はい!こちら、中学生パトロール隊です!!

華ノ月

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最終章 そして、白い鳥たちは大空へ向かう

第15話

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「はい、お願いします。有子さん」

 颯希と静也が深々と頭を下げて、庭を調べさせてくれないかを有子に頼む。

 颯希たちが訪れたのは有子の家が経営しているカフェだった。自宅と兼用という話を聞いていたので、庭を調べさせて欲しいとお願いする。

「……それは構わないけど、一体何を探すの?」

「あの時の破片がなにかしら落ちているかもしれません。それが見つかれば、証明になるかもしれないのです」

 透のアドバイスを有子に話す。話を聞きながら有子は「そんなことが……」と言うような不思議な顔をするが、他に証拠になるようなものがない今はそれが唯一の手掛かりになるかもしれないことを颯希が言う。

「……分かったわ。こっちよ」

 有子がそう言って颯希たちを庭に案内する。

 案内された庭は砂利が敷き詰められていた。颯希たちはお礼を言うと、早速捜索に取り掛かった。怪しいものは全て拾い、袋の中に入れていく。

 そして、捜索を開始して二時間近く経った頃。

「……これくらいでしょうか?」

 ある程度の怪しいと思われるものを拾い終えて、持ってきた袋の中が一杯になる。そして、有子にお礼を言ってその場を後にすると、拾ったものを一時的に保管するために颯希の家に向かった。



「とりあえずここに入れときましょう」

 拾って来たものを物置に一旦保管して、その後、これからどう動くかを話し合う。

「まずは、放火された場所に行くのが良いだろうが……」

 静也がそう提案するものの、迷っている感じがある。それは、颯希も同様だった。この前の誘拐事件でこの事件を捜査しないように釘を刺されている。捜査をしていることが分かれば、次はどんな被害に遭うか分からない。しかし、友理奈のことを思うと、ここで捜査を止めるわけにもいかない。

 そして、もう一つ。楓のクラスメートだった玲のことも気がかりだった。あの母親の様子は絶対に何かを隠している。楓の提案であることをしたが、上手くいくかどうかは分からない。でも、そこは祈るしかない。

「明日からまた学校が始まるので、今日の捜査はこれくらいにしましょう」

 颯希の言葉に「分かった」と静也が頷く。


 こうして、今日の捜査を終了してその日は解散となった。



 しばらく穏やかな日が続く。例の誘拐事件で颯希たちは目立つ行動は控えようという事になり、事件当日のことを図書館で調べたりして他にも情報がないかを調べていった。



「木津さん!奴らの行動で報告があります!」

 呉野が慌てた様子で部屋に入ってくる。

「どうした?!」

 木津が呉野の様子でただごことではない雰囲気を感じ取る。

「どうやら、奴ら、ある人たちを見張っているみたいなんです。その人たちと言うのが……」

 呉野がそう言いながら奴らが誰を見張っているかを話す。

「なん……だと……」

 その人の名前を聞いて木津が驚きを隠せない。

「とりあえず、これまでのことを結城署長に話しましょう!」

 呉野の言葉に木津も頷き、二人は署長室に向かった。



 ある日の平日。

「いらっしゃいませー」

 「カフェ・ボヌール」に一人の男性客が入ってきた。有子が席に案内しようと思い、男性客に声を掛ける。

「いえ……、客じゃなくて……」

 男性客が慌てて言葉を綴る。

「その……、友理奈さんに会いに来ました」

 男性客が力強い瞳でそう言葉を綴る。

「あの……、あなたは……?」

 有子がちょっと不審そうな目で男性客を見る。

「田所悠里と言います。その、友理奈さんとは『ハート・オアシス』って言うサイトで知り合ったんです。それで、友理奈さんから家がカフェをやっているから、そこに来て欲しいって言われたので伺いました……」

 実はあのメッセージのやり取りの時、友理奈が言った言葉はこうだった。


『じゃあさ、家まで会いに来てよ。私は家から出るのは怖いから、家まで来てくれたら会うことはできるよ』


 悠里はそのメッセージに驚きの声を上げたが、すぐに返信して『行くよ』という内容の返事をした。そして、友理奈の指定した今日に悠里がこのカフェを尋ねたのである。

「ちょっと、お待ちください……」

 有子が奥に入っていく。

 しばらくして有子が再度顔を出してきた。

「こちらにどうぞ……」

 有子が悠里を友理奈の部屋に案内する。


 ――――コンコンコン……。


 悠里が部屋をノックする。

「はい……」

 部屋の中から声が聞こえる。

「ユウです……。入っていいかな?」

 悠里が恐る恐る尋ねる。すると、ドアがゆっくりと開き、全身に火傷を負い、左目に眼帯をしている友理奈が顔を出した。

「……びっくりでしょ?こんな醜いの……」

 友理奈が自虐的に微笑む。

 その姿に悠里は驚いたものの、ゆっくりと近寄り、友理奈を優しく抱き締めた。


「やっと……、会えた……」


 ずっと会いたかったに人に会えて、悠里がそう囁く。

「……気味悪くないの?」

 友理奈がどこか泣きそうな表情でそう呟く。

「そんなことない……。言っただろ?友理奈はきっと心が綺麗なんだって……」

 悠里の言葉に友理奈の瞳から涙が溢れ出す。

「ユ……ウ……」

 ぽろぽろと涙を流し、抱き締めてくれている背中に腕を回す。

「私も……、会いたかった……」

「悠里って呼んでくれないかな……?」

「悠……里……」

「友理奈……、俺、前に進むよ……。そして、準備が整ったら友理奈を迎えに来るよ……」

 悠里の言葉に友理奈が大粒の涙を流す。

「待ってる……。待ってるから……」

 友理奈はそう言いながら大粒の涙を流し続けた。



 ――――ピコンっ!

 タブレットの音が響き、玲がメッセージを確認した。

『食事よ。後、手紙』

 母親からのメッセージにはそう書かれている。

「手紙?」

 玲が不思議そうな声を出す。

 部屋の前に置いてある食事を受け取るために扉を開ける。すると、そこには確かに手紙が添えられていた。その手紙と一緒に部屋に持って入る。

「誰だろう……?」

 玲がそう言いながら封筒の裏側を向ける。差出人のところにはこう書かれてあった。

『転校していった心の友より』

 玲の中で誰か転校していった人がいたかを考える。しかし、特に心当たりはない。とりあえず、封を開け、何が書かれているかを確認する。

「……え?」



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