ヒーローには日向が似合う

とこね紡

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宝箱をずっと抱《いだ》いて1

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それから蒼が公園に行くことはなかった。
水曜日も、その他の日も。
行けなかった。
ひなたが待っていない、ひなたが来ない。
それを確かめるのが怖くて、近付くことすら出来なかったのだ。
もしかしたら、ひなたは自分に会いに来てくれているかもしれない。
そんな淡い期待もあったけれど、ひなたに幻滅されただろう、ひなたに嫌われただろう、という思いの方が勝った。

これでいい…
ひなはわたしにはもったいなかったから…
ひなに出会う前に戻っただけ…

時間は過ぎていく。
毎日がまた淡々としたものになっていた。
いや、以前よりずっとつまらなく感じられた。

蒼は自分を抱き締めるように左手で右腕をぎゅっと押さえることが増えた。
そのことを蒼は自覚していなかったけれど。
これは今よりもさらに幼い頃の癖だった。
時折無性に淋しさと孤独が、蒼を襲っていたのだった。

そしてーー蒼は遠い親戚の家に引き取られることになった。

経緯は知らない。
大人たちの話し合いで決められたことだ。

これから一緒に暮らすことになる親戚のことは、何も知らない。
おまけに六月初め、時期外れの転校。
転校先の生徒たちはきっと訝しむだろう。
それでも蒼は少しも憂鬱じゃなかった。
何もかもがどうでもよかった。
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