3 / 3
制御不能
しおりを挟む
死神が霧のように消えた後も、
僕の耳には、あの鎌が空気を切った音が残っていた。
「……終わったのか」
声に出してみても、現実感がない。
地面には盗賊たちが倒れ、動く気配はなかった。
「たけしくん……」
山崎さんが、恐る恐る近づいてくる。
「今の……本当に、漫画のキャラ?」
「……たぶん」
自分の声が、やけに遠く感じた。
(僕が……召喚した……)
胸の奥が、じんわり熱い。
怖い。
でも、それ以上に――
(すごい……)
そんな感情が湧いた瞬間だった。
――ズキッ。
頭の奥に、針を打ち込まれたような痛みが走る。
「っ……!」
視界が歪む。
立っていられず、膝をついた。
「たけしくん!? どうしたの!?」
「……わからない……急に……」
吐き気。
心臓が早鐘のように鳴る。
そのとき、勝手にステータス画面が開いた。
【警告】
【召喚負荷:高】
【精神安定値:低下】
【未処理データあり】
「……未処理?」
理解する前に、地面が震えた。
ゴゴ……と、嫌な音。
「え……地震……?」
違う。
足元から、青い光が滲み出している。
「……嘘だろ」
光は、僕の意思を無視して広がっていく。
さっきの召喚とは違う。
制御されていない。
「待て……止まれ……!」
必死に叫ぶが、反応はない。
空間が裂ける。
紙を破るような音。
そこから、影が覗いた。
巨大。
輪郭が定まらず、黒いインクを垂らしたような存在。
(……知ってる)
漫画で、何度か見たことがある。
でも、好きなキャラじゃない。
むしろ――
「……最悪なやつだ……」
影が、低く唸る。
その瞬間、周囲の地面が砕けた。
土と石が舞い、近くの建物の壁が崩れる。
「きゃっ!」
山崎さんが悲鳴を上げ、尻もちをつく。
「ごめん……! 今、止める……!」
必死に意識を集中する。
でも、頭が割れそうに痛い。
(俺の能力なのに……言うこと聞かない……!)
影が一歩、前に出る。
その気配だけで、空気が重くなる。
そのときだった。
「――魔力反応、確認」
冷たい声。
振り向くと、道の先に人影が見えた。
王国の兵士たち。
数は五。
装備が違う。動きも揃っている。
「城外での異常召喚……間違いない」
指揮官らしき男が、僕を見据える。
「……能力なしとして追放された少年か」
喉が鳴る。
(もう、バレた……)
影の怪物。
王国の精鋭。
制御不能の能力。
完全に、詰んでいる。
「……どうする、たけしくん……」
山崎さんの声が、震えている。
(戦えるわけない……)
さっきの死神は、たまたまだ。
今は、何が出てくるかも分からない。
「……逃げよう」
短く、そう言った。
兵士たちが剣を抜く。
「待て!」
同時に、影が咆哮した。
その衝撃で、視界が白くなる。
僕は、山崎さんの手を掴んで走った。
(力があっても……)
(制御できなけりゃ、意味がない……!)
これは事故だ。
間違いなく、事故。
でも――
この力と向き合わない限り、
次はもっと酷いことになる。
そう、確信していた。
僕の耳には、あの鎌が空気を切った音が残っていた。
「……終わったのか」
声に出してみても、現実感がない。
地面には盗賊たちが倒れ、動く気配はなかった。
「たけしくん……」
山崎さんが、恐る恐る近づいてくる。
「今の……本当に、漫画のキャラ?」
「……たぶん」
自分の声が、やけに遠く感じた。
(僕が……召喚した……)
胸の奥が、じんわり熱い。
怖い。
でも、それ以上に――
(すごい……)
そんな感情が湧いた瞬間だった。
――ズキッ。
頭の奥に、針を打ち込まれたような痛みが走る。
「っ……!」
視界が歪む。
立っていられず、膝をついた。
「たけしくん!? どうしたの!?」
「……わからない……急に……」
吐き気。
心臓が早鐘のように鳴る。
そのとき、勝手にステータス画面が開いた。
【警告】
【召喚負荷:高】
【精神安定値:低下】
【未処理データあり】
「……未処理?」
理解する前に、地面が震えた。
ゴゴ……と、嫌な音。
「え……地震……?」
違う。
足元から、青い光が滲み出している。
「……嘘だろ」
光は、僕の意思を無視して広がっていく。
さっきの召喚とは違う。
制御されていない。
「待て……止まれ……!」
必死に叫ぶが、反応はない。
空間が裂ける。
紙を破るような音。
そこから、影が覗いた。
巨大。
輪郭が定まらず、黒いインクを垂らしたような存在。
(……知ってる)
漫画で、何度か見たことがある。
でも、好きなキャラじゃない。
むしろ――
「……最悪なやつだ……」
影が、低く唸る。
その瞬間、周囲の地面が砕けた。
土と石が舞い、近くの建物の壁が崩れる。
「きゃっ!」
山崎さんが悲鳴を上げ、尻もちをつく。
「ごめん……! 今、止める……!」
必死に意識を集中する。
でも、頭が割れそうに痛い。
(俺の能力なのに……言うこと聞かない……!)
影が一歩、前に出る。
その気配だけで、空気が重くなる。
そのときだった。
「――魔力反応、確認」
冷たい声。
振り向くと、道の先に人影が見えた。
王国の兵士たち。
数は五。
装備が違う。動きも揃っている。
「城外での異常召喚……間違いない」
指揮官らしき男が、僕を見据える。
「……能力なしとして追放された少年か」
喉が鳴る。
(もう、バレた……)
影の怪物。
王国の精鋭。
制御不能の能力。
完全に、詰んでいる。
「……どうする、たけしくん……」
山崎さんの声が、震えている。
(戦えるわけない……)
さっきの死神は、たまたまだ。
今は、何が出てくるかも分からない。
「……逃げよう」
短く、そう言った。
兵士たちが剣を抜く。
「待て!」
同時に、影が咆哮した。
その衝撃で、視界が白くなる。
僕は、山崎さんの手を掴んで走った。
(力があっても……)
(制御できなけりゃ、意味がない……!)
これは事故だ。
間違いなく、事故。
でも――
この力と向き合わない限り、
次はもっと酷いことになる。
そう、確信していた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる