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制御不能
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死神が霧のように消えた後も、
僕の耳には、あの鎌が空気を切った音が残っていた。
「……終わったのか」
声に出してみても、現実感がない。
地面には盗賊たちが倒れ、動く気配はなかった。
「たけしくん……」
山崎さんが、恐る恐る近づいてくる。
「今の……本当に、漫画のキャラ?」
「……たぶん」
自分の声が、やけに遠く感じた。
(僕が……召喚した……)
胸の奥が、じんわり熱い。
怖い。
でも、それ以上に――
(すごい……)
そんな感情が湧いた瞬間だった。
――ズキッ。
頭の奥に、針を打ち込まれたような痛みが走る。
「っ……!」
視界が歪む。
立っていられず、膝をついた。
「たけしくん!? どうしたの!?」
「……わからない……急に……」
吐き気。
心臓が早鐘のように鳴る。
そのとき、勝手にステータス画面が開いた。
【警告】
【召喚負荷:高】
【精神安定値:低下】
【未処理データあり】
「……未処理?」
理解する前に、地面が震えた。
ゴゴ……と、嫌な音。
「え……地震……?」
違う。
足元から、青い光が滲み出している。
「……嘘だろ」
光は、僕の意思を無視して広がっていく。
さっきの召喚とは違う。
制御されていない。
「待て……止まれ……!」
必死に叫ぶが、反応はない。
空間が裂ける。
紙を破るような音。
そこから、影が覗いた。
巨大。
輪郭が定まらず、黒いインクを垂らしたような存在。
(……知ってる)
漫画で、何度か見たことがある。
でも、好きなキャラじゃない。
むしろ――
「……最悪なやつだ……」
影が、低く唸る。
その瞬間、周囲の地面が砕けた。
土と石が舞い、近くの建物の壁が崩れる。
「きゃっ!」
山崎さんが悲鳴を上げ、尻もちをつく。
「ごめん……! 今、止める……!」
必死に意識を集中する。
でも、頭が割れそうに痛い。
(俺の能力なのに……言うこと聞かない……!)
影が一歩、前に出る。
その気配だけで、空気が重くなる。
そのときだった。
「――魔力反応、確認」
冷たい声。
振り向くと、道の先に人影が見えた。
王国の兵士たち。
数は五。
装備が違う。動きも揃っている。
「城外での異常召喚……間違いない」
指揮官らしき男が、僕を見据える。
「……能力なしとして追放された少年か」
喉が鳴る。
(もう、バレた……)
影の怪物。
王国の精鋭。
制御不能の能力。
完全に、詰んでいる。
「……どうする、たけしくん……」
山崎さんの声が、震えている。
(戦えるわけない……)
さっきの死神は、たまたまだ。
今は、何が出てくるかも分からない。
「……逃げよう」
短く、そう言った。
兵士たちが剣を抜く。
「待て!」
同時に、影が咆哮した。
その衝撃で、視界が白くなる。
僕は、山崎さんの手を掴んで走った。
(力があっても……)
(制御できなけりゃ、意味がない……!)
これは事故だ。
間違いなく、事故。
でも――
この力と向き合わない限り、
次はもっと酷いことになる。
そう、確信していた。
僕の耳には、あの鎌が空気を切った音が残っていた。
「……終わったのか」
声に出してみても、現実感がない。
地面には盗賊たちが倒れ、動く気配はなかった。
「たけしくん……」
山崎さんが、恐る恐る近づいてくる。
「今の……本当に、漫画のキャラ?」
「……たぶん」
自分の声が、やけに遠く感じた。
(僕が……召喚した……)
胸の奥が、じんわり熱い。
怖い。
でも、それ以上に――
(すごい……)
そんな感情が湧いた瞬間だった。
――ズキッ。
頭の奥に、針を打ち込まれたような痛みが走る。
「っ……!」
視界が歪む。
立っていられず、膝をついた。
「たけしくん!? どうしたの!?」
「……わからない……急に……」
吐き気。
心臓が早鐘のように鳴る。
そのとき、勝手にステータス画面が開いた。
【警告】
【召喚負荷:高】
【精神安定値:低下】
【未処理データあり】
「……未処理?」
理解する前に、地面が震えた。
ゴゴ……と、嫌な音。
「え……地震……?」
違う。
足元から、青い光が滲み出している。
「……嘘だろ」
光は、僕の意思を無視して広がっていく。
さっきの召喚とは違う。
制御されていない。
「待て……止まれ……!」
必死に叫ぶが、反応はない。
空間が裂ける。
紙を破るような音。
そこから、影が覗いた。
巨大。
輪郭が定まらず、黒いインクを垂らしたような存在。
(……知ってる)
漫画で、何度か見たことがある。
でも、好きなキャラじゃない。
むしろ――
「……最悪なやつだ……」
影が、低く唸る。
その瞬間、周囲の地面が砕けた。
土と石が舞い、近くの建物の壁が崩れる。
「きゃっ!」
山崎さんが悲鳴を上げ、尻もちをつく。
「ごめん……! 今、止める……!」
必死に意識を集中する。
でも、頭が割れそうに痛い。
(俺の能力なのに……言うこと聞かない……!)
影が一歩、前に出る。
その気配だけで、空気が重くなる。
そのときだった。
「――魔力反応、確認」
冷たい声。
振り向くと、道の先に人影が見えた。
王国の兵士たち。
数は五。
装備が違う。動きも揃っている。
「城外での異常召喚……間違いない」
指揮官らしき男が、僕を見据える。
「……能力なしとして追放された少年か」
喉が鳴る。
(もう、バレた……)
影の怪物。
王国の精鋭。
制御不能の能力。
完全に、詰んでいる。
「……どうする、たけしくん……」
山崎さんの声が、震えている。
(戦えるわけない……)
さっきの死神は、たまたまだ。
今は、何が出てくるかも分からない。
「……逃げよう」
短く、そう言った。
兵士たちが剣を抜く。
「待て!」
同時に、影が咆哮した。
その衝撃で、視界が白くなる。
僕は、山崎さんの手を掴んで走った。
(力があっても……)
(制御できなけりゃ、意味がない……!)
これは事故だ。
間違いなく、事故。
でも――
この力と向き合わない限り、
次はもっと酷いことになる。
そう、確信していた。
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