はい!こちら、中学生パトロール隊です!!

華ノ月

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第四章 青い炎は恵みの雨を受ける

第10話

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「んー……。昨日の図書館での勉強はあんまりはかどらなかったな~って思ってさ……」

 昼休み、颯希たちはいつものようにお弁当を広げながら談笑していた。そこへ、静也がいつもと様子が違うので雄太が何かあったのかを聞いたところ、そんな言葉をポツリと呟く。

 あの後、颯希と静也は図書館に行ったが、玲奈が一緒にいた男や友成のことが気になって、予定していた勉強会にうまく身が入らなかった。美優たちが心配して、何かをあったか聞いてきたので颯希が昨日の出来事を説明する。

「……成程ね。確かに気になる話ね」

 亜里沙が話を聞いて声を出す。

「でもさ、事件ってわけじゃないだろ?あんまり他人の事情に首を挟まない方がいいんじゃないか?」

 来斗がもっともな言葉を言う。

 でも、確かにその通りだった。この件に関しては颯希たちが間に入ることじゃない。でも、颯希の中でなんだか嫌な予感が拭えない。颯希が声を掛けた男にも釘を刺されている。しかし、大河の知っている玲奈が実は偽りの姿だとしたら、それは大河にとってあまり良くないことのように思える。それに、玲奈と一緒にいた男が玲奈の浮気相手だとしたら、それは大河に対する裏切り行為だ。もしかしたら、玲奈は大河のことが好きと言うわけではなく、何か裏があるのかもしれない。そう考えてしまう。

「……なんとなくですが、なんだかとんでもないことが起きるような気がするのです……」

 颯希の中で嫌な予感が拭えない。

 このまま知らぬ顔をしていていいのか?

 そんな感情が渦巻いていた……。



 ――――カタカタカタ……。

 静かな部屋にパソコンのキーボードを叩いている音が響く。

「……よし、解除出来た。次は……」

 友成が小さく呟く。

 あれから、友成はパソコンとにらめっこをしながら彰人に教わった玲奈の携帯番号を元にいろいろな情報を探っていた。

 友成はパソコンのスキルをいろいろ持っていて、番号が分かればその番号を頼りに色々調べることができるほどの高いスキルを持っている。玲奈の番号からパスワード等を解除し調べていく。

「あの女のことだから、あの事もどこかに書き込んでいるはずだ……」

 「あの事」が書かれてありそうなサイトを調べていく。しかし、大半が普通のチャットやメールのやり取りばかりでなかなか見当たらない。しかし、諦めてたまるかとでも言うように根気よく探していく。

 すると、玲奈があるサイトによくアクセスをしていることが分かった。

 裏サイトの一つで陰口や悪口の書き込みがされている、いわゆる裏アカウントで行うサイトのことだ。それを見つけ出し、玲奈の裏アカウントのコメントを調べる。

「ユーザー名は『高嶺の勝ち組女子』か……。あの女が使いそうな名前だな……」

 小さく吐き捨てるように呟く。

 そして、そこに書き込みされているつぶやきを一つ一つ目で追っていく。そこに書かれてあるつぶやきを見て友成が吐き気のようなものを覚える。最近だと、相手の母親であろう人の悪口や、相手のことの悪口も書かれている。他にも誰かは書かれていないが、彰人のことだろうと思われる書き込みもしてある。彰人とのことで悪くは書かれていないが、そのつぶやきで玲奈が浮かれていることが手に取るように分かる。

「笑っていられるのも今だけだ……」

 不気味な笑みを浮かべながら友成が小さく言葉を吐く。


 ――――ピコン!


 友成のスマートフォンが響いた。開けると、彰人からメールが来ている。

『あの女、あれから何度もメッセージを送ってくるぜ?まぁ、怪しまれないように返事はしているがな。中には料理上手なことをアピールしているのか、『彰人さんのためにお料理の勉強中です』みたいなコメントと一緒に写真を送ってきたりするからキモっ!って感じだぜ。女子力高いですアピールみたいだよ』

 そんな内容が送られてきて、友成が心の中で玲奈を馬鹿にするような言葉を吐く。

(あの女、見栄っ張りのところは相変わらずみたいだな……)

 そして、再びパソコンに向き合い、裏アカウントに書かれてあるつぶやきを読んでいった。



「ただいまー」

「お帰りなさい、大河さん」

 仕事を終えて帰って来た大河に玲奈が返事をする。

「あれ?何か嬉しいことがあったの?すごくご機嫌だね」

 嬉しそうな表情の玲奈に大河が聞く。

「あら、そうですか?きっと、大河さんが帰ってきて嬉しいから表情に出たのでしょうか?」

 玲奈が平気で嘘を吐くような言葉を言う。でも、大河は全く気付かずに玲奈の言葉を素直に信じている。

「あっ、夕飯、出来ていますよ」

 玲奈がそう言い、テーブルに夕飯の料理を並べる。ちょっと手の込んだサラダにチキンステーキ、野菜がたくさん入ったスープが食卓に並べられた。でも、この料理は大河のために作ったのではなく、彰人にアピールするための料理だ。

 そんなことを知らない大河は美味しそうに料理を口に運んでいく。

「そうだ、玲奈さん、今度の日曜日なんだけど……」

 夕飯を食べながら大河が話を振った。

「母から連絡が来てね、久々に実家に顔を出そうと思うんだ。良かったら玲奈さんも一緒にどうぞって言ってくれてるんだよ。夕飯も用意してくれるって。どうかな?」

「えっと……、そうね……」

 玲奈が少し言葉を詰まらす。玲奈の中であの母親に会うことは何よりも苦痛だからだ。また、小言や『工藤家の女たる者』の話を聞かされるかもしれない。

「ごめんなさい。その日は久々にこっちに遊びに来る女友達と会う予定があるの。だから、今回は止めておきます。本当にごめんなさいね……」

 玲奈が申し訳ない顔で大河の誘いを断る。勿論、そんな予定は全くない。しかし、玲奈の中でチャンスだと思い、顔に嬉しさが滲み出ている。

(ふふっ、後で彰人さんに連絡しようっと……)

 そう心の中で呟くと、何もないかのように食事を楽しんでいった。





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