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第三章 世界に降りかかる受難
第940話
しおりを挟む最強おじいちゃん、レイアさんの心を折った人間として、帝国の騎士団で大人気。
最近体力がついて手に負えなくなってきた皇子らの指南役として、雇用の反対を唱える人間をせん滅、神を心に宿すジジイとして上は皇帝、下は市民まで爆発的に有名になりました。すげー。
「なぁ、神を心に宿すってなに?」
瞳のハイライトが消えたレイアさん、二度も異世界の住人に負けたことがショックらしい。
我が家の夕食に当然のように参加して、騎士様の横で愚痴をこぼしている。
「宿すってことは神そのものじゃねぇはずだろ? 何で神が負けるの? いや、私は引き分けだけど」
「レイア……ほら、新作のお酒もらってきたから飲もう! 飲んで忘れよう!」
新しいグラスをドリアンから受け取り、次のお酒を継ぎ足す騎士様。
上司も大変ですね。
「炎の中から無傷の生還も謎だけど、爆発が起きた原因も不明、誰も魔法を使ってないし、引火するようなものもあの場にはなかった。燃えるはずのない私の髪が、爆風で焦げたのも意味が分からない! なにあれ!」
演出だと思う。
「かあちゃ、肉足らないぞー」
「そうだねぇ、今日もたくさん遊んだし、さっぱり味じゃ物足りないねー」
チラッと見たら神薙さんが一鍋一口の勢いで食べているので、僕らが食べなくても余る事はありえないだろう。
「イツキはどう思う!?」
酔っぱらうの早いなぁ、とばっちり来ちゃった。
「おじいちゃん、かっこよかった」
荒ぶる筋肉に文句はありません。
年を取ってもムキムキ、とても素晴らしい人材だと思います。
「なにその孫目線!? たまには私の味方しよう?」
「まぁまぁ」
「お前ももっと危機感持てよ! 私が勝てない人間だぞ!?」
「帝国の管理下に入ったから脅威ではないでしょう? ほら一献」
「うぅ芳醇な香り」
泣きながら杯を空にするレイアさん、やけ酒だから進みますね。
ご飯も食べてください、僕らはこれから庭で焼肉です。
「お前も一度あのジジイと戦ってみればいいんだ! どれだけ理不尽か分かるから!!」
レイアさんが何か言いだし、騎士様は「まぁまぁ」と言いながら、何気にさらに強いお酒を飲ませ始めた。
潰して寝かせる気だ。
でもそうだなぁ、騎士様なら意外と勝てるかいい勝負になるんじゃない?
騎士様って適応能力高いし。
「肉ー!」
「涼ちゃんよだれ」
『明日はどこ行こう?』
「お肉焼けたけど足りないんよ」
「ドリアン、お肉追加で!」
お腹を空かせた子供たちのはしゃぐ声に、大人の愚痴が遠ざかる。
「肉、炭火焼き!」
「頬っぺたがにゃーんってなりますねー」
『白いご飯も食べたいの、ドリちゃーん!』
「カルビ、カルビ、中落ちカルビ!」
やけ酒をする大人に比べ、こちらはとても平和な空気です。
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