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第二章 聖杯にまつわるお話

第156話

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 演習ではほとんど騎士様の肩の上にいたアー君、本日の演習が終わればのんびりできると思っていたらしい。

「刀雲パパのばかぁぁ」

 騎士様の頭髪を涙で濡らす理由はただ一つ、刀雲が宣言した「明日以降ギルドで受け取るか売り払うか出来るから」と言う発言。
 つまり、明日までに処理をしなきゃいけない案件が発生したのです。

「受付に絶対怒られるやつ~~」
「すまん」
「樹、帰ったらお風呂で頭洗ってくれる?」
「いいですよ」

 アー君の涙でべしょべしょですものね、一日の労いも兼ねて丁寧に洗わせていただきます。
 ただし巻き込まれ徹夜にならなかったらになるけど。

「にいちゃ! あれ!」
「んぁ?」
『アカーシャよ』
「呼んどいた」
「イグ様、神様、邪神様ぁぁぁ!!」

 騎士様の転移で森の深部から初級ダンジョン近くの草原まで転移で帰還、門に向かって集団で移動していたら涼玉が何か見つけたようでそちらを指さした。
 屋台が並ぶとは別の場所にテントが張られているのは分かったけれど、何があるかまでは判別出来なかった僕と違い、皆は誰がいるかまでハッキリ見えたようです。

「ここに来てアカーシャと精鋭部隊、イグちゃんにいい所を持っていかれた!?」
「悪いね主! 俺って超気が利いちゃうから好感度総取りよ!」

 マウントを取り合う二人をスルーして駆け足で近付いたら、笑顔のアカーシャと顔を引きつらせたギレンが出迎えてくれた。

「アカーシャ!」
「母様、おかえり」
「ただいま!」
『ただいまぁ』
「おい、おい……主様の頭がなんであんなに濡れてるんだよ、せめてクリーンを、女神に何言われるか……」
「犯人アー君だから大丈夫、問題もアカーシャが解決してくれたしね!」
「ふふ、手早く終わらせて夕食に間に合わせようか」

 いやんうちの子が頼もしい!

 僕とアカーシャがイチャイチャしていると後続の冒険らが追い付いてきて、アカーシャと精鋭部隊を見て全てを察し流れるようにテントへと向かっていった。

「おーい、預けた野菜取りに来い」
「俺いらないっす」
「俺も俺も」
「邪神様に奉納します」
「私の取り分は将軍閣下に押し付けさせていただきます!」
「吾輩も!」
「では私も」
「え?」
「では演習はここまで! 解散!」
「勝手に解散宣言するなよ!」

 刀雲が止める間もなく騎士団はバラバラに散って逃走した。
 口調は固めだったけど、流れるような押し付け行為の技はさすが刀国民ですね。

「夕食買って帰ろう」
「そうですね、ガッツリとさっぱりどちらがいいでしょうか」
「夕食用にガッツリ、朝食はさっぱりでどうだ」

 夫婦な会話をしながら帰途に就く二人は騎士と冒険者、本日結ばれたカップルとかではなく、数年前に社務所で縁結びのお守りを買ったのが縁で夫婦になったらしい。
 僕知ってる、その現場にいた。
 あの時はどちらも冒険者だったけど、そうか、戦士から騎士に転職したのか。

 お幸せにー。
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