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第四章 青い炎は恵みの雨を受ける
第11話
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友成は連日、玲奈の裏アカウントに書き込まれている内容に目を通していた。大半が相手を誹謗中傷することが書かれており、読んでいるとうんざりしてくる。しかし、この裏アカウントにきっと例のことが書かれているはずだと思い、根気よく読んでいく。
その時だった。
あるつぶやきを見て声を上げる。
「……あった。これだ……」
目的の内容を見つけて友成はそれをコピーする。そして、更に遡って他にもそういった書き込みがないか確認していく。すると、いくつか似たような内容の書き込みを見つけ、それも同様にコピーしていった。
(これだけあれば、十分だろう……。あ……、そういえば……)
友成は玲奈が婚約しており、相手がどんな人なのか顔を見ようと思い、玲奈のスマートフォンの番号を使いSNSで相手を確認する。すると、同じ男性が玲奈と映っている写真を何枚か見つけた。
(こいつか……。なんというか、真面目な人っぽいな……。まぁ、役所勤めだから当然と言えば当然か……)
友成が相手の男も玲奈の仮の姿に騙されているのだろうと考えてしまうと同時に、相手の男も不憫だなとも感じる。そして、あることを思いついた。
――――ピコン!
そこへ、友成のスマートフォンが鳴り、メッセージが届いたことを知らせる。それを開くと、彰人からメールが届いていた。
『日曜日にあの女と会うことになった。断るとややこしくなるかもしれないからとりあえず会ってくるよ』
彰人からのメールを読み、友成はその日にある人物に会いに行くことを決意した。
「おはようございます!静也くん!」
日曜日、颯希はパトロールをするためにいつもの待ち合わせの公園で静也と合流した。そして、いつものように清掃活動をしながらパトロールをしていく。
「……やっぱりあの男のことが気になっているのか?」
颯希がいつもに比べて覇気がないことを感じとり、静也が声を掛ける。
「えっと……。まぁ、そうですね……」
「……何なら、工藤さんのところに行ってみるか?」
静也の提案に颯希は考えたが、もし、何か起ころうとしているのなら事件に発展する前に何としても止めたいという思いがある。友成に釘は刺されているものの、その人が何かをしでかす危険性はある。あの時、友成を見つけた時のあの表情からは強い憎悪が感じられた。場合によっては大河も被害に遭うのではないかという思いもある。
やはり、このまま放っていくわけにはいかないと感じ、颯希は意を決した。
「……行きましょう。工藤さんのところに……」
そして、パトロールを中断して颯希と静也は大河のマンションに行くことにした。
「それじゃあ、行ってくるね。玲奈さんも久々に会う友達と楽しんでくるといいよ」
何も疑っていない大河はそう言うと、実家に行くために家を出ていく。大河が出ていったことを見届けると、玲奈は鼻歌交じりで彰人と会うための支度を始めた。
大河がマンションを出て駐車場の方に行こうとした時だった。
「工藤大河さんですか?」
一人の男が大河に声を掛けた。
「はい、そうですが……。あなたは?」
大河が男に聞くが、男は名を名乗らずに話し始めた。
「木原玲奈の婚約者で間違いないですよね?」
「はい、そうですが……」
男の言葉に大河が返事をする。そして、男がある言葉を投げかけた。
「工藤さんは、木原玲奈の本当の姿をご存じですか?」
その頃、颯希と静也は大河のマンションに向っていた。
「……行くのはいいにしても、どうやって聞けばいいのでしょうか……?」
道中で颯希がポツリと言う。実際にその通りだった。大河のところに行くことを決めたものの、何と聞いていいかが全く分からない。颯希たちが声を掛けた男の逆恨みの可能性だってある。でも、その男が嘘をついているようにも見えない。
「困りました……。なんて聞きましょう……」
「とりあえず、工藤さんが玲奈さんのことをどう思っているかを聞けばいいんじゃないのか?」
「そうですが……、逆に何でそんなことを聞くのかを言われたらどう答えればいいのかが分かりません……。婚約者の方を憶測で悪く言うわけにもいきませんし……」
颯希が「はぁ~」と、ため息をつく。
「……らしくねぇぞ?」
颯希の様子に静也が声を掛ける。
「颯希の頭ン中はいつも晴天花畑だろ」
「何となく馬鹿にしてませんか?!」
「いやぁ~、いつも馬鹿が付くほど明るいって言っているだけさ!」
「やっぱり馬鹿にしているのです!!」
「ほーら、颯希の頭の中で蝶々が飛んでるぞ~」
「うるさいですよ!元なんちゃってヤンキー!!」
「ほ~ら、蝶々を『待て待て~♪』と言いながら捕まえなきゃ~♪」
「ぷっ!アハハ!!」
静也が蝶を掴まえるような仕草をしながら言葉を言ったせいか、その姿が面白かったのだろう。颯希が声を出して笑った。
「……いつもの元気に戻ったか?」
静也が颯希の笑う姿を見て微笑みながら声を掛ける。
「あ……ありがとうございます……」
颯希が虚を突かれた感じになり、少し顔を赤くしてお礼の言葉を言う。
(私を元気付けようとしてくれたんだ……)
お礼の気持ちと同時に颯希の中で何か良く分からないものが込み上げてくる。
(あれ?なんだか心臓がバクバクするのです……。心臓によくないものでも食べたのでしょうか??)
周りから見たら「いや、違うだろ!」とでも突っ込まれそうなことを心で呟きながら、静也に感謝の気持ちを込めて笑顔で言葉を綴った。
「さぁ!工藤さんのマンションにレッツゴーなのです!!」
「おう!!」
颯希がいつもの調子に戻り、静也と並んで歩きながら大河のマンションへと歩きだす。
マンションが近づいて来た時だった。
「あれ?」
マンションに入ろうとした時に、静也がある人影に気付いて声を上げる。
「あそこにいるの、工藤さんじゃないか?それに、一緒にいる人って……」
静也の言葉に颯希もその方向に顔を向ける。そして、大河と一緒にいる男を見て颯希は驚きの表情をした。
「あの時の、私たちが声を掛けた人……」
何となく声を掛けづらくて、近くの物陰に隠れながら二人の様子を伺う。
「玲奈さんの本当の姿?」
友成の言葉に大河が訝しげな顔をする。
「あぁ、そうだ。あの女の本当の姿だ」
「玲奈さんはおしとやかで気が利く女性ですよ?言葉遣いも丁寧だし、家の中でも服装まで気を配っているけど……。それが本当の姿じゃないのかな?」
大河の言葉に友成は「やはりな……」と小さく呟く。
「あの女はおしとやかでも気が利く女でもない。むしろ、人を破滅に陥れる悪魔のような女だ」
「だ……誰だか知らないが何を根拠に玲奈さんの悪口を言っているんだ?!彼女は僕にはもったいないくらいのいい人だよ!」
友成の言葉に大河が怒りを露わにしながら言い返す。
「これを読んでみるといい。あの女の書き込みだ」
友成がそう言って、大河にA4サイズの封筒を渡す。大河は躊躇うもののその封筒を受け取り、中身を取り出した。
「こ……これは?!」
書き込みをコピーしたものを読んで大河は驚きを隠せなかった。その書き込みに時折「工藤」と言う苗字が出てくる。そして、書き込みの内容に思い当たる節もある。
大河の手が震える。
「それを全部読めば、あの女が本当はどういう女か分かるはずだ」
友成の言葉に大河は何も答えずに、車に乗り込んだ。そこへ、友成が更に言葉を投げかける。
「今日、あの女が誰と会うか聞いているか?」
「久々に女友達と会ってくると言っていた……」
大河が車の中からそう言う。
「それはあの女の嘘だ。本当のところは町で声を掛けてきた男と会っている」
友成の言葉に大河は何も言わない。
「あの女とこれからどうするかは工藤さん次第だ。でも、俺はあの女とは縁を切った方がいいと思っている……」
大河は何も言わない。
そして、車を発進させると去っていった……。
去っていく車を見届けながら、友成は心で呟く。
(あの人も、被害者だよな……)
そして、踵を返し、その場から離れようとした時だった。
「すみません。ちょっといいですか?」
突然声を掛けられて、友成が声のした方に顔を向ける。
「君たちは……!」
声を掛けてきた人物を見て友成が驚きの声を上げる。
そこには、颯希と静也がいた……。
その時だった。
あるつぶやきを見て声を上げる。
「……あった。これだ……」
目的の内容を見つけて友成はそれをコピーする。そして、更に遡って他にもそういった書き込みがないか確認していく。すると、いくつか似たような内容の書き込みを見つけ、それも同様にコピーしていった。
(これだけあれば、十分だろう……。あ……、そういえば……)
友成は玲奈が婚約しており、相手がどんな人なのか顔を見ようと思い、玲奈のスマートフォンの番号を使いSNSで相手を確認する。すると、同じ男性が玲奈と映っている写真を何枚か見つけた。
(こいつか……。なんというか、真面目な人っぽいな……。まぁ、役所勤めだから当然と言えば当然か……)
友成が相手の男も玲奈の仮の姿に騙されているのだろうと考えてしまうと同時に、相手の男も不憫だなとも感じる。そして、あることを思いついた。
――――ピコン!
そこへ、友成のスマートフォンが鳴り、メッセージが届いたことを知らせる。それを開くと、彰人からメールが届いていた。
『日曜日にあの女と会うことになった。断るとややこしくなるかもしれないからとりあえず会ってくるよ』
彰人からのメールを読み、友成はその日にある人物に会いに行くことを決意した。
「おはようございます!静也くん!」
日曜日、颯希はパトロールをするためにいつもの待ち合わせの公園で静也と合流した。そして、いつものように清掃活動をしながらパトロールをしていく。
「……やっぱりあの男のことが気になっているのか?」
颯希がいつもに比べて覇気がないことを感じとり、静也が声を掛ける。
「えっと……。まぁ、そうですね……」
「……何なら、工藤さんのところに行ってみるか?」
静也の提案に颯希は考えたが、もし、何か起ころうとしているのなら事件に発展する前に何としても止めたいという思いがある。友成に釘は刺されているものの、その人が何かをしでかす危険性はある。あの時、友成を見つけた時のあの表情からは強い憎悪が感じられた。場合によっては大河も被害に遭うのではないかという思いもある。
やはり、このまま放っていくわけにはいかないと感じ、颯希は意を決した。
「……行きましょう。工藤さんのところに……」
そして、パトロールを中断して颯希と静也は大河のマンションに行くことにした。
「それじゃあ、行ってくるね。玲奈さんも久々に会う友達と楽しんでくるといいよ」
何も疑っていない大河はそう言うと、実家に行くために家を出ていく。大河が出ていったことを見届けると、玲奈は鼻歌交じりで彰人と会うための支度を始めた。
大河がマンションを出て駐車場の方に行こうとした時だった。
「工藤大河さんですか?」
一人の男が大河に声を掛けた。
「はい、そうですが……。あなたは?」
大河が男に聞くが、男は名を名乗らずに話し始めた。
「木原玲奈の婚約者で間違いないですよね?」
「はい、そうですが……」
男の言葉に大河が返事をする。そして、男がある言葉を投げかけた。
「工藤さんは、木原玲奈の本当の姿をご存じですか?」
その頃、颯希と静也は大河のマンションに向っていた。
「……行くのはいいにしても、どうやって聞けばいいのでしょうか……?」
道中で颯希がポツリと言う。実際にその通りだった。大河のところに行くことを決めたものの、何と聞いていいかが全く分からない。颯希たちが声を掛けた男の逆恨みの可能性だってある。でも、その男が嘘をついているようにも見えない。
「困りました……。なんて聞きましょう……」
「とりあえず、工藤さんが玲奈さんのことをどう思っているかを聞けばいいんじゃないのか?」
「そうですが……、逆に何でそんなことを聞くのかを言われたらどう答えればいいのかが分かりません……。婚約者の方を憶測で悪く言うわけにもいきませんし……」
颯希が「はぁ~」と、ため息をつく。
「……らしくねぇぞ?」
颯希の様子に静也が声を掛ける。
「颯希の頭ン中はいつも晴天花畑だろ」
「何となく馬鹿にしてませんか?!」
「いやぁ~、いつも馬鹿が付くほど明るいって言っているだけさ!」
「やっぱり馬鹿にしているのです!!」
「ほーら、颯希の頭の中で蝶々が飛んでるぞ~」
「うるさいですよ!元なんちゃってヤンキー!!」
「ほ~ら、蝶々を『待て待て~♪』と言いながら捕まえなきゃ~♪」
「ぷっ!アハハ!!」
静也が蝶を掴まえるような仕草をしながら言葉を言ったせいか、その姿が面白かったのだろう。颯希が声を出して笑った。
「……いつもの元気に戻ったか?」
静也が颯希の笑う姿を見て微笑みながら声を掛ける。
「あ……ありがとうございます……」
颯希が虚を突かれた感じになり、少し顔を赤くしてお礼の言葉を言う。
(私を元気付けようとしてくれたんだ……)
お礼の気持ちと同時に颯希の中で何か良く分からないものが込み上げてくる。
(あれ?なんだか心臓がバクバクするのです……。心臓によくないものでも食べたのでしょうか??)
周りから見たら「いや、違うだろ!」とでも突っ込まれそうなことを心で呟きながら、静也に感謝の気持ちを込めて笑顔で言葉を綴った。
「さぁ!工藤さんのマンションにレッツゴーなのです!!」
「おう!!」
颯希がいつもの調子に戻り、静也と並んで歩きながら大河のマンションへと歩きだす。
マンションが近づいて来た時だった。
「あれ?」
マンションに入ろうとした時に、静也がある人影に気付いて声を上げる。
「あそこにいるの、工藤さんじゃないか?それに、一緒にいる人って……」
静也の言葉に颯希もその方向に顔を向ける。そして、大河と一緒にいる男を見て颯希は驚きの表情をした。
「あの時の、私たちが声を掛けた人……」
何となく声を掛けづらくて、近くの物陰に隠れながら二人の様子を伺う。
「玲奈さんの本当の姿?」
友成の言葉に大河が訝しげな顔をする。
「あぁ、そうだ。あの女の本当の姿だ」
「玲奈さんはおしとやかで気が利く女性ですよ?言葉遣いも丁寧だし、家の中でも服装まで気を配っているけど……。それが本当の姿じゃないのかな?」
大河の言葉に友成は「やはりな……」と小さく呟く。
「あの女はおしとやかでも気が利く女でもない。むしろ、人を破滅に陥れる悪魔のような女だ」
「だ……誰だか知らないが何を根拠に玲奈さんの悪口を言っているんだ?!彼女は僕にはもったいないくらいのいい人だよ!」
友成の言葉に大河が怒りを露わにしながら言い返す。
「これを読んでみるといい。あの女の書き込みだ」
友成がそう言って、大河にA4サイズの封筒を渡す。大河は躊躇うもののその封筒を受け取り、中身を取り出した。
「こ……これは?!」
書き込みをコピーしたものを読んで大河は驚きを隠せなかった。その書き込みに時折「工藤」と言う苗字が出てくる。そして、書き込みの内容に思い当たる節もある。
大河の手が震える。
「それを全部読めば、あの女が本当はどういう女か分かるはずだ」
友成の言葉に大河は何も答えずに、車に乗り込んだ。そこへ、友成が更に言葉を投げかける。
「今日、あの女が誰と会うか聞いているか?」
「久々に女友達と会ってくると言っていた……」
大河が車の中からそう言う。
「それはあの女の嘘だ。本当のところは町で声を掛けてきた男と会っている」
友成の言葉に大河は何も言わない。
「あの女とこれからどうするかは工藤さん次第だ。でも、俺はあの女とは縁を切った方がいいと思っている……」
大河は何も言わない。
そして、車を発進させると去っていった……。
去っていく車を見届けながら、友成は心で呟く。
(あの人も、被害者だよな……)
そして、踵を返し、その場から離れようとした時だった。
「すみません。ちょっといいですか?」
突然声を掛けられて、友成が声のした方に顔を向ける。
「君たちは……!」
声を掛けてきた人物を見て友成が驚きの声を上げる。
そこには、颯希と静也がいた……。
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