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とある生徒の、普通とは少し違った日常。 1-11
しおりを挟む次の週、ついに魔法の授業で魔力の流し方についての説明があった。
「では魔法を使う訓練を行います」
先生の言葉にざわめく一部生徒達。
それもそうだろう、だって皆魔法を使える前提なんだもの、そりゃ騒ぐ。
「静粛に、魔法といっても攻撃じゃなきゃ良いのです。人にも自分にも悪影響が一切ない、とても便利な魔法が我が国にはあります」
ここ数年、あちこちの国から生徒を受け入れ、魔力操作法の統計を取っていたようで、最終的に先生方が下した判断は「国によって魔力の扱いが違うからめんどくせぇ」だった。
教師がそれでいいのかと思ったのはきっと僕だけじゃない。
「魔力を流す方法は人それぞれ、指先から、額から、全身から魔力を放出する人もいます。中にはカッコイイという理由で目からビームを極めた人もいますね」
何それ、そんな理由で魔法を極められるとか、この国の人の感性がおかしいのか、僕らがおかしいのかどっちだろう。
「僕の兄さん、口から出せる」
「ドラゴンの真似だっけ」
「ファイアブレスとか言って溶岩撃ってたな」
僕の後ろで話してる人たちが色々ヤバい。
ラグ君って邪神なんだよね?
それだけでもやばい気がするのに、邪神が溶岩撃つとか意味が分からないよ。
え、何なの、この国、大らかすぎない!?
「さて説明を続けましょう、我が国において魔法を使う際に必要なのはイメージと一応の定義があります。この辺は国によって変動するようですが、郷に入っては郷に従え精神で、我が国の流儀に従ってもらいます。では国外から入学した方は前に出てきてください」
「うちの国の連中はこっちな、ちょっと授業の道具揃えるの手伝え」
「生徒は平等に扱ってくださーい」
「うるせぇよ、俺は立ってる者は親でも邪神でも使うって決めてるんだ」
「酷い偏見を見た」
友人と担任が楽しそうに罵り合っている。
あっちに混ざりたいけど、今だけはそうはいかない。
「始めますよ~。その前に皆さんこちらの特別講師を紹介します」
「いつもうちのラグが世話になっている」
にゅん。という感じで地面から生えたのは、頭が蛇、下半身が人の姿をした人外のなにか。
異様なのは外見だけではない、腕が複数生えていてそれぞれを自在に動かせるようだ。
「あ、イグ様だ」
「ちわーっす」
「いいなぁイグ様から魔法授かるんだ」
「俺ら最初から使えて損した気分だぜ」
どうやら目の前のこの蛇さん、とても人気があるらしい。
「はい皆さん静かに、この方はイグ様。理事長が特別に雇ってる方でして、私の上司みたいな人ですね」
「うむ」
え、上司?
「では世界一安全で魔力が暴走しても安心な魔法を授けてもらいましょう、どうぞ」
「ほあーーー」
イグ様と呼ばれたその人、その蛇?まぁとにかく特別講師が僕らに向かって口を開け、不思議な音程の声を吹きかけた。
「終わった」
「一瞬で終わりましたが、これで全員確実に一つの魔法が使えるようになりましたよ~。」
先生が言うにはこの魔法、この国の国民なら赤子以外は「誰でも使える超簡単魔法」らしい、効果は単純にして明快「綺麗にする」。
基本は汚れを落とし、怪我や病の傷口を洗浄、極めれば体内にある毒素も取り除き、体の調子を整えることも出来るという、利用法が無限の可能性を秘めた魔法で、魔力の操作さえできれば誰でも使えるそうだ。
「では皆さん、クリーンと唱えてみてください、自分にでも人にでもいいですよ」
先生の合図であちこちで「クリーン」と唱える声が聞こえてくる。
「…………」
僕は無言だ。だって、だってさ。
(これ浄化の魔法じゃないかなぁ!?)
どうやらこの国、他国とは大分違った方向に進んでいるみたいだ。
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