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権力とは使う為にある
第256話
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花嫁が着る純白の着物に施された桜の刺繍。
桜は刀国の国花、花嫁が国を背負って嫁ぐ事を示すため。
金の刺繍が施されたヴェールを被っていて見えないが、美しい化粧は兄弟が筆の一つから選び、朝から一つ一つ丁寧に仕上げてくれた。
天女の羽衣と称されるほど薄く軽い生地は異世界産。
豪奢な馬車に詰められた衣装と七つの花嫁道具。
花嫁のアイテムボックスには小腹が空いたら食べれるようにと、兄弟が昨日から煮込んだ煮物やスープ、サンドイッチなどが詰め込まれている。
馬車を引くのはイツキが魔王領で知り合った野生の馬、イツキが可愛く「お願い」したら快く役目を引き受けてくれた。
正真正銘の魔物だが、これからはもふもふズの一員としてかぐやを護っていく事だろう。
家族との別れは昨夜済ませた。
次は夢の中で会いましょうと約束し、美しい花嫁は一人馬車に乗り込んだ。
国民に盛大に見送られ城門を潜って見知らぬ地へと向かう。
国境までは父の一人である刀雲が将軍として付き添ってくれるが、それ以降の護衛は傭兵団だけになる。
傭兵と言っても勿論ただの有象無象の傭兵ではない、最強の女神の加護を受けた人間から一歩外れた傭兵集団で、Bランクの魔物なら一撃で殺れる者達で構成されている。
彼らはドラグーン王国に根を下ろしており、他国が雇う際には莫大な費用がかかる。
だが今回雇い主はレイア、みんな無償労働を笑顔で引き受けてくれた。
「はぁかぐや綺麗だったなぁ」
空から降り注ぐ祝福の花びらはアー君からの贈り物。
大規模な魔力の展開も慣れて来たみたいだね。
今日は祝日。
屋台も特別メニューを提供したり、お祝いの品を売り出したりしている。
子供達にはジュースを、大人にはお酒を最初の一杯だけは無料で提供されるんだ。
魔王領からもお祝いに駆け付けて刀国はいつも以上に賑やか、子供達も友達や婚約者とお祭りに出掛けた。
僕はちょっと疲れたので噴水で一休み、ぬいぐるみサイズのキーちゃんとスラちゃんが一緒なので単独行動ではないですよ。
国境までどのくらいかかるんだろう、かぐやの馬車は花嫁専用だからラビは別の馬車に乗ってるんだよね、かぐや一人で寂しくないかなぁ。
ラビのリクエストでドライフルーツを使ったミニパンケーキ沢山持たせたけど、向こうでも食べれるようにレシピはベル君のママに送付済み。
「うるる」
「そうだね、お家帰ろうか」
せっかくの外出だけど人が居過ぎて疲れちゃった。
「きゃぁぁぁ旦那様ぁぁ」
「神薙様が貴族喰ったぞー」
「めでたい日に邪神様怒らせるなよ」
「クリーン掛けろクリーン」
「え……あ、あの……」
「神薙様、そんなの食べないで特別料理食べてくださいよー」
「食べ残しはスライムが片付けますから」
「特別席用意しました。新作のお酒付き!」
…………刀国民のメンタルが強い。
帰ろ。
………………
…………
……
ラビは目の前の事態に頭を抱えていた。
せめて喋る事が出来れば説明できるが、人語を得るには至らなかった。
正しい判断を出来るかぐやは別の馬車で止まるまで状況報告出来ない、馬車が止まるのは野営地点に着いてからになる。
本来は高級宿に泊まるべきだがタイガに憧れたかぐやの可愛いわがままが通った。
馬車はすでに国境を越えた。
止まらない冷汗におやつのパンケーキを一枚取り出す。
『ラビちゃんパンケーキあーん』
これやべぇよな。それだけは分かった。
桜は刀国の国花、花嫁が国を背負って嫁ぐ事を示すため。
金の刺繍が施されたヴェールを被っていて見えないが、美しい化粧は兄弟が筆の一つから選び、朝から一つ一つ丁寧に仕上げてくれた。
天女の羽衣と称されるほど薄く軽い生地は異世界産。
豪奢な馬車に詰められた衣装と七つの花嫁道具。
花嫁のアイテムボックスには小腹が空いたら食べれるようにと、兄弟が昨日から煮込んだ煮物やスープ、サンドイッチなどが詰め込まれている。
馬車を引くのはイツキが魔王領で知り合った野生の馬、イツキが可愛く「お願い」したら快く役目を引き受けてくれた。
正真正銘の魔物だが、これからはもふもふズの一員としてかぐやを護っていく事だろう。
家族との別れは昨夜済ませた。
次は夢の中で会いましょうと約束し、美しい花嫁は一人馬車に乗り込んだ。
国民に盛大に見送られ城門を潜って見知らぬ地へと向かう。
国境までは父の一人である刀雲が将軍として付き添ってくれるが、それ以降の護衛は傭兵団だけになる。
傭兵と言っても勿論ただの有象無象の傭兵ではない、最強の女神の加護を受けた人間から一歩外れた傭兵集団で、Bランクの魔物なら一撃で殺れる者達で構成されている。
彼らはドラグーン王国に根を下ろしており、他国が雇う際には莫大な費用がかかる。
だが今回雇い主はレイア、みんな無償労働を笑顔で引き受けてくれた。
「はぁかぐや綺麗だったなぁ」
空から降り注ぐ祝福の花びらはアー君からの贈り物。
大規模な魔力の展開も慣れて来たみたいだね。
今日は祝日。
屋台も特別メニューを提供したり、お祝いの品を売り出したりしている。
子供達にはジュースを、大人にはお酒を最初の一杯だけは無料で提供されるんだ。
魔王領からもお祝いに駆け付けて刀国はいつも以上に賑やか、子供達も友達や婚約者とお祭りに出掛けた。
僕はちょっと疲れたので噴水で一休み、ぬいぐるみサイズのキーちゃんとスラちゃんが一緒なので単独行動ではないですよ。
国境までどのくらいかかるんだろう、かぐやの馬車は花嫁専用だからラビは別の馬車に乗ってるんだよね、かぐや一人で寂しくないかなぁ。
ラビのリクエストでドライフルーツを使ったミニパンケーキ沢山持たせたけど、向こうでも食べれるようにレシピはベル君のママに送付済み。
「うるる」
「そうだね、お家帰ろうか」
せっかくの外出だけど人が居過ぎて疲れちゃった。
「きゃぁぁぁ旦那様ぁぁ」
「神薙様が貴族喰ったぞー」
「めでたい日に邪神様怒らせるなよ」
「クリーン掛けろクリーン」
「え……あ、あの……」
「神薙様、そんなの食べないで特別料理食べてくださいよー」
「食べ残しはスライムが片付けますから」
「特別席用意しました。新作のお酒付き!」
…………刀国民のメンタルが強い。
帰ろ。
………………
…………
……
ラビは目の前の事態に頭を抱えていた。
せめて喋る事が出来れば説明できるが、人語を得るには至らなかった。
正しい判断を出来るかぐやは別の馬車で止まるまで状況報告出来ない、馬車が止まるのは野営地点に着いてからになる。
本来は高級宿に泊まるべきだがタイガに憧れたかぐやの可愛いわがままが通った。
馬車はすでに国境を越えた。
止まらない冷汗におやつのパンケーキを一枚取り出す。
『ラビちゃんパンケーキあーん』
これやべぇよな。それだけは分かった。
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