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巡り合い

第583話

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 刀雲が泣きながら帰ってきた。

「えっ、刀雲どうした、なに、敵? 殲滅する?」

 驚いて固まっている僕より先に騎士様が駆け寄って慰めている。
 出遅れた。

「神薙様が……」

 何かしたのだろうか?
 今日の午後は確かアー君と高難度ダンジョンに遊びに行ったはず、でも二人とも何も言ってなかったけどなぁ。

「アー君とレイア様と協力して大型モンスターを生け捕りにして押し付けてきたんだ」
「えっなんで」
「レイアさんも誘ったのかぁ」

 本気出すと倒すのが簡単すぎてつまらない、という理由でレイアさんは手加減がとても上手。
 まだまだ力加減がうまく出来ないアー君は師匠と呼んで慕っているのだけど、そこに神薙さんが加わるとオーバーキルのイメージしかない。

 だからこそあのメンバーにとって生け捕りは難易度が高い、多分それだけの理由でチャレンジして成功したんだろうなぁ。

「そいつ鼻が良いから刺激臭に弱くて、俺、俺……暫く辛い物禁止令が出た」

 こけそうになったけど何とか堪えた。
 笑っちゃいけない、辛い物好きの刀雲にとって辛い物禁止は苦痛以外の何物でもないんだから。頑張れ僕の腹筋。

 なんでも生け捕りにしたその子に乗って凱旋する羽目になったそうです、神様から下賜されたものを民にお披露目するとかなんかそんな感じの理由ですって。
 ようはお祭りイェイってことか。

「刺激臭が出ないカレー開発したんじゃなかったの?」
「それすら禁止された、こんな時ばっかり王命使ってぇぇぇ」

 王命の使い方ってこれでいいのだろうか。

『とーうーん』
「おつかれ!」
「アー君酷い、なんで俺に押し付けるの!」
「えー、だって山賊の集落が一番近くにあったから」
「魔物群れの襲撃かとパニック起きたよ」
「群れ!?」
「うん、一番デカいのをレイア様がワンパンでのして、それを見本に神薙様と頑張ってみた」

 一頭だけだと思ってたらまさかの群れ、騎士様も小さな声で刀雲に謝りながら頭痛がするのか頭を押さえている。

「どんなモンスター?」
「でかいのは何だっけ、アー君の図鑑で見たことはあるんだが」
「マンモス! 雪山地形に行ったんだ」
『ぱおーん』

 王都に入れるのかな、そのサイズ。

『どんなモンスターなの?』
「イエティ、白熊に似ててトドメさせなくてさ~」

 似てるだろうか?
 二足歩行で雪山に住む全身真っ白な長身のUMA、共通点は多いかな?

「レイア様が教育的指導を、神薙様が生存本能に恐怖を植え付けてくれたから、人間を襲うことはないぞ。トドメに母上に接触してもらって人間に友好的になってもらおうと思って」
『反抗心ボコボコなの』

 僕の謎のチートまで利用するとはさすがアー君、アカーシャの弟なだけあって抜け目ない。

「どうやらマシューの領地で労働に従事させるつもりっぽいぞ」

 なんとか立ち直った刀雲が抹茶を飲みながらため息を吐いている。
 神様の調教済みモンスターか、ある意味貴重だね。

「荒んだ心を癒すために、今日のデザートは……」
『ココア美味しいの』
「シャムス、ぽっぺにクリームがついてるぞ」
「俺がとってやろう」
『きゃー、アー君くすぐったいのー』

 シャムスの頬っぺたみたいにほわっとしてるマシュマロを使った何かにしよう。
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