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聖女ですわ!! 1-3

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「ところで聖騎士様、あなたはどうしてここに?」
「お前を合流地点まで連れていくリーダー役だ」
「そうですの、それはご苦労なことですわね」
「……まったくだ」

 聖騎士の護衛がつくなんて、流石は私。
 さすがは聖女の地位!
 辞められませんわぁ!

「では参りましょう!」
「待て」
「ぐぇ」

 襟を掴まれ首が絞まりましたわ。

「どこに行けば良いのか知っているのか」
「知りませんわ!」
「お前という奴はぁぁぁぁ!!!」

 この聖騎士様、気が短いのね。
 将来頭がはげ散らかさないように祈って差し上げましょう。

「……はぁ、とりあえずここから一番近い街に向かう」
「はいはい」
「返事は一回だ」

 まるでお父様のようなことを言いますわねぇ。

「俺一人ではなく護衛を雇う、ちょうどいいから雇われるつもりはないか?」
「いやっす」
「勘弁して」
「純粋に護衛を受けるためのランク足らない」

 あら、皆さんに振られてしまって可哀想ですわ。
 ここは私が慈悲の心でお相手して差し上げるとしましょう!

「私、高貴で希少な聖女ですのよ? 護衛なんて必要ありませんわ!」
「……聖女ためじゃなくて俺の心の安定剤として、どうか」
「兄ちゃん」
「ホロっとする」
「だが断る」
「素直にカウンター行きなよ」

 またもや聖騎士様が頭を抱えてしまいましたわ。
 さすがに少しばかり申し訳なく思ってしまいます。

「聖騎士様、お気を確かに」
「お前のせいだよ!!」

 失敬な!
 私ほど心優しい人間はいませんのよ!

「ほらちょうど受付空いたぜ」
「分かった」
「終わったら声をかけてくださいまし」
「お前も来い!」
「まぁ乱暴な」

 引きずられるように受付に行くと、柔らかな笑顔のお方が対応してくれました。

「本日はどのような御用件でしょうか」
「護衛の依頼だ。支払いは教会で、これが証明になるか」
「かしこまりました。用紙に必要事項を記入してください、こちらは少々お預かりいたします」

 まぁここが受付なのね、お父様の執務室より書類が多そうだわ。
 きょろきょろとしていたら受付の方が「書いてみますか?」と一枚の用紙を渡してくださいました。冒険者登録書ですか、ワクワクいたしますわ!

「おい、何を書いている」
「年齢と性別と職業と特技と属性ですわね」
「最後の二つは何だ」
「趣味と好きな食べ物ですわ!」
「なんでそんな物を書いている!」
「こちらのお姉さまが親切で渡してくださいましたのよ!」
「何事も経験ですよ、それにこれは一時登録の書類ですから、身分を隠すにはもってこい」
「甘やかすな」
「うふふ」
「出来ましたわ!登録をお願い致しますわ!」
「登録するな!お前は護衛対象だろうが!」
 
 いちいち口うるさい男ですわね、こういう方をきっとオカンと呼ぶのでしょう。
 ぷっ。
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