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第二章 聖杯にまつわるお話

第465話

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 女神ヴィシュタル。
 箱庭世界の管理人であり、根っからの腐女子。
 世界は男同士のラブだけでいい、女子はスパイス、BLなら大抵受け入れる雑食。
 無理やりも嫌いじゃないけど、最後はハッピーエンドじゃないと許さない。

 自分の趣味と妄想で主の世界の理を改変し、男性妊娠を可能にした腐女神。
 主の御子であるアー君の斡旋で若き皇帝と婚姻してから早五年、この度妊娠しました。

「どえええええええ!!」
「女神様、駄目じゃないですか、禁酒、禁酒!」
『ドリアン、お酒片付けて!』
「今日に限って度数強いの飲んでるな!」
「あっ、この、瓶を抱え込むんじゃぁない! イネス奪え、奪え!」
「みゃぁぁ!」
「渡すかっ、私の命の水ぅ!!」

 大騒ぎです。
 妊婦が興奮するんじゃありません!
 お酒もダメです、ドリちゃん特製ドリンクにしなさい!

「ヘラ母さんの弟子が何人か育ってるよね、えっちゃん連絡して」
「キ!」
「呼ばれた!!」

 呼ぶ前にヘラ母さんが現れた。
 なんだろう、心の声が届いたのかな?

「このおバカ! 酒を離しな!」
「いやぁぁ!」
「興奮すんじゃないよ! ほらほら、体を温めて、こんな脂っこいものじゃなくて野菜を摂って、それから」
「あんたは私のママンかよ!」
「樹の母でアンタの主の義理の母、たいして間違ってないだろ! ほらドリンク飲んで!」
「帰る!」
「任せな、出産まではサポートするからね!」
「嘘だろ」

 反抗期の娘と母親かな?
 でも無駄な抵抗だと思う、母親モードになったヘラ母さんには誰も逆らえない。

「妊娠するわけないだろ、私は人間の体に降りることは出来ても触れないんだから!」
「じゃあ想像妊娠か処女懐胎ですね、あるある良くある事ですよ! 異世界ですし!」
「ステータスに表示された時点で諦めろ」
『ヨムちゃんからお守りもらわなきゃ』
「クリスタル林檎だと一部が出入り出来なくなります、ちっちゃく削って作りましょう!」
「酒の味がするリンゴジュース開発してやるから」

 女神様だけじゃなく僕や子供達も大混乱。
 そこに帰宅した騎士様がスライディングで座敷に入ってきた。
 足が長いからちょっと通り過ぎましたね。

「鈴が妊娠したって!」
「禁酒は嫌だ、禁酒は嫌だ!!」
「馬鹿な事を言わないでください、あのレイアさんだって妊娠中は禁酒したんですよ!」

 裏話として、禁酒を一刻も早く終わらせるために気合で産んだらしいけど。
 結果、魔力が足りなくて人間になれない蝙蝠の子供が生まれたけどね、彼は現在、死地に建てられた砦のアイドルやってます。

「あれかな、皇帝が人外の領域に足を踏み入れたから、魂とかそういうの混ざり合って鈴に宿っちゃった!?」
「騎士様、そういう考察は後にして、女神様からお酒取り上げてください!」
「はい!」

 一本取り上げてもまた別のお酒を取り出してきりがないんです!
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