想い、結び、繋ぐ(仮)

本郷むつみ

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悩んでみた

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 今度はヨッシーか? まあ幸と違ってメールな分だけまだマシか。今日のヨッシーを見ていた限り、千絵ちゃんとの距離はそんなに縮まってなかったからな。くだらない内容だったら罵倒&イジりまくってやる。

「俺の悪友2人は礼儀とか倫理とか道徳ってものを知らないのかね」

 苛立ちを隠さずに鳳斗は携帯を開く。SNSの差出人を見た瞬間、鳳斗は心の底から驚いた。差出人はさっき連絡先を交換したばかりの遥香。心臓の音が周囲に聞こえそうなほど高鳴った。

【こんばんは、夜分遅くに本当にごめんなさい。寝ていますか? 寝ていますよね。鳳斗さんが書く小説の内容が気になってしまい、なかなか寝付けなくてメールをしてしまいました。もう書き始めているんですかね? 明日からですかね? 書き終えたら私に見せてくださいね。今日の飲み会、楽しかったです♪】

 おいおいおい。文章の意味が分からん。どこからツッコめばいいんだよ。寝てるって思うなら連絡しちゃ駄目でしょ。そして、これは気があるって事なの? それとも純粋に小説が読みたいだけか? 
 ・・・・・・読みたいだけだよな。うん、間違いない。思春期童貞男子だったら間違いなく俺に気があるって勘違いするけど、俺はそんなトラップには引っかからないよ。よし、寝ている事にしよう。明日返信すればいい。

「うん、コミ症の俺にはこの現状に頭が追い付かない。返信は明日じゃ」

 そう思い込んだ鳳斗は、一度落としたパソコンの電源を入れ直す。保存していた小説を開き直し、また物語の続きをキーボードで打ち始めた。さっきまで頭の中で出来上がった物語を思い出し、指を動かす。遥香とのきっかけは小説なのだから小説を書かなくては遥香との縁も切れてしまう。
 心のどこかに遥香との関係を切りたくないと思った鳳斗は1ページ、1行でも多く先に進める。遥香に早く読んでもらえるようと思い、懸命に指を動かし始めた。  

「少しでも可能性があるのかな~? 本当に何してんだろうな~、俺」

 うん、遥香ちゃんは確かに可愛い。ちょっとした気遣いも出来るし、夢に向かう姿勢もカッコいいと思う。なんとなく悔しいが顔も可愛いし、スタイルもいい。あれで彼氏がいないって世の中、間違ってないか? まあ、絶対に色んな男から声はかけられているだろうな。
 俺が彼氏に立候補……。いやいやいや、今まで期待してどれだけ裏切られてきたんだ、俺。恋愛は一方通行じゃないって散々痛い思いしたじゃん。まず、遥香ちゃんに彼氏候補って思われないとな。……うん、無理だね。

「諦めたら試合終了ですよって名言があるけど、試合に、いやその競技に参加すらさせてもらえない場合はどうすればいいんだろうね」

 遥香ちゃんが興味を持っているのは俺の書く作品だけだと思う。しかもまあまあのクオリティーの高い作品をご所望なんだよな。
 どんだけハードルが高いんだよ。恋に落ちるとはよく言ったもんだね。真っ逆さまに落ちてボロボロになるわけだ。ドラマや映画、ラブソングのようにみんながみんな、上手くいくわけない。
 うん、俺もこんな遥香ちゃんからのメールの文章ぐらいじゃ、恋には落ちないよ。俺って大人~。

「これが恋愛アニメとかだったら、運命の出会いみたいな感じなんだけど」

 だが、鳳斗には幸隆や良樹を見返してやりたい気持ちがあった。確かに鳳斗は無趣味であまりやる気を出すことは無い。興味があってもやり始めることが面倒になり手を出さずじまい。
 こんな鳳斗の性格をしっかり掴んでいる親友の幸隆と良孝。鳳斗の隠れた負けず嫌いの性格、そして褒めて伸びるタイプなこと。2人の親友は鳳斗を知り尽くしているからこそ、小説を書かせることに対して褒めたり挑発したのであった。

「あの2人の挑発に乗ったのは我ながらアホだったな。だけどな~、あそこまで言われたら見返してやりたい気持ちもちょっとあるし」
 
 2人の戦略にみすみす嵌ったのは悔しい気持ちで一杯だが、それよりあの女性を含めたメンバーたちにしっかりとした小説を書いて面白いと言わせてみたいという気持ちが強くなっていた。
 泣かせてみたし、感動させてみたい。
 そんな思いがあったから鳳斗は小説を書いてみたくなったのだ。睡魔に襲われながらも指を動かし、少しずつ物語を作っていく。しかし、指が所々で動かなくなる鳳斗。

「大学に行っておけば良かった……」

 俺、文章力が無さすぎ。言葉ももっと色んなバリエーションがある気がするし。頭の中で思い描いている映像を上手く書き表せねぇ~。もっとちゃんと勉強しておけばよかったなって今更遅いか。今から小説の勉強する気もないし。ダメ人間の典型的パターンだね。やっぱり俺はダメ人間だわ~。

 こうなると鳳斗の指先は途端に遅くなっていく。悩みながら書いては消し、書いては消しての作業を繰り返し。迷いながらキーボードを打っていると悩む時間が増え、指が止まる。
 いつの間にか鳳斗はパソコンの前で寝てしまっていた。
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