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7話
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赤ん坊に宝を与えたのは正解だった。
以前のように、外に出たくて泣くことも、抱っこを催促されることも少なくなった。
それに加えて、宝で遊ぶようになってから、赤ん坊の成長もよく感じられる。
ミミックの身体は、同種と比べてかなり大きい。大人が一人すっぽりと収まるくらいのサイズだ。
赤ん坊にとっては、より大きく感じるだろう。
宝が端まで転がってしまうとどうしようもない。ミミックが移動するときの振動で再び手元に転がってくるのを待つか、ミミックに取ってもらうしかなかった。
その日も、宝石の一つが端の方へ転がっていった。
丁度ミミックが見ていたタイミングだったため、赤ん坊の元へ戻してやろうと宝へ身体を伸ばす。
しかし、寸前でそれをやめた。
赤ん坊が不思議な動きをしていたからだ。
両手を前に出して引きつける。もう一度、前に出して引きつける。
明らかに前へ進もうとする動き。
身体の使い方がまだわかっていないため、全く進めてはいないが、いい兆候だ。
しばらくの間、赤ん坊は必死に挑戦していたが、やがて疲れて諦めた。その日は、ミミックがそっと宝を手元まで運んでやった。
それからというもの、赤ん坊は前へ進もうとすることが多くなった。
これまで地面を撫でるだけだった腕には少しずつ力がこもり、上へばかりばたついていた脚も、進みたい方向へ動かそうとするようになる。
遂に進み始めたかと思うと、手と足の筋力の違いか、手を突っ張って後ろに進んでしまうこともあった。
そして、人間でいうところの二週間が過ぎたころ、赤ん坊の動きには少しずつ形が見え始めていた。
両手……というより肘で体を引き寄せ、同時にお尻を持ち上げて脚を前へ運ぶ。
滑るように、縮み、また伸びる。
芋虫のような移動方法を赤ん坊は編み出していた。
速度も芋虫程度なので、どこにでも行けるようになったわけではないが、これは大きな進歩だ。
喜ばしいことなのだが、問題も一つ。
再び外に興味が向き始めてしまった。
いま、赤ん坊がいちばん強く興味を向けているのは、苔の上を駆け回るひとつの影。
同じミルクを飲んで育った、魔獣の子だ。
赤ん坊の2倍くらいの大きさに成長したその身体は、母親にそっくりだが、まだまだ体表に苔もキノコも生えていない。
赤ん坊がミミックの中でミルクを飲むようになってから、互いに触れ合う機会はほとんどなかった。
ぺし。ぺし。
いつもの合図でミミックは赤ん坊を抱き上げる。
「うぅー。あぅー。」
案の定、赤ん坊の視線はまっすぐ外へ向けられていた。
苔の上を駆け回る、小さな影へ。
短い腕を精いっぱい伸ばし、指を開いたまま空を掴もうとする。
身体まで前へ乗り出し、今にも飛び出しそうな勢いだ。
「あぅー?…あー……!」
ミミックに抱かれたまま、魔獣の子に呼びかけるように弾けた声を上げる。
それに気づいて、魔獣の子が動きを止めた。
苔の上でぴたりと立ち止まり、首をかしげる。
トコトコと近づいて、触れようと手を伸ばす赤ん坊の手に鼻を鳴らす。
嗅ぎ慣れたミミックの匂いと、いつか嗅いだことのある柔らかい匂い。
魔獣の子は鼻先を寄せたまま、記憶の中を探っている。
その隙に赤ん坊の指先が毛並みに触れた。
牛や馬のような短い毛並み。触れたことのない感触に興味津々だ。
苔の上に赤ん坊を下ろすと、小さな存在を気遣うように魔獣の子は周りをくるくる回っていた。
「あぅあぅ!」
「ブフッ!フンッ!」
お互いにしか伝わらない言語で話しているかのように声を交わしている。
赤ん坊が胞子の影響で眠ってしまう直前まで、その会話は続いていた。
以前のように、外に出たくて泣くことも、抱っこを催促されることも少なくなった。
それに加えて、宝で遊ぶようになってから、赤ん坊の成長もよく感じられる。
ミミックの身体は、同種と比べてかなり大きい。大人が一人すっぽりと収まるくらいのサイズだ。
赤ん坊にとっては、より大きく感じるだろう。
宝が端まで転がってしまうとどうしようもない。ミミックが移動するときの振動で再び手元に転がってくるのを待つか、ミミックに取ってもらうしかなかった。
その日も、宝石の一つが端の方へ転がっていった。
丁度ミミックが見ていたタイミングだったため、赤ん坊の元へ戻してやろうと宝へ身体を伸ばす。
しかし、寸前でそれをやめた。
赤ん坊が不思議な動きをしていたからだ。
両手を前に出して引きつける。もう一度、前に出して引きつける。
明らかに前へ進もうとする動き。
身体の使い方がまだわかっていないため、全く進めてはいないが、いい兆候だ。
しばらくの間、赤ん坊は必死に挑戦していたが、やがて疲れて諦めた。その日は、ミミックがそっと宝を手元まで運んでやった。
それからというもの、赤ん坊は前へ進もうとすることが多くなった。
これまで地面を撫でるだけだった腕には少しずつ力がこもり、上へばかりばたついていた脚も、進みたい方向へ動かそうとするようになる。
遂に進み始めたかと思うと、手と足の筋力の違いか、手を突っ張って後ろに進んでしまうこともあった。
そして、人間でいうところの二週間が過ぎたころ、赤ん坊の動きには少しずつ形が見え始めていた。
両手……というより肘で体を引き寄せ、同時にお尻を持ち上げて脚を前へ運ぶ。
滑るように、縮み、また伸びる。
芋虫のような移動方法を赤ん坊は編み出していた。
速度も芋虫程度なので、どこにでも行けるようになったわけではないが、これは大きな進歩だ。
喜ばしいことなのだが、問題も一つ。
再び外に興味が向き始めてしまった。
いま、赤ん坊がいちばん強く興味を向けているのは、苔の上を駆け回るひとつの影。
同じミルクを飲んで育った、魔獣の子だ。
赤ん坊の2倍くらいの大きさに成長したその身体は、母親にそっくりだが、まだまだ体表に苔もキノコも生えていない。
赤ん坊がミミックの中でミルクを飲むようになってから、互いに触れ合う機会はほとんどなかった。
ぺし。ぺし。
いつもの合図でミミックは赤ん坊を抱き上げる。
「うぅー。あぅー。」
案の定、赤ん坊の視線はまっすぐ外へ向けられていた。
苔の上を駆け回る、小さな影へ。
短い腕を精いっぱい伸ばし、指を開いたまま空を掴もうとする。
身体まで前へ乗り出し、今にも飛び出しそうな勢いだ。
「あぅー?…あー……!」
ミミックに抱かれたまま、魔獣の子に呼びかけるように弾けた声を上げる。
それに気づいて、魔獣の子が動きを止めた。
苔の上でぴたりと立ち止まり、首をかしげる。
トコトコと近づいて、触れようと手を伸ばす赤ん坊の手に鼻を鳴らす。
嗅ぎ慣れたミミックの匂いと、いつか嗅いだことのある柔らかい匂い。
魔獣の子は鼻先を寄せたまま、記憶の中を探っている。
その隙に赤ん坊の指先が毛並みに触れた。
牛や馬のような短い毛並み。触れたことのない感触に興味津々だ。
苔の上に赤ん坊を下ろすと、小さな存在を気遣うように魔獣の子は周りをくるくる回っていた。
「あぅあぅ!」
「ブフッ!フンッ!」
お互いにしか伝わらない言語で話しているかのように声を交わしている。
赤ん坊が胞子の影響で眠ってしまう直前まで、その会話は続いていた。
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