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第二章 聖杯にまつわるお話

第355話

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 アー君が夏休み最後の課題としてサーカス団を見つけると宣言した。
 さすがに無理じゃないかと思った僕が間違っていた。

「見つけた」
『知り合いだったの』
「暗殺団ではなかったな」
「炎噴いてました」
「エルフも何人かいたんよ」

 久々に遊びに来たネヴォラ、ジャングルで野生に戻って何とか日常に戻ったものの、腰蓑一つしか付けてないあたりにまだ野生が抜けきってない感がありますね。

「まぁ日記の一ページを埋めるにはちょうどいい感じだったかな」

 絵をぐりぐりと描いているアー君、もしや君、絵の方も不得意なのかな?
 いや違うか、描く機会がないから上達しようもないのか。

「ほらママも何度か会ったことあるだろ、自分の本体を笛にして鳴らすボーンドラゴン」
「うん」
「あいつと仲間たちがサーカスのメンバーだったんだ」

 前に皇帝が主催した打ち上げで演奏やダンスを披露した魔物達がサーカス団の正体だったようです。

「火のついた松明をぐるぐる回しながら踊ったり」
『火の輪くぐりもあったよ』
「太鼓ドラゴンもいたの、増えてました!」
「エルフは空中ブランコや運営手伝いしてました」
「運営責任者、皇帝だった!」

 ネヴォラの発言に思わず噴いた。
 えっ、皇帝何してるの?

「アイデアは女神が出したみたいだけどな、意思疎通出来る魔物とはいえ、バラバラに行動されるよりもひとまとめにしてついでに娯楽を提供させようって感じ」
『カスタネットなスケルトン、腕上がってたよ』
「音楽を愛する者が種族を問わず集まったけど、基本魔物中心って感じだった!」
「エルフは知らない顔でしたねー」
「狩られて奴隷落とされたけど、売られる前に救出されて紹介された職業がサーカス……最近のエルフは森に帰らない?」

 ジャングルになら帰るのかな?と真剣に悩んでいるネヴォラ、ターザン系エルフが増えたら女神様から苦情来ると思います。
 彼らエロ要員だから。

「大衆向け娯楽がなかったからぼろ儲け出来たって、女神は皇帝から褒美貰ったらしいな」
「……皇帝って意外と女神様に甘くない?」
『甘々よ』
「実務に関する改革だけじゃなく、帝国に利益をもたらすとか、女神様が女神やってる」
「かあちゃもたいがい辛口だな」
「暗殺者はいなかったですけど、各地で集めた情報を皇帝に届ける諜報員は兼ねているみたいです」

 魔物が団員な時点で色々誤魔化しが効かない部分もあるため、サーカス団は国営だという事を前面に押し出して皇帝陛下の名のもとに運営しているらしい。
 なので良くある「貴族だから良い席を用意しろ!」とかそういった横暴が一切効かないようです。

 うんうんと話を聞きながら思った事がある。
 やけにサーカスのショーの内容を詳細に語るんだよね、もしや何度か見ているんじゃ……。
 ちょっと僕を誘うの忘れてますよ!
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