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第五章 花を愛でる小人たちは悲しみの雨を降らせる
第1話
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~プロローグ~
――――ザーン……ザパーン……。
海から波が上がっている。
そして、波に押し流されてきたのだろうか……。
一人の少女の遺体が浜辺に打ち上げられていた。
調査したところ、溺死と判明。近くの灯台のところに少女と思われる靴が並んで揃えてあったこと、少女の自宅から遺書のような文章が発見されたことから、警察は少女が自殺したものだと断定した。
夜の遅い時間に公園でたむろしている男たちがいる。
「……あんときの子はあの栗色の髪が良かったな。大人しい女はいいねぇ。ああやってしとけば誰にも言わないだろ……」
数人の男たちが夜の公園で酒を飲みながら話している。何処からどう見てもガラの悪いヤンキーのような男たちだ。男たちがその時の状況を楽しそうに語り合っている。
その話を影から見つからないように聞き耳を立てている人影があった……。
1.
「さぁ!今日も元気にパトロールなのです!!」
待ち合わせの公園で静也と合流した颯希が元気よく声をあげてパトロールを始める。
「元気だな~、颯希は……」
「はい!私はいつも元気ですよ!」
この前の事件で、大河はしばらくの間、玲奈の起こした事件の被害者たちに寄り添い、その人たちが何とか社会に出られるように励んでいるらしい。
そして、友成と彰人は玲奈の裏アカウントで事件解決にもなったということから、特にお咎めは無かったそうだ。更に、友成のパソコンの技術を見込んで大河が誠に話したところ、「それ程の技術は役に立つ」という事で友成を警察の特殊捜査員に任命したという。友成もその話に乗り、警察でパソコンの技術を存分に発揮しているという事だ。元々、真面目な性格であることと正義感もある方だったのでその仕事が向いているらしく、玲奈のような人のせいで苦しむ人を救いたいと言っているらしい。彰人はそのまま今の会社で仕事をしているが、時期が来たら転職も考えると言っており、転職サイトに登録をしたという事だった。理由は「大きな企業だけど、人に思いやりのない会社は嫌だ」という事を言っているらしく、友成も「自分の意志で辞めるのは構わない」という事になったため、彰人は仕事に行きながら次の仕事先を探しているという。
「……青木さんが、特殊捜査員か~。すごいよな」
静也が感心したように言葉を呟く。
「そうですね。青木さんはパソコンに詳しいだけじゃなく、自分でソフトの開発も出来るようです。お父さんの話だと、青木さんには犯人を捕まえるためのいろいろなソフトの開発、とういう面でも活躍して欲しいと言っていました」
「……にしても、工藤さんも散々だったな。でも、あの女と結婚する前にどんな奴か分かってよかったんじゃないか?」
「そうですね。でも、工藤さんにはいつか本当に素敵な人と巡り会って欲しいですね」
「そうだな。工藤さん、いい人だからな。幸せにはなって欲しいよな!」
「はい!」
颯希と静也がそう話しながら、いつか大河にいい人が現れることを祈る。
「……では、今日もまず海辺の掃除に入りましょう!!」
「おう!!」
この前、浜辺のごみ拾いをしたときにかなりのごみが落ちており、一日で終わる量じゃなかったため、今日も浜辺のごみ拾いを行うために海の方へ歩きだす。
海辺に着き、ゴミ拾いをしている時だった。
「何かあったのでしょうか……?」
高校生ぐらいの男女のグループが海に花束を投げ込み、手を合わせている。颯希と静也が離れたところでその光景を眺めていると、声がした。
「おや、静也に颯希ちゃんじゃないか!」
「幸さん!」
「幸じぃ!」
声を掛けてきたのは幸雄だった。いつものように釣りをしに来たのだろう。手には竿を持ち、肩からクーラーボックスを下げている。
「今日も浜辺のごみ拾いかい?いやぁ~、精が出ておるな!」
幸雄がカラカラと楽しそうに笑いながら言葉を綴る。
「何かを見ておったみたいじゃが、何を見ていたんじゃ?」
幸雄が颯希たちに聞いてきたので、颯希が言葉を発した。
「いえ……、誰か海で亡くなったのかなと思いまして……。ほら、あそこにいる人たち、さっき海に向って花束を投げたのですよ。そして、手を合わせて祈っているから、友だちか誰かが海で亡くなったのかな?って思ったのです」
颯希が高校生のグループを指さしながら話す。すると、幸雄が「あぁ……」と言って、話し始めた。
「実はこの前、この海辺で高校生ぐらいの女の子の遺体が上がったんじゃ……。状況から警察は自殺と断定したそうじゃよ……。あの子たちは多分、自殺した子の友達かなんかだろう……。ああやって、たまにここに来ては花束を投げて手を合わせておる……」
「……なんで、その子は自殺したんだ?」
静也が幸雄の話に疑問を問う。
「詳しいことは分からん……。きっと、その子にはその子なりのなにか事情があったのかもしれん……」
幸雄の言葉に颯希たちは何も言えない。
「……じゃあ、今日もゴミ拾い頑張れよ!」
幸雄はそう言うと去っていった。颯希たちは気を取り直し、ゴミ拾いを再開する。ある程度ゴミを拾うと、持ってきたゴミ袋がいっぱいになった。
「……今日はこれくらいだな。じゃ、いつもの集積所に持っていくか!」
ゴミが四袋になったので、それで今日のゴミ拾いを終了する。そして、いつものように地域にあるゴミ集積所に持っていき、ゴミを回収してもらう。
「いつもお疲れさん!じゃあ、いつものところに捨てといてね!」
ゴミ集積所の責任者である鹿島に言われて颯希たちは言われた場所に捨てに行く。
「おっ!颯希ちゃんに静也くんじゃないか!今日もお疲れさん!」
年配の社員である八木が颯希たちに声を掛ける。
「こんにちは!八木さん!」
「こんにちは!」
颯希と静也がそれぞれ挨拶をする。そして、ゴミをいつものところに捨てると、八木にお礼を言ってその場を離れた。
「今日も地域のために活動出来ましたね!」
「そうだな!まぁ、しばらくは浜辺のごみ拾いがメインだな」
「かなりの量ですからね!でも、釣りに来ている人たちも手伝ってくださるので、ありがたいですね!」
「あぁ。嬉しいことだよな!」
楽しそうに会話をしながら歩いていく。そして、時間になり、それぞれ帰路に着いた。
家に帰り、颯希は早速誠に自殺した女の子のことを聞いてみた。
「……あぁ、あれか……。確かに自殺として処理したよ。事件性は何もなかったし、状況的にも自殺だろうと判断したんだ」
「その子は何が理由で自殺したのですか?」
「うーん……。それに関しては決定的な何かが見つかったわけではないが、自宅の部屋に遺書のようなものも発見されてね。それで、自殺と断定したんだよ」
警察の調べでも、自殺した少女がいじめに遭っているとかいった話は一切出てこなかったらしい。何かに悩んでいた様子も無いので、最初は事件の可能性も考えたが、状況的にはどう見ても自殺だったという事や、周りが知らないだけで、少女が何か思い詰めていたことがあったのかもしれない……ということになり、それ以上の捜査はされなかった。
「夕飯、出来たわよ~」
キッチンから佳澄の声がして、結城家のいつもの夕飯が始まった。
「今日もパトロールお疲れ!育ち盛りなんだからしっかり食べるんだよ!」
拓哉がそう言って、ご飯を茶碗一杯に盛る。その量は漫画に出てきそうな感じで、てんこ盛りになっている。
「こんなに食べれるかよ!」
「食べれるさ!いつでも颯希ちゃんを守れるように体力を付けとかなきゃね!」
「だからって、盛り過ぎだろう!」
「好きな子を守るためにはこれぐらいのエネルギーは必要だよ!」
「なっ……!!!」
拓哉から「好きな子」と言う言葉が出て静也の顔が真っ赤になる。
「純だね~。若いね~。青春だね~。いやぁ~、初々しいカップルだなぁ~!!」
「う……うるせぇぇぇぇぇ!!!」
拓哉から出てくる言葉に静也が叫び声を上げながらご飯をかき込む。
「うん!いい食べっぷりだ!」
拓哉が微笑みながら言う。
もはや定番になった親子漫才をしながら楽しく夕飯を過ごしていく。
深夜。
ある路地裏で男がフラフラになりながら歩いている。
「なんで……こんなに……眠いんだ……?」
男は酒を飲んでいたが、こんなに弱いはずではないと不思議に思いながらふらついている。
「……大丈夫か?」
傍にいた男がふらついている男に声を掛ける。
次の瞬間――――。
――――ドスッ!
傍にいた男がナイフでふらついている男の腹を深く刺した。
刺された男が呻き声を上げながらその場に倒れる。刺した男はその男をそこに放置して去っていった……。
――――ザーン……ザパーン……。
海から波が上がっている。
そして、波に押し流されてきたのだろうか……。
一人の少女の遺体が浜辺に打ち上げられていた。
調査したところ、溺死と判明。近くの灯台のところに少女と思われる靴が並んで揃えてあったこと、少女の自宅から遺書のような文章が発見されたことから、警察は少女が自殺したものだと断定した。
夜の遅い時間に公園でたむろしている男たちがいる。
「……あんときの子はあの栗色の髪が良かったな。大人しい女はいいねぇ。ああやってしとけば誰にも言わないだろ……」
数人の男たちが夜の公園で酒を飲みながら話している。何処からどう見てもガラの悪いヤンキーのような男たちだ。男たちがその時の状況を楽しそうに語り合っている。
その話を影から見つからないように聞き耳を立てている人影があった……。
1.
「さぁ!今日も元気にパトロールなのです!!」
待ち合わせの公園で静也と合流した颯希が元気よく声をあげてパトロールを始める。
「元気だな~、颯希は……」
「はい!私はいつも元気ですよ!」
この前の事件で、大河はしばらくの間、玲奈の起こした事件の被害者たちに寄り添い、その人たちが何とか社会に出られるように励んでいるらしい。
そして、友成と彰人は玲奈の裏アカウントで事件解決にもなったということから、特にお咎めは無かったそうだ。更に、友成のパソコンの技術を見込んで大河が誠に話したところ、「それ程の技術は役に立つ」という事で友成を警察の特殊捜査員に任命したという。友成もその話に乗り、警察でパソコンの技術を存分に発揮しているという事だ。元々、真面目な性格であることと正義感もある方だったのでその仕事が向いているらしく、玲奈のような人のせいで苦しむ人を救いたいと言っているらしい。彰人はそのまま今の会社で仕事をしているが、時期が来たら転職も考えると言っており、転職サイトに登録をしたという事だった。理由は「大きな企業だけど、人に思いやりのない会社は嫌だ」という事を言っているらしく、友成も「自分の意志で辞めるのは構わない」という事になったため、彰人は仕事に行きながら次の仕事先を探しているという。
「……青木さんが、特殊捜査員か~。すごいよな」
静也が感心したように言葉を呟く。
「そうですね。青木さんはパソコンに詳しいだけじゃなく、自分でソフトの開発も出来るようです。お父さんの話だと、青木さんには犯人を捕まえるためのいろいろなソフトの開発、とういう面でも活躍して欲しいと言っていました」
「……にしても、工藤さんも散々だったな。でも、あの女と結婚する前にどんな奴か分かってよかったんじゃないか?」
「そうですね。でも、工藤さんにはいつか本当に素敵な人と巡り会って欲しいですね」
「そうだな。工藤さん、いい人だからな。幸せにはなって欲しいよな!」
「はい!」
颯希と静也がそう話しながら、いつか大河にいい人が現れることを祈る。
「……では、今日もまず海辺の掃除に入りましょう!!」
「おう!!」
この前、浜辺のごみ拾いをしたときにかなりのごみが落ちており、一日で終わる量じゃなかったため、今日も浜辺のごみ拾いを行うために海の方へ歩きだす。
海辺に着き、ゴミ拾いをしている時だった。
「何かあったのでしょうか……?」
高校生ぐらいの男女のグループが海に花束を投げ込み、手を合わせている。颯希と静也が離れたところでその光景を眺めていると、声がした。
「おや、静也に颯希ちゃんじゃないか!」
「幸さん!」
「幸じぃ!」
声を掛けてきたのは幸雄だった。いつものように釣りをしに来たのだろう。手には竿を持ち、肩からクーラーボックスを下げている。
「今日も浜辺のごみ拾いかい?いやぁ~、精が出ておるな!」
幸雄がカラカラと楽しそうに笑いながら言葉を綴る。
「何かを見ておったみたいじゃが、何を見ていたんじゃ?」
幸雄が颯希たちに聞いてきたので、颯希が言葉を発した。
「いえ……、誰か海で亡くなったのかなと思いまして……。ほら、あそこにいる人たち、さっき海に向って花束を投げたのですよ。そして、手を合わせて祈っているから、友だちか誰かが海で亡くなったのかな?って思ったのです」
颯希が高校生のグループを指さしながら話す。すると、幸雄が「あぁ……」と言って、話し始めた。
「実はこの前、この海辺で高校生ぐらいの女の子の遺体が上がったんじゃ……。状況から警察は自殺と断定したそうじゃよ……。あの子たちは多分、自殺した子の友達かなんかだろう……。ああやって、たまにここに来ては花束を投げて手を合わせておる……」
「……なんで、その子は自殺したんだ?」
静也が幸雄の話に疑問を問う。
「詳しいことは分からん……。きっと、その子にはその子なりのなにか事情があったのかもしれん……」
幸雄の言葉に颯希たちは何も言えない。
「……じゃあ、今日もゴミ拾い頑張れよ!」
幸雄はそう言うと去っていった。颯希たちは気を取り直し、ゴミ拾いを再開する。ある程度ゴミを拾うと、持ってきたゴミ袋がいっぱいになった。
「……今日はこれくらいだな。じゃ、いつもの集積所に持っていくか!」
ゴミが四袋になったので、それで今日のゴミ拾いを終了する。そして、いつものように地域にあるゴミ集積所に持っていき、ゴミを回収してもらう。
「いつもお疲れさん!じゃあ、いつものところに捨てといてね!」
ゴミ集積所の責任者である鹿島に言われて颯希たちは言われた場所に捨てに行く。
「おっ!颯希ちゃんに静也くんじゃないか!今日もお疲れさん!」
年配の社員である八木が颯希たちに声を掛ける。
「こんにちは!八木さん!」
「こんにちは!」
颯希と静也がそれぞれ挨拶をする。そして、ゴミをいつものところに捨てると、八木にお礼を言ってその場を離れた。
「今日も地域のために活動出来ましたね!」
「そうだな!まぁ、しばらくは浜辺のごみ拾いがメインだな」
「かなりの量ですからね!でも、釣りに来ている人たちも手伝ってくださるので、ありがたいですね!」
「あぁ。嬉しいことだよな!」
楽しそうに会話をしながら歩いていく。そして、時間になり、それぞれ帰路に着いた。
家に帰り、颯希は早速誠に自殺した女の子のことを聞いてみた。
「……あぁ、あれか……。確かに自殺として処理したよ。事件性は何もなかったし、状況的にも自殺だろうと判断したんだ」
「その子は何が理由で自殺したのですか?」
「うーん……。それに関しては決定的な何かが見つかったわけではないが、自宅の部屋に遺書のようなものも発見されてね。それで、自殺と断定したんだよ」
警察の調べでも、自殺した少女がいじめに遭っているとかいった話は一切出てこなかったらしい。何かに悩んでいた様子も無いので、最初は事件の可能性も考えたが、状況的にはどう見ても自殺だったという事や、周りが知らないだけで、少女が何か思い詰めていたことがあったのかもしれない……ということになり、それ以上の捜査はされなかった。
「夕飯、出来たわよ~」
キッチンから佳澄の声がして、結城家のいつもの夕飯が始まった。
「今日もパトロールお疲れ!育ち盛りなんだからしっかり食べるんだよ!」
拓哉がそう言って、ご飯を茶碗一杯に盛る。その量は漫画に出てきそうな感じで、てんこ盛りになっている。
「こんなに食べれるかよ!」
「食べれるさ!いつでも颯希ちゃんを守れるように体力を付けとかなきゃね!」
「だからって、盛り過ぎだろう!」
「好きな子を守るためにはこれぐらいのエネルギーは必要だよ!」
「なっ……!!!」
拓哉から「好きな子」と言う言葉が出て静也の顔が真っ赤になる。
「純だね~。若いね~。青春だね~。いやぁ~、初々しいカップルだなぁ~!!」
「う……うるせぇぇぇぇぇ!!!」
拓哉から出てくる言葉に静也が叫び声を上げながらご飯をかき込む。
「うん!いい食べっぷりだ!」
拓哉が微笑みながら言う。
もはや定番になった親子漫才をしながら楽しく夕飯を過ごしていく。
深夜。
ある路地裏で男がフラフラになりながら歩いている。
「なんで……こんなに……眠いんだ……?」
男は酒を飲んでいたが、こんなに弱いはずではないと不思議に思いながらふらついている。
「……大丈夫か?」
傍にいた男がふらついている男に声を掛ける。
次の瞬間――――。
――――ドスッ!
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