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とある生徒の、普通とは少し違った日常。 1-4
しおりを挟む学園生活初日。
教室に入ると既に多くの生徒が着席していた。
緊張しながら空いている席に着くと、隣から視線を感じた。
そちらを見ると、そこには真面目そうな少年がいた。
「おはようございます」
「お、おはよう」
まさか挨拶されると思わず驚いてしまった。
少年は小さく笑うと前を向いた。
それからしばらくして、担任の先生がやってきた。
「今日からお前たちの担任になる、ダミアン・ハーシェルだ。まず全員学園の案内書は持っているな」
全員が一斉に学園から渡された冊子を取り出した。
私も同じものを鞄の中から取り出す。
「全員二ページを開け、いいか学園では神隠しが起こる。平民だろうと貴族であろうと、成績上位だろうが関係ない、すでに見た者もいるだろうが、学園には常に二匹の蛇が巡回している。あれは邪神の類でな、学園の平穏を守ると同時に乱そうとする者は食べていいと思っている。あの二匹以外にも人間の命を何とも思っていないようなのが学園にはいて、ちなみにそっちの窓際で鼻提灯作ってるのはその一人だ」
全員の視線が一斉に窓際に向けられる。
すぴょーと寝息を立てて気持ちよさそうに寝ている男の子の姿があった。
「世の中には人間の権力なんて通じない相手がいるってことを学べるいい機会だと思え。まあ、そういうことだ。くれぐれもあいつらを刺激しないように気をつけろ、最悪死ぬぞ」
先生の言葉にごくりと唾を飲み込む音が聞こえてきた。
「ちなみに俺はこの学園の卒業生だが、当時は学園内には人食いの神々はさすがにいなかった。何かあれば相談に乗るし、神々から多少守ってやるが、一番大切なのは学業を疎かにしないこと、食べ物を粗末にしない、種族で差別しない、あとなんかあったかな? まぁとにかく、国外から来た奴は神がこんな身近にいることを信じない可能性があるからな、一度や二度は庇ってやれ、それ以上は必要ない、巻き込まれないよう気をつけろ、まぁ最初はこんなとこか」
最初はって……すでに十分情報量が多いです。
「じゃあ自己紹介でもするか、名前とあとは出身国とか、得意なこととか好きなものとか適当で構わない。それが終わったら今後の予定を話すからな」
そう言って先生が黒板に名前を記入していく。
一人ずつ順番に簡単な自己紹介が始まった。
意外なことに他国の人間は僕を含めて数名、それ以外は全員この国の人だった。
この国は人間至上主義で他種族への迫害が酷いと聞いていたけど、尻尾や耳がある人、耳が長い人、ふさふさしている人などが普通にいる。
これはきっと外の情報が間違っているか、悪評を流されているとかなのだろう。むしろ人外から人間への扱いが酷そうだ。
「次はあなたよ」
隣の少女に促され僕は立ち上がった。
「ウィリアムズと言います。この国には冒険者の方に連れてきてもらいました。農家の次男で、文字は教会で教わりました」
「おお農民か、農民はいいぞぉ、職には絶対に困らない。むしろ農業から離れたい場合は自分の進路を今からきちんと決めておかないと、あっという間に流されて引き抜かれるから気をつけろ」
「はい」
何をどう気を付けるかは分からないけれど、外の常識は通じないことは何となく理解している。
先生の忠告はしっかりと胸に刻んでおこう。
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