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華ノ月

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第四章 青い炎は恵みの雨を受ける

第6話

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 突然、話を振ってきた静也に颯希は「うーん……」と唸ると、言葉を綴った。

「そうですね……。なんとなくですが、玲奈さんに違和感を抱いたことでしょうか?」

「やっぱり颯希も感じたんだな……。俺も、なんかあの人、引っ掛かるんだよな……」

「なんというか、無理しているというか、装っているというか……。そんな気がしましたね……。勘違いかもしれませんが……」

「工藤さんは特に何も感じてなかったけど、俺、正直、あの人が良い人とは思えない……」

 そんな会話をしながら帰り道を歩く。途中で静也と別れると、違和感を抱いたまま、颯希は家に帰った。

 家に帰ると、透の部屋に行き、聞いてみる。

「……まぁ、俺から言わせれば、そんな人いるか?って感じだな。人間は欲のために人を陥れる人もいる。まぁ、中には本当に純粋な人もいるが、大半は裏の顔を持っているのがほとんどだ。その玲奈って人も、それはあくまで表向きの顔で裏の顔は全く違う可能性はあるかもしれないな」

「じゃあ、やはり玲奈さんのあの姿は本当の姿ではないという事なのでしょうか?」

「まぁ、あり得るだろうな。そういう人ほど、裏では何をやっているか分からないところがある。なんか、埃を叩けばいろいろ出てきそうな感じだな」

 透の話に颯希は「うーん……」と唸る。でも、別に何かそれで事件が起きているわけではない。人様のことだからどうこう出来ないのもある。

「とりあえず、事件がらみではないんだからあんまり気にしないことだな」

 透の言葉に颯希はもっともな意見だと思い、詮索をするのは良くないと考える。でも、なんだか腑に落ちない。

 何となくだが嫌な予感がする……。

 そんなことを思いながら颯希は頭を唸らせた。



「あっ、玲奈さん、大丈夫かい?」

 颯希たちが帰ったのが、玄関の開く音で分かったので玲奈は寝室から出てきた。

「ごめんなさい、大河さん。ちょっと今日は体調があまり良くなかったみたいなの……」

 玲奈が頭を押さえながら言葉を綴る。勿論、それは玲奈の演技だ。体調が良くないわけでは当然ない。静也の言葉に苛立ちを感じただけで見透かされる前にその場を離れただけのこと。しかし、大河はその事に気付いていない。本当に体調が良くないのだと思い、心配している。

「今日の夕飯は僕が作るよ。だから、玲奈さんはソファーにでも座ってゆっくりしてて」

 大河が気遣って言葉を掛ける。玲奈はそれに甘えることにしてソファーに腰掛けた。

 隣接されているキッチンで大河が食事の準備を始める。

「あっ!そうだ、玲奈さん。また今度颯希ちゃんたちが遊びに来るから、次の時もまた一緒に参加してね!」

「えぇっ!!」

 キッチンから大河が掛けた言葉に玲奈が驚きの声を上げる。

「だって、玲奈さん。あんな目に遭うってことは防犯の知識が低いってことだからね!ぜひ、次も参加して防犯の知識を身に付けるといいよ!」

 大河が笑顔で言う。その言葉に玲奈が唖然としながら心の中で暴言を吐く。

(じょ……冗談じゃないわよ!また、あんな真面目堅物な話に参加させられるの?!毎回参加させられるなんてたまったもんじゃないわ!この……真面目バカ男!!)

「よろしくね!玲奈さん!」

 大河が全く悪気のない笑顔で言葉を綴る。そのことに玲奈は心の中で愕然としながら聞いている。

「ちょ……ちょっと、お手洗いに行ってきますね……」

 玲奈がそう言いながら席を立つ。そして、お手洗いに入りドアを閉めると、ポケットからスマートフォンを取り出し、裏アカウントにつぶやきを書き込んでいった……。



 静也は家に帰ると、部屋で今日のことを考えていた。

(玲奈って人、なんか裏がありそうなんだよな……。それも、なんかとんでもない裏がある感じがする……)

 静也がそこまで考えて、「はぁ~」ため息を吐く。

「静也!夕飯できたよ!」

 そこへ、拓哉が下から声を掛けてきた。

 キッチンに行き、拓哉と夕飯を囲む。

「そういえば、ハート型のクッキーはどうだったかな?」

「は?」

「は?じゃないよ。持たせただろう?ハート型のクッキーが入った箱」

 拓哉の言葉に静也がしばらくフリーズする。大河に手土産は渡したが中身はその場に出なかったので見ていない。

「……マジでハート型のクッキーにしたのか?」
「うん!そうだよ!」
「……マジで?」
「うん!大マジだよ!あれ?もしかしてお茶請けで出なかったかな?」
「……嘘だろ」
「いや!至ってホントのことだよ!」
「……」
「……」

 静也が放心した状態で拓哉に聞く。そして、返ってきた返事の数々に静也はみるみると顔を赤くしていき、叫ぶように言葉を吐いた。


「な……何しやがってるんだぁぁぁぁぁぁ!!!」



「で、いつ決行するんだ?」

 あるカフェで男が言う。

「具体的にはまだ決めていないが、あの女は家で大人しくしていられるタイプじゃない。昼間は外出するはずだ。そこで、タイミングを見計らって声を掛けて欲しい」

 友成がコーヒーを啜りながら、計画の内容を話す。

 男と友成は高校からの親友同士だった。ちょっと背が低めの友成に比べたら、男の方は身長が高く、顔立ちも整っていて、いわゆるイケメンに分類される。

「でも、その玲奈って女、そんなんで本当に番号を教えてくれるのかな?」

「爽やかなイケメンが好きだからな。そこへ、趣味が同じだと分かれば食らいつくはずだ」

「あぁ、ロック系の音楽が好きでカラオケが趣味だって言ってたな」

「悪いな……。関係のない彰人あきとを巻き込んでしまって……」

「悪くなんかないさ。大事な親友の人生を滅茶苦茶にしたんだ。それで何もしなかったら夢見が悪そうだからな。だから、その女を地獄に落とす手伝いだったらいくらでも協力してやるよ」

 彰人と呼ばれた男が胸を張ってそう言葉を綴る。

「ありがとう……。彰人……」

 そう話しながら、玲奈を地獄に落とすための計画を更に細かく練っていく。


(絶対、地獄に叩き落としてやる……)


 友成がそう心で誓いながら、計画を実行にするための手順を彰人に説明していった。



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