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~番外編~ 夏の花は優しい日差しに包まれる
第14話
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「………えぇ、私のことよ」
お昼休みの学校の屋上で芹香の問いに芽衣があっさりと認めた。
真奈美も驚きの表情をしている。
「………じゃあ、芽衣ちゃんは私のことを知っていたってこと??」
「そうよ。後、透くんのこともね」
「なんで、言ってくれなかったの?」
「あの幼稚園には半年くらいしか行ってないからね。だから、覚えてないのも無理はないと思ったのよ」
芹香が幼稚園の時に芽衣が一緒だったことが分かったが、話を聞いていた真奈美が不思議そうに言う。
「………でも、それだけの期間しかいなかったのによく芹香のことを覚えていたわね」
確かに真奈美の言う通りだ。短い期間の中で、よく芹香のことを覚えていたこと、それからもう一つ……、
「それに、たったそれだけの期間しかいなかったのに何でそこまで芹香に親身なのかしら?」
と、いう疑問だった。
確かにその通りである。そんな短期間しかいなかった人のことをどうしてあそこまで親切にできるかが疑問点だった。母親が教えてくれた「お姉さんみたいな子」という感じだったことも聞いてみると、芽衣が話し出した。
「幼稚園での芹香って、良く笑って周りの子たちを笑顔にしたりして好かれていたでしょう?私ね、そんな芹香に憧れていたのよ。私もこんな風に笑える子になれたらいいなと思ったわ」
「芽衣ちゃん………」
芽衣の話に芹香が感動するようなウルウル目をする。そして、芽衣が芹香に微笑みかけながら言う。
「まぁ、天然でどっか抜けているけどね」
「………褒めているのか貶しているのか分からないわね」
芽衣の辛辣な言葉に真奈美が突っ込みを入れる。そして芹香には頭に「天然」と書かれた矢が突き刺さっている。
「芽衣ちゃんの意地悪………」
るーるーと涙を流しながら落ち込む芹香を真奈美がポンポンと頭を叩いて慰める。
「そのまんまのことを言われただけだから落ち込む必要は無いわよ」
「あぅっ!!」
真奈美の慰めにもなっていない言葉をかけられて、芹香の頭に更に矢が刺さる。
「二人とも意地悪だよ………」
芹香の言葉に芽衣と真奈美がきょとんとした顔で言う。
「「これが私たちの慰めかたじゃない。」」
そういった、どこか微笑ましいともいえるやり取りをしていると、芽衣が教えたサイトがあの後どうなったのかを聞いてくる。
「えっと……、なんか『いいね』がすごい勢いで増えてる感じかな?後は、コメントで『すごくいい感じ!』とかそういうコメントが入ったりしてたよ?」
「出だしは好調ね」
芹香の問いに芽衣が納得するように答える。
「………それでなんだけど、実はさ………」
言葉を言うことをためらうように芹香がもじもじしながらちょっと顔を赤らめている。
「どうしたのよ?」
芹香の様子に真奈美が聞く。
芹香は大きく呼吸をすると声を張り上げて言葉を発した。
「げ………芸術大学、受けてみようと思って!!」
「「………え?!」」
芹香の言葉に、芽衣と真奈美が一瞬固まり、驚きのような声を上げる。芹香は更に言葉を続けた。
「その……、あれから芸大のことを調べてみたんだけど、わりかし家から通える範囲に大学がある事も分かったし、そこに写真関連学部もあったし、ちょっと行ってみたいかなって思って………。実はね………」
そう言って芹香がスマホを取り出し、例のサイトを出して昨日の夜に来たコメントを見せる。そのコメントはこう書かれていた。
『あなたの腕はとても良いものだと思います。もっと技術を磨いたらさらに素晴らしい写真が撮れそうですね。写真のことをより学び、そして、もっと素晴らしい写真を撮って欲しいなと思いました』
「………というコメントがきていたんだけど、このコメントをくれた人のことを調べてみたら、プロのカメラマンの人だったんだ。そんなすごい人が言ってくれてるんだったら、一度、とことんやってみようと思って……。それで、芸術大学に行こうと思うんだけど、どうかな?」
芹香の話を芽衣と真奈美は真剣な顔で聞いている。芹香のやりたいことかどうかは微妙だが、将来の方向性が何となく決まったことに二人は安心してそれぞれが言葉をかける。
「いいんじゃないかしら?一度、無我夢中にとことんやってみるのは必要な事よ」
「そうね。私もいいと思うわ。やってみてもいいんじゃない?」
「うん!!」
芽衣と真奈美の言葉に芹香が笑顔になる。その様子を見て芽衣と真奈美は顔を合わせて安堵の表情をした。
同じお昼休み。
透は図書室で試験の勉強のために図書室に来ていた。「犯罪心理学」や「犯人像の本質」という本を読んだりしている。試験はそれなりに難易度が高いらしく、生半可な気持ちで受けられない。
本を広げ、必要な事をノートに書いたりして勉強していく。試験まで、もうそんなに時間がない。急ピッチで試験勉強を進めていく。その顔は真剣そのものだ。
その表情からは、『絶対、受かってやる』という闘志の炎が漲っている………。
頭をフル回転させ、手を止めずに、没頭するように勉強にのめり込んでいった………。
放課後になり、芹香たちは学校を後にした。
家に帰った芹香は両親に芸術大学のことを話す。
両親は驚いた顔をしたが、透たちも賛成している事や、プロのカメラマンからコメントがあったことも話して、やってみたいことを伝える。最初は心配したが、透たちも賛成している事なら大丈夫だろうという事で許可をしてくれた。
そして、両親が安堵するように言葉を綴る。
「芹香は昔から写真を撮るのは上手な方だったものね。応援するから、頑張ってみなさい」
「あぁ、何事もがむしゃらに取り組むことはいいことだからな。やってみなさい」
「ありがとう!お父さん!お母さん!」
両親の温かい言葉に芹香は感謝の言葉を綴った。
その頃、真奈美は芽衣の家にお邪魔していた。出されたアップルティーを啜りながら、言葉を綴る。
「まぁ、何はともあれ、芹香の方向性が決まって良かったわね」
その言葉に芽衣は飲んでいたアップルティーを置いて、どことなく表情を硬くしながら言葉を綴る。
「そうね。まぁ、芹香って性格的に一般の会社って難しそうな感じするし、何となく、そういうところではやっていけないような雰囲気があるからね。だから、今回の選択は間違ってはいないと思うわ」
「………確かにそれは言えるわね」
芽衣の言葉に真奈美が同意する。
芽衣と真奈美が心配しているのは、芹香が自分の軸を持っておらずどこか不安定なところがある事だった。高校生ともなれば大人になろうとする年齢だから、考え方もどこか大人びてくるし、行動も大人に近づいてくる。
でも、芹香は高校生にもかかわらず、どこか純真な少女のままで、大人になっている感じがしない雰囲気だ。良い言い方をすれば子供心を忘れてないと言えるが、悪い言い方をすれば、精神年齢が成長していないという事……。
「まぁ、確かに芹香は昔から黒い部分っていうのが全くないのよね。だから、私や透くんが芹香が危険なことに巻き込まれないように注意してみていたもの………」
「それが、芹香のいいところでもあるけど危険なところでもある……。逆に、そういう性格だからこそ、そういう特殊な仕事の方があっているかもしれないわね」
「まぁ、今は見守りましょう………」
「そうね………」
そんな会話が流れる。そして、そろそろ帰ることになり玄関に向かった時だった。
「おや、鈴本さんとこのお孫さんやないか」
芽衣の祖父にそう言われて、真奈美が挨拶する。
「おじいちゃん知っているの?」
芽衣の言葉に「あぁ」と、祖父が言う。
そして、祖父はゆったりとした口調で話し始めた。
「鈴本さんとこの息子夫婦は仕事柄転勤が多いらしくてな。そんで、転勤ばっかでは娘が可哀想だからという事で、ご両親に預けているって聞いとるわ」
祖父の言葉に芽衣が驚きを隠せない表情で問う。
「真奈美の家も転勤族だったの?」
「まあね。だから小学校に上がる直前に祖父母の家で暮らすことになったのよ」
真奈美が自分とある意味境遇が同じだったことに芽衣は唖然とする。でも、それと同時にどこか嬉しい気持ちもあった。
真奈美が芽衣の家を出るとき、芽衣が声を掛けた。
「真奈美!」
「何?」
「その………、これからもよろしくね!!」
芽衣の言葉に一瞬きょとんとした顔を見せる真奈美。でも、すぐに穏やかな表情になり言葉を綴る。
「こちらこそ」
そう言って、真奈美はその場を後にした。
お昼休みの学校の屋上で芹香の問いに芽衣があっさりと認めた。
真奈美も驚きの表情をしている。
「………じゃあ、芽衣ちゃんは私のことを知っていたってこと??」
「そうよ。後、透くんのこともね」
「なんで、言ってくれなかったの?」
「あの幼稚園には半年くらいしか行ってないからね。だから、覚えてないのも無理はないと思ったのよ」
芹香が幼稚園の時に芽衣が一緒だったことが分かったが、話を聞いていた真奈美が不思議そうに言う。
「………でも、それだけの期間しかいなかったのによく芹香のことを覚えていたわね」
確かに真奈美の言う通りだ。短い期間の中で、よく芹香のことを覚えていたこと、それからもう一つ……、
「それに、たったそれだけの期間しかいなかったのに何でそこまで芹香に親身なのかしら?」
と、いう疑問だった。
確かにその通りである。そんな短期間しかいなかった人のことをどうしてあそこまで親切にできるかが疑問点だった。母親が教えてくれた「お姉さんみたいな子」という感じだったことも聞いてみると、芽衣が話し出した。
「幼稚園での芹香って、良く笑って周りの子たちを笑顔にしたりして好かれていたでしょう?私ね、そんな芹香に憧れていたのよ。私もこんな風に笑える子になれたらいいなと思ったわ」
「芽衣ちゃん………」
芽衣の話に芹香が感動するようなウルウル目をする。そして、芽衣が芹香に微笑みかけながら言う。
「まぁ、天然でどっか抜けているけどね」
「………褒めているのか貶しているのか分からないわね」
芽衣の辛辣な言葉に真奈美が突っ込みを入れる。そして芹香には頭に「天然」と書かれた矢が突き刺さっている。
「芽衣ちゃんの意地悪………」
るーるーと涙を流しながら落ち込む芹香を真奈美がポンポンと頭を叩いて慰める。
「そのまんまのことを言われただけだから落ち込む必要は無いわよ」
「あぅっ!!」
真奈美の慰めにもなっていない言葉をかけられて、芹香の頭に更に矢が刺さる。
「二人とも意地悪だよ………」
芹香の言葉に芽衣と真奈美がきょとんとした顔で言う。
「「これが私たちの慰めかたじゃない。」」
そういった、どこか微笑ましいともいえるやり取りをしていると、芽衣が教えたサイトがあの後どうなったのかを聞いてくる。
「えっと……、なんか『いいね』がすごい勢いで増えてる感じかな?後は、コメントで『すごくいい感じ!』とかそういうコメントが入ったりしてたよ?」
「出だしは好調ね」
芹香の問いに芽衣が納得するように答える。
「………それでなんだけど、実はさ………」
言葉を言うことをためらうように芹香がもじもじしながらちょっと顔を赤らめている。
「どうしたのよ?」
芹香の様子に真奈美が聞く。
芹香は大きく呼吸をすると声を張り上げて言葉を発した。
「げ………芸術大学、受けてみようと思って!!」
「「………え?!」」
芹香の言葉に、芽衣と真奈美が一瞬固まり、驚きのような声を上げる。芹香は更に言葉を続けた。
「その……、あれから芸大のことを調べてみたんだけど、わりかし家から通える範囲に大学がある事も分かったし、そこに写真関連学部もあったし、ちょっと行ってみたいかなって思って………。実はね………」
そう言って芹香がスマホを取り出し、例のサイトを出して昨日の夜に来たコメントを見せる。そのコメントはこう書かれていた。
『あなたの腕はとても良いものだと思います。もっと技術を磨いたらさらに素晴らしい写真が撮れそうですね。写真のことをより学び、そして、もっと素晴らしい写真を撮って欲しいなと思いました』
「………というコメントがきていたんだけど、このコメントをくれた人のことを調べてみたら、プロのカメラマンの人だったんだ。そんなすごい人が言ってくれてるんだったら、一度、とことんやってみようと思って……。それで、芸術大学に行こうと思うんだけど、どうかな?」
芹香の話を芽衣と真奈美は真剣な顔で聞いている。芹香のやりたいことかどうかは微妙だが、将来の方向性が何となく決まったことに二人は安心してそれぞれが言葉をかける。
「いいんじゃないかしら?一度、無我夢中にとことんやってみるのは必要な事よ」
「そうね。私もいいと思うわ。やってみてもいいんじゃない?」
「うん!!」
芽衣と真奈美の言葉に芹香が笑顔になる。その様子を見て芽衣と真奈美は顔を合わせて安堵の表情をした。
同じお昼休み。
透は図書室で試験の勉強のために図書室に来ていた。「犯罪心理学」や「犯人像の本質」という本を読んだりしている。試験はそれなりに難易度が高いらしく、生半可な気持ちで受けられない。
本を広げ、必要な事をノートに書いたりして勉強していく。試験まで、もうそんなに時間がない。急ピッチで試験勉強を進めていく。その顔は真剣そのものだ。
その表情からは、『絶対、受かってやる』という闘志の炎が漲っている………。
頭をフル回転させ、手を止めずに、没頭するように勉強にのめり込んでいった………。
放課後になり、芹香たちは学校を後にした。
家に帰った芹香は両親に芸術大学のことを話す。
両親は驚いた顔をしたが、透たちも賛成している事や、プロのカメラマンからコメントがあったことも話して、やってみたいことを伝える。最初は心配したが、透たちも賛成している事なら大丈夫だろうという事で許可をしてくれた。
そして、両親が安堵するように言葉を綴る。
「芹香は昔から写真を撮るのは上手な方だったものね。応援するから、頑張ってみなさい」
「あぁ、何事もがむしゃらに取り組むことはいいことだからな。やってみなさい」
「ありがとう!お父さん!お母さん!」
両親の温かい言葉に芹香は感謝の言葉を綴った。
その頃、真奈美は芽衣の家にお邪魔していた。出されたアップルティーを啜りながら、言葉を綴る。
「まぁ、何はともあれ、芹香の方向性が決まって良かったわね」
その言葉に芽衣は飲んでいたアップルティーを置いて、どことなく表情を硬くしながら言葉を綴る。
「そうね。まぁ、芹香って性格的に一般の会社って難しそうな感じするし、何となく、そういうところではやっていけないような雰囲気があるからね。だから、今回の選択は間違ってはいないと思うわ」
「………確かにそれは言えるわね」
芽衣の言葉に真奈美が同意する。
芽衣と真奈美が心配しているのは、芹香が自分の軸を持っておらずどこか不安定なところがある事だった。高校生ともなれば大人になろうとする年齢だから、考え方もどこか大人びてくるし、行動も大人に近づいてくる。
でも、芹香は高校生にもかかわらず、どこか純真な少女のままで、大人になっている感じがしない雰囲気だ。良い言い方をすれば子供心を忘れてないと言えるが、悪い言い方をすれば、精神年齢が成長していないという事……。
「まぁ、確かに芹香は昔から黒い部分っていうのが全くないのよね。だから、私や透くんが芹香が危険なことに巻き込まれないように注意してみていたもの………」
「それが、芹香のいいところでもあるけど危険なところでもある……。逆に、そういう性格だからこそ、そういう特殊な仕事の方があっているかもしれないわね」
「まぁ、今は見守りましょう………」
「そうね………」
そんな会話が流れる。そして、そろそろ帰ることになり玄関に向かった時だった。
「おや、鈴本さんとこのお孫さんやないか」
芽衣の祖父にそう言われて、真奈美が挨拶する。
「おじいちゃん知っているの?」
芽衣の言葉に「あぁ」と、祖父が言う。
そして、祖父はゆったりとした口調で話し始めた。
「鈴本さんとこの息子夫婦は仕事柄転勤が多いらしくてな。そんで、転勤ばっかでは娘が可哀想だからという事で、ご両親に預けているって聞いとるわ」
祖父の言葉に芽衣が驚きを隠せない表情で問う。
「真奈美の家も転勤族だったの?」
「まあね。だから小学校に上がる直前に祖父母の家で暮らすことになったのよ」
真奈美が自分とある意味境遇が同じだったことに芽衣は唖然とする。でも、それと同時にどこか嬉しい気持ちもあった。
真奈美が芽衣の家を出るとき、芽衣が声を掛けた。
「真奈美!」
「何?」
「その………、これからもよろしくね!!」
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