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貴族になろう

第157話

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 この世界の識字率はとても低い。

 学ぶことは貴族や上流民の特権――というのがいまだ根強く、平民は学ぶどころか字が読めない人の方が多い。
 それに対し刀国民はほぼ全てが文字の読み書き、計算を当たり前に出来るだけでなく、なぜか冒険者登録しているらしい、なんで?

 ええと、まぁそれは置いといて、識字率が高い状態が何年も前からではなく数百年途絶える事無く続いている。
 他国の一般民より刀国にいる野良猫の方が知能が高いらしい、しかも嘲りや見下しとかではなく純粋な事実、野良と言っても学校に通って授業を受け、諜報員として就職している。うん、その時点で普通の野良猫じゃないよね。

 まぁとにかく

 その歴史を支えるのは自国民なら性別どころか身分、年齢、種族を問わず無料開放されている、この国唯一にして最大の学舎、刀国学園。
 何と今なら冒険者に餌付けされた魔物も通ってるよ!

 その学園が今年から試験的にではあるけれど、他国の人間を受け入れてみる事になったんだ。
 双子の案らしいけれど、目的はえーっと確か『優秀な人材を取り込む為』だったかな?

 新学期から双子は学校に通う。
 それに伴い、王太子とご学友になろうと留学の申請が山のように来たって話だ。
 選別はクロードさんがしたらしい、もちろん女神データを使って調査、こちらに都合のいい人材を優先的に選んで合格通知を出したとか。

「下手をすれば邪神のご飯になるような国に、良く子供を留学させようと思ったね」
「ふふ」
「母上、手を止めちゃやー」
「はいはい」

 ただいま僕は両膝に双子の頭をそれぞれ乗せ、膝枕をしつつ頭を撫でています。
 さらさらの髪が気持ちいいねぇ。

「ルールを破れば命はない、って言うのは暗黙の了解として浸透しているからね」
「うん、来るのは政権的に邪魔な人材とか、死んでも構わないと思われている子達」
「自国に居場所がないと追い出された人材……」
「それを僕らが拾って、伸ばして、育てて」
「最終目標は」
「僕らの手足!」

 うちの子が黒い。

 多少の不穏分子もスパイスとして採用されたらしい、女神様の熱い希望があったそうです。
 どんなテンプレが発生するかによって、女神様の出版物の物語が変わったりするのだろう。

「でも受け入れるって言ってもどうやって通うの? 寮とかあったっけ?」
「父様や神薙様がざっくざく稼いだお金使ったの」
「学舎拡大して、余ったお金で寮も新設!」

 他の国には真似できない荒業だね。
 最早お小遣いの範疇じゃないけど、でもまぁ皆楽しそうだからツッコミは無粋か。

「シヴァさんの孤児院もそのお金使ったんだっけ?」
「そうだよー」
「僕らも遊びに行ったけど、あれ面白いね」

 いつの間に。

「アー君が後衛いないって嘆いてたから、僕らがやってみたの、意外に難しかった」
「後先考えずに突撃する方が楽だよねー」
「わぁ、うちの子が脳筋」

 レイアさんの影響恐るべし。

「ちゃんとポンチョ着て行った?」
「大丈夫!」
「お揃い猫耳!」
「それでね、その時の稼いだお小遣いで魔王様から土地買ったの」
「え」
「そこでね、しんじぎょーをする予定でーす」

 くふふと笑う二人は内容までは教えてくれなかった。
 裏にはきっとクロードさんがいるんだろうなぁ。
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