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湯水のごとくお金を使おう

第598話

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 翌朝、ラーシャがアー君の前に座り、昨夜と同じ素材で腕輪をもう一つと、面頬めんぼうを作ってほしいと依頼していた。
 面頬ってなんだろう?

「いいぞー、シャムスー」
『あい! 張り切るの!』
「シャム兄にかかれば朝飯前だぜ!」
「涼玉様、玉子は」
「半熟!」

 アー君がリンゴを取り出し、シャムスが捏ね、涼玉が応援している。

『出来たのよ』
「つるっとしてるな」
『ゴツゴツだとイネス痛いの』
「確かに」

 面頬、戦国のおっちゃんが装備しているシーンがチラホラある、顔面と喉を保護する防具だった。
 腕輪と一緒に渡されたラーシャが面頬と腕輪を装備すると、机の上に並べられていく朝食を盗み食いしようと狙っていたイネスがフラフラとラーシャに近寄ってきた。

「いい匂いです」

 跳び上がったイネスがラーシャの肩に乗り、ふんふんと面頬の匂いを嗅いでいる。

「うみゃぁ」
「うふっ」

 イネスが全身で頬の部分に体を擦り付けると、ラーシャが変な笑い声を漏らした。
 仮面で分からないのをいいことに、口元相当ニヤついていると見た。だって目は隠れてないから駄々洩れなんだもん。

「対価は何で払えばいい?」
「どうする?」
『アンデッド!』
「それだ!」
「ダンジョンにアンデッド配置したい!」

 目を輝かせながら何言ってるのかなうちの子は。

「アンデッド系には聖水、つまり、教会が儲かりまっせ!!」
『うはうはー』
「にいちゃ、無双したいだけだよな」
「うーんダンジョンって事は、定期的に湧いた方がいいんだよな?」
「おう、二度と湧かないのは困るな」

 アンデッド系がいるダンジョン、か。
 アー君よりもイネスの方が無双出来そうな気がする。

「俺の部下使っていいか?」
「それでもいいぞ」

 確かラーシャを初めて見たのは獣人の国の闘技場、悪い大人が召喚魔法か何かを使って呼び出したのがラーシャ率いる一団で、その後すぐ騎士様に気付いてパニック起こしたあの子達?
 基本イメージがヘタレなんだけど、大丈夫なのだろうか。

「平和な御世みよで鈍りかけている腕を揮うチャンスだからきっと張り切る」
「ラーシャ、あの鎧着るんですか?」
「いや俺は……」
「フル装備のラーシャ見たいです! でもダンジョン用装備もいいかも!」
「ボス枠空いてる?」

 最近思うんだけど、ラーシャってチョロイよね。

「難易度はどれぐらいにすべきか」
『自我あるのよ』
「そっか、つまり手加減かのーってやつだな!」
「よし、初級ダンジョンの最下層に配置しよう。ボスをやりたい場合はボス部屋に行って、ボスに言えばいいから」
「え」
「今、将棋にドハマりして、誰も来ない時は一人で打ってるらしい」
『対戦相手いないの』
「ボスってなんだろな?」

 涼玉が変な悟りを開きかけている。

 ちなみに現在の初級ダンジョンの基本的なラスボスはゴブリンロード。
 ランダムでヘラ母さんやもふもふズ、騎士様、神薙さん、タイガなどが出るらしい、ランダムメンバーにツッコミを入れたいのをぐっとこらえてスルーします。

 …………騎士様、なんでボス側?
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