という感じなんだよ。どうだい?勉強になるかい?」
「はい!すごく勉強になります!」
「自分の身を守るためにはいろんな方法があるんですね。話も分かりやすかったです」
大河の言葉に颯希と静也がそれぞれ意見を述べたりする。大河も二人の意見に丁寧に説明してくれたりと楽しい時間を過ごす。ただ、玲奈だけは苦痛を顔に出さないようにしているが心の中ではうんざりしていた。
(全く……。いつになったら終わるのよ!とっとと帰ればいいのに……)
心の中で悪態を突きながら、ひたすら時間が早く過ぎることを祈る。
「玲奈さん?どうかしましたか?顔色があんまりよくないようですが……」
颯希が玲奈の様子がおかしいことに気付いて声を掛ける。その声に玲奈がハッとして慌てて言葉を綴る。
「いえ、大丈夫よ。ごめんなさいね、ちょっと疲れているみたいで……」
申し訳ないような表情で玲奈が颯希に謝る。
「なぁ、今から工藤さんの話のおさらいをしようぜ」
「それはいいですね!是非そうしましょう!」
静也の提案に颯希も同意する。
「玲奈さんは話を聞いてどうでした?」
静也がいきなり玲奈に話を振る。突然話を振られて玲奈が慌てふためく。
「えっと……、そうね……」
話をほとんど聞いていなかったので、返答に窮する。そこへ、静也が追い打ちをかけるように言葉を掛ける。
「……工藤さんの話、聞いてました?」
静也の言葉に玲奈は「え……えぇ……」と言うものの、早く終わって欲しいことばかりを考えていたので話を全く聞いていないとは言えない。
「ちょっと、席を外しますね」
玲奈が急に立ち上がり、リビングを出ていく。玲奈の行動にしばらくリビングは無言になったが、お手洗いか何かだろうと思い、三人で大河の話のおさらいをしていた。
玲奈は寝室に入ると、憎しみを孕んだ声で小さく呟く。
「あんのクソガキ……。私に恥かかせやがって……」
そう呟くと、スマートフォンを取り出し、裏アカウントにアクセスする。そして、そこに暴言を書き込みながら颯希たちが帰るまで、寝室から出てこなかった。
「……あぁ、じゃあよろしく頼むよ」
友成はそう言うと、電話を切った。
玲奈を見つけた日、一度家に戻ったがコンビニに行く用事ができたので夜遅くにコンビニに足を運んだ。コンビニで買い物を済ませた帰り道、偶然レストランから出てきた玲奈と大河を見かけた。そして、車で来たわけではないことが分かると、その後をこっそりと尾行する。すると、二人は大きなマンションに入っていき、玲奈がここに住んでいるというのが分かった。相手の男が恋人か何かの類だという事は雰囲気で分かり、苦虫を噛み潰すように口を動かす。自分を地獄に叩き落としておいて、相手は豪華なマンションで優雅な暮らしをしている……というのが許せなかった。
そして、家に帰るとある一つのことを思いつき、ある人物に電話を掛けることにした。電話の相手は友成の提案をのみ、後日、その計画を実行しようという事になる。
「笑っていられるのも今のうちだ……」
電話を切った後、友成が不気味な笑みを浮かべながら小さい声で言葉を吐く。
そして、パソコンを開き、ある準備をしていく……。
「……そういえば、颯希ちゃんの腰にあるそのピコピコハンマーは何だい?」
颯希たちは大河と談笑しながらパトロールのことを話していた。そして、ふと気になったのか、颯希の腰にぶら下がっているピコピコハンマーを指さしながら大河が聞く。
「これですか?これは、警棒の代わりなのですよ!そして、これが違反を見つけた時に鳴らす笛なのです!そして、こちらが中学生パトロール隊の証でもある父がプレゼントしてくれたバッジです!」
颯希が「えっへん!」とでも言うかのように嬉しそうな顔でそのバッジを見せつける。その隣でなぜか静也も同じようにバッジを見せつけるようなポーズでいる。
「へぇ、なんだか本格的だね。うんうん、いかにもパトロール隊って感じだね!」
大河が朗らかな笑顔で言葉を綴る。
「……そういえば、玲奈さん、戻ってきませんね」
ふと、玲奈のことを思い出して颯希が不思議そうに言葉を綴る。
「ちょっと疲れていたみたいだからね。なに、心配しなくても大丈夫だよ。帰る頃には戻ってくると思うよ?」
大河が申し訳ないような雰囲気で言葉を綴る。その横で静也は何かを考えていた。
(あの人、なんか引っ掛かるんだよなぁ……)
結局、玲奈が戻らないまま、時間も時間なので颯希と静也は大河にお礼を言い、帰ることにした。
「良かったらまた遊びに来てよ。日曜日なら僕は大半家にいるからさ」
「はい!ありがとうございます!また、遊びに来ますね!」
「ありがとうございました」
颯希と静也がそれぞれお礼を言って大河と玄関でサヨナラする。
マンションを出て、颯希と静也が並んで道を歩いていると、静也が口を開いた。
「なぁ、颯希。お前、何か気付いたか?」
日曜日、颯希と静也はおなじみのパトロールの格好で大河のマンションに訪れた。マンションを前に静也が驚きの声を上げる。
大河からマンションの場所を教えてもらっていたので、いつもの公園で待ち合わせをすると、そのマンションに向かった。
大きなマンションの入り口を入ると、大河の部屋の番号を入り口近くに備え付けてあるテンキーに入力する。すると、しばらくしてスピーカーから声がした。
「いらっしゃい。今開けるね」
大河がそう言うと、ガチャンと音がして自動ドアが開く。その自動ドアをくぐり、エレベーターに乗ると、最上階のボタンを押す。
「なんだかすごいセキュリティですね!」
「そうだな。庶民にはまず手が出ないだろうな」
「あーじゃぱー!って感じですね!」
「あじゃぱーって何だよ」
「あらまーって言う言葉を颯希語で言ってみました!」
「なんじゃそりゃ……」
颯希の言葉遊びに静也が半分呆れかえる。そんなやり取りをしていると、最上階に着き、エレベーターを降りる。そして、大河の部屋の前に着くと、インターフォンを鳴らした。
「よく来たね。颯希ちゃん、静也くん」
大河はそう言うと、颯希たちを部屋に招き入れた。今日は仕事が休みだからか、スラックスにロングティーシャツというラフな格好で颯希たちを迎え入れる。大河の隣には薄い水色のロングワンピースを着た玲奈が微笑みながら立っていた。
「今日はお招きありがとうございます!あっ、これ良かったら召し上がってくださいね!」
颯希がそう言いながら紙袋に入った小包を渡す。静也も拓哉が用意してくれたお菓子を渡し、部屋に上がった。
「わぁ~……、素敵なお部屋ですね!」
颯希が通されたリビングに入ると感嘆の声を上げる。
リビングは広々としていて、花が活けてあったり風景の写真も飾られていたりしていた。大きな窓には白のレースカーテンが引かれており、中央には大きなローテーブルと、革張りの黒いソファーが置いてある。
大河がソファーに座るように颯希たちを促し、自分もソファーに腰掛ける。そこへ、玲奈が紅茶とケーキを運んできた。ケーキはイチゴの乗った小さな丸いケーキで一つ一つテーブルに並べていく。
「ありがとうございます!」
颯希は玲奈にお礼を言い、頭を下げる。
「じゃあ、ごゆっくりしていってください」
玲奈はそう言うと、リビングを出ようとする。
その時だった。
「良かったら玲奈さんも一緒に勉強してはどうだい?きっとためになるよ!」
大河がそう言って玲奈を引き留める。
「えっと……私は別に……」
玲奈が断ろうとする。
「今日は防犯についてのことを話ししようと思うんだ。玲奈さんもまたあんな目に合わないためにもぜひ参加するといいよ!」
大河が笑顔でそう言葉を綴る。
「またって、どういうことなんですか?」
大河の言葉に静也が聞き返す。
「あぁ、玲奈さん、痴漢に遭ったことがあるんだ。それがきっかけで出会ったのだけど、あんな目に遭って辛かっただろうからね。だから、そんな目に遭わないように今日は防犯についての話をする予定でいたんだよ。玲奈さんも、自分の身を守るためにも話を聞くといいよ。きっと役に立つだろうからさ」
大河の言葉に玲奈はどこか腑に落ちなかったが、ここで断れば怪しまれる可能性もある。仕方なく参加することにして、大河の防犯の話を聞くことにした。
「……へぇ~、凄いですね!今はそんな防犯グッズもあるのですね!」
大河の話に興味津々の様子で颯希と静也は聞いている。その横で玲奈は微笑みながら話を聞いているが、聞いているふりをしているだけで、実際に耳には入っていない。ただ、早く話が終わらないかと心の中で苛立ちながら時間が過ぎるのを待っている。
大河の熱心に語る話に颯希たちは時折メモを取りながら聞いている。
「……という感じなんだよ。どうだい?勉強になるかい?」
「はい!すごく勉強になります!」
「自分の身を守るためにはいろんな方法があるんですね。話も分かりやすかったです」
大河の言葉に颯希と静也がそれぞれ意見を述べたりする。大河も二人の意見に丁寧に説明してくれたりと楽しい時間を過ごす。ただ、玲奈だけは苦痛を顔に出さないようにしているが心の中ではうんざりしていた。
(全く……。いつになったら終わるのよ!とっとと帰ればいいのに……)
心の中で悪態を突きながら、ひたすら時間が早く過ぎることを祈る。
「玲奈さん?どうかしましたか?顔色があんまりよくないようですが……」
颯希が玲奈の様子がおかしいことに気付いて声を掛ける。その声に玲奈がハッとして慌てて言葉を綴る。
「いえ、大丈夫よ。ごめんなさいね、ちょっと疲れているみたいで……」
申し訳ないような表情で玲奈が颯希に謝る。
「なぁ、今から工藤さんの話のおさらいをしようぜ」
「それはいいですね!是非そうしましょう!」
静也の提案に颯希も同意する。
「玲奈さんは話を聞いてどうでした?」
静也がいきなり玲奈に話を振る。突然話を振られて玲奈が慌てふためく。
「えっと……、そうね……」
話をほとんど聞いていなかったので、返答に窮する。そこへ、静也が追い打ちをかけるように言葉を掛ける。
「……工藤さんの話、聞いてました?」
静也の言葉に玲奈は「え……えぇ……」と言うものの、早く終わって欲しいことばかりを考えていたので話を全く聞いていないとは言えない。
「ちょっと、席を外しますね」
玲奈が急に立ち上がり、リビングを出ていく。玲奈の行動にしばらくリビングは無言になったが、お手洗いか何かだろうと思い、三人で大河の話のおさらいをしていた。
玲奈は寝室に入ると、憎しみを孕んだ声で小さく呟く。
「あんのクソガキ……。私に恥かかせやがって……」
そう呟くと、スマートフォンを取り出し、裏アカウントにアクセスする。そして、そこに暴言を書き込みながら颯希たちが帰るまで、寝室から出てこなかった。
「……あぁ、じゃあよろしく頼むよ」
友成はそう言うと、電話を切った。
玲奈を見つけた日、一度家に戻ったがコンビニに行く用事ができたので夜遅くにコンビニに足を運んだ。コンビニで買い物を済ませた帰り道、偶然レストランから出てきた玲奈と大河を見かけた。そして、車で来たわけではないことが分かると、その後をこっそりと尾行する。すると、二人は大きなマンションに入っていき、玲奈がここに住んでいるというのが分かった。相手の男が恋人か何かの類だという事は雰囲気で分かり、苦虫を噛み潰すように口を動かす。自分を地獄に叩き落としておいて、相手は豪華なマンションで優雅な暮らしをしている……というのが許せなかった。
そして、家に帰るとある一つのことを思いつき、ある人物に電話を掛けることにした。電話の相手は友成の提案をのみ、後日、その計画を実行しようという事になる。
「笑っていられるのも今のうちだ……」
電話を切った後、友成が不気味な笑みを浮かべながら小さい声で言葉を吐く。
そして、パソコンを開き、ある準備をしていく……。
「……そういえば、颯希ちゃんの腰にあるそのピコピコハンマーは何だい?」
颯希たちは大河と談笑しながらパトロールのことを話していた。そして、ふと気になったのか、颯希の腰にぶら下がっているピコピコハンマーを指さしながら大河が聞く。
「これですか?これは、警棒の代わりなのですよ!そして、これが違反を見つけた時に鳴らす笛なのです!そして、こちらが中学生パトロール隊の証でもある父がプレゼントしてくれたバッジです!」
颯希が「えっへん!」とでも言うかのように嬉しそうな顔でそのバッジを見せつける。その隣でなぜか静也も同じようにバッジを見せつけるようなポーズでいる。
「へぇ、なんだか本格的だね。うんうん、いかにもパトロール隊って感じだね!」
大河が朗らかな笑顔で言葉を綴る。
「……そういえば、玲奈さん、戻ってきませんね」
ふと、玲奈のことを思い出して颯希が不思議そうに言葉を綴る。
「ちょっと疲れていたみたいだからね。なに、心配しなくても大丈夫だよ。帰る頃には戻ってくると思うよ?」
大河が申し訳ないような雰囲気で言葉を綴る。その横で静也は何かを考えていた。
(あの人、なんか引っ掛かるんだよなぁ……)
結局、玲奈が戻らないまま、時間も時間なので颯希と静也は大河にお礼を言い、帰ることにした。
「良かったらまた遊びに来てよ。日曜日なら僕は大半家にいるからさ」
「はい!ありがとうございます!また、遊びに来ますね!」
「ありがとうございました」
颯希と静也がそれぞれお礼を言って大河と玄関でサヨナラする。
マンションを出て、颯希と静也が並んで道を歩いていると、静也が口を開いた。
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