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第二章 聖杯にまつわるお話

第220話

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 大変です、皇帝がお疲れモードに入ってしまいました。
 これはフォローしておかないと後で僕がお仕置きされるやつだ!

 何か、何かないかな、お疲れを緩和させて誤魔化したい!
 内心ガクブルしている僕の膝を小さなおててが突いているのに気付き、視線を向けたらシャムスだった。

 ハイハイで移動して来たのかな?
 見たかった。
 シャムスのハイハイ見たかった。
 最近は移動時は子犬シャムスのことが多いから、ハイハイは貴重なんです。

「めにゅー」

 メニュー画面を開けってことかな? シャムスのためなら喜んで~といそいそとメニュー画面を開いたら、僕の膝の上に座り、ちょいちょいと画面を操作し始めた。
 手慣れている。
 僕よりスムーズに動かしているのはきっと気のせいだよね。

『これー』

 ポチっと画面が押され、出てきたのは――。

「なぜ我らがいると分かった」
「シャムスと私は匂い、涼ちゃんは意識すら向いてません」
「スコーンもう一個!」
「承知!」
「わたしは気配! 皇帝は何しにきたん?」
「別の地から流れてきて帝国の地を荒らしていた盗賊団が分散して逃亡した。その一部がこの洞窟にいるとの情報が入ったんだ」
「盗賊いたっけ?」
「中央の広場で宴会してたのが元人間ですね、多分生きたままゾンビになったので死んだの気付いてないです」

 中央まで別れ道はあるものの、洞窟自体はさほど広くもなく、ゾンビも弱いので進むのは簡単だったとイネスが自慢げに胸を反らしている。
 何せイネスが存在するだけで悲鳴も上げれずに消えるから、イネスはただ涼玉の卵を転がしながらネヴォラと爆走するだけでいい。
 それは、楽しかっただろうな。

 会話を聞きながらえっちゃんにお願いして高級紅茶を出してもらいます、良い感じのお盆に紅茶とシャムス推薦のこれと黄金リンゴのジャム、スコーンを置いてー。

「お仕事前にどうぞ」

 できる限り丁寧な動作で皇帝の前に置いた。
 これを食べてお仕事頑張って、そして僕への苦情を忘れてください。

「いいなそれ! わたしも食いたい!」

 ネヴォラが空瓶を片手にこちらへやってきた。
 どうやらジャムが終わったのでおかわり目当てだったようだけど、今や目線は皇帝へ出したものへ釘付けです。

「これは?」
「シャムス推薦、クロテッドクリーム。ジャムと一緒にスコーンにつけて食べてね」

 神様の御子の推薦というか神託というか、まぁとにかく食べると御利益があるはず。
 はよ食え、美味しさに意識を逸らせと思っていたら、皇帝の横にネヴォラがちょこんと座った。

「あーん」

 いつもゴブリン相手にそうしているのだろう、くれると疑わずに皇帝に向かってお口を開けております。
 大丈夫?
 不敬にならない? と心配していたら、皇帝はジャムとクロテッドクリームを付け、今まさに食べようとしてたスコーンをネヴォラに食べさせてあげていた。
 さすが十数人の皇子を持つパパ、食べさせ方が自然体。

 不敬に処したら逆に皇帝が危ないので、何事なくて良かった。

「んまいな!」
「そうか」

 スコーンをもう一つ取り、今度は自分の口に運ぶ皇帝。
 さすが上流階級の人間なだけあり、大口を開けて食べても所作はどこか上品。

 まぁ騎士様の所作の方が気品あるし、なんならたまに光ってるけど!
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