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三食昼寝、家族付き
第887話
しおりを挟む良かった。
全身鎧の求婚相手、僕じゃなかった!
「ママ、助けて!」
「はぁ~さすがに無機物の旦那様はいらないから、本当に良かった」
「!!!」
薔薇の花束を押し付ける勢いで迫る全身鎧のダンジョンボス、半泣きになりながら逃げるアー君、いつもやりたい放題だしたまにはいい薬だろう。
ちなみに僕は花嫁の母親ということで、薔薇を背景に優雅にティータイムを楽しんでおります。
給仕をしてくれているのは土人形、ほぼ人間と変わらない肌と滑らかな動き、土が盛り上がって出来上がる瞬間を見なければ信じられなかったかもしれない。
それにしても……優雅なティータイムはいいとして、随分長居しているけれどダンジョンへの影響は大丈夫だろうか。
どんな感じで変化するかは謎能力次第、僕に左右は出来ません。
ダンジョンボスがお花畑になってしまったのは、僕をここに連れてきたアー君の責任であって、僕は一切の責任を取る気はない。
エロフみたいなダンジョンにならないといいけど、ちょっと保障出来ないなぁ。
「かったっ! 何こいつ硬すぎて俺の攻撃通らない!」
「!!!」
求愛に耐え切れなくなったアー君がボスを攻撃したようだ、しかし攻撃が通らない!!
そう言えば謎能力って、時には対象の能力倍増することあるよね。
「しかも攻撃したのに嬉しそうなんだけど! ママ助けてー!」
「ここってドMなボスしかいないの?」
思わず給仕の土人形に問えば、申し訳ないと言わんばかりに頭を下げられた。
きっとこの子達も強いんだろうなぁ。
倒さないと素材やらアイテムが手に入らない場合、刀国の冒険者から苦情がきそうですね、その辺は当人同士またはアー君を介しての話し合いで解決してください。
ダンジョンをカオスに導く筆頭がギルド統括かぁ、なんでまたそんな事になったんだろう。
「よっし、動きを封じた! ママ帰ろう、今のうちに帰ろう!」
「うん、いいよ」
涙目で抱き着いてきたアー君の背後には全身鎧の氷像が立っていた。
倒せないから氷漬けにしたようだ、でもそんなに長持ちしないんだろうな~。
ほら今だって氷がピキピキ音立ててる。
「氷の状態で物理加えたら氷と一緒に砕けないかな?」
「やってみる!」
殺意と闘志を燃やしたアー君が、魔力を練り上げて立派な獅子の獣人に姿を変えた。
久々に見る成人バージョンだけど相変わらずカッコイイなぁ、白熊さんはこの姿に一目惚れして求婚したんだよね、確かに筋骨隆々だしキリリとした顔がイケメンだ。
「ママ、結界張ったからそこから出ないでね」
「はいはい」
外見はワイルド獅子なのになぁ、口調が幼児のままなのが残念。
「ふーー……ハッ!!」
「ハッハーー!!」
アー君が氷に殴り掛かったのと、ダンジョンボスが氷を割ったのは同時だった。
そう、アー君は自ら全身鎧の胸に飛び込む形になっちゃったのです!
「んぎゃーーーーー!!」
「L・O・V・E!!」
アー君がダンジョンボスに捕獲されたので暫く帰れないのかな、ああいや大丈夫か。
「えっちゃん、お家まで転移お願いしていい?」
「!」
OKの返事が来ました。
最初からこうすれば良かった。
「先帰ってるね、夕食までには帰るんだよ」
「ママーーー!!」
やらかし幼児の悲鳴を背に、僕はえっちゃんの闇に足を踏み入れた。
瞬きの間に座敷に帰還した。
「えっちゃんありがとう」
「キシャシャ」
手を伸ばし、闇を撫でたら本日の手触りはふわふわしていた。
昨日はつるるんとしていたんだよね、手触りが日替わりな謎。
「樹!」
『ママー』
「あれ、にいちゃは?」
「置いてきた。今頃はダンジョンボスを引き離すために格闘してると思う」
ハイハイで近付いてきて両手を伸ばしてきたシャムスを抱っこしながら、ダンジョンに転移してからの顛末を説明した。
「……お迎え行ってくる」
か細い声で呟き、騎士様が姿を消した。
「アー君に甘いなぁ」
『甘々よ』
「にいちゃも分かってて無茶する所あるよなー」
「はい!」
帰宅後はぐったりしているだろうアー君のため、本日の夕食はスタミナ料理にしようかな。
僕も甘いかなぁ?
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