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最終章 そして、白い鳥たちは大空へ向かう
第12話
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『ユウ!思い出した!!』
友理奈はパソコンに向かうと、悠里にメッセージを送る。
『あのバーベキューの日、空を眺めていたら大きな流れ星が降って来て、それが私の体に直撃したの!今思えば、火の塊だったような気がする』
悠里からすぐに返事はない。
出掛けたのかもしれないと思い、返事を待つ。
――――ピコンっ!!
パソコンから音がして、メッセージが届いたことを知る。
『火の塊が降ってきたの?でも、隕石じゃないよね?隕石ならかなりの被害が出るはずだし……』
悠里からそう返事が来る。
確かにそうだった。隕石だったら被害はもっと広範囲なはずだし、ニュースにもなるはずだ。でも、隕石が落ちたなんて話は聞いたことがない。十二年前とはいえ、そんな話題が出たことは無かった。
『……じゃあ、私の体に落ちてきた火の塊って何だろう?』
友理奈が疑問に思いながらそう問う。
『……ちょっと、分かんないや』
悠里はしばらく考えるが何も思いつかなくてそうメッセージを返す。
『まぁ、思い出したからって火傷が治るわけじゃないんだけどさ……。そういえば、例の施設には行くの?』
友理奈がそう尋ねる。
ユウ『近々、見学には行こうと思う』
ユリ『そっか』
ユウ『今のまんまじゃダメなのも何となく分かっているし……』
ユリ『頑張ってね』
ユウ『ありがとう』
そこで会話が一旦途切れる。お互い何もメッセージを打たないまま、時間だけが流れる。
ユウ『あのさ……』
その沈黙を悠里が破る。
ユリ『何?』
ユウ『ユリに会ってみたい』
悠里のメッセージに友理奈がどう返事をしていいか迷う。自分も悠里に会いたいという気持ちはあるが、この火傷を見たら嫌われるかもしれないという恐怖感がある。
ユウ『きっとユリは体中の火傷を見られたら嫌われるかもしれないって思っていると思う。でも、ユリは心の綺麗な子だから僕は見た目だけで判断はしない』
ユウ『ユリに会いたい』
「ユ……ウ……」
悠里のメッセージに友理奈が涙を流す。でも、恐怖感が勝ってしまい、「いいよ」の一言が打てない。
グルグルと頭の中でいろいろな考えが渦巻く。
『……考えさせて』
友理奈はそれだけを打つとチャットルームから出た。
しばらくぼんやりと天井を眺める。
「会えるなら会いたいな……」
友理奈はそう言うと、ベッドに横になり、目を瞑った。
「……会えるかな?」
悠里がポツリと呟く。
火傷の痕がどれほどのものかは分からない。けど、悠里は友理奈に惹かれていた。できることなら自分が支えたいと思っている。でも、今の自分では無理がある。まずは仕事を探さなきゃいけない。
「掛けてみるか……」
悠里はそう呟くと、名刺を財布から取り出し、楓に電話をした。
――――トゥルル……トゥルル……。
コール音が鳴り響く。
『はい。もしもし』
しばらくコール音が鳴った後、楓が電話に出た。
「あの……、田所悠里ですけど……」
少し緊張気味に名前を告げる。
『こんにちは、悠里くん。もしかして、施設に来る気になった?』
楓が電話の向こうで嬉しそうに話す。
「その……、まず見学をしたいのですが、そこはどう言った施設なんですか?」
『障がい者が一般就労するための訓練場所って言う感じかな?仕事をしたり、人間関係が上手くいくように勉強したり、スキルを身に付けたりするところよ』
楓の話に悠里が僅かな希望を持つ。もし、訓練して一般就労ができればユリのことを支えられるかもしれない。今の自分では守れなくても守れるようになるかもしれない。
希望の光が差し込む。
『もちろん、その人に合った仕事を探すのも事業所の仕事だし、適性を見るのも事業所がやっているの。だから、企業に就職するときに繋がりを持っている企業も多いからその企業に試しで仕事経験をさせてもらえるし、自分に合っていたらそこに就労も可能になる。後は自分の頑張り次第と努力次第ってところかな?』
楓の言葉に悠里が引き込まれるように話を聞いている。
「見学して、良さそうならそこを利用したいです……。そして、ゆくゆくはちゃんと就労したいです……」
悠里が懇願するように言葉を綴る。
『前を向きたい理由ができたのかな?』
「その……実は……」
悠里はそう言って、守りたい人がいることを話す。体中に大やけどを負い、部屋に閉じこもっている友理奈を何とかしてあげたくて、そのために自分がまず今の状況を変えなければと思ったこと。そして、いつか時期が来たら友理奈を迎えに行き、一緒に暮らしたいとのことを話していく。
『そのユリさんって子は何があってそんなに火傷を負ったの?』
楓が心配そうに聞く。
「最初は家族でバーベキューをしていて誤って火を被ったのだろうというようなことを聞いていたのですが、ついさっき、その事で思い出したことがあると言ってメッセージが来たんです。偶然にも隣の桜台町に住んでいるみたいなのですが、どうやらその事故に遭う直前、大きな火の玉が空から降ってきてそれが自分に向って落ちてきたって……」
『……そうなのね。最近の話?』
「いえ、十二年前だって聞いています」
『え……?』
楓の頭の中で十二年前の放火事件が頭をよぎる。
『それって……』
友理奈はパソコンに向かうと、悠里にメッセージを送る。
『あのバーベキューの日、空を眺めていたら大きな流れ星が降って来て、それが私の体に直撃したの!今思えば、火の塊だったような気がする』
悠里からすぐに返事はない。
出掛けたのかもしれないと思い、返事を待つ。
――――ピコンっ!!
パソコンから音がして、メッセージが届いたことを知る。
『火の塊が降ってきたの?でも、隕石じゃないよね?隕石ならかなりの被害が出るはずだし……』
悠里からそう返事が来る。
確かにそうだった。隕石だったら被害はもっと広範囲なはずだし、ニュースにもなるはずだ。でも、隕石が落ちたなんて話は聞いたことがない。十二年前とはいえ、そんな話題が出たことは無かった。
『……じゃあ、私の体に落ちてきた火の塊って何だろう?』
友理奈が疑問に思いながらそう問う。
『……ちょっと、分かんないや』
悠里はしばらく考えるが何も思いつかなくてそうメッセージを返す。
『まぁ、思い出したからって火傷が治るわけじゃないんだけどさ……。そういえば、例の施設には行くの?』
友理奈がそう尋ねる。
ユウ『近々、見学には行こうと思う』
ユリ『そっか』
ユウ『今のまんまじゃダメなのも何となく分かっているし……』
ユリ『頑張ってね』
ユウ『ありがとう』
そこで会話が一旦途切れる。お互い何もメッセージを打たないまま、時間だけが流れる。
ユウ『あのさ……』
その沈黙を悠里が破る。
ユリ『何?』
ユウ『ユリに会ってみたい』
悠里のメッセージに友理奈がどう返事をしていいか迷う。自分も悠里に会いたいという気持ちはあるが、この火傷を見たら嫌われるかもしれないという恐怖感がある。
ユウ『きっとユリは体中の火傷を見られたら嫌われるかもしれないって思っていると思う。でも、ユリは心の綺麗な子だから僕は見た目だけで判断はしない』
ユウ『ユリに会いたい』
「ユ……ウ……」
悠里のメッセージに友理奈が涙を流す。でも、恐怖感が勝ってしまい、「いいよ」の一言が打てない。
グルグルと頭の中でいろいろな考えが渦巻く。
『……考えさせて』
友理奈はそれだけを打つとチャットルームから出た。
しばらくぼんやりと天井を眺める。
「会えるなら会いたいな……」
友理奈はそう言うと、ベッドに横になり、目を瞑った。
「……会えるかな?」
悠里がポツリと呟く。
火傷の痕がどれほどのものかは分からない。けど、悠里は友理奈に惹かれていた。できることなら自分が支えたいと思っている。でも、今の自分では無理がある。まずは仕事を探さなきゃいけない。
「掛けてみるか……」
悠里はそう呟くと、名刺を財布から取り出し、楓に電話をした。
――――トゥルル……トゥルル……。
コール音が鳴り響く。
『はい。もしもし』
しばらくコール音が鳴った後、楓が電話に出た。
「あの……、田所悠里ですけど……」
少し緊張気味に名前を告げる。
『こんにちは、悠里くん。もしかして、施設に来る気になった?』
楓が電話の向こうで嬉しそうに話す。
「その……、まず見学をしたいのですが、そこはどう言った施設なんですか?」
『障がい者が一般就労するための訓練場所って言う感じかな?仕事をしたり、人間関係が上手くいくように勉強したり、スキルを身に付けたりするところよ』
楓の話に悠里が僅かな希望を持つ。もし、訓練して一般就労ができればユリのことを支えられるかもしれない。今の自分では守れなくても守れるようになるかもしれない。
希望の光が差し込む。
『もちろん、その人に合った仕事を探すのも事業所の仕事だし、適性を見るのも事業所がやっているの。だから、企業に就職するときに繋がりを持っている企業も多いからその企業に試しで仕事経験をさせてもらえるし、自分に合っていたらそこに就労も可能になる。後は自分の頑張り次第と努力次第ってところかな?』
楓の言葉に悠里が引き込まれるように話を聞いている。
「見学して、良さそうならそこを利用したいです……。そして、ゆくゆくはちゃんと就労したいです……」
悠里が懇願するように言葉を綴る。
『前を向きたい理由ができたのかな?』
「その……実は……」
悠里はそう言って、守りたい人がいることを話す。体中に大やけどを負い、部屋に閉じこもっている友理奈を何とかしてあげたくて、そのために自分がまず今の状況を変えなければと思ったこと。そして、いつか時期が来たら友理奈を迎えに行き、一緒に暮らしたいとのことを話していく。
『そのユリさんって子は何があってそんなに火傷を負ったの?』
楓が心配そうに聞く。
「最初は家族でバーベキューをしていて誤って火を被ったのだろうというようなことを聞いていたのですが、ついさっき、その事で思い出したことがあると言ってメッセージが来たんです。偶然にも隣の桜台町に住んでいるみたいなのですが、どうやらその事故に遭う直前、大きな火の玉が空から降ってきてそれが自分に向って落ちてきたって……」
『……そうなのね。最近の話?』
「いえ、十二年前だって聞いています」
『え……?』
楓の頭の中で十二年前の放火事件が頭をよぎる。
『それって……』
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