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宝箱の中の綺麗な思い出2
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ガチャ
「…ただいま」
玄関ドアを開けた蒼が出した小さな声は、しん、とした静けさの中に消えていった。
お母さん、鍵閉め忘れてる…
薄暗い部屋の中には誰もいない。
蒼は部屋に入ると、床の上に散乱している物を踏まないように気を付けながら歩いた。
壁際にランドセルを置く。
母親がどこで買ったのか、それとも誰かに貰ったのか分からない中古の黒いランドセル。
小学校の入学式で、みんなピカピカのランドセルの中、蒼はひどく浮いていた。
それでもちゃんと用意してもらえただけマシだった。
くすくす、と甘ったるい笑い声が聞こえてくる。
「やだぁ、もう~」
蒼が声のした方ーー玄関に目を向けると、母親が若い男と腕を組んでいた。
初めて見る男。
ついこないだまで、母親よりも歳上と思われる男がこの家に入り浸っていたというのにーー
「…いたの?」
蒼に目を留めると、急に不機嫌そうに母親が言った。
「おかえりなさーー」
「悪いけど、しばらくどっか行ってて」
蒼の言葉を遮って、母親は持っているハンドバッグの中に手をやり財布を出した。
「そのガキ、あんたの子供?」
「まあね…生意気な子よ」
そう男に答えた母親は、目で訴えるように蒼を見た。
慌てて蒼は母親のもとへと行く。
「これで何か食べれるでしょ」
小銭が数枚蒼の両手に乗せられた。お腹を満たすには、足りない。贅沢は言えないが。
「いいの? 今日寒いのに外に出しちゃって」
「何とでもするでしょ、赤ん坊じゃないんだから」
「それにしても結構大きい子供いてびっくりしたー」
そんな会話をしながら、母親と男が部屋に入る。反対に蒼は部屋を出た。
「…ただいま」
玄関ドアを開けた蒼が出した小さな声は、しん、とした静けさの中に消えていった。
お母さん、鍵閉め忘れてる…
薄暗い部屋の中には誰もいない。
蒼は部屋に入ると、床の上に散乱している物を踏まないように気を付けながら歩いた。
壁際にランドセルを置く。
母親がどこで買ったのか、それとも誰かに貰ったのか分からない中古の黒いランドセル。
小学校の入学式で、みんなピカピカのランドセルの中、蒼はひどく浮いていた。
それでもちゃんと用意してもらえただけマシだった。
くすくす、と甘ったるい笑い声が聞こえてくる。
「やだぁ、もう~」
蒼が声のした方ーー玄関に目を向けると、母親が若い男と腕を組んでいた。
初めて見る男。
ついこないだまで、母親よりも歳上と思われる男がこの家に入り浸っていたというのにーー
「…いたの?」
蒼に目を留めると、急に不機嫌そうに母親が言った。
「おかえりなさーー」
「悪いけど、しばらくどっか行ってて」
蒼の言葉を遮って、母親は持っているハンドバッグの中に手をやり財布を出した。
「そのガキ、あんたの子供?」
「まあね…生意気な子よ」
そう男に答えた母親は、目で訴えるように蒼を見た。
慌てて蒼は母親のもとへと行く。
「これで何か食べれるでしょ」
小銭が数枚蒼の両手に乗せられた。お腹を満たすには、足りない。贅沢は言えないが。
「いいの? 今日寒いのに外に出しちゃって」
「何とでもするでしょ、赤ん坊じゃないんだから」
「それにしても結構大きい子供いてびっくりしたー」
そんな会話をしながら、母親と男が部屋に入る。反対に蒼は部屋を出た。
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