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ドラゴンの日常 1-2

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 こうして俺たちの日常が変わった。
 それからというもの、長老の言った通り定期的に人間が訪れるようになった。
 最初は警戒していた大人たちも、人間たちが自分たちに危害を加えないことを悟る。
 俺たちも少しずつ慣れていき、長老と人間のやり取りを見学するようになった。
 人間は俺たちのことを怖がらないし、襲ってもこない。
 俺たちドラゴンにとってそれは新鮮だった。

 長老が言うには、あの人間は俺たちを討伐するのではなく、取引相手として接するようになったらしい。
 ただしあの人間以外は今まで通り近付かないようにとのことだ。
 どうしてなのかと聞いたところ、あの人間が特殊なのであって、その他の人間は対して変わっていないとのこと。
 俺たちはそのことを素直に受け入れることにした。
 あの人間が特別なだけなのだと。

 ただそれでも興味はある。
 そこで俺たちは人間を観察することにした。
 といっても遠くから観察するだけだ。でもそれで十分だった。

 なぜなら俺たちは暇を持て余しているからだ。
 たまに他の大人のドラゴンと遊ぶこともあるが、基本的に俺たちの日常は変わらない。
 そんな日々を過ごしていたある日のこと。
 第二の爆弾がやってきた。

 いつものように過ごしていると突然爆発音が響いた。

「!?」

 俺たちは一斉に飛び起きる。
 何事かと思い外の様子を伺う。
 そこには……

「なっ……」
「え……」
『……』

 言葉を失う光景が広がっていた。
 そこに居たのはここに通ってくる人間だ。
 だが今は変わり果てた姿になっている。
 血を流して倒れている人間と、人間の上に仁王立ちする小さなエルフ、炎を吹き出すドラゴン。

「がおー」

 口から炎を吐き出しながら、両手を上げ、一生懸命に威嚇している。
 どう見ても俺より小さい。
 下半身に殻ついたままだから迫力も半減。

「っぐ」

 その時、人間が動いた。
 まだ息があるようで起き上がろうと必死にもがく。

「すみません、どいてください」
「俺はリーダーが重いっす」
「ちょっと座標ずれた!」
「腹減った!」

 人間は無事だった。
 血は彼らのものではなく、途中戦った魔物の返り血。
 エルフは褐色肌を持つダークエルフの少年で転移持ち、殻付きドラゴンはその友人だと紹介された。
 山を登るのがしんどいので試しに雇ったら座標がずれて空中に転移、あの轟音は地面に落ちた音だったらしい。
 そしてその後ろでは大柄な青年が荷物を持って佇んでいた。
 あの人なんでずっとドラゴンの子供の後ろにいるんだろう……怖い。
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